2015年7月8日水曜日
アビラテロン(ザイティガ)に「重大な副作用」
去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)の治療薬 アビラテロン(ザイティガ)で、因果関係が否定できない劇症肝炎・肝不全が5例(うち1例は死亡)が確認されたことを受け、厚労省医薬品食品局は2015年7月7日、医療用薬の添付文書の「重大な副作用」に「劇症肝炎、肝不全」を明記するよう日本製薬団体連合会に通知した。
アビラテロンの使用時に、血液検査で通常良く見られる副作用は、AST(GOT)増加、ALT(GPT)増加、低カリウム血症等で、これらの低減のためにもプレドニゾロン(ステロイド)との併用が原則とされている。
従来より添付文書に記載されていた重大な副作用は、心障害、肝機能障害、低カリウム血症、血小板減少、横紋筋融解症など。
肝機能障害については、患者選択基準でも、重度の肝機能障害者には「禁忌」、中程度の肝機能障害者には「慎重投与」とされてきたが、劇症肝炎・肝不全を「重大な副作用」に明記することにより、より一層の注意を喚起するもの。
アビラテロンの使用時に、血液検査で通常良く見られる副作用は、AST(GOT)増加、ALT(GPT)増加、低カリウム血症等で、これらの低減のためにもプレドニゾロン(ステロイド)との併用が原則とされている。
従来より添付文書に記載されていた重大な副作用は、心障害、肝機能障害、低カリウム血症、血小板減少、横紋筋融解症など。
肝機能障害については、患者選択基準でも、重度の肝機能障害者には「禁忌」、中程度の肝機能障害者には「慎重投与」とされてきたが、劇症肝炎・肝不全を「重大な副作用」に明記することにより、より一層の注意を喚起するもの。
2015年1月31日土曜日
監視療法
(前立腺がんガイドブックの監視療法の項目を修正しました・・・以下、本文)
低リスクがんの場合、10年生存率は治療を行っても行わなくてもほとんど変わらないと言われています。
つまり、特別な処置をしなくても健康なまま天寿を全うできる可能性が高いので、病態の進行や変化をすばやくキャッチして臨機応変に対処できるだけの体制さえ整っておれば、積極的な治療をせずフォロー(監視)だけで様子を見るというのも賢いやり方かも知れません。
ただ、「がん」という言葉を始めて聞いた人の多くは、体内にがん細胞があるというだけで冷静さを失い、人生最大の危機に巡り合わせたように思って治療を急ぐ傾向があるのですが、積極的な治療にはかならず副作用がついて廻ります。
低リスクの場合には、がんの進行によって命が脅かされるリスクと、積極的治療によって副作用を被るリスクを比較すれば、後者のリスクのほうが明らかに高いと思われる場合も多いので、適切なフォローすなわち”監視療法”という「治療法」が選択肢の一つとして積極的に評価されるようになってきました。
米国ではPSA検診の普及が進み、実に8~9割の人がそれを受けていますが、近年、PSA検査でごく初期の小さながんが見つかる確率が増えてきて、それが過剰検診や過剰治療につながる恐れが顕著になってきて、医療費の抑制も併せて考えると、この際PSAを検査を止めてしまうのが近道であるという考え方がでてきました。
しかし、PSA検診の要否については、検診率が2割にも届かない我国と同列に論じて良いものかどうかははなはだ疑問の残るところですが、少なくとも共通問題として捉えておくべきことは、「低リスク」のがんでは、必ずしもがんを死滅させる積極的治療が第一選択とはかぎらないということで、不要な治療を受けることによって失うものもある。時によってはそれが一生抱えて生きなければならない重大な副作用であるかも知れないわけです。
”PSA監視療法”というのは、定期的にPSAの動向を見守ると共に、必要な時には針生検(MRIがこれに代わる時代がまもなく来ると思いますが)も行い、病態の進行を監視するもので、低リスクなら、まずはこの可能性を探ってみるべきでしょう。
NCCNガイドラインでは「超低リスク」という概念を設け、これに相当するなら年齢に関係なく、監視療法が第一選択であると明言しています。
しかし、日本の医療機関では、まだこの監視療法をあまり患者には詳しく説明しない所も多くあり、患者が監視療法という選択肢をしらないまま、なんらかの処置を望んだ場合(患者に余程の予備知識がない限り、そう思う方が自然です)安易に手術や放射線治療を勧めたり、内分泌療法を行うケースも多いと思われます。
「初期のがんですから、切ったらすぐ治ります。」などと言いながら手術を勧められ、性機能不全や排尿障害の後遺症に悩むというのは、過剰治療の最たるものですが、一生続く場合もある日常の不幸にじっと堪え、それでも恨み辛みを言うわけでもなく、命が助かった代償なので仕方がないと思って諦めて、手術をしてくれた医者に感謝するという、なんとも複雑で哀しい現実があるわけです。
「がんより怖いがん医療」(近藤誠)というのは、中身はともかく、おそらくこのようなことを言いたいのでしょうね。
積極的な治療には、多かれ少なかれ二次的な障害(副作用)を被る危険性があるわけですが、目の前に「がん」という言葉を付きつけられれば、たいていの患者は動揺し、治療後長く続くかもしれない副作用の重大性になかなか気付かないケースが多いわけです。
期待余命の長さが10年以内(概ね75歳以上)なら「中リスク」でもこの監視療法が成立します。
期待余命が5年以内と目される高齢患者はもちろんのこと、他に重い病を抱えているような人は、もっと積極的に監視療法を選択肢に加えても良いのではないでしょうか。
恐れるべきがんであれば、早期にしかるべき治療を受ける必要があるのはもちろんですが、ほとんど恐れる必要のないがんを恐れるあまり、自分自身に一生取り返しのつかない傷をつけてしまうこともあるわけです。
「動かざること山の如し」・・・ ” 何もしないという勇気 ” を持つということも、時には必要なことかも知れません。
低リスクがんの場合、10年生存率は治療を行っても行わなくてもほとんど変わらないと言われています。
つまり、特別な処置をしなくても健康なまま天寿を全うできる可能性が高いので、病態の進行や変化をすばやくキャッチして臨機応変に対処できるだけの体制さえ整っておれば、積極的な治療をせずフォロー(監視)だけで様子を見るというのも賢いやり方かも知れません。
ただ、「がん」という言葉を始めて聞いた人の多くは、体内にがん細胞があるというだけで冷静さを失い、人生最大の危機に巡り合わせたように思って治療を急ぐ傾向があるのですが、積極的な治療にはかならず副作用がついて廻ります。
低リスクの場合には、がんの進行によって命が脅かされるリスクと、積極的治療によって副作用を被るリスクを比較すれば、後者のリスクのほうが明らかに高いと思われる場合も多いので、適切なフォローすなわち”監視療法”という「治療法」が選択肢の一つとして積極的に評価されるようになってきました。
米国ではPSA検診の普及が進み、実に8~9割の人がそれを受けていますが、近年、PSA検査でごく初期の小さながんが見つかる確率が増えてきて、それが過剰検診や過剰治療につながる恐れが顕著になってきて、医療費の抑制も併せて考えると、この際PSAを検査を止めてしまうのが近道であるという考え方がでてきました。
しかし、PSA検診の要否については、検診率が2割にも届かない我国と同列に論じて良いものかどうかははなはだ疑問の残るところですが、少なくとも共通問題として捉えておくべきことは、「低リスク」のがんでは、必ずしもがんを死滅させる積極的治療が第一選択とはかぎらないということで、不要な治療を受けることによって失うものもある。時によってはそれが一生抱えて生きなければならない重大な副作用であるかも知れないわけです。
”PSA監視療法”というのは、定期的にPSAの動向を見守ると共に、必要な時には針生検(MRIがこれに代わる時代がまもなく来ると思いますが)も行い、病態の進行を監視するもので、低リスクなら、まずはこの可能性を探ってみるべきでしょう。
NCCNガイドラインでは「超低リスク」という概念を設け、これに相当するなら年齢に関係なく、監視療法が第一選択であると明言しています。
しかし、日本の医療機関では、まだこの監視療法をあまり患者には詳しく説明しない所も多くあり、患者が監視療法という選択肢をしらないまま、なんらかの処置を望んだ場合(患者に余程の予備知識がない限り、そう思う方が自然です)安易に手術や放射線治療を勧めたり、内分泌療法を行うケースも多いと思われます。
「初期のがんですから、切ったらすぐ治ります。」などと言いながら手術を勧められ、性機能不全や排尿障害の後遺症に悩むというのは、過剰治療の最たるものですが、一生続く場合もある日常の不幸にじっと堪え、それでも恨み辛みを言うわけでもなく、命が助かった代償なので仕方がないと思って諦めて、手術をしてくれた医者に感謝するという、なんとも複雑で哀しい現実があるわけです。
「がんより怖いがん医療」(近藤誠)というのは、中身はともかく、おそらくこのようなことを言いたいのでしょうね。
積極的な治療には、多かれ少なかれ二次的な障害(副作用)を被る危険性があるわけですが、目の前に「がん」という言葉を付きつけられれば、たいていの患者は動揺し、治療後長く続くかもしれない副作用の重大性になかなか気付かないケースが多いわけです。
期待余命の長さが10年以内(概ね75歳以上)なら「中リスク」でもこの監視療法が成立します。
期待余命が5年以内と目される高齢患者はもちろんのこと、他に重い病を抱えているような人は、もっと積極的に監視療法を選択肢に加えても良いのではないでしょうか。
恐れるべきがんであれば、早期にしかるべき治療を受ける必要があるのはもちろんですが、ほとんど恐れる必要のないがんを恐れるあまり、自分自身に一生取り返しのつかない傷をつけてしまうこともあるわけです。
「動かざること山の如し」・・・ ” 何もしないという勇気 ” を持つということも、時には必要なことかも知れません。
2014年12月11日木曜日
カバジタキセルの重篤な副作用に注意!
2014年に新しく承認された抗がん剤カバジタキセル(ジェブタナ)で、5人の死亡例があったことが確認された。
9月の販売承認以降、計約200人に投与され、12月3日までに40人でこの症状など重い副作用が報告され、うち60~70代の男性5人が発熱性好中球減少症が原因と思われる敗血症などで死亡した。内4人は1サイクル目(6~8日目)で死亡している。
好中球(*)の減少という副作用は、薬の添付文書にも記載されており、感染症患者らに投与しないように警告されているが、この薬を販売するサノフィは、ジェブタナを使う場合は、患者の感染症の確認はもちろん、初回投与後から血液検査を頻繁に実施し、特に発熱の有無などに注意を払うなど、医療機関に対しより一層の注意を呼びかけている。
http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/kigyo_oshirase_201412_1.pdf
注) 好中球:白血球の一種で生体内に侵入してきた細菌や真菌類に対し遊走性を示し、
炎症部に集合して、貪食、殺菌、分解を行うことで感染を防ぎ、生体を防御する。
*
イレッサでは、副作用が少ない「夢の抗がん剤」などといううかれた前評判もあり、使用上の注意を甘く見て、抗がん剤を専門としない医師の処方によることも多かった結果、600人以上が亡くなるという惨事を引き起こしている。
これは大きな訴訟事件となったが、これ以来、我国の新薬承認が慎重になり、常に他国より数年遅れることが普通になってしまったのは負の側面と言える。一方、このたび早期にこのような警告が出されたことは、イレッサの良い教訓のひとつと解釈しても良いのではないか。
副作用マネージメントというのは、本来腫瘍内科医が得意とするところですが、これまでドセタキセルぐらいしか経験のない(ドセタキセルの投与方法は統一されておらず、それぞれの医療機関でやり方が異なっている)泌尿器科医が、抗がん剤の専門家と同様に、副作用に対し、適切かつ速やかな処置を行えるかどうかという問題点が、なお残っているように思われる。
9月の販売承認以降、計約200人に投与され、12月3日までに40人でこの症状など重い副作用が報告され、うち60~70代の男性5人が発熱性好中球減少症が原因と思われる敗血症などで死亡した。内4人は1サイクル目(6~8日目)で死亡している。
好中球(*)の減少という副作用は、薬の添付文書にも記載されており、感染症患者らに投与しないように警告されているが、この薬を販売するサノフィは、ジェブタナを使う場合は、患者の感染症の確認はもちろん、初回投与後から血液検査を頻繁に実施し、特に発熱の有無などに注意を払うなど、医療機関に対しより一層の注意を呼びかけている。
http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/kigyo_oshirase_201412_1.pdf
注) 好中球:白血球の一種で生体内に侵入してきた細菌や真菌類に対し遊走性を示し、
炎症部に集合して、貪食、殺菌、分解を行うことで感染を防ぎ、生体を防御する。
*
イレッサでは、副作用が少ない「夢の抗がん剤」などといううかれた前評判もあり、使用上の注意を甘く見て、抗がん剤を専門としない医師の処方によることも多かった結果、600人以上が亡くなるという惨事を引き起こしている。
これは大きな訴訟事件となったが、これ以来、我国の新薬承認が慎重になり、常に他国より数年遅れることが普通になってしまったのは負の側面と言える。一方、このたび早期にこのような警告が出されたことは、イレッサの良い教訓のひとつと解釈しても良いのではないか。
副作用マネージメントというのは、本来腫瘍内科医が得意とするところですが、これまでドセタキセルぐらいしか経験のない(ドセタキセルの投与方法は統一されておらず、それぞれの医療機関でやり方が異なっている)泌尿器科医が、抗がん剤の専門家と同様に、副作用に対し、適切かつ速やかな処置を行えるかどうかという問題点が、なお残っているように思われる。
2014年12月5日金曜日
PSA検査の方向性(新ガイドライン)について
PSA検査に関しては賛否両論、前立腺がんの診療と有害な副作用の懸念とのバランスが難しく、国際的な意見の統一とガイドラインの整備に対し、多くの期待が寄せられているわけですが、UICC(国際対がん連合)は、2014年12月3~6日にメルボルンで開催されたWCC(世界がん大会)の前に(公開協議を行う必要もあり)、世界で最も総合的に検討された「前立腺がん検診ガイドライン」を発表した。
参照:http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201412046062/
原文:http://wiki.cancer.org.au/australia/Guidelines:PSA_Testing
主な内容は次の通り。
(前立腺がんの可能性はあっても、兆候の無い男性に対して)
・定期的なPSA検査を希望する男性に対しては、PSA検査の恩恵と副作用を知った上で、
50歳から69歳までは2年毎の PSA検査を提案し、PSA ≧3.0 ng/mL の場合は、
さらに詳しい検査を推奨する。
・前立腺がんの早期診断のために検査を受ける男性に対しては、
初期の診療時においては直腸指針を推奨しない。
・期待余命7年未満の人には PSA検査は推奨しない。
・PSA検査を受けるか否かを迷っている男性に対し、
PSA検査の潜在的な恩恵とリスクについて話し合うなど、決断のサポートを行う。
(監視療法)
・以下の基準のすべてに合致する前立腺がんを患う男性に監視療法を提案します。
PSA ≦20 ng/mL、臨床病期 T1-2 および グリソンスコア 6。
(待機療法)
・治癒可能な前立腺がんを患い、待機療法を検討する男性には次のようなアドバイスをする。
前立腺がんの進展の恐れとそれによる死のリスクは、根治療法より高いかも知れないが、
中~長期で見ると、待機療法の方が幸福感および生活の質を損なうことは少ないだろう。
PSA検診を50~60代では維持・継続しながら(ただし毎年ではなく2年毎)、70歳以上の高齢者には不要とし、監視療法の枠も大幅に広げています。(特にPSA≦20はかなり思い切った数値ではないでしょうか・・・ちょっと驚きました。)
監視療法をもっとルーズにした待機療法についても、メリットを認めて推奨しており、直腸指針を推奨しないことも合わせて、なんらかの副作用を伴う診断や治療行為を控えて、できるだけ過剰診療を減らそうという試みも行われています。
PSA検診に反対の立場を取る米国PSTF(予防医学作業部会)の構成員は、前立腺がんの専門医が含まれず、公衆衛生の専門家ばかりだったということですが、このガイドラインの起案にあたったオーストラリア専門家審議会には、公衆衛生の専門家以外にも一般開業医、泌尿器科医、病理学者、患者支援グループ、コメディカル職員などほぼ全ての職種が含まれています。
PSA検診を無料にすべきとか、がん検診の必須項目にすべきだとか、実施市町村の拡大を図るべきだとか、PSA検査を受けましょうと、声を大にして叫ぶのも違和感があり(前立腺がんの患者会としては、この方向が一番意見の統一を見やすいと思いますが)、これには一定の距離を置いてきました。
8~9割の男性がPSA検査を受けている米国と、2割に満たない日本とを同じ土俵で評価し、日本でもPSA検査を止めるべきというのは、完全に的外れだと思っています。
国立がん研究センターでこれに関わる某先生などは、患者団体の集まりにおいて、根拠のない検診は推奨しないというよりも止めるべき!とはっきりおっしゃいましたが、「止めるべき!」という発言に対しては、多少の反論をさせていただいたこともありました。
「根拠」なんていうものは、要するにどの説(論文)を尊重するかによって決まるので、本質的にはある程度、融通(操作)が効くものと理解しています。
「生存率を延長する明白な証拠がない」というのは、医療費抑制という大きな流れの中で決められた方針であり、「生存率を延長しない証拠がある」というわけではありません。要は状況(政治的)判断しだいでどうにでもなるグレーゾーンであるということです。
日本泌尿器学会の解説では、まったく逆の説明になっていますが、多くの異なる論文があれば、採択の仕方や比重の置き方で、結論はどうにでもなるということですね。ここに来てやっとこれまで抱いていた私の思いに近い形で、合意を求める動きが出て来たようで、良い傾向だと嬉しく思っています。
参照:http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201412046062/
原文:http://wiki.cancer.org.au/australia/Guidelines:PSA_Testing
主な内容は次の通り。
(前立腺がんの可能性はあっても、兆候の無い男性に対して)
・定期的なPSA検査を希望する男性に対しては、PSA検査の恩恵と副作用を知った上で、
50歳から69歳までは2年毎の PSA検査を提案し、PSA ≧3.0 ng/mL の場合は、
さらに詳しい検査を推奨する。
・前立腺がんの早期診断のために検査を受ける男性に対しては、
初期の診療時においては直腸指針を推奨しない。
・期待余命7年未満の人には PSA検査は推奨しない。
・PSA検査を受けるか否かを迷っている男性に対し、
PSA検査の潜在的な恩恵とリスクについて話し合うなど、決断のサポートを行う。
(監視療法)
・以下の基準のすべてに合致する前立腺がんを患う男性に監視療法を提案します。
PSA ≦20 ng/mL、臨床病期 T1-2 および グリソンスコア 6。
(待機療法)
・治癒可能な前立腺がんを患い、待機療法を検討する男性には次のようなアドバイスをする。
前立腺がんの進展の恐れとそれによる死のリスクは、根治療法より高いかも知れないが、
中~長期で見ると、待機療法の方が幸福感および生活の質を損なうことは少ないだろう。
PSA検診を50~60代では維持・継続しながら(ただし毎年ではなく2年毎)、70歳以上の高齢者には不要とし、監視療法の枠も大幅に広げています。(特にPSA≦20はかなり思い切った数値ではないでしょうか・・・ちょっと驚きました。)
監視療法をもっとルーズにした待機療法についても、メリットを認めて推奨しており、直腸指針を推奨しないことも合わせて、なんらかの副作用を伴う診断や治療行為を控えて、できるだけ過剰診療を減らそうという試みも行われています。
PSA検診に反対の立場を取る米国PSTF(予防医学作業部会)の構成員は、前立腺がんの専門医が含まれず、公衆衛生の専門家ばかりだったということですが、このガイドラインの起案にあたったオーストラリア専門家審議会には、公衆衛生の専門家以外にも一般開業医、泌尿器科医、病理学者、患者支援グループ、コメディカル職員などほぼ全ての職種が含まれています。
PSA検診を無料にすべきとか、がん検診の必須項目にすべきだとか、実施市町村の拡大を図るべきだとか、PSA検査を受けましょうと、声を大にして叫ぶのも違和感があり(前立腺がんの患者会としては、この方向が一番意見の統一を見やすいと思いますが)、これには一定の距離を置いてきました。
8~9割の男性がPSA検査を受けている米国と、2割に満たない日本とを同じ土俵で評価し、日本でもPSA検査を止めるべきというのは、完全に的外れだと思っています。
国立がん研究センターでこれに関わる某先生などは、患者団体の集まりにおいて、根拠のない検診は推奨しないというよりも止めるべき!とはっきりおっしゃいましたが、「止めるべき!」という発言に対しては、多少の反論をさせていただいたこともありました。
「根拠」なんていうものは、要するにどの説(論文)を尊重するかによって決まるので、本質的にはある程度、融通(操作)が効くものと理解しています。
「生存率を延長する明白な証拠がない」というのは、医療費抑制という大きな流れの中で決められた方針であり、「生存率を延長しない証拠がある」というわけではありません。要は状況(政治的)判断しだいでどうにでもなるグレーゾーンであるということです。
日本泌尿器学会の解説では、まったく逆の説明になっていますが、多くの異なる論文があれば、採択の仕方や比重の置き方で、結論はどうにでもなるということですね。ここに来てやっとこれまで抱いていた私の思いに近い形で、合意を求める動きが出て来たようで、良い傾向だと嬉しく思っています。
2014年12月1日月曜日
ゴナックスはリュープリンやゾラデックスより効果に優る
カナダトロント大学のローレンス クロッツ氏らは、デガレリクス(ゴナックス:LH-RHアンタゴニスト)に関するランダム化試験5件のデータを集計し、(計1925人=デガレリクス:1266人+LH-RHアナログ:659人)プール解析を行ったところ、全生存率とPSA無増悪生存率(PSA PFS)は、デガレリクス(ゴナックス)のほうがLHRHアゴニスト(我国で使われているのはリュープリンやゾラデックス)より優れていることが判明した。
(European Journal of Urology誌 2014年12月号)
ゴナックス(LH-RHアンタゴニスト)はリュープリンやゾラデックス(LH-RHアゴニスト)に比べ、全生存率で53%(p=0.023)、PSA PFSでは29%(p=0.017)高いことを示した。さらに有害事象を比較すると、関節関連症状(p=0.041)、筋骨格イベント(p=0.007)、尿路感染(p=0.023)などは有意に少なかったが、ほてりや注射部位の反応を含む全ての有害事象の発生率は、ゴナックスの方が少し高かった(74%と68%、p=0.002)。
参考:
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/201411/539643.html
(European Journal of Urology誌 2014年12月号)
ゴナックス(LH-RHアンタゴニスト)はリュープリンやゾラデックス(LH-RHアゴニスト)に比べ、全生存率で53%(p=0.023)、PSA PFSでは29%(p=0.017)高いことを示した。さらに有害事象を比較すると、関節関連症状(p=0.041)、筋骨格イベント(p=0.007)、尿路感染(p=0.023)などは有意に少なかったが、ほてりや注射部位の反応を含む全ての有害事象の発生率は、ゴナックスの方が少し高かった(74%と68%、p=0.002)。
参考:
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/201411/539643.html
2014年10月29日水曜日
プロベンジの保健適用について
プロベンジ(Provenge、一般名:シプリューセル‐T)という、免疫療法(注①)を応用した前立腺がん治療ワクチンが、2010年4月に世界で初めてFDA(米国医薬食品局)によって承認されたことは、当時大きく報じられました。
プロベンジは全く新しい機序の薬であり、FDAに提出された治験結果でも、深刻な副作用はなく、標準治療に比べ4.5カ月の延命効果があったというもの。
しかし、薬効評価基準の1つである腫瘍縮小効果は見られていないなど、評価の判定が非常に微妙で(延命効果にも統計処理上の疑惑があったという情報も一部で流れているようです)審議においても意見が分かれ、すぐには決まらなかったという経緯もあったので、我国では、薬価(注②)の高いことも相まって、かなり距離をおきつつ高みの見物を決め込んでいたようですが、つい最近(2014年10月)、英国では「プロベンジに対し保健適用はしない」という方針が打ち出されたようです。
英国立医療技術評価機構(NICE)はプロベンジに対し、NHS(英国民保健サービス)の適用を推奨しないと決定したというニュースが流れてきました。
推奨しない理由として、他剤と比較して、効果発現までのエビデンスに不明確さが残る、既存療法と違って疾患の進行の遅延を示すエビデンスがない、などいくつかの理由があげられています。
プロベンジも我国の未承認薬のひとつですが、これについては、患者の立場としても、安易に保健適用を求めることはやはり慎まねばならないと思っています。
保健適用を求めるなら、順序としては塩化ラジウム223が先でしょうね。これも相当高額の薬だそうですが(^^;;;
*注①:免疫系に働きかけてガン細胞を攻撃させ、初期治療後の再発や転移を防ぐもの。もう少し具体的には、
白血球除去輸血により患者の白血球(樹状細胞)を採取、ワクチン作製に必要なタンパクの
一種PAP(前立腺酸性フォスファターゼ) を混合させ、その白血球を体内に戻す免疫療法。
*注②:価格は、標準的な3回の投与で900万円近くになると言われています。
プロベンジは全く新しい機序の薬であり、FDAに提出された治験結果でも、深刻な副作用はなく、標準治療に比べ4.5カ月の延命効果があったというもの。
しかし、薬効評価基準の1つである腫瘍縮小効果は見られていないなど、評価の判定が非常に微妙で(延命効果にも統計処理上の疑惑があったという情報も一部で流れているようです)審議においても意見が分かれ、すぐには決まらなかったという経緯もあったので、我国では、薬価(注②)の高いことも相まって、かなり距離をおきつつ高みの見物を決め込んでいたようですが、つい最近(2014年10月)、英国では「プロベンジに対し保健適用はしない」という方針が打ち出されたようです。
英国立医療技術評価機構(NICE)はプロベンジに対し、NHS(英国民保健サービス)の適用を推奨しないと決定したというニュースが流れてきました。
推奨しない理由として、他剤と比較して、効果発現までのエビデンスに不明確さが残る、既存療法と違って疾患の進行の遅延を示すエビデンスがない、などいくつかの理由があげられています。
プロベンジも我国の未承認薬のひとつですが、これについては、患者の立場としても、安易に保健適用を求めることはやはり慎まねばならないと思っています。
保健適用を求めるなら、順序としては塩化ラジウム223が先でしょうね。これも相当高額の薬だそうですが(^^;;;
*注①:免疫系に働きかけてガン細胞を攻撃させ、初期治療後の再発や転移を防ぐもの。もう少し具体的には、
白血球除去輸血により患者の白血球(樹状細胞)を採取、ワクチン作製に必要なタンパクの
一種PAP(前立腺酸性フォスファターゼ) を混合させ、その白血球を体内に戻す免疫療法。
*注②:価格は、標準的な3回の投与で900万円近くになると言われています。
2014年10月28日火曜日
エンザルタミド(イクスタンジ)の使用時期について
CRPC(去勢抵抗性前立腺がん)患者に用いるエンザルタミド(イクスタンジカプセル)の使用タイミングについては、これまでは、効能・効果の使用上の注意を表す添付文書に、「化学療法未治療の前立腺がんにおける有効性および安全性は確立していない」という文言が記されていたため、化学療法未治療患者への使用は、明確には認められておらず、保険適用においても都道府県によって扱いが異なる「グレーゾーン」でしたが、「化学療法歴のない場合も有効である」という海外で行われた臨床試験の結果を踏まえ、添付文書の上記の文言の削除が決まり、「プレ・ケモ」(化学療法以前)段階における使用がはっきり認められました。
これまでは、アビラテロン(ザイティガ)は発売時から化学療法未治療患者にも使用可能だったので、適応のタイミングにおいてアドバンテージがありましたが、今回の改訂でエンザルタミド(イクスタンジ)とアビラテロン(ザイティガ)の適応条件はまったく同等となりました。
この決定までにはもう少し時間がかかるかと思っていましたが、このたびの対応は早かったですね。
根拠となった臨床試験というのは、化学療法歴のない去勢抵抗性前立腺がん患者を対象に実施された国際共同第3相試験(PREVAIL)のことで、872人をプラセボ群またはイクスタンジ群に割り付け、全生存期間を比較した結果、中央値がプラセボ群30.2カ月に対してイクスタンジ群では32.4カ月とイクスタンジ群で有意に延長することが判明したもの。
中央値が2年6か月から約2カ月延長されるのは「益」には違いありませんが、その間の副作用の大小(QOLの損傷)は、中央値の比較で決まるものではなく、実際には人によって大きく異なるはずなので、そのあたりを考えながら、新薬と向き合う必要があるのではないでしょうか。
それを考えるためにも、効能と副作用の関係、患者のQOLについてもっと多くの事例を知りたいものです。
これまでは、アビラテロン(ザイティガ)は発売時から化学療法未治療患者にも使用可能だったので、適応のタイミングにおいてアドバンテージがありましたが、今回の改訂でエンザルタミド(イクスタンジ)とアビラテロン(ザイティガ)の適応条件はまったく同等となりました。
この決定までにはもう少し時間がかかるかと思っていましたが、このたびの対応は早かったですね。
根拠となった臨床試験というのは、化学療法歴のない去勢抵抗性前立腺がん患者を対象に実施された国際共同第3相試験(PREVAIL)のことで、872人をプラセボ群またはイクスタンジ群に割り付け、全生存期間を比較した結果、中央値がプラセボ群30.2カ月に対してイクスタンジ群では32.4カ月とイクスタンジ群で有意に延長することが判明したもの。
中央値が2年6か月から約2カ月延長されるのは「益」には違いありませんが、その間の副作用の大小(QOLの損傷)は、中央値の比較で決まるものではなく、実際には人によって大きく異なるはずなので、そのあたりを考えながら、新薬と向き合う必要があるのではないでしょうか。
それを考えるためにも、効能と副作用の関係、患者のQOLについてもっと多くの事例を知りたいものです。
2014年10月22日水曜日
2014年10月19日日曜日
2014年10月10日金曜日
mCRPC(転移性去勢抵抗性前立腺癌)のガイドライン:ASCO他
mCRPC(転移性去勢抵抗性前立腺癌)の治療に関する新たなガイドラインが、2014年9月、
米国臨床腫瘍学会(ASCO)とキャンサー・ケア・オンタリオ(CCO)の連名で発表されました。
ガイドラインの主な推奨内容は次の通り。
・期限を設けずにアンドロゲン除去療法(内科的または外科的)を継続。
・アンドロゲン除去療法に加えて、アビラテロン+プレドニゾン、エンザルタミド、
またはラジウム223(骨転移を有する患者)・・・生存期間の延長とQOLの向上、
及び、リスクに劣らないベネフィットが期待できる。
・化学療法を検討するなら、まずは ドセタキセル+プレドニゾン。(副作用に注意)
・次にカバジタキセル。(副作用に注意)
・症状がほとんどなければシプロイセルT(プロベンジ)
・効果は小さいが、ミトキサントロン。(副作用に注意)
・これも効果は小さいが、
ケトコナゾールや抗アンドロゲン薬(ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド)。
・ベバシズマブ、エストラムスチン、スニチニブは投与すべきではない。
・全ての患者に対し早期に緩和ケアを提供。
さらに要約すると、効果がはっきり実証されているのは次の6つと言えるだろう。
①アビラテロン+プレドニゾン、②エンザルタミド、③ラジウム223、
④ドセタキセル+プレドニゾン、⑤カバジタキセル、⑥シプロイセルT。
ただし、我国では③と⑥は未承認。
効果が多少期待できるかも知れないのは、
⑦ケトコナゾール、⑧抗アンドロゲン薬(ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド)
ただし、⑦ケトコナゾール と ⑧ニルタミドは我国では保険適用がなく、事実上使えない。
米国では、女性ホルモン系のエストラムスチン(エストラサイト)は投与すべきでないとされているが、我国では心血管系の副作用が米国ほど多くないので、プロセキソールやエストラムスチンはしばしば用いられている。
我国では、べバシズマブ、スニチニブは前立腺がんでは使用が認められていない。
緩和ケアは(広義に解釈すれば)できるだけ早期からの提供が望まれる。
合同ガイドラインという割には、案外シンプルで、特に注目すべき点は見当たらない。
日米で使える薬が違うのも、今に始まった問題ではない。
米国臨床腫瘍学会(ASCO)とキャンサー・ケア・オンタリオ(CCO)の連名で発表されました。
ガイドラインの主な推奨内容は次の通り。
・期限を設けずにアンドロゲン除去療法(内科的または外科的)を継続。
・アンドロゲン除去療法に加えて、アビラテロン+プレドニゾン、エンザルタミド、
またはラジウム223(骨転移を有する患者)・・・生存期間の延長とQOLの向上、
及び、リスクに劣らないベネフィットが期待できる。
・化学療法を検討するなら、まずは ドセタキセル+プレドニゾン。(副作用に注意)
・次にカバジタキセル。(副作用に注意)
・症状がほとんどなければシプロイセルT(プロベンジ)
・効果は小さいが、ミトキサントロン。(副作用に注意)
・これも効果は小さいが、
ケトコナゾールや抗アンドロゲン薬(ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド)。
・ベバシズマブ、エストラムスチン、スニチニブは投与すべきではない。
・全ての患者に対し早期に緩和ケアを提供。
さらに要約すると、効果がはっきり実証されているのは次の6つと言えるだろう。
①アビラテロン+プレドニゾン、②エンザルタミド、③ラジウム223、
④ドセタキセル+プレドニゾン、⑤カバジタキセル、⑥シプロイセルT。
ただし、我国では③と⑥は未承認。
効果が多少期待できるかも知れないのは、
⑦ケトコナゾール、⑧抗アンドロゲン薬(ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド)
ただし、⑦ケトコナゾール と ⑧ニルタミドは我国では保険適用がなく、事実上使えない。
米国では、女性ホルモン系のエストラムスチン(エストラサイト)は投与すべきでないとされているが、我国では心血管系の副作用が米国ほど多くないので、プロセキソールやエストラムスチンはしばしば用いられている。
我国では、べバシズマブ、スニチニブは前立腺がんでは使用が認められていない。
緩和ケアは(広義に解釈すれば)できるだけ早期からの提供が望まれる。
合同ガイドラインという割には、案外シンプルで、特に注目すべき点は見当たらない。
日米で使える薬が違うのも、今に始まった問題ではない。
2014年9月16日火曜日
新薬の使い方に関して
これまでのホルモン療法ではドセタキセル以降の手詰まりが最大の問題点であったわけですが、この突破口となるのが、これらの新薬の承認であり、もう一つは従来の治療法の見直しといえるでしょう。
ASCO2014で注目された発表(第Ⅲ相臨床試験)ですが、まだホルモン感受性のある転移性前立腺がんに対しては、従来のホルモン療法にドセタキセルを併用すれば、著しくOS(全生存期間)が延びることが判明しました。CRPC(去勢抵抗性前立腺がん)以前の段階でも、別の新しい選択肢が見えて来たわけです。
こうした従来の治療法の見直しと、相次ぐ新薬の登場とを合わせて考えると、今後のホルモン療法は一気に選択肢の多様化が進むわけで、2014年はまさに、薬物療法に頼らざるを得ない前立腺がん患者にとっては、新しい時代の到来と言っても過言ではないと思っています。
(米国では、2011年がこのような時代であり、我国では3年ほど遅れています)
以下は近畿大学病院泌尿器科植村教授のメディアセミナー(ヤンセン・アストラゼネカ、サノフィ)に関する複数の記事の報告を参考に、”ひげの父さん”がまとめなおしたものです。
*
前立腺がんには、外科的去勢や薬物去勢が施されるが、アンドロゲン分泌が抑制されているにもかかわらず、病勢が進行する状態をCRPC(去勢抵抗性前立腺がん)と呼ぶ。
早期のCRPCでは、抑制しきれていない副腎や前立腺がん細胞自身で作られるアンドロゲンにより、前立腺がんが悪化するため、さらにアンドロゲンを徹底的に抑制することが重要となる。
2014年、我国ではエンザルタミド、アビラテロン(ホルモン療法剤)、カバジタキセル(抗がん剤)が相次いで承認され、CRPC治療は新しい時代を迎えようとしている。
エンザルタミド(イクスタンジ)は、アンドロゲン受容体への結合を阻害する働きのほか、アンドロゲン受容体の核内移行とDNA結合を妨げ、活性化補助因子の動員を抑制する。
アビラテロン(ザイティガ)は、アンドロゲン合成酵素のCYP17活性を阻害する全く新しい作用機序の薬であり、早期のCRPCに対して、精巣・副腎・前立腺がん組織のすべてでアンドロゲン合成を抑制することにより、予後の改善が期待される。
しかしながら、CRPCにおける細胞増殖には、アンドロゲン非依存性の経路が存在するため、いずれホルモン療法によるアンドロゲン除去に抵抗性が生じてくる。
そのような場合にはドセタキセルが標準治療であるが、ドセタキセル後の治療選択肢として、このたびカバジタキセルが承認された。
アンドロゲン標的薬に抵抗性を示す患者さんも居るので、化学療法も重要な役割を持つ。
現在、アビラテロンだけが化学療法未治療のCRPCにも使用できるが、エンザルタミドも近く同様に使えるようになると思われる。
CRPC治療の今後の流れとしては、次のような手順が予測される。
①まずは、アビラテロンもしくはエンザルタミド。
②進行後にもう1つの薬剤を投与。(エンザルタミドもしくはアビラテロン)
③さらに進行した場合にドセタキセル。
④その後にカバジタキセル。・・・ドセタキセルによるしびれでADL(日常生活動作)が低下する
ようなら、早めに切り替えても良い。
アビラテロンとエンザルタミドの使い分けについては、現状では大きな差はなさそうだ。
いずれにも目立った副作用はなさそうだが、アビラテロンについてはプレドニゾロン(ステロイド剤)の併用が必要なため、それに伴う副作用(疲労感、背部痛、悪心など)が生じるかも知れない。
カバジタキセルの副作用では、(発熱性)好中球減少が多く、骨髄抑制の対策が重要となる。
しかし、G-CSF製剤(注)の適切な投与と、生ものを食べない指導など、マネジメントをしっかりすれば、問題は少ないと思う。
注:G-CSF製剤とは遺伝子組換え技術によるタンパク質製剤。
好中球(白血球の一種)を選択的に増加させ、その機能を高める働きをする。
がん化学療法による好中球減少症の回復と、それに伴う様々なリスクを低下させる。
2014年9月1日月曜日
前立腺がんの新薬、アビラテロン
2014年8月27日、
メディアセミナー「急増中の前立腺がん 治療の最前線」(主催:ヤンセン、アストラゼネカ)
講師:植村天受氏(近畿大学泌尿器科教授)
去勢抵抗性前立腺がんを対象とする新薬3剤が相次ぎ登場することから、2014年は前立腺がん治療にパラダイムシフトが起きる。
・新規ホルモン製剤のイクスタンジ(一般名・エンザルタミド、アステラス)が2014年5月に新発売。
・ザイティガ(アビラテロン酢酸エステル、ヤンセン/アストラゼネカ)が9月2日に発売予定。
・抗がん剤のジェブタナ(カバジタキセル アセトン付加物、サノフィ)も9月2日に薬価収載される予定。
去勢抵抗性前立腺がん患者の特徴としては、
1)高齢などの理由で化学療法を受けられない患者が多い
2)予後が比較的短い などの問題があり、このようなメカニズムに即した新規のホルモン製剤が求められていた。
アビラテロン(ザイティガ)は、アンドロゲン合成酵素のCYP17活性を阻害する全く新しい作用機序の薬であり、精巣や副腎だけでなく前立腺がんの組織内にも作用し、前立腺がんに必要な男性ホルモンをシャットアウトする。
化学療法の既治療、未治療、いずれにおいても全生存期間(OS)の延長が認められた。
副作用も併用薬のプレドニゾロンに見られる症状(疲労感、背部痛、悪心など)が主であり、
長期的な観察は必要なものの、現時点では有効性、安全性が高い薬剤といえる。
現時点では、イクスタンジが化学療法既治療患者(ポストケモ)に限られているのに対し、
ザイティガは化学療法未治療患者(プレケモ)でも対象となり得る。
ただ、イクスタンジも今後、プレケモとして使用できるようになる見通しであり、いずれはどちらを使っても良いということになる。
強いて使い分けを考えるなら、副作用に基づいた判断となってくるのではないか。
両薬の作用機序が異なることから、去勢抵抗性前立腺がん患者の治療選択肢の幅は大きく広がるだろう。
メディアセミナー「急増中の前立腺がん 治療の最前線」(主催:ヤンセン、アストラゼネカ)
講師:植村天受氏(近畿大学泌尿器科教授)
去勢抵抗性前立腺がんを対象とする新薬3剤が相次ぎ登場することから、2014年は前立腺がん治療にパラダイムシフトが起きる。
・新規ホルモン製剤のイクスタンジ(一般名・エンザルタミド、アステラス)が2014年5月に新発売。
・ザイティガ(アビラテロン酢酸エステル、ヤンセン/アストラゼネカ)が9月2日に発売予定。
・抗がん剤のジェブタナ(カバジタキセル アセトン付加物、サノフィ)も9月2日に薬価収載される予定。
去勢抵抗性前立腺がん患者の特徴としては、
1)高齢などの理由で化学療法を受けられない患者が多い
2)予後が比較的短い などの問題があり、このようなメカニズムに即した新規のホルモン製剤が求められていた。
アビラテロン(ザイティガ)は、アンドロゲン合成酵素のCYP17活性を阻害する全く新しい作用機序の薬であり、精巣や副腎だけでなく前立腺がんの組織内にも作用し、前立腺がんに必要な男性ホルモンをシャットアウトする。
化学療法の既治療、未治療、いずれにおいても全生存期間(OS)の延長が認められた。
副作用も併用薬のプレドニゾロンに見られる症状(疲労感、背部痛、悪心など)が主であり、
長期的な観察は必要なものの、現時点では有効性、安全性が高い薬剤といえる。
現時点では、イクスタンジが化学療法既治療患者(ポストケモ)に限られているのに対し、
ザイティガは化学療法未治療患者(プレケモ)でも対象となり得る。
ただ、イクスタンジも今後、プレケモとして使用できるようになる見通しであり、いずれはどちらを使っても良いということになる。
強いて使い分けを考えるなら、副作用に基づいた判断となってくるのではないか。
両薬の作用機序が異なることから、去勢抵抗性前立腺がん患者の治療選択肢の幅は大きく広がるだろう。
2014年7月10日木曜日
カバジタキセル(ジェブタナ)承認
前立腺癌を対象とした抗がん剤「カバジタキセル(JEVTANA®)」の製造販売が、7月4日に承認されました。
カバジタキセルは細胞内の微小管に作用して細胞増殖を阻害するもので、ドセタキセル治療後の前立腺癌患者の全生存期間の延長を示すことが、海外で実施された第Ⅲ相臨床試験と国内での第Ⅰ相臨床試験結果で明らかになった。
海外で実施された第Ⅲ相臨床試験(TROPIC試験、NCT00417079)では、カバジタキセル群はミトキサントロン併用群に対し、全生存期間(OS)で2.4ヶ月(中央値)の有意な延長を示した。
カバジタキセルはドセタキセルと同じくタキサン系の抗がん剤で、2013年7月にサノフィが承認申請を行い、優先審査品目として審査されていたものですが、海外ではすでに85ヶ国で承認(2014年1月現在)されています。
「いのち」というのは「元気で長生き」が基本だと思うので、もしも副作用が辛くて「気力」がなくなるなら、2.4ヶ月という全生存期間の延長も、一概に喜べないと思うのですが、副作用の現れ方には個人差があるので、この薬の恩恵に授かる前立腺がん患者も少なからず居られるのではないでしょうか。
カバジタキセルは細胞内の微小管に作用して細胞増殖を阻害するもので、ドセタキセル治療後の前立腺癌患者の全生存期間の延長を示すことが、海外で実施された第Ⅲ相臨床試験と国内での第Ⅰ相臨床試験結果で明らかになった。
海外で実施された第Ⅲ相臨床試験(TROPIC試験、NCT00417079)では、カバジタキセル群はミトキサントロン併用群に対し、全生存期間(OS)で2.4ヶ月(中央値)の有意な延長を示した。
カバジタキセルはドセタキセルと同じくタキサン系の抗がん剤で、2013年7月にサノフィが承認申請を行い、優先審査品目として審査されていたものですが、海外ではすでに85ヶ国で承認(2014年1月現在)されています。
「いのち」というのは「元気で長生き」が基本だと思うので、もしも副作用が辛くて「気力」がなくなるなら、2.4ヶ月という全生存期間の延長も、一概に喜べないと思うのですが、副作用の現れ方には個人差があるので、この薬の恩恵に授かる前立腺がん患者も少なからず居られるのではないでしょうか。
2014年4月15日火曜日
抗がん剤に思う
抗がん剤については、私はまだまだ悟りを開いておらず、あれこれ迷う事も多いのが現状です。
近藤先生のようにほぼ一律に否定するような気にはなれないし、前立腺がんに限ってみれば、ドセタキセルの延命効果もほんのわずかなので、被るダメ―ジと比較すれば、それほどありがたみもなさそうに思えるのですが、人によっては、たとえ寝た切りであろうと、数ヵ月でも長く生きられるほうを選びたいという人もおられるやも知れません。
1~3ヵ月という時間の長さをしっかり頭に入れた上で、それを「せいぜい」と思うのか「貴重」と思うのか、それぞれの価値観に照らしながら個別に考えるしかないのではと思っています。
がん全体を見渡した場合には、血液がんや固形がんのいくつかの種類においては、かなり良好な結果や、延命が期待できるものもあるのは事実です。
副作用の違いは人によって差が大きいことを考えると、抗がん剤に耐えれない人もおられれば、抗がん剤のベネフィットがリスクに優る人もおられるはずです。最近の分子標的薬では、副作用からの解放は読み通りには行かないようですが、抗がん剤=「毒薬」とばかりも言えなくなりつつあるのも確かなようです。
これまで、効かないと思われていた薬が「ある特定の遺伝子に特徴のあるグループでは思いのほか良く効く」ということが判明するようなケースも出てきました。
治験でトーナメントに勝ち残った薬がエビデンスのある薬だとされていますが、これはどこかに落とし穴がある考え方ではないかと思っています。
トーナメントで敗者となった薬も、適合グループを特定できなかっただけではないのか・・・もし、そのようなマッチングをうまく見つけることができるなら、我々はもっと抗がん剤の恩恵を被ることもできるのではないか・・・漠然とそんなことも考えています。
人間と抗がん剤との適合の妙が少しずつ見えてきて、効く人、効かない人の見分け方がわかって来ると、抗がん剤のイメージももう少し変わって行くように思うのですが、ことによるとまだまだこれから数十年、あるいは百年以上という長いスパンが必要なのかも知れません。
だったら無駄や、と言いきるのも一つの見解ですが、それなりの限界を知りつつ、わずかでも現在得られる恩恵にさずかろうというのも、患者の姿勢としてはむしろ自然ではないかと思っています。
近藤先生のようにほぼ一律に否定するような気にはなれないし、前立腺がんに限ってみれば、ドセタキセルの延命効果もほんのわずかなので、被るダメ―ジと比較すれば、それほどありがたみもなさそうに思えるのですが、人によっては、たとえ寝た切りであろうと、数ヵ月でも長く生きられるほうを選びたいという人もおられるやも知れません。
1~3ヵ月という時間の長さをしっかり頭に入れた上で、それを「せいぜい」と思うのか「貴重」と思うのか、それぞれの価値観に照らしながら個別に考えるしかないのではと思っています。
がん全体を見渡した場合には、血液がんや固形がんのいくつかの種類においては、かなり良好な結果や、延命が期待できるものもあるのは事実です。
副作用の違いは人によって差が大きいことを考えると、抗がん剤に耐えれない人もおられれば、抗がん剤のベネフィットがリスクに優る人もおられるはずです。最近の分子標的薬では、副作用からの解放は読み通りには行かないようですが、抗がん剤=「毒薬」とばかりも言えなくなりつつあるのも確かなようです。
これまで、効かないと思われていた薬が「ある特定の遺伝子に特徴のあるグループでは思いのほか良く効く」ということが判明するようなケースも出てきました。
治験でトーナメントに勝ち残った薬がエビデンスのある薬だとされていますが、これはどこかに落とし穴がある考え方ではないかと思っています。
トーナメントで敗者となった薬も、適合グループを特定できなかっただけではないのか・・・もし、そのようなマッチングをうまく見つけることができるなら、我々はもっと抗がん剤の恩恵を被ることもできるのではないか・・・漠然とそんなことも考えています。
人間と抗がん剤との適合の妙が少しずつ見えてきて、効く人、効かない人の見分け方がわかって来ると、抗がん剤のイメージももう少し変わって行くように思うのですが、ことによるとまだまだこれから数十年、あるいは百年以上という長いスパンが必要なのかも知れません。
だったら無駄や、と言いきるのも一つの見解ですが、それなりの限界を知りつつ、わずかでも現在得られる恩恵にさずかろうというのも、患者の姿勢としてはむしろ自然ではないかと思っています。
2013年10月1日火曜日
間欠的ホルモン療法について
ホルモン療法に感受性のある転移、再発がんに対しては、通常持続的ホルモン療法が行われることが多いが、「間欠的ホルモン療法」でも、はたして同等の効果が得られるのか。
2005年に「前立腺癌の間欠的内分泌療法」(赤倉功一郎)が出版されて以来、これまでに、いくつかの研究発表がなされてきた。
2009年
泌尿器の専門雑誌「Urology View」 Vol.7 での報告によると、千葉医療センターのグループが、千葉前立腺研究会の臨床研究を基に次のような結果を発表している。
75ヶ月経過時点のPSA非再燃率は、間欠投与85%に対し、持続投与60%となり、間欠療法のほうが、PSA再燃を遅延させることが判った。
2012年
ASCOでの発表によると、転移がんの前立腺患者約3000人を登録。導入時ホルモン療法(MAB療法7カ月)で、PSAが4以下となったケースの中から、1500人を、持続ホルモン療法群(ADT)と間欠ホルモン療法群(IAD)に、ランダム(約半々)に振分けた。
間欠ホルモン療法では、PSA=20でホルモン療法開始、7カ月以降にPSAが正常化したらホルモン療法を休止し観察に移行する。
結論として、広範転移型では間欠療法が優位となったが、狭小転移型では逆に持続ホルモン療法が優位、総合的には間欠療法の非劣勢は認められないということになった。
2013年
European urology誌のオンライン版、5月に掲載された記事によると、間欠的アンドロゲン除去療法が、従来の持続的アンドロゲン除去療法と比べて劣っていないという分析結果が出た。
4675人の参加者の成績を検証したところ、40カ月から108カ月の追跡で、間欠投与法(IAD群)は従来の持続投与法(ADT群)と、全生存率において同等であることが分かった。QOLはホルモン療法の休止に伴って向上していた。
これは、2012年のASCOでの発表より調査の対象数が多く、信頼性もある。
副作用の軽減に伴う休止期間中のQOLの回復と維持、医療費の軽減(削減)などを考えると、間欠ホルモン療法の魅力は大きい。
適応症例、治療薬剤の選択、投薬(休止)期間の目安、再燃の判定など、判断が難しいことも多いと思われるが、今後は、持続ホルモン療法(ADT)よりも間欠ホルモン療法(IAD)を優先する方向に進むことを期待したい。
2005年に「前立腺癌の間欠的内分泌療法」(赤倉功一郎)が出版されて以来、これまでに、いくつかの研究発表がなされてきた。
2009年
泌尿器の専門雑誌「Urology View」 Vol.7 での報告によると、千葉医療センターのグループが、千葉前立腺研究会の臨床研究を基に次のような結果を発表している。
75ヶ月経過時点のPSA非再燃率は、間欠投与85%に対し、持続投与60%となり、間欠療法のほうが、PSA再燃を遅延させることが判った。
2012年
ASCOでの発表によると、転移がんの前立腺患者約3000人を登録。導入時ホルモン療法(MAB療法7カ月)で、PSAが4以下となったケースの中から、1500人を、持続ホルモン療法群(ADT)と間欠ホルモン療法群(IAD)に、ランダム(約半々)に振分けた。
間欠ホルモン療法では、PSA=20でホルモン療法開始、7カ月以降にPSAが正常化したらホルモン療法を休止し観察に移行する。
結論として、広範転移型では間欠療法が優位となったが、狭小転移型では逆に持続ホルモン療法が優位、総合的には間欠療法の非劣勢は認められないということになった。
2013年
European urology誌のオンライン版、5月に掲載された記事によると、間欠的アンドロゲン除去療法が、従来の持続的アンドロゲン除去療法と比べて劣っていないという分析結果が出た。
4675人の参加者の成績を検証したところ、40カ月から108カ月の追跡で、間欠投与法(IAD群)は従来の持続投与法(ADT群)と、全生存率において同等であることが分かった。QOLはホルモン療法の休止に伴って向上していた。
これは、2012年のASCOでの発表より調査の対象数が多く、信頼性もある。
副作用の軽減に伴う休止期間中のQOLの回復と維持、医療費の軽減(削減)などを考えると、間欠ホルモン療法の魅力は大きい。
適応症例、治療薬剤の選択、投薬(休止)期間の目安、再燃の判定など、判断が難しいことも多いと思われるが、今後は、持続ホルモン療法(ADT)よりも間欠ホルモン療法(IAD)を優先する方向に進むことを期待したい。
2013年7月17日水曜日
Xofigo(塩化ラジウム-223)
2013年5月16日、FDA(米国食品医薬品局)は、骨転移を有する(他臓器に転移のない)去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として、Xofigo(塩化ラジウム-223)を、予定より3ヵ月前倒しで承認した。治療対象となるのは、テストステロンの産生を抑制する薬物療法や去勢術を受けたことのある前立腺がん患者で、全生存期間が約3ヶ月延長することが確認された。
Xofigoは、アルファ線を放出する放射性医薬品で、骨内のミネラル成分と結合し、骨腫瘍に直接放射線を照射するため、周辺正常組織へのダメージを抑えることができる。
アルファラディンの名称で臨床試験結果をお伝えしていたものと同じ薬剤で、呼称がXofigoと変わたもの。
臨床試験で報告された主な副作用は、悪心、下痢、嘔吐、ならびに、脚、足首、足の腫脹。
血液検査における異常は、赤血球、リンパ球、白血球、血小板、好中球の減少であった。
治療用放射性医薬品としては、すでにメタストロン注(ストロンチウム-89)が、我国でも用いられているが、メタストロン注がベータ線を放出するのに対し、Xofigo(塩化ラジウム-223)はアルファ線を放出する。
ストロンチウムとラジウムは、いずれもカルシウムと似た性格を持つため、骨に集まりやすい。
ラジウムの放出するアルファ線は、ストロンチウムの放出するベータ線に比べて、放射線のエネルギーが数倍高いが、飛程距離はうんと短いため紙1枚でも遮蔽でき、体外に放射線が漏れる心配はない。
放射性ラジウム226 は、1,500年という長い半減期を持っているので、被曝が重要問題となり、取り扱いも困難だが、今回承認された 223 は、数10分という半減期なので、短時間で放射能を失ってしまう。
半減期が50日ほどのストロンチウム89の効果持続期間がほぼ3ヵ月と言われているのに対し、Xofigo がほぼ1ヵ月という理由は、この半減期の違いによるものと思われる。
Xofigoは、アルファ線を放出する放射性医薬品で、骨内のミネラル成分と結合し、骨腫瘍に直接放射線を照射するため、周辺正常組織へのダメージを抑えることができる。
アルファラディンの名称で臨床試験結果をお伝えしていたものと同じ薬剤で、呼称がXofigoと変わたもの。
臨床試験で報告された主な副作用は、悪心、下痢、嘔吐、ならびに、脚、足首、足の腫脹。
血液検査における異常は、赤血球、リンパ球、白血球、血小板、好中球の減少であった。
治療用放射性医薬品としては、すでにメタストロン注(ストロンチウム-89)が、我国でも用いられているが、メタストロン注がベータ線を放出するのに対し、Xofigo(塩化ラジウム-223)はアルファ線を放出する。
ストロンチウムとラジウムは、いずれもカルシウムと似た性格を持つため、骨に集まりやすい。
ラジウムの放出するアルファ線は、ストロンチウムの放出するベータ線に比べて、放射線のエネルギーが数倍高いが、飛程距離はうんと短いため紙1枚でも遮蔽でき、体外に放射線が漏れる心配はない。
放射性ラジウム226 は、1,500年という長い半減期を持っているので、被曝が重要問題となり、取り扱いも困難だが、今回承認された 223 は、数10分という半減期なので、短時間で放射能を失ってしまう。
半減期が50日ほどのストロンチウム89の効果持続期間がほぼ3ヵ月と言われているのに対し、Xofigo がほぼ1ヵ月という理由は、この半減期の違いによるものと思われる。
2013年6月10日月曜日
「前立腺ガン 最善医療のすすめ」(藤野邦夫)書評
藤野邦夫さんの新著「前立腺ガン 最善医療のすすめ」を読んでみました。一部に意見の違いはあるものの、ズバリ言うならこれはお勧めの一冊といえるでしょう。
著者がもし泌尿器科医であれば、もろもろの事情があって、治療法の良し悪しに関してはなかなかここまではっきり書く事はできないと思います。
翻訳を生業とし、前立腺がん関係の本の翻訳や著作もしてこられ、これまでに培われた専門医との繋がりもあり、なおかつ、ご本人も前立腺がんの体験者という立場であればこそ、ここまで踏み込んだ内容にすることができたのではないでしょうか。
前立腺がんの治療では、粒子線治療(先進医療)やロボット支援手術(昨年から保険適用)が、その華やかさもあって最新治療として注目されることが多いのですが、「最善」の治療方法というものは、案外静かに隠れているもので、この本をじっくり読めば、その答えを見つけることができるでしょう。
まず始めに、普通はなかなか治療がやっかいだと思われる「高リスク」の前立腺がん患者10名の治療例が出てきます。
ほぉ~と驚かれるような事例もあるかも知れません。
かなりのハイリスク症例でも「トリモダリティ」(3つの:tri + 治療法:modality)、すなわち「小線源療法(LDR or HDR)+外部照射+ホルモン療法(長期 or 短期)」が多く用いられていることに注目すべきでしょう。
ただ、ちょっと厳しい目で見ると、その多くはまだ経過年数が不十分な途中経過であって、医学的見地からはかなり不十分なデータと言わざるを得ないわけです。
引用例として弱みが感じられるのは否定できないと思うので、かなり冷静に読む必要があるとは思うのですが、マスコミ等で取り上げられる事例というのはほとんどがこのレベルのものであり、本書も一般患者向けの読み物としてなら、許容範囲と言えるかも知れません。
我国でのトリモダリティの実績はまだ不十分なものの、小線源療法が日本より早くから始まっている欧米では、高リスク症例に対する「トリモダリティ」はすでに10年以上の実績があり、それらを勘案すると、一定の裏付けがあると判断しても良いのではないでしょうか。
「トリモダリティ」という用語に関しては、まだ認知度が低く、国内における長期的なエビデンスが確立できているとは言い難いものの、小線源療法(単独)、ならびにその進化版である「トリモダリティ」においては、国内医療機関のハイレベルな施設が、アメリカでの一般的な水準にようやく追いついてきたというのが、今の我国の現状ではないでしょうか。
小線源療法をやっている施設なら、どこでもこのような「トリモダリティ」が可能なのか・・・患者としてはこのあたりが気になるわけですが、それにはまだ無理があり、現状ではまだ一部の医療機関に限られると思った方が良さそうです。
外照射と小線源治療のレベルが共に一定の水準に達しており、泌尿器科と放射線治療科の連携も緊密にとれている病院ということになると、なかなか傍からは見つけにくいですよね。
こうした技量を持つ病院をリストアップしてお知らせできればと思うのですが、さてどうなりますか。
「リスク分類」については、私も「前立腺がんガイドブック」 http://pros-can.net/01/01-1.html
などで、かなり早くから(2006年)その考え方に基づいた解説してきました。
6年ぶりに改訂された「前立腺癌ガイドライン2012」でも「リスク分類」の解説がなされるようになりましたが、本書でも「リスク別の治療法」という構成が取られています。
生存率ということばかりを考えると、どの治療法も大きな差がなく、結局その副作用を秤にかけて決めることが多いわけですが、非再発率に焦点を当てると、最善の治療法に辿り着く道筋は、もっと自然に浮かび上がってきます。
ハイリスクの限局がんや局所浸潤がんの治療においては、非再発率を重視すれば、手術(たとえロボットであれ)は明らかに近年の放射線治療に劣り、放射線治療の中においても、超高線量の得られる「トリモダリティ」は、照射線量に限界のある外部照射を越える可能性を持っているということを、この本を読んで、しっかり知っておく必要があるのではないでしょうか。
見解が私と異なるのは、NCCN(National Comprehensive Cancer Network:米国)を始め、世界的なガイドラインでも、IMRT(強度変調放射線治療)は「中・高リスク」の前立腺がんの標準治療と認められているにもかかわらず、この本ではIMRTを「中・高リスク」に適した治療法とは認めていないことです。ハイリスクの症例に、74Gy以下の照射線量しか当てられないようでは、技術レベルにも問題ありと思うのですが、76Gy以上の照射で、時間と共に変わる前立腺の位置変動にも、それにふさわしい制御技術で対応し(IGRT)、非常に好成績をあげている医療機関もあるわけで、私は2005年にIMRT(78Gy)による治療を受けたわけですが、当時としてはこれが最善であったと、今振り返ってもそのように思っています。
わざわざ確認したわけではありませんが、著者はおそらく、IMRTのトップレベルの医療機関における取材が不足していたのではないでしょうか。近年、照射線量という物差しで見れば、「トリモダリティ」がIMRTを追い越した感があるのは否定できませんが、部分的な骨転移やリンパ節転移への対応など、IMRTにしかできない強みもあることは確かなので、ここはもう少し冷静かつ客観的に、「適応あり」とすべきだったと思われます。
IMRTも、信頼できるのは一部(1~2割?)の医療機関かもしれませんが、高リスクでは手術に比べてはるかに好成績を上げています。トリモダリティとて、結局安心してまかせられるのは、小線源療法をやっている医療機関の一部(1割前後?)に過ぎないと思われます。
どんな治療法にもピン~キリがあるわけですが、この本では、小線源治療のピンの立場からIMRTのキリを眺めているだけのように思われて、少し残念な気がしないでもありません。
手術に限れば、熟練者による開腹手術であろうと、今流行りのダ・ヴィンチ手術であろうと、再発率そのものを一定以下にすることは難しく(厚労省研究班によれば限局がんであっても約25%が再発している)、放射線治療の上位施設とその成績を比較した場合、がんの制御率(非再発率)という点において、決定的な差があるということは否定のしようがありません。
前立腺がんにおいては、5年生存率というのはまったく無意味であり、生存率で治療法を選ぶことはほぼ不可能です。非再発率とその後のQOLで治療法を選ぶべきと思われますが、泌尿器科医にとっては、手術の再発率の高いこと(非再発率の低いこと)がどうしてもネックとなってしまいます。これが非再発率の公表は遅遅として進んでいない理由ではないでしょうか。
「たとえ再発してもまだ放射線治療がある」という説明が、泌尿器科医からなされることが多いのですが、放射線によるリカバリー照射は前立腺がない部分に放射線を当てるわけですから、上記の小線源やトリモダリティは不可能だし、結局やや広い範囲に、正常組織を壊さない程度の、やや弱目の放射線(せいぜい64~66Gy)を当てるという中途半端な手しかなく(*注)、初回のIMRTのような切れ味のするどい治療は到底望むことができません。
リカバリー照射と初回の高精度、高線量照射とは、はっきり別物だと思ったほうが良いでしょう。
患者が治療法を選択するにあたって、もっと言えば同じ治療法であってもより良い医療機関や医師を選択するにあたって、こうした情報の開示が欠かせないと思うのですが、なかなかそうのような環境が整っていないことが残念ですね。
もっと「非再発率」に目を向けて!
がん治療の基本は一発勝負!
これらを学ぶだけでも、この本の利用価値は十分あるのではないでしょうか。
*注(2016年8月追記)
近年はIMRTを用いて、耐容線量の小さな臓器を避けつつ、前立腺床付近に70Gyを越えるようなリカバリー照射も可能となってきました。(まだ一般的ではありませんですが)
著者がもし泌尿器科医であれば、もろもろの事情があって、治療法の良し悪しに関してはなかなかここまではっきり書く事はできないと思います。
翻訳を生業とし、前立腺がん関係の本の翻訳や著作もしてこられ、これまでに培われた専門医との繋がりもあり、なおかつ、ご本人も前立腺がんの体験者という立場であればこそ、ここまで踏み込んだ内容にすることができたのではないでしょうか。
前立腺がんの治療では、粒子線治療(先進医療)やロボット支援手術(昨年から保険適用)が、その華やかさもあって最新治療として注目されることが多いのですが、「最善」の治療方法というものは、案外静かに隠れているもので、この本をじっくり読めば、その答えを見つけることができるでしょう。
まず始めに、普通はなかなか治療がやっかいだと思われる「高リスク」の前立腺がん患者10名の治療例が出てきます。
ほぉ~と驚かれるような事例もあるかも知れません。
かなりのハイリスク症例でも「トリモダリティ」(3つの:tri + 治療法:modality)、すなわち「小線源療法(LDR or HDR)+外部照射+ホルモン療法(長期 or 短期)」が多く用いられていることに注目すべきでしょう。
ただ、ちょっと厳しい目で見ると、その多くはまだ経過年数が不十分な途中経過であって、医学的見地からはかなり不十分なデータと言わざるを得ないわけです。
引用例として弱みが感じられるのは否定できないと思うので、かなり冷静に読む必要があるとは思うのですが、マスコミ等で取り上げられる事例というのはほとんどがこのレベルのものであり、本書も一般患者向けの読み物としてなら、許容範囲と言えるかも知れません。
我国でのトリモダリティの実績はまだ不十分なものの、小線源療法が日本より早くから始まっている欧米では、高リスク症例に対する「トリモダリティ」はすでに10年以上の実績があり、それらを勘案すると、一定の裏付けがあると判断しても良いのではないでしょうか。
「トリモダリティ」という用語に関しては、まだ認知度が低く、国内における長期的なエビデンスが確立できているとは言い難いものの、小線源療法(単独)、ならびにその進化版である「トリモダリティ」においては、国内医療機関のハイレベルな施設が、アメリカでの一般的な水準にようやく追いついてきたというのが、今の我国の現状ではないでしょうか。
小線源療法をやっている施設なら、どこでもこのような「トリモダリティ」が可能なのか・・・患者としてはこのあたりが気になるわけですが、それにはまだ無理があり、現状ではまだ一部の医療機関に限られると思った方が良さそうです。
外照射と小線源治療のレベルが共に一定の水準に達しており、泌尿器科と放射線治療科の連携も緊密にとれている病院ということになると、なかなか傍からは見つけにくいですよね。
こうした技量を持つ病院をリストアップしてお知らせできればと思うのですが、さてどうなりますか。
「リスク分類」については、私も「前立腺がんガイドブック」 http://pros-can.net/01/01-1.html
などで、かなり早くから(2006年)その考え方に基づいた解説してきました。
6年ぶりに改訂された「前立腺癌ガイドライン2012」でも「リスク分類」の解説がなされるようになりましたが、本書でも「リスク別の治療法」という構成が取られています。
生存率ということばかりを考えると、どの治療法も大きな差がなく、結局その副作用を秤にかけて決めることが多いわけですが、非再発率に焦点を当てると、最善の治療法に辿り着く道筋は、もっと自然に浮かび上がってきます。
ハイリスクの限局がんや局所浸潤がんの治療においては、非再発率を重視すれば、手術(たとえロボットであれ)は明らかに近年の放射線治療に劣り、放射線治療の中においても、超高線量の得られる「トリモダリティ」は、照射線量に限界のある外部照射を越える可能性を持っているということを、この本を読んで、しっかり知っておく必要があるのではないでしょうか。
見解が私と異なるのは、NCCN(National Comprehensive Cancer Network:米国)を始め、世界的なガイドラインでも、IMRT(強度変調放射線治療)は「中・高リスク」の前立腺がんの標準治療と認められているにもかかわらず、この本ではIMRTを「中・高リスク」に適した治療法とは認めていないことです。ハイリスクの症例に、74Gy以下の照射線量しか当てられないようでは、技術レベルにも問題ありと思うのですが、76Gy以上の照射で、時間と共に変わる前立腺の位置変動にも、それにふさわしい制御技術で対応し(IGRT)、非常に好成績をあげている医療機関もあるわけで、私は2005年にIMRT(78Gy)による治療を受けたわけですが、当時としてはこれが最善であったと、今振り返ってもそのように思っています。
わざわざ確認したわけではありませんが、著者はおそらく、IMRTのトップレベルの医療機関における取材が不足していたのではないでしょうか。近年、照射線量という物差しで見れば、「トリモダリティ」がIMRTを追い越した感があるのは否定できませんが、部分的な骨転移やリンパ節転移への対応など、IMRTにしかできない強みもあることは確かなので、ここはもう少し冷静かつ客観的に、「適応あり」とすべきだったと思われます。
IMRTも、信頼できるのは一部(1~2割?)の医療機関かもしれませんが、高リスクでは手術に比べてはるかに好成績を上げています。トリモダリティとて、結局安心してまかせられるのは、小線源療法をやっている医療機関の一部(1割前後?)に過ぎないと思われます。
どんな治療法にもピン~キリがあるわけですが、この本では、小線源治療のピンの立場からIMRTのキリを眺めているだけのように思われて、少し残念な気がしないでもありません。
手術に限れば、熟練者による開腹手術であろうと、今流行りのダ・ヴィンチ手術であろうと、再発率そのものを一定以下にすることは難しく(厚労省研究班によれば限局がんであっても約25%が再発している)、放射線治療の上位施設とその成績を比較した場合、がんの制御率(非再発率)という点において、決定的な差があるということは否定のしようがありません。
前立腺がんにおいては、5年生存率というのはまったく無意味であり、生存率で治療法を選ぶことはほぼ不可能です。非再発率とその後のQOLで治療法を選ぶべきと思われますが、泌尿器科医にとっては、手術の再発率の高いこと(非再発率の低いこと)がどうしてもネックとなってしまいます。これが非再発率の公表は遅遅として進んでいない理由ではないでしょうか。
「たとえ再発してもまだ放射線治療がある」という説明が、泌尿器科医からなされることが多いのですが、放射線によるリカバリー照射は前立腺がない部分に放射線を当てるわけですから、上記の小線源やトリモダリティは不可能だし、結局やや広い範囲に、正常組織を壊さない程度の、やや弱目の放射線(せいぜい64~66Gy)を当てるという中途半端な手しかなく(*注)、初回のIMRTのような切れ味のするどい治療は到底望むことができません。
リカバリー照射と初回の高精度、高線量照射とは、はっきり別物だと思ったほうが良いでしょう。
患者が治療法を選択するにあたって、もっと言えば同じ治療法であってもより良い医療機関や医師を選択するにあたって、こうした情報の開示が欠かせないと思うのですが、なかなかそうのような環境が整っていないことが残念ですね。
もっと「非再発率」に目を向けて!
がん治療の基本は一発勝負!
これらを学ぶだけでも、この本の利用価値は十分あるのではないでしょうか。
*注(2016年8月追記)
近年はIMRTを用いて、耐容線量の小さな臓器を避けつつ、前立腺床付近に70Gyを越えるようなリカバリー照射も可能となってきました。(まだ一般的ではありませんですが)
2012年5月30日水曜日
デノスマブ(ランマーク)と低カルシウム血症
2011年12月、我国でも、多発性骨髄腫および固形がんの骨転移による骨病変に対する治療薬としてデノスマブ(ランマーク皮下注120mg)が承認され、2012年4月よりこれが使用できるようになりました。
破骨細胞の活性化には、NF-κB活性化受容体(RANK)とそのリガンド(RANKL)とのシグナル伝達が関与していることが明らかになっていますが、デノスマブは、RANKLと結合し、破骨細胞及びその前駆細胞膜上に発現するRANKへのRANKLの結合を特異的に阻害する、いわゆる分子標的薬(ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤)と言われるものです。
前立腺がんの骨転移に対しては、これまでゾレドロン酸(ゾメタ)が多く用いられてきましたが、ゾメタはビスフォスフォネートと呼ばれる種類の薬で、元々は骨粗しょう症の治療薬として開発されたものですが、破骨細胞の働きを止めることにより、骨からのカルシウムの放出を防ぎ、骨転移による骨病変を抑えます。
骨関連事象の発現を遅らせる効果は、ゾメタよりデノスマブのほうが優れている(NCI Cancer Bulletin2010年11月30日)とも言われていますが、はっきりしたことは判りません。
ゾメタの副作用としては、腎機能の低下と顎骨壊死に注意が必要で、デノスマブの場合も、顎骨壊死に対する注意は同様だが、腎機能の低下の恐れはさほどでもなく、むしろ低カルシウム血症に対する注意が必要とか。
米国では重篤な症候性の低カルシウム血症(症状を伴う血中カルシウムの低下)による死亡例が報告されており、第一三共のHPにも、昨日(2012年5月29日)、低カルシウム血症に対し注意を喚起する製品情報が掲載されました。
http://www.daiichisankyo.co.jp/corporate/pdf/20120529.pdf
手足のふるえ、筋肉の脱力感、けいれん、しびれ などの症状が出たら要注意とか。
いずれにせよ新しい機序の薬には、効能の裏にどんな副作用が隠れているかも知れませんので、少しでも異変を感じたら、すぐに主治医に訴えるほうが無難ではないでしょうか。
2012年5月17日木曜日
ドセタキセル(プレドニゾロン併用)の症例評価
国立病院機構埼玉病院泌尿器科の金井邦光氏らは、
2008年12月から2012年3月に同科でドセタキセルとプレドニゾロン併用療法を2コース以上実施した去勢抵抗性前立腺がん患者、26症例を対象に解析評価を行った。
・ドセタキセル:70mg/m2(@3週間以上)
・プレドニゾロン:10mg/日を連日内服
・診断時患者背景:年齢の中央値=72歳(55~87歳)、
PSA中央値=163(8~1165)、
GS=8以上が73%、
臨床病期:C=27%、D1=12%、D2=61%、
初期治療で内分泌療法を選択した患者=88%
・ドセタキセル開始時:年齢中央値=76歳(59~88歳)、
PSA中央値=33(3~2142)、
痛み止めの使用=23%。
エストラムスチン使用歴=31%。
・ドセタキセル投与回数:中央値=5(2~33)
・観察期間:中央値=11カ月(2~31カ月)
その結果、生存期間の中央値は19.5カ月で、1年生存率は63%だった。
ドセタキセル+プレドニゾロン療法によって、77%の患者でPSA値が低下した。
PSAが最低値に達するまでの期間中央値は3カ月(1~11カ月)だった。
PSA値の低下率:30%以上低下=61%
50%以上低下=58%
70%以上低下=35%
PSA値が50%以上低下したグループでは、生存期間の有意な延長が認められた。
治療開始時のPSA値<60 が生存期間を延長させる有意な予後予測因子だった。
副作用のため、38%の患者でドセタキセルの減量が必要となる一方、80歳以上の高齢者でも施行可能だった。
(詳細はがんナビ2012年5月17日参照)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201205/524952.html&cnavi=1
2010年5月16日日曜日
ホルモン療法+ゾレドロン酸(ゾメタ)
横浜市大の上村博司氏らは、4月下旬盛岡市で開催された第98回日本泌尿器科学会総会で以下の発表をした。
骨転移がある前立腺癌に対し、ホルモン療法にゾレドロン酸(ゾメタ)を併用することでPSA値が顕著に低下し、PSA最低値は低く、PSA正常化率は高く、再燃までの期間を延長する可能性が示された。
神奈川県下の多施設共同臨床試験で、骨転移の広がりが6ヵ所以上で、ホルモン療法未治療の臨床病期D2前立腺癌患者28人が対象。
PSA初期値の中央値は239だったが、PSA正常化率(4以下に下がった)は75%であった。
4人でグレード2の有害事象(クレアチン上昇、歯肉炎、下顎痛、筋肉痛)が見られたため投与を中止したが、重篤なものはなかった。
PSA再燃は10人に認められ、再燃までの期間中央値は6.6カ月だった。いずれも骨関連事象(SRE)の発現はない。
「初期からゾレドロン酸を投与した方がよいだろう」と答えた。
骨転移がある前立腺癌に対し、ホルモン療法にゾレドロン酸(ゾメタ)を併用することでPSA値が顕著に低下し、PSA最低値は低く、PSA正常化率は高く、再燃までの期間を延長する可能性が示された。
神奈川県下の多施設共同臨床試験で、骨転移の広がりが6ヵ所以上で、ホルモン療法未治療の臨床病期D2前立腺癌患者28人が対象。
PSA初期値の中央値は239だったが、PSA正常化率(4以下に下がった)は75%であった。
4人でグレード2の有害事象(クレアチン上昇、歯肉炎、下顎痛、筋肉痛)が見られたため投与を中止したが、重篤なものはなかった。
PSA再燃は10人に認められ、再燃までの期間中央値は6.6カ月だった。いずれも骨関連事象(SRE)の発現はない。
「初期からゾレドロン酸を投与した方がよいだろう」と答えた。
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