日本建築学会 住まい・まちづくり支援建築会議
復旧・復興支援WG「液状化被害の基礎知識」
東日本大震災は、激しい地震動による被害に津波の襲来と放射能汚染の被害が加わり未曾有の巨大災害となりました。その復旧と復興には、住まいの高所移転と防潮堤建設の計画、および原発の危険防止など、国土や都市づくりの計画が優先されます。多くの被災地の市町村では、今、特に津波の防災のために、どのような安全で安心な町づくりを行うかを最重要の課題としています。
津波と放射能の被害以外では、住宅などの建築物の被害がありましたが、現在の耐震技術がおおむね予想どおり有効であったと考えられています。
しかし、太平洋沿岸の津波被害とともに、関東地方の臨海部埋立地や利根川流域などや東北地方に液状化被害が発生しました。戸建住宅や低層共同住宅を中心に多くの被害を引き起こした地盤の液状化は、地盤が地震動で揺すられ液体状になる現象です。その結果、液状の土砂が水流として噴出したり、地盤が陥没、沈下したりします。そして、地盤の支持力が著しく低下し、ほとんどの被災家屋は変形せずに傾いたり、沈下します。これは、1964年新潟地震で注目され、近年でも1995年兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)や2000年鳥取県西部地震などで起こっていましたが、対策が総合的に十分にはできていませんでした。
液状化による被害は、地盤の改良や、基礎の支持力の確保が十分でないことから起こります。住宅の不同沈下とともに都市の道路や上下水道も大きな被害を受け、被災地では道路の陥没・隆起や電柱が傾くなどの被害がありました。
そこで住まいづくり支援建築会議の情報事業部会が中心となり、液状化による被害と対策について(被災事例、液状化危険度の調べ方、地盤調査、新築住宅の液状化対策、被災住宅の補修方法、及び復旧のための融資など)、現段階で可能な限りの専門情報を収集・整理し、液状化の被災からの復興や防災に取り組む市民の皆様に公開提供することにしました。
被災地では、市民は、すでに住まいの個別的な再建に取り掛かっており、個別の被災住宅では、その水平化のための修復工事が行われています。また街区や団地単位の被災住宅では、地盤改良などのために管理組合や街区の居住者の復興計画づくりとその合意形成の作業が始まっています。
本レポートは基本的な情報提供の段階ですが、液状化の被災者、その地域の行政担当者、さらに建設関係の技術者にひろく回覧され、復興に何らかの形で役に立つことを期待します。
2011年8月
住まいづくり支援建築会議 運営委員会 委員長
服部 岑生
東日本大震災の発生から、4年が経とうとしています。
住まい・まちづくり支援建築会議の情報事業部会では、2011年に液状化による被害と対策について、その時点で可能な限りの専門情報を収集・整理し、液状化の被災からの復旧や防災に取り組む市民の皆様に公開提供しました。
今回はその改訂作業を行い、その後得られた知見なども加えてリニューアルしました。被災者はもとより、関心のある方々の参考に資することができれば幸甚です。
またこれから新たに住まいづくりに取り組もうとする場合にも本ホームページを活用することが可能です。建築設計者は、建築主が土地を購入した後に、設計業務でたずさわることが多いかと思われます。その場合には、建築主となる皆様が、その土地が液状化を起こさないか、強度は十分にあるかなど、地盤の性質等について、できれば専門家とともによく検討しておくことが大切になります。調査方法などのくわしい説明は各章に出てきますので、液状化などへの対処はどのように考えればよいかなど、説明をお読みください。よりよい土地を選ぶ時の参考になれば幸いです。
本レポートが、東日本大震災の被災者の方々のみならず、これから住まいをつくろうとしている方々へ参考になることを期待しています。
2015年3月改訂
住まい・まちづくり支援建築会議
情報事業部会 主査 石川 孝重
これから新たに住宅を建設される方は、土地の購入の前に知っておいた方がよい情報が必要と思います。2章から4章にかけて液状化危険度の調べ方、地盤調査と液状化対策の方法が紹介されていますので、そちらをご覧ください。
また、液状化により被災した住宅にお住まいで、すぐに対策を検討したい方は、5章に一般的な補修方法が紹介されていますので、そちらをご覧ください。
なお、6章から8章は個人住宅のための液状化に関連する情報を紹介しています。具体的に土地や建物が決まっている場合は9章の団体に所属している専門家にアドバイスやコンサルティングを受けることをお勧めします。