2010年10月20日水曜日

酢酸アビラテロンは第Ⅲ相臨床試験でも良好な結果を示す

<第35回欧州臨床腫瘍学会(ESMO) Johann de Bono氏(英)の発表>

 フェーズ3の無作為化試験の結果、 化学療法(ドセタキセル)が無効となったホルモン抵抗性の転移性前立腺癌患者に対し、
酢酸アビラテロンの投与が、全生存期間(OS)を延長することが認められた。
 酢酸アビラテロンは、CYP17を選択的に遮断し、アンドロゲン合成(persistent androgen synthesis;PAS)を強力かつ持続的に阻害する。

 試験対象は、13カ国の147施設から参加した、ドセタキセルベースの化学療法の治療歴がある去勢抵抗性の転移性前立腺がん患者1195人。
 まずは被験者を次の2群に分けた。
AA群   :酢酸アビラテロン(経口)を1日1回1000mg、プレドニゾン5mgを1日2回投与する群(797人)
プラセボ群:プラセボとプレドニゾンを投与する群(398人)

 治療前の病状は次の通り。
       PSA中央値、 骨転移、 リンパ節転移、  肺転移、  肝転移
AA群   :128.8ng/mL、 89.2%、  45.4%、  13.0%、  11.3%
プラセボ群:137.7ng/mL、 90.4%、  41.5%、  11.4%、   7.6%

 主要評価項目は全生存期間:OS、副次的評価項目はPSAが上昇するまでの期間:TTPP、rPFS、PSA値における奏効率とした。
 その結果を示すとこのようになる。
        OS、   TTPP、   rPFS、  PSA奏功率
AA群   :14.8ヵ月  10.2ヵ月  5.6ヵ月  38.0%
プラセボ群:10.9ヵ月   6.6ヵ月  3.6ヵ月  10.1%

 全グレードの有害事象はAA群で98.9%、プラセボ群で99%に発現し、グレード3以上の有害事象は54.5%と58.4%だった。
グレード3以上の有害事象による治療中止は、AA群10.5%、プラセボ群13.5%となった。有害事象による死亡は、AA群11.6%、プラセボ群14.7%だった。
 AA群で多く観察された有害事象は、体液貯留、低カリウム血症、肝機能異常、高血圧であったが、グレード3以上はいずれも5%未満だった。

参考:http://higepapa.blogspot.com/2009/03/abiraterone.html

出典:日経メディカル
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2010年10月13日水曜日

骨転移を促す遺伝子を特定

NHKニュース 2010年10月11日
がんが骨に転移する「骨転移」を促すとみられる遺伝子を特定し、その働きを抑えて実際に骨転移を防ぐことに、慶応大学のグループがマウスを使った実験で成功しました。骨転移を予防する薬の開発につながる可能性があると注目されています。
がんが骨に転移する骨転移は、骨折や強い痛みを引き起こし、がんを治療するうえで大きな障害となります。このため、慶応大学先端医科学研究所のグループは、骨転移を起こしやすい乳がんや前立腺がんなどのがん細胞で、骨の病気に関係する50の遺伝子がどのように働いているか詳しく調べました。その結果、「FRP」という遺伝子の働きが異常に高まっていることがわかったということです。さらに、FRPにくっついて働きを抑える物質を作り、ヒトのがん細胞を移植したマウスに投与したところ、ほとんど骨転移が起こらないことを確認したとしています。このマウスではリンパ球など免疫を担う細胞が活発になっていたということで、研究グループでは、FRPが免疫の機能を抑え骨転移を促しているのではないかとしています。研究グループの工藤千恵講師は「FRPの働きを抑える薬を開発すれば、骨転移を予防できる可能性がある。治療に使えるよう研究を進めたい」と話しています。
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2010年8月19日木曜日

ホルモン療法単独より放射線療法を追加すべき(局所進行前立腺がん)

(NCIキャンサーブレティン2010年6月15日号参照)

1995~2005年の間に行われた国際共同第3相試験の結果によると、アンドロゲン除去療法(ADT)に放射線療法を追加すると、局所進行前立腺癌男性の死亡リスクを43%減少させることが判明した。このデータは先週シカゴで行われたASCO年次総会で発表された。

ADT+放射線療法を受けた男性は、ADT 単独療法を受けた男性よりも10年間の前立腺癌死亡率は少ない(15%対23%)だろうと、研究者らは予測している。最終結果はあと数年で明らかになると期待される。

「この結果は2010年でも意味があると確信している。未だに、高リスク患者の約50%がADT単独で治療されている」とWarde氏は述べた。
ここ10年は放射線治療技術の進歩が著しく、本試験の放射線治療追加の効果は、過少評価されている可能性があると、同氏は述べた。
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2010年7月7日水曜日

普及するか、ダヴィンチ手術

昨年11月、ジョンソン・エンド・ジョンソンが海外の臨床試験データを基に手術支援ロボット、
ダヴィンチの薬事承認を取得。この3月からようやく国内での販売がスタートした。
ダヴィンチ本体の価格は3億円程度だが、機器や消耗品にも費用がかかる。
また、これとは別に、年間のメンテナンス費用が約2500万円になるとみられている。

前立腺がんの手術では、腹腔鏡は慣れるまでに80~100症例の経験が必要だが、
ダヴィンチでは10~20症例で良いという。
指先の動きを1/3、1/5に縮小して伝えることができるため、精密な操作もやり易い。
出血量も開腹手術より少なく、患者の負担が少ない低侵襲手術といえる。
「触覚がない」のが欠点だが、これは視覚情報の優位性で補わざるを得ない。

我国では、前立腺がんの腹腔鏡手術は全体の1割以下程度とみられ、開放手術が中心だが、
米国では、すでに85%以上の手術が、1000台以上のダヴィンチにより行われている。

参照 http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201007/515535.html
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カバジタキセル(商品名:Jevtana)

進行したホルモン不応性前立腺がんの患者にとっては、ドセタキセルが最後の砦ではなく、
新しいタキサン系抗癌剤、カバジタキセル(商品名:Jevtana)によって生存期間の延長が認められた(第Ⅲ相治験)ことは、すでにこの掲示板でもお知らせしました。
これを受けて、米食品医薬品局(FDA)は優先審査プログラムとして審査を行っていましたが、
6月17日、カバジタキセル(Jevtana)をプレドニゾン(ステロイド剤)との併用で承認しました。
ドセタキセルで治療中あるいは治療後に病勢が進行したホルモン不応性前立腺がんは、
これまでほとんど治療の選択の余地がなかったわけですが、この薬剤が初の適応となるわけです。
申請から承認まで11週間のスピード審査で、米国医療行政の面目躍如といったところですが、
我が国ではいったいどうなるんでしょうね。
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2010年6月14日月曜日

ラジウム223を用いた放射性医薬品アルファラディン

アルファ線放出核種ラジウム223を用いた放射性医薬品アルファラディン(Alpharadin) は、ホルモン不応性前立腺癌の骨転移に対し、第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験の試験結果から、忍容性を保ちながら全生存期間の延長も期待できる可能性が示されました。(ASCO2010)
アルファラディンは現在、国際共同第Ⅲ相臨床試験が行われていますが、日本はこれに参加していません。

現在、体内照射として用いられているストロンチウム-89(メタストロン注)は、ベータ線を放出する放射性同位元素で、体内ではカルシウムと同様の働きをするので、骨転移病巣に集まりやすく、集中的に骨転移病巣に放射線が照射され、多発性骨転移などで外部照射が困難な場合でも疼痛の緩和がはかれる可能性があります。

アルファ線(ラジウム223)はベータ線(ストロンチウム-89)に比べて放射線量が数倍大きく、逆に飛距離と崩壊時間が短いのが特徴。
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2010年5月18日火曜日

ペプチドワクチン 先進医療

(厚労省「先進医療専門家会議」)
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/27652.html
5/18の厚労省「先進医療専門家会議」で、ホルモン不応性再燃前立腺がんに対する「ペプチド・ワクチン療法」が先進医療として認められた。
適応はドセタキセル不適格のホルモン不応性再燃前立腺がんで、ヒト白血球抗原HLA-A24が陽性のもの。
免疫性が高いと推測されるがんペプチドを、それぞれ患者ごとにテーラーメイド治療を行うことで、より早く、強力な特異免疫賦活効果を狙う治療法。
患者自身のがん免疫機能を活発化することで、生命予後の延長やQOLの向上につながることが期待され、技術を申請した久留米大病院の臨床研究では、
24%の患者についてPSA値が50%以上低下した。
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ペプチドワクチン 臨床試験

(第98回日本泌尿器科学会総会発表)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/jua2010/201005/515081.html
岩手医大の小原氏らは、東大医科学研究所との共同研究で、遺伝子のスクリーニングによって、前立腺癌に高頻度に発現する遺伝子CDCA1を同定した。
CDCA1由来の「HLA-A24拘束性エピトープペプチド」を作製し、ドセタキセル抵抗性の再燃前立腺癌に対し、このペプチドを標的とした癌ペプチドワクチンの
医師主導型第1/2相試験を行ったところ、重篤な全身有害事象はなく安全に施行できることが示された。
効果の判明まではまだ時間がかかるが、小原氏は「ドセタキセル抵抗性患者に対する治療として期待できる」と述べた。
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2010年5月17日月曜日

MDV3100(経口アンドロゲン受容体拮抗薬)

経口アンドロゲン受容体拮抗薬MDV3100を、アンドロゲン非依存性の転移性前立腺癌患者に適用したところ、フェーズ1/2試験で好結果が得られた。(Lancet誌電子版4/15 米Medivation社&アステラス製薬)

治療法の選択肢が限られており、余命1年以下と推定される末期の前立腺癌患者において、MDV3100はPSAレベルを低下させ、腫瘍の縮小または病態安定をもたらし、末梢血中の循環癌細胞(CTC)の数を減らすことが明らかになった。
MDV3100は、3つの作用点に働きかけてアンドロゲン受容体拮抗作用を発揮するというユニークな作用機序を持つ。
リスクとベネフィットのバランスは良好と判断され、既に多施設無作為化フェーズ3AFFIRM試験が進行中。
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2010年5月16日日曜日

ホルモン療法+ゾレドロン酸(ゾメタ)

横浜市大の上村博司氏らは、4月下旬盛岡市で開催された第98回日本泌尿器科学会総会で以下の発表をした。
骨転移がある前立腺癌に対し、ホルモン療法にゾレドロン酸(ゾメタ)を併用することでPSA値が顕著に低下し、PSA最低値は低く、PSA正常化率は高く、再燃までの期間を延長する可能性が示された。
神奈川県下の多施設共同臨床試験で、骨転移の広がりが6ヵ所以上で、ホルモン療法未治療の臨床病期D2前立腺癌患者28人が対象。
PSA初期値の中央値は239だったが、PSA正常化率(4以下に下がった)は75%であった。
4人でグレード2の有害事象(クレアチン上昇、歯肉炎、下顎痛、筋肉痛)が見られたため投与を中止したが、重篤なものはなかった。
PSA再燃は10人に認められ、再燃までの期間中央値は6.6カ月だった。いずれも骨関連事象(SRE)の発現はない。
「初期からゾレドロン酸を投与した方がよいだろう」と答えた。
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2010年5月13日木曜日

GnRHアゴニストの副作用

FDA(米国食品医薬品局)は医療従事者および患者に対し、GnRHアゴニスト(日本ではリュープリン、ゾラデックス)の投与により、
糖尿病や心血管疾患のリスクが高まる可能性があると通達した。
ただ、FDAの審査はまだ継続中で、前立腺癌でこれらの薬剤投与を受けている患者のリスクについてはまだ結論は出ておらず、
患者は医師から投与中止を指示されない限りは、GnRHアゴニスト投与を中止すべきではない。
FDAは、これらの安全性問題を認識し、GnRHアゴニスト投与を受ける患者について糖尿病および心血管疾患の発症をモニタリングすべきであると推奨している。

http://health.nikkei.co.jp/hsn/news.cfm?i=20100513hj001hj

http://www.cancerit.jp/xoops/modules/fda_files/index.php?page=article&storyid=115
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2010年4月24日土曜日

期待されている新薬の色々

■デノスマブ(denosumab)
デノスマブ(denosumab)はゾレドロン酸(ゾメタ)より優れており、転移性前立腺癌患者の骨関連事象(合併症)の出現を遅らせる効果があるという報告が、2010年6月のASCO(米国臨床腫瘍学会)でなされる予定。


■MDV3100
MDV3100は第二世代の経口抗アンドロゲン剤
カソデックスよりも優れた抑制作用を示し、カソデックス抵抗性癌にも効果が見られる。
現在、ドセタキセル(タキソテール)の治療歴を有するホルモン非感受性前立腺癌患者を対象とした、国際第Ⅲ相臨床試験が行われている。


■デガレリクス
2008年末にFDAが承認し、欧米ではすでに用いられている。
LH-RHアナログ剤(リュープリン、ゾラデックス等)に対し、これはLH-RHアンタゴニスト。
フレアアップ現象(テストステロンの一時的な上昇)を来さない。

■プロベンジ
前立腺がん治療用ワクチン。
ホルモン不応答性前立腺がん患者を対象としたフェーズ3試験では全生存期間の延長が判明。
諮問委員会は17対0で薬の安全性を認め、13対4で効用を認定したが、FDAでは承認されず物議をかもす。
再審査で承認の可能性も?

■アビラテロン
性ホルモンの合成に関与する酵素「CYP17」を選択的に阻害し、精巣や副腎でのテストステロンの産生を抑える新薬。
ホルモン耐性の転移性前立腺癌で、ドセタキセルベースの化学療法が無効となった患者を対象に、フェーズ3(第3相)試験を開始している。試験終了は2011年の予定。

■カバジタキセル
新しいタキサン系抗癌剤。
進行前立腺癌の患者にとってはドセタキセルが最後の砦ではなく、Cabazitaxelによって生存期間を延長できることが第Ⅲ相治験で示された。FDAが承認審査中。・・・・・→ FDAの承認が降りました!
   http://higepapa.blogspot.com/2010/07/jevtana.html

■セディラニブ
VEGFRチロシンキナーゼ阻害剤cediranib(AZD2171)が、すでにドセタキセル投与を受けた去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に有効かつ安全であることが第Ⅱ相試験で認められた。

■ピコプラチン&ドセタキセル&プレドニゾン
去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の治療として、この3剤の組合せが良好で、安全性も高いことが第Ⅱ相試験で示された。
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2010年4月13日火曜日

前立腺癌のTNM分類

【原発腫瘍(T)】
・TX:原発腫瘍の評価が不可能

・T0:原発腫瘍を認めない

・T1:臨床的に不顕性であり、かつ触診によっても画像によっても腫瘍が認められない
 - T1a:偶然に検出された腫瘍で切除組織の5%以下
 - T1b:偶然に検出された腫瘍で切除組織の5%を超える
 - T1c:針生検で腫瘍が同定される(例えば、PSA値の上昇により)

・T2:腫瘍が前立腺内に限局している*
 - T2a:腫瘍の浸潤が1葉の50%以下
 - T2b:腫瘍が1葉の50%を超えて拡がるが、両葉には及んでいない
 - T2c:腫瘍が両葉に及んでいる

・T3:腫瘍が前立腺被膜の外に進展している**
 - T3a:被膜の外へ拡大(片側であるか両側であるかを問わない)
 - T3b:腫瘍が精嚢(左右またはそのいずれか)へ浸潤

・T4:腫瘍が固着しているか、精嚢以外の隣接臓器への浸潤:
   膀胱頸部、外括約筋、直腸、挙筋、および/または骨盤壁

*[注: 針生検により腫瘍が片葉または両葉に認められても、触知されず
   画像によっても確実には認められないものはT1cに分類する]

**[注: 前立腺尖部または前立腺被膜への浸潤(ただし被膜を越えない)は、T3ではなくT2に分類する]

【所属リンパ節(N)】
 所属リンパ節は小骨盤リンパ節であり、本質的には総腸骨動脈分岐部以下の骨盤リンパ節である。
この所属リンパ節には以下のグループがある(N分類では左右の別を問わない):
 骨盤リンパ節(他に特定されない[NOS])、
 下腹部リンパ節、閉鎖リンパ節、
 腸骨リンパ節(すなわち、内腸骨、外腸骨、NOS)、
 および仙骨リンパ節(外側仙骨、仙骨前、岬角[例えば、Gerota's]、NOS)。

 遠隔リンパ節とは、小骨盤の範囲にないものをいう。
これらは、超音波法、CT、MRIまたはリンパ管造影法により画像を得ることができ、以下のものがある:
 動脈リンパ節(傍大動脈、大動脈周囲、または腰部)、
 総腸骨リンパ節、鼠径リンパ節(深層)、
 浅鼠径(大腿)リンパ節、鎖骨上窩リンパ節、
 頸部リンパ節、斜角筋前リンパ節および(NOS)後腹膜腔リンパ節。

 腫大したリンパ節は、時に画像検出できるが、PSAスクリーニングと関連した病期シフトにより、
リンパ節病変を有することが分かる患者がきわめて少数であり、そして画像検査上の偽陽性および偽陰性がよくみられる。
個々の患者のリンパ節転移のリスクを決定するには画像の代わりに、リスク表が一般に使用される。
遠隔リンパ節転移は、M1aに分類される。
 - NX:所属リンパ節が評価されなかった
 - N0:所属リンパ節に転移を認めない
 - N1:所属リンパ節に転移を認める

【遠隔転移 (M)】*
・MX:遠隔転移の評価が不可能(いかなる手法によっても評価できない)

・M0:遠隔転移を認めない

・M1:遠隔転移あり
 - M1a:所属リンパ節以外
 - M1b:骨
 - M1c:骨転移を伴う、または伴わないその他の部位

*[注: 2部位以上に転移が認められれば、最も進行した分類(pM1c)を用いる。]

【病理組織学的分化度 (G)】
・GX:分化の程度の評価が不可能

・G1:高分化 (軽度異型性)(Gleason 2-4)

・G2:中分化 (中等度異型性)(Gleason 5-6)

・G3-4:低分化または未分化 (高度異型性)(Gleason 7-10)

注)現在の分類法では、4以下のグリソンスコアは事実上存在しない。
 5~6: 高分化がん(5も珍しい)
 7 :  中分化がん
 8~9: 低分化がん
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監視療法(active surveillance)

 NCI キャンサーブレティン2010年1月12日号(Volume 7 / Number 1) -米国国立癌研究所発行より
 http://www.cancerit.jp/recommendation_file_pdf/Cancer_Bulletin_PDF/100112.pdf

前立腺癌の治療において監視療法(activesurveillance)を普及させるためのこれまでで最も明確な要請が、NCCN(National Comprehensive CancerNetwork:全米癌総合ネットワーク)のガイドラインで示された。
改訂されたNCCNのガイドラインは、生命を脅かす病気へと進行する危険性が低い前立腺癌患者に監視療法を提供することを医師に求めている。

監視療法は、以前には「待機療法(watchfulwaiting, expectant management)」と呼ばれていたが、前立腺癌の診断後すぐに治療せずに、定期的な検査や診察を行って病状を綿密に観察することである。
監視療法にはPSA検査、直腸診(DRE)の他、前立腺生検を含めることができる。
もし、腫瘍の著明な増大、PSA 値の急激な上昇、生検における悪性度の上昇など病状が進行している徴候がい
ずれかの時点で認められた時は、手術や放射線療法などの根治的治療(definitive treatment)が行われる。

「前立腺癌治療委員会は前立腺癌の過剰診断や過剰治療を危惧しています」と委員会の議長でロズウェル
パーク癌研究所のDr.James L. Mohler 氏は説明した。昨年発表された前立腺癌検診についての2 つの
大規模臨床試験の結果、発見されなければ問題とならなかったであろう癌に対して重大な過剰診断と過剰
治療があったことが明らかになり、改訂を進める原動力になったと同氏は述べた。
「自分に前立腺癌があるとわかったほとんどの男性は何を望むでしょうか?彼らは癌がなくなることを望みま
す」とMohler 氏は言う。「あまりにも多くの男性が治療の副作用に苦しんでおり、治療にかかる費用は社
会が負担しています。そして、それらのうちあまりに多くの治療が不必要なのです」。

改訂されたガイドライン(無料登録で利用可能)によると、監視療法は期待される余命が10 年未満の低リス
ク前立腺癌の男性に推奨されるべきである。低リスク癌とはPSA 値が比較的低く、腫瘍が小さく前立腺の
片側に限局し、グリーソンスコアが低い低悪性度のものをいう(表を参照)。
また、ガイドラインは臨床的に問題にならない前立腺に対して超低リスクという新しい分類を定めた。期待される余命が20 年以下でこのカテゴリーに分類される男性の好ましい管理手段として監視療法の提案のみを推奨している。


低リスク◇(期待余命・10年未満に適応)
◇適応
・癌ステージ:T1-T2a
・癌悪性度:グリーソンスコア2-6
・PSA 値:<10 ng/mL
◇必要な検査
・6 カ月に1 回 PSA 検査
・12 カ月に1 回 直腸診

超低リスク(期待余命・20年未満に適応)
◇適応(低リスク条件のすべてと次の条件を満たす場合)
・生検陽性コア<3 か所、各コアの癌細胞≦50%
◇必要な検査(低リスクの場合に同じ)


監視療法は適した患者には明確な利益があるが、この治療方法を選ぶ過程や決定は容易なことではないと、ガイドライン委員会は指摘した。頻回の診察や検査が必要であることに加えて、病気の全過程を考えると、癌が進行していないか注意して見守っていくということは、ついには癌が進行し、治癒の見込みが少なく重大な副作用のリスクがある治療をしなければならなくなる可能性があることを意味する。
また、迅速に根治的治療を行うことが現在もまだ根強いことを考慮すると、医師が改訂されたガイドラインに
どのように対処するかも問題である。例えば、2009年1 月にNew England Journal of Medicine 誌に
よって、低リスク前立腺癌の63 歳男性の模擬症例を提示して行われたオンライン投票によると、米国の投
票者(医師が全てではない)のうち約70%が好ましい治療選択として監視療法よりも放射線療法や手術を
選んだ。
この推奨が「治療の傾向を大きく変える」かどうかは不確定であるとGodley 氏は述べた。しかし、「低リスク患者に自ら監視療法を行う医師や、それを施行する病院へ患者を紹介する医師にとっては、行いやすくなる
でしょう」と同氏は付け加えた。

低リスク前立腺癌の治療について、監視療法(activesurveillance)、外科手術、放射線療法などのさまざ
まなアプローチがいずれも同程度の全生存率および再発率になる、との結論が新たな効果比較研究で出
されている。しかし、本研究で用いた経済モデルによると、監視療法は65 歳以上の男性では即時的な治
療と比較して健康上の純利益および質調整生存年(quality-adjusted life years, QALY)が高いという。
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2010年4月2日金曜日

ホルモン製剤がホットフラッシュを抑制

進行前立腺癌(がん)治療のゴールド・スタンダードと考えられているアンドロゲン抑制療法によるホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)は、ホルモン製剤の酢酸シプロテロンや酢酸メドロキシプロゲステロンによって最も抑制されることが、新しい研究によって示された。ホットフラッシュは同療法を受けた患者の約80%に認められる。

①非ホルモン製剤のvenlafaxine(※抗うつ薬Effexor:日本国内未承認、102例)、
②ホルモン製剤の酢酸シプロテロン(※日本では販売中止、101例)
③酢酸メドロキシプロゲステロン(108例)

以上3剤を投与比較した研究の結果、3剤ともホットフラッシュを低減したが、ホルモン製剤のほうが全期間を通して有効であった。
「前立腺癌に対してGn-RHアナログ製剤の投与受けている男性では、12週時でのホットフラッシュの治療に②と③がより効果的である。しかし、②は前立腺癌の治療薬として認められおり、その使用はホルモン療法を阻害する可能性がある。このことから、③を標準治療薬にすべきである」
研究結果は、医学誌「Lancet Oncology」オンライン版に12月7日掲載された。
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前立腺癌診断ストレスが心血管イベントの増大につながる

前立腺癌の告知を受けた患者では、情動(emotional)ストレスによって心血管イベントおよび自殺のリスクが増大する可能性があることが、スウェーデンの研究で示された。

スウェーデン、カロリンスカ研究所(ストックホルム)のKatja Fall氏らは、1961~2004年に前立腺癌と診断されたスウェーデン人男性16万8,584人のデータを分析。癌の診断後1年以内に、被験者のうち1万126例(6%)に心血管イベントが発現し、136例(0.08%)が自殺した。

1987年までのデータでは、前立腺癌患者ではそうでない男性に比べて、診断後1週間以内に致死的な心血管イベントを発現する可能性が約11倍高く、1年以内に心血管イベントを発現する可能性はほぼ2倍であった。1987年以降、前立腺癌患者の致死的または非致死的な心血管イベントのリスクは、そうでない患者に比べて、診断後1週間以内で約3倍、1年以内ではやや高かった。

今回の研究では、17万人近くの被験者のうち自殺をしたのは136人のみであったが、前立腺癌に関連する自殺の相対リスクは診断後最初の1週間では8.4、1年間で2.6であった。研究結果は、オンライン医学誌「PLoS Medicine」に12月14日掲載された。
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ホルモン療法に専門家グループが警告

米国心臓協会(AHA)、米国癌協会(ACS)、米国泌尿器科学会(AUA)の専門家グループが、アンドロゲン除去療法(ADT)によって心臓発作や心臓死のリスクが高まるとの警告を発した。

医学誌「Circulation(循環器)」オンライン版に2月1日掲載された今回の勧告では、ADTが血清リポ蛋白やインスリン感受性、肥満など従来の心血管リスクファクターに悪影響を及ぼすことを示す十分なデータがあるという。
前立腺癌を有する男性患者全体の約3分の1がADTを受けるが、欧州で実施された2件、米国で実施された4件の研究で、心血管障害の発症が増大することが示されているという。

Brawley氏は「PSA値が上昇し始めてはいるものの、癌進行の他の徴候や症状はみられない場合など、一部の症例ではADTを用いるべきかどうかについては議論があった。ADTは治療には有用であるが、慎重に用いるべきである」という。

米テキサス大学泌尿器科教授のArthur Sagalowsky博士も「心臓障害のリスクは、前立腺癌治療で議論が必要な多くの問題の1つとするべきであり、アンドロゲン除去療法の開始を決定する際に、前立腺癌患者に提示する情報内容に追加すべきものである」と述べている。
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2010年3月15日月曜日

中リスク前立腺がんの放射線療法はホルモン療法併用が有利

PSAが20以下の限局前立腺癌患者について、
放射線治療(66.6Gy)単独(A群)と、同程度の放射線治療に短期(4ヶ月間)ホルモン療法の併用(B群)を比較したところ、
中リスク患者では、併用(B群)のほうが生存を延長し再発を減らすことができた。
しかし、併用よる効果は、低リスク患者では認められなかった。(ASCO GU2010)

            放射線治療単独群       ホルモン療法併用群
観察期間中央値       9.1年             9.2年
10年生存率         57%             62%
8年全生存率(中リスク)   68%             72%
 同上   (低リスク)・・・・・・・ 差異なし
生検(複数回)陽性結果   60%             78%

*注:低リスクとはPSA10以下かつGS6以下。
*医療ライターの約文(日経メディカル)をベースにしているが、(原文は読んでいない)
 早期ステージという表現もあれば、局所進行前立腺がんという表記もあり、同じ内容の表現なのに
 判断に苦しむ・・・局所進行前立腺がんならば、それだけで高リスクとなってしまうので、
 結局、「限局(早期)前立腺癌」のことと解釈した。
 
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骨関連事象にはデノスマブ(denosumab)

骨転移を有する進行性前立腺癌でdenosumab(完全ヒトモノクローナル抗体)とゾレドロン酸(ビスフォスフォネート)の2剤を比較した国際的なフェーズ3無作為化二重盲検試験の結果が発表された。

 Denosumabは、骨関連事象(SRE)の初回発生までの期間を延長し、SREが複数発生する割合を減少させ、ゾレドロン酸に対する優越性を有意に示した。

 有害事象の発生率は両群間で統計学的有意差はなかった。過去の進行癌の試験と同様、低カルシウム血症はdenosumabを投与した群に多く報告された。全生存期間と無増悪期間は両群で同等だった。

 Amgen社研究開発部の執行副社長、Roger M. Perlmutter氏は 「今回の試験結果により、転移性前立腺癌患者の骨合併症の出現を遅らせるdenosumabの効果が証明された」と話した。
前立腺癌に対する有効性と安全性の全データは、2010年6月上旬に開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)で報告される予定。
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Cabazitaxel:進行転移性前立腺癌でドセタキセルに続く二次治療薬【ASCO GU2010】

ホルモン療法やドセタキセルベースの化学療法に耐性をもつに至った転移性の進行前立腺癌患者は、次に打つ手に困るわけですが、
新しいタキサン系抗癌剤Cabazitaxel が、良好な結果を示すことが明らかになりました。(ASCO GU2010)

第Ⅲ層の治験では、患者は無作為に次の2群に振り分けられました。
A群:Cabazitaxelとプレドニゾンを投与される群(:378人)
B群:ミトキサントロンとプレドニゾンを投与される群(:377人)

                     A群      B群
全生存期間中央値        15.1カ月     12.7カ月   →  これは死亡率30%低減に該当する
無増悪生存期間中央値       2.8カ月     1.4カ月
奏効率、PSA反応          ◎        ○
(grade3、4の副作用)
好中球減少             81.7%      51.0% 
発熱性好中球減少症        7.5%       1.3%

デューク大学医学部准教授で、総合がんセンター泌尿器外科のDr. Daniel George氏はこう述べています。
「ドセタキセルによる一次治療が効かなくなった患者に対し、一定の有効性と適切な忍容性が得られたのは有望な結果です。一次治療の反応が良かった患者は、二次、三次治療でも好反応を示す傾向にある。
進行前立腺癌の患者にとってはドセタキセルが最後の砦ではなく、Cabazitaxelによって生存期間を延長できることが立証された。癌治療における進歩が常に緩やかであることを考えると、今回の試験は、2004年に進行前立腺癌治療でのドセタキセルの有効性を示した成果に匹敵するだろう」

サノフィ・アヴェンティス社(フランス)は、二次治療薬として本剤の承認申請をFDA(米国食品医薬品局)に対して行っている。cabazitaxelは進行前立腺がんの二次治療において、FDAの承認を受ける初めての薬剤となりそうだ。

(以下蛇足)
日経メディカルでも紹介されていた記事は、内容がわかりにくく、海外癌医療情報なども参照したところ、けっこう重要なニュースのように思えてきました。
ここまでくれば実現性も高いですね。
このたびは私が理解できる範囲で、できるだけ簡潔明瞭に紹介してみました。
ただ、ドセタキセルが米国で承認(2004)されてから、日本で使われるまでには4年以上を要していますし、
医師が使いこなせるまでには、さらに数年かかるのが実情のようです。
いつも残念に思うのですが、我々が新薬の恩恵を被るまでの道のりは、近いように見えても実はうんと遠いんですね。
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