2010年3月15日月曜日

中リスク前立腺がんの放射線療法はホルモン療法併用が有利

PSAが20以下の限局前立腺癌患者について、
放射線治療(66.6Gy)単独(A群)と、同程度の放射線治療に短期(4ヶ月間)ホルモン療法の併用(B群)を比較したところ、
中リスク患者では、併用(B群)のほうが生存を延長し再発を減らすことができた。
しかし、併用よる効果は、低リスク患者では認められなかった。(ASCO GU2010)

            放射線治療単独群       ホルモン療法併用群
観察期間中央値       9.1年             9.2年
10年生存率         57%             62%
8年全生存率(中リスク)   68%             72%
 同上   (低リスク)・・・・・・・ 差異なし
生検(複数回)陽性結果   60%             78%

*注:低リスクとはPSA10以下かつGS6以下。
*医療ライターの約文(日経メディカル)をベースにしているが、(原文は読んでいない)
 早期ステージという表現もあれば、局所進行前立腺がんという表記もあり、同じ内容の表現なのに
 判断に苦しむ・・・局所進行前立腺がんならば、それだけで高リスクとなってしまうので、
 結局、「限局(早期)前立腺癌」のことと解釈した。
 
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骨関連事象にはデノスマブ(denosumab)

骨転移を有する進行性前立腺癌でdenosumab(完全ヒトモノクローナル抗体)とゾレドロン酸(ビスフォスフォネート)の2剤を比較した国際的なフェーズ3無作為化二重盲検試験の結果が発表された。

 Denosumabは、骨関連事象(SRE)の初回発生までの期間を延長し、SREが複数発生する割合を減少させ、ゾレドロン酸に対する優越性を有意に示した。

 有害事象の発生率は両群間で統計学的有意差はなかった。過去の進行癌の試験と同様、低カルシウム血症はdenosumabを投与した群に多く報告された。全生存期間と無増悪期間は両群で同等だった。

 Amgen社研究開発部の執行副社長、Roger M. Perlmutter氏は 「今回の試験結果により、転移性前立腺癌患者の骨合併症の出現を遅らせるdenosumabの効果が証明された」と話した。
前立腺癌に対する有効性と安全性の全データは、2010年6月上旬に開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)で報告される予定。
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Cabazitaxel:進行転移性前立腺癌でドセタキセルに続く二次治療薬【ASCO GU2010】

ホルモン療法やドセタキセルベースの化学療法に耐性をもつに至った転移性の進行前立腺癌患者は、次に打つ手に困るわけですが、
新しいタキサン系抗癌剤Cabazitaxel が、良好な結果を示すことが明らかになりました。(ASCO GU2010)

第Ⅲ層の治験では、患者は無作為に次の2群に振り分けられました。
A群:Cabazitaxelとプレドニゾンを投与される群(:378人)
B群:ミトキサントロンとプレドニゾンを投与される群(:377人)

                     A群      B群
全生存期間中央値        15.1カ月     12.7カ月   →  これは死亡率30%低減に該当する
無増悪生存期間中央値       2.8カ月     1.4カ月
奏効率、PSA反応          ◎        ○
(grade3、4の副作用)
好中球減少             81.7%      51.0% 
発熱性好中球減少症        7.5%       1.3%

デューク大学医学部准教授で、総合がんセンター泌尿器外科のDr. Daniel George氏はこう述べています。
「ドセタキセルによる一次治療が効かなくなった患者に対し、一定の有効性と適切な忍容性が得られたのは有望な結果です。一次治療の反応が良かった患者は、二次、三次治療でも好反応を示す傾向にある。
進行前立腺癌の患者にとってはドセタキセルが最後の砦ではなく、Cabazitaxelによって生存期間を延長できることが立証された。癌治療における進歩が常に緩やかであることを考えると、今回の試験は、2004年に進行前立腺癌治療でのドセタキセルの有効性を示した成果に匹敵するだろう」

サノフィ・アヴェンティス社(フランス)は、二次治療薬として本剤の承認申請をFDA(米国食品医薬品局)に対して行っている。cabazitaxelは進行前立腺がんの二次治療において、FDAの承認を受ける初めての薬剤となりそうだ。

(以下蛇足)
日経メディカルでも紹介されていた記事は、内容がわかりにくく、海外癌医療情報なども参照したところ、けっこう重要なニュースのように思えてきました。
ここまでくれば実現性も高いですね。
このたびは私が理解できる範囲で、できるだけ簡潔明瞭に紹介してみました。
ただ、ドセタキセルが米国で承認(2004)されてから、日本で使われるまでには4年以上を要していますし、
医師が使いこなせるまでには、さらに数年かかるのが実情のようです。
いつも残念に思うのですが、我々が新薬の恩恵を被るまでの道のりは、近いように見えても実はうんと遠いんですね。
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2010年3月14日日曜日

PSAに関するN.Y Timesの記事

「PSA検査は保険財政を圧迫しその有用性に疑問がある」という意見が、ニューヨーク・タイムズに掲載されたが、その意見の主がPSA検査の生みの親、アブリン教授(アリゾナ大)であったため、議論を呼んでいる。

PSA検査は、治療が必要な進行の早いがんと、治療しなくとも命に別条のない進行の遅いがんを見分けることができない。
さらに、誤診(過剰診断)の恐れもある。PSA値は前立腺がんでも上昇するが、前立腺肥大でも上昇する。
アメリカ人男性のうち前立腺がんと診断されるのは16%だが、その大部分は進行が遅く、死に至るのはわずか3%にすぎない。
PSA検査に要する年間費用は少なくとも30億ドル(約2700億円)、不確実な検査にこれだけの費用をつぎ込む必要はない。

<以下、記事の原文>
EACH year some 30 million American men undergo testing for prostate-specific antigen, an enzyme made by the prostate. Approved by the Food and Drug Administration in 1994, the P.S.A. test is the most commonly used tool for detecting prostate cancer.

The test’s popularity has led to a hugely expensive public health disaster. It’s an issue I am painfully familiar with ― I discovered P.S.A. in 1970. As Congress searches for ways to cut costs in our health care system, a significant savings could come from changing the way the antigen is used to screen for prostate cancer.

Americans spend an enormous amount testing for prostate cancer. The annual bill for P.S.A. screening is at least 3ドル billion, with much of it paid for by Medicare and the Veterans Administration.

Prostate cancer may get a lot of press, but consider the numbers: American men have a 16 percent lifetime chance of receiving a diagnosis of prostate cancer, but only a 3 percent chance of dying from it. That’s because the majority of prostate cancers grow slowly. In other words, men lucky enough to reach old age are much more likely to die with prostate cancer than to die of it.

Even then, the test is hardly more effective than a coin toss. As I’ve been trying to make clear for many years now, P.S.A. testing can’t detect prostate cancer and, more important, it can’t distinguish between the two types of prostate cancer ― the one that will kill you and the one that won’t.

Instead, the test simply reveals how much of the prostate antigen a man has in his blood. Infections, over-the-counter drugs like ibuprofen, and benign swelling of the prostate can all elevate a man’s P.S.A. levels, but none of these factors signals cancer. Men with low readings might still harbor dangerous cancers, while those with high readings might be completely healthy.

In approving the procedure, the Food and Drug Administration relied heavily on a study that showed testing could detect 3.8 percent of prostate cancers, which was a better rate than the standard method, a digital rectal exam.

Still, 3.8 percent is a small number. Nevertheless, especially in the early days of screening, men with a reading over four nanograms per milliliter were sent for painful prostate biopsies. If the biopsy showed any signs of cancer, the patient was almost always pushed into surgery, intensive radiation or other damaging treatments.

The medical community is slowly turning against P.S.A. screening. Last year, The New England Journal of Medicine published results from the two largest studies of the screening procedure, one in Europe and one in the United States. The results from the American study show that over a period of 7 to 10 years, screening did not reduce the death rate in men 55 and over.

The European study showed a small decline in death rates, but also found that 48 men would need to be treated to save one life. That’s 47 men who, in all likelihood, can no longer function sexually or stay out of the bathroom for long.

Numerous early screening proponents, including Thomas Stamey, a well-known Stanford University urologist, have come out against routine testing; last month, the American Cancer Society urged more caution in using the test. The American College of Preventive Medicine also concluded that there was insufficient evidence to recommend routine screening.

So why is it still used? Because drug companies continue peddling the tests and advocacy groups push “prostate cancer awareness” by encouraging men to get screened. Shamefully, the American Urological Association still recommends screening, while the National Cancer Institute is vague on the issue, stating that the evidence is unclear.

The federal panel empowered to evaluate cancer screening tests, the Preventive Services Task Force, recently recommended against P.S.A. screening for men aged 75 or older. But the group has still not made a recommendation either way for younger men.

Prostate-specific antigen testing does have a place. After treatment for prostate cancer, for instance, a rapidly rising score indicates a return of the disease. And men with a family history of prostate cancer should probably get tested regularly. If their score starts skyrocketing, it could mean cancer.

But these uses are limited. Testing should absolutely not be deployed to screen the entire population of men over the age of 50, the outcome pushed by those who stand to profit.

I never dreamed that my discovery four decades ago would lead to such a profit-driven public health disaster. The medical community must confront reality and stop the inappropriate use of P.S.A. screening. Doing so would save billions of dollars and rescue millions of men from unnecessary, debilitating treatments.
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2010年2月25日木曜日

進行大腸癌ペプチドワクチン療法、フェーズ2臨床試験開始

進行大腸癌患者に対するペプチドワクチン療法のフェーズ1試験で、3種以上のペプチドに特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)反応を示した場合、予後が良好であることが示された。
全生存率は治療開始から約半年間は低下するが、その後改善に向かい、生存期間中央値(MST)は12.3カ月だった。
第7回日本免疫治療学研究会学術集会(10/2/20) 硲彰一氏(山口大)

 硲氏らは、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの中村祐輔氏らと共同で、特異的能動免疫療法として大腸癌を中心とする癌ペプチドワクチン療法の研究を行ってきた。この研究では、日本人の約60%が有する白血球型抗原HLA-A*2402に対するペプチドから、3種の大腸癌特異的エピトープペプチド(KOC1、RNF43、TOMM34)と、2種の腫瘍新生血管特異的エピトープペプチド(VEGFR1、VEGFR2)を使用している。
 硲氏らは、FOLFIRI、FOLFOXに併用するベバシズマブまたはセツキシマブに代わる治療として、癌ペプチドワクチン療法を進行・再発性大腸癌のファーストライン治療として検討する多施設共同のフェーズ2試験を実施中である。
 フェーズ2試験では、対象全員にmFOLFOX6に併用してペプチドワクチン療法を行い、HLA-A*2402の患者とHLA-A*2402以外の患者を比較検討する予定。
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2010年1月25日月曜日

前立腺癌対象にCabazitaxelの米国での段階的申請が開始

日経メディカルオンライン(2010年1月12日)
 フランスSanofi aventis社は、このほど前立腺癌の第2選択薬としてタキサン系抗癌剤であるCabazitaxel (XRP-6258)の段階的承認申請を米国で既に開始していることを明らかにした。
Cabazitaxelは、米食品医薬品局(FDA)から段階的申請が可能になるファーストトラック審査の対象として認められていた。 Cabazitaxelは、フェーズ3臨床試験であるTROPIC試験で前立腺癌に対して、全生存率について統計学的に有意に優れることが示されたという。TROPIC試験の詳細は、3月にサンフランシスコで開催されるGenitourinary Cancers Symposium(ASCO GU)で発表される予定。
Cabazitaxelのわが国における開発については、現在評価中だという。
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2010年1月20日水曜日

重度尿失禁の治療法

詳細は下記サイトを参照

がんナビ
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/report/201001/100434.html

東北大泌尿器科教授の荒井陽一氏によれば
「男性の重度尿失禁治療のゴールドスタンダードは人工尿道括約筋の埋め込み術。
 海外では教科書にすら書かれているのに、日本では普及が遅れている。」

中~重度の尿失禁の原因としては、前立腺の全摘術が過半数を占め59%、
続いて神経因性膀胱が23%、前立腺肥大症手術が1割程度を占めていた。
前立腺がんの全摘術は年間約2万件が行われ、ほぼ全員に一時的な尿失禁が生じ、
そのうち1~3%程度に体操や薬物療法では治りきらない尿失禁が生じてしまう。

このような患者にの残された唯一と言っても良い治療法が人工尿道括約筋の埋め込み術。
ただし、この治療が可能な医療機関は限られている。
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2010年1月18日月曜日

限局性前立腺癌の管理における前立腺全摘術と強度変調放射線治療の比較

PubMed 論文抄録 (海外癌医療情報: 2009年10月18日)

大学医学部放射線治療学科(米国)背景と目的:限局性前立腺癌において、前立腺全摘術 (RP)または適応例にはホルモン療法を併用した72Gy以上照射の強度変調放射線治療(IMRT)により、生化学的無病生存率(BDFS)が改善するかどうかを検討した。

対象と方法:1997年から2005年に2箇所の専門医療センターでRP(204名)またはIMRT(352名)を受けた患者556例の連続標本について解析した。臨床病期、グリーソンスコア、治療前の前立腺特異抗原(PSA)に基づき、患者を予後グループに層別化した。アウトカム指標はBDFSとした。

結果:ベースラインでの病変の進展度は、IMRT例のほうが高かった(p<.001)。rpとimrtの5年bdfsの差異は、予後良好群(92.8% vs. 85.3%, p=.20)、中間的予後群(86.7% vs. 82.2%, p=.46)では認められなかった。予後不良群においてはホルモン療法併用IMRTのほうがBDFS成績は良好であった(38.4% vs. 62.2%, p<.001)。全コホートにおいて交絡因子で補正したところ、グリーソンスコア(p<.001)と臨床病期(p<.001)からbdfsが予測されたが、治療法からはbdfsは予測されなかった(p=.06)。予後不良群では、治療法からbdfsが予測された(p=.006)。結論:rpとimrtのbdfsは、予後良好群や中間的予後群については同程度である。予後不良群では、ホルモン療法を併用した72gy以上照射のimrt例のほうがbdfsは高いことを示している。PMID:19800702

平 栄(放射線腫瘍科) 訳
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乳癌の遺伝子検査(Oncotype DX)

(日経メディカル記事 2010. 1. 14)

 タモキシフェンによるホルモン療法を受けた早期乳癌患者について、再発リスクと化学療法から得られるベネフィットを21種類の遺伝子から予測する遺伝子検査「Oncotype DX」は、術後補助療法を決定するうえで医師と患者に大きな影響を与えることが分かった。
米Loyola大学Health System MedicalのShelly S. Lo氏らによる試験の結果が、1月11日のJournal of Clinical Oncologyのオンライン版に掲載された。 

 Oncotype DXは米Genomic Health社が開発した検査で、切除した乳癌組織を検体として21種類の遺伝子の発現量を測定し、再発スコアを計算する。再発スコアは0~100で表し、値の高低で再発リスクの高さを予測する。スコアが低い女性に化学療法は推奨されない。
 2004年に米国でOncotype DXが商業化されてから、この検査を受けた乳癌患者は12万人を超える。検査の対象となるのはエストロゲン受容体陽性でリンパ節転移がない早期乳癌患者だ。毎年約10万人が、このタイプの乳癌と診断されている。

 今回の試験の対象はOncotype DXを受けた89人の乳癌患者。Loyola大学など4施設の医師17人が治療を担当した。
 医師らは28人の患者(31.5%)について治療の決定を変更した。このうち20人(22.5%)の患者の検査実施前の推奨治療は化学療法とホルモン療法の併用だったが、検査後にはホルモン療法単独に変更した。さらに患者24人(27%)が治療に対する決定を変え、うち9人は化学療法とホルモン療法の併用から化学療法をはずすことを希望した。

 「今回の結果から、この遺伝子検査が医師と患者による治療の決定に同時に影響を与えることが初めて示された」とLo氏は話した。 医師らは、この検査により患者68人(76%)において推奨した治療への信頼度が高まったと話した。
 一方、検査結果を受け取った患者は、自分たちが治療について決定したことへの葛藤と、自分たちが置かれた状況への不安が顕著に減少したと報告した。

 検査費用は日本円で約36万円かかるが、研究者らはこの検査により化学療法の支出を回避できる患者を選別でき、全体の費用削減につながる可能性があると説明している。

(森下 紀代美=医学ライター)
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2010年1月11日月曜日

MDV3100

MDV3100は第二世代の経口抗アンドロゲン剤で、ビカルタミド(カソデックス)よりも優れた抑制作用を示し、ビカルタミド抵抗性癌にも効果が見られるという。現在、ドセタキセル(タキソテール)の治療歴を有するホルモン非感受性前立腺癌患者を対象とした、国際第Ⅲ相臨床試験が行われている。2009年10月28日、アステラス製薬は米Medivation社とMDV3100の開発・商業化に関する契約を締結し、国内における開発ならびに臨床試験を検討中。
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前立腺がん:ステージD1

(ひげの父さんの掲示板書込み:2010年1月10日)
かなり進行した前立腺がんでも、ホルモン療法で共存をはかることもできれば、かなりの高齢者であれば、無治療のまま天寿をまっとうできることも珍しくはないのですが、比較的若い人の場合は、いつかホルモン療法に耐性が生じる日を恐れながら暮すよりは、「治せるものなら治してしまいたい」と思うほうが普通じゃないでしょうか。

こうした場合、治療法の選択しだいでその運命が大きく分かれるのは、5~6年前はステージCだったと思うのですが、今やそれがステージD1に移りつつあると感じています。ただし、ステージD1に対しては、ほとんど全ての泌尿器科医はホルモン療法を勧めるでしょうし、放射線治療医でもまだD1に対する積極的治療には否定的な見解のほうが多いはずです。

EBMに基づくデータが出そろうには、経過観察も含めれば5~6年はかかってしまうのが当たり前です。ガイドラインというのは、そうした時間を経て作成されるわけですし、それと同時に、特定の医療施設、特定の医師だけしかできない治療法じゃなく、多くの医療施設でも実施(再現)可能な治療法というのが重視されてもいるわけです。また、書かれていないことや、決められていない事項も当然たくさんあるわけです。

新しい治療法よりも標準治療を第一と考え、これに逸脱することや極端に遅れた治療法に警鐘をならすことは、格差是正や均てん化を図るという意味では非常に大事なことですが、ガイドラインに書かれていないやり方でも、治る可能性がわずかでもあるものなら、それに賭けてみようと思うのも、これまた当然でしょうし、そういうことも必要な自己決定の一つだと思うわけです。

海外では、こうした治療法も、治験(clinical trial)という形で、患者の選択肢として提供されているわけですが、日本では残念ながら、こうした情報は待っていても与えてもらうことはまずできません。なんとかしたいと思うなら、ガイドラインというのは法律ではありませんから、そうした道がまったく閉ざされているわけではありません。

開いている門はあるはずですが、そこまでの道案内がほとんどないのが実情です。むしろ、始めからそうした道案内をしてくれる医師に出合うことは稀だと思って、ここぞと思う医師や医療施設を、積極的に自分から訪ねていく姿勢が必要ではないでしょうか。
たとえそれがセカンドオピニオンであれ、サードオピニオンであったとしても。
始めからホルモン療法で良いということであれば、なにもこうした努力をする必要はないわけですから、それも含めて、自己決定が大事ということになるでしょうね。
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2010年1月7日木曜日

がんペプチドワクチン療法

市民のためのがん治療の会「がん医療の今 No.12」より、
http://www.com-info.org/ima/ima_20091202_nakamura.html
東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター長 中村 祐輔 教授
(以下はその要約です。一部表現が原文と異なる部分もありますので、詳しくは上記サイトをご覧ください)

がんの免疫療法は期待されつつも、そのエビデンスが必ずしも十分でない状況が長く続いていましたが、ようやく、外科療法、化学療法、放射線療法に続く第4の治療法として、ワクチン免疫療法が科学的に実証可能な治療法として認識されつつあります。

  外科療法や放射線療法は、限局がんには有効な治療法ですが、転移・再発がん、あるいは、手術やその他の治療を受けたが目には見えないレベルで全身に広がり残っているがんに対しては、限界がある治療法です。
  全身病としてのがんに対しては、現在では、化学療法が唯一の科学的にその効果が実証された治療法として認められています。
 医療関係者の間では、免疫療法と言うだけで顔をしかめる人が多いのですが、 その効果が科学的に十分実証がされないまま、進行がん患者さんにとって、生きる望みをつなぐ副作用の少ない治療法として、高額な細胞免疫療法などが広がり、患者さんやその家族の生活を圧迫していることが、大きな反感を買っている理由でもあります。

 丸山ワクチンや蓮見ワクチン、あるいは、養子免疫細胞療法などが非特異的免疫療法であるのに対し、がんワクチン療法は特異的免疫療法として区別されます。
 いろいろな種類のリンパ球を選別せずに増やして免疫を高める方法を非特異的免疫療法、
がん細胞の目印となるような分子を認識してがん細胞をやっつけるリンパ球だけを増やす方法を特異的免疫療法と呼びます。

免疫の基本的仕組みは、自分自身と自分でないものを見極め外敵の侵入を防ぐことです。外敵は攻撃しても、自分自身に対して攻撃が起これば、われわれにとって不都合なことがたくさん起こるため、このような免疫反応が起こらないような仕組みが備わっています。 しかし、最近になって、自分のタンパク質であってもそれを攻撃する細胞(細胞障害性リンパ球=CTL)がわずかながら残っており、これをうまく活用すると、これまで自分自身の細胞と見分けのつかなかったがん細胞も攻撃できることが分かってきました。
がんには、それぞれに特異的なタンパク質が存在しますが、それが細胞内で分解され小さなペプチド断片となり、白血球型が一致すればHLA分子と結合して細胞の表面に浮上します。がん細胞の表面にだけ存在しているこうした目印を人工的に作り出し、これをうまく見つけて反応してくれる細胞障害性リンパ球(CTL)を多く増やして注射してやれば、がんを叩くことが出来るという考え方で、これをペプチドワクチン療法と呼んでいます。
 ワクチン療法で重要なもののひとつは、細胞障害性リンパ球(CTL)で、このうち、主にがん細胞だけに反応するCTLを増やすことを目的としてがんワクチンが利用されるようになってきています。
人工的に合成したがん細胞の目印=ペプチド(9個か10個のアミノ酸をつなげたもの)を用いると、以下のことを科学的に検証することができます。
 (1)ペプチドワクチンに反応して患者さんの血液中で特異的CTLが増えていること、
 (2)CTLががんの組織に浸潤していること、
 (3)ペプチドワクチン治療を受けた患者さんの体内で増えたペプチド特異的CTLが本当にがん細胞を死滅させることができるかどうか

まだ限られた症例数ですが、ワクチンに反応するリンパ球の増えている患者さんは、そうでない患者さんに比して生存期間が延長していることが確認されつつあります。ペプチドワクチン療法ががん治療の一翼を担う治療法としての評価を受けるには、まだまだ不十分ですが、日進月歩で変わりつつあると言えるでしょう。

 注:がんペプチドワクチンの臨床研究をおこなっている施設は次の通りです。
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/nakamura/main/cancer_peptide_vaccine.pdf
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2010年1月6日水曜日

がん患者の精子保存

『がん治療によって精子をつくる能力がなくなった後に子どもをつくる可能性を残すため、 治療前に患者の精子を採取し 凍結保存しているのは、全国の大学病院とがんセンターのうち27%にとどまる・・・中略・・・自施設で凍結保存しているのは24の大学病院で、がんセンターはゼロ。』(京都大泌尿器科による調査:共同通信)

前立腺がんの全摘手術の副作用として、尿失禁や性機能障害が語られることは良くありますが、「不妊症(男性)」については、正面から語られることは、我が国ではほとんどありません。
しかし、ACS(アメリカがん協会)などのHPを見ると、前立腺がんの手術の副作用として、「ED」とは別に「不妊症」という独立した項目があります。(「リンパ浮腫」についても、頻度は少ないと書かれてはいますが、これも独立した項目となっています。)
精嚢で作られた精子は精管を通って前立腺内で尿管と合流するわけですが、手術ではこの精管を切断してしまうので、要するに避妊による「パイプカット」と同じことをするわけですね。
したがって、もはや人為的なことをしない限り、自然には子供の父親となることはできないので、子供を望む場合には、精子バンクへの登録について医師と相談するように・・・という説明がきっちり書いてあります。
前立腺がんの場合は、確かに高齢者が多いため、そういう話は今更、という気がしないでもないのですが、そうした希望の多い少ないにかかわらず、(精子バンクの良し悪しも別として)、患者としては、こうした情報も事前にはっきり知っておく必要があると思うのです。
世の中には、五十を超えていても、2~30代の女性と結ばれるといううらやましい人も、少なからず居られるわけですから(笑)
精巣腫瘍となると、若年者が多いため、これはまた非常に切実な問題となってきます。
日本では精子保存なんてどうしているんだろうと思っていたところに、ちょうど前述の記事が目につきました。

米国のHPを見ていると、「患者のための情報」の提供が実に細やかですね。もっとご紹介したいのはやまやまですが、私の語学力では、解読にも時間がかかって、よほど暇じゃないと、そう簡単にはできそうにありません。
医療関係者に奮起してもらいたいところなんですが、こうしたことには皆さん、あまり興味がないようで(^^;;;
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2009年12月28日月曜日

間欠療法と持続療法のいずれが有利か

(私自身の「掲示板」への書き込みの控え)

ガイドライン(06年)では、「有用性についての結論は出ていない」とされています。 
→エビデンスの実証がないかぎりガイドラインには反映されませんから、ガイドラインというものはそもそも保守的なんですね。

しかし、間欠的内分泌療法は、海外ではかなり以前から普及しています。
副作用の軽減・治療費の軽減く加え、安全であることも認知されていましたが、
国内では、その採用には消極的な医療機関がほとんどでした。

しかし、今年、泌尿器の専門雑誌「Urology View」Vol.7 に、千葉医療センターにおける臨床試験の結果が報告がなされています。
PSA非再燃率の比較試験が行われ、間欠療法のほうが、有意にすぐれているという結論です。
(例:75ヶ月経過時点のPSA非再燃率は、間欠投与85%に対し、持続投与60%)

「がんサポート情報センター」
http://www.gsic.jp/cancer/cc_14/index.html
では、東京厚生年金病院の赤倉先生が、間欠療法についての解説をなさっていたので、
こちらもご覧になってみてはいかがでしょう。
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2009年12月17日木曜日

PSA検診

PSA検診をすると受診者の約8%がPSA値4を超えるが、
生検などで癌が見つかるのは全体の1%程度。(←日経メディカル:赤倉先生)


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2009年11月27日金曜日

膣トリコモナス症が致死的な前立腺癌のリスクを高める

日経メディカル(2009. 9. 15)

 一般的な性感染症である膣トリコモナス症が、悪性度が高く致死的な前立腺癌のリスクをかなり高めるようだ。米ハーバード大学パブリックヘルス校のLorelei Mucci氏らの研究結果が、9月9日付けの Journal of the National Cancer Institute誌電子版に掲載された。

 最近の研究では、膣トリコモナス抗体の存在が、その後の前立腺癌の発症に関連することが分かってきている。また、この研究チームも以前、同抗体の存在が前立腺癌の発症と死亡に関連することを確認している。

 今回の研究では、673人の前立腺癌患者について、診断の平均10年前に採取された血液サンプルと、前立腺癌ではない 673人の男性の血液サンプルについて、血清中の膣トリコモナス抗体の有無を調べた。

 膣トリコモナス抗体が陽性の場合、前立腺癌のリスクは1.23倍になったが、統計的に有意ではなかった。ところが、同抗体が陽性の場合、前立腺外に広がった前立腺癌の発症リスクは2.17 倍、最終的に骨転移へと進行する前立腺癌の発症あるいは前立腺癌による死亡リスクが2.69倍になった。

 膣トリコモナス症は、抗生物質で容易に治療可能だが、男性の場合ほとんど症状がないうえに、女性と比べて検出が困難だ。「今回の研究結果が大規模な前向き研究で確認されれば、膣トリコモナス症の予防と治療が、悪性度の高い前立腺癌の、数少ない修正可能なリスク要因といえるかもしれない」と、Mucci氏は語っている。
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2009年11月14日土曜日

PSA値は副甲状腺ホルモンでも上昇

「前立腺生検は必ずしも必要とは限らない」

ウィンストンセーラム、ノースカロライナ-ウェイクフォレスト大学医学部の研究者とウィスコンシン-マディソンのウェイクフォーレスト医科大学と大学の研究者は、
前立腺特異抗原(PSA)の値の上昇は、体内の正常なホルモン活動によって引き起こされている可能性があり、必ずしも前立腺生検の必要性と結び付かないことを発見しました。
PSA値の上昇は、これまで前立腺癌の潜在的兆候を示すものとして、PSA検診の普及にも貢献していました。
しかしながら、研究者によると、副甲状腺ホルモン(血中カルシウム濃度を調節するために作り出される物質)が、前立腺癌と無関係な、いわゆる健康な男性のPSA値を押し上げている可能性があることがわかってきました。
これらの"非がん"PSA上昇が、多くの男性を不必要な生検に巻き込み、それがまた多くの不必要な治療につながってしまう恐れがあります。
「PSA値は前立腺がんだけではなく、前立腺に関する他の要因にも左右されます」と、研究責任者ゲーリーG.シュワルツ博士(MPH医科大学の癌生物学および疫学と予防の準教授)は言っています。

炎症やその他の要因でPSA値が高くなることもあります。PSA値が上がった場合、通常生検に回されることが多い。
問題は、男性の年齢にも寄りますが、しばしば、臨床的にはほとんど意味のない微小な前立腺癌が見つかってしまうことです。
臨床的に意味のないこれらのがんは、もし生検を受けなかったとしても、致命的ながんに浸展することはありません。
しかしながら、PSAのスクリーニングは普及してきており、より多くの男性に生検が施されています。
前立腺癌があると言われた男性の多くは、治療の必要がないにもかかわらず、治療を受けてしまうわけです。
現実には、未治療のままにしておいて致命的になりそうながんというのは、前立腺がんの生検診断において、6例中1例ぐらいしかありません。
前立腺生検率が高いため、過剰な治療が行われやすく、それが、勃起不全や尿失禁などの副作用の増加につながっているのが現状です。
シュワルツ氏はこのように述べている。

ハルシオンG.スキナー博士、MPH、とウィスコンシン大学のマディソンの共同執筆による研究は、Cancer Epidemiology"癌疫学"(Biomarkers&Prevention)の最新号に掲載されています。
研究者たちは、国民健康栄養調査2005-2006に参加した1273人から、現在感染症や前立腺の炎症がない人、過去1カ月で前立腺生検を受けていない人、調査時点で前立腺がん歴のない人を抽出しデータを分析した。
PSA値の増減には・・・年齢が高いほど増加傾向、黒人男性では増加傾向、肥満男性では低下傾向・・・などの傾向があるため、年齢、人種、肥満による影響を調整した結果、
血液中の副甲状腺ホルモン値が高ければ高いほど、PSAがより高い値を示す傾向があることが判明した。
副甲状腺レベルが通常範囲内の上位に位置する男性では、PSA値は43%増加していました。これらの多くは、泌尿器科医が生検をお勧めする範囲に含まれると言えるでしょう。

また、今回の発見は黒人男性にとって特に重要である、とスキナーが付け加えた。
副甲状腺ホルモンのレベルが高いと言われているのは黒人男性では約20%、白人男性では約10%である。
この差が、黒人のほうが、生検を勧められて無駄な治療につながる可能性が高いということだ、と述べた。

この発見は、医療者が前立腺がんのスクリーニングに際し、生検を必要とするのか、そうでないのかを選別するのに役立つはずだ。とシュワルツ氏は言っている。
前立腺癌よりむしろ副甲状腺ホルモン値が高いために、PSAが上昇している男性がたくさん居るはず。

副甲状腺ホルモンは、甲状腺内にある4つの小いさな腺、副甲状腺細胞によって作られています。
副甲状腺ホルモンは主として血液中のカルシウム濃度を制御しますが、最近の研究では、副甲状腺ホルモンが前立腺がん細胞の増殖を促進することも示されている。
シュワルツ氏の研究とスキナーは、前立腺がんでない男性においても、副甲状腺ホルモンが前立腺細胞の成長をうながすことを、初めて示唆しました。

この研究は、国立衛生研究所とアメリカがん協会からの助成金によって賄われました。


Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌11月号(2009;8,11,2869-2873)
米ウェイクフォーレスト医科大学のGary G. Schwartz 氏らの研究結果

PSA値の上昇は、前立腺の異常だけではなく、副甲状腺ホルモンの増加とも関連している。
血液中の副甲状腺ホルモン値とカルシウム濃度が高いほど、PSA値も高くなる。
(副甲状腺ホルモンは血液中のカルシウム濃度を制御する働きを持つ。)

副甲状腺ホルモンのレベルが正常範囲高値の男性は、正常範囲低値の男性と比較して、PSA値が43%高かった。これは、多くの場合で泌尿器科医から前立腺生検を推薦されるレベルである。

最近の研究では、副甲状腺ホルモンが前立腺の癌細胞の増殖を促進させることも示されているが、
この研究は、副甲状腺ホルモンが前立腺癌でない男性においても前立腺細胞の成長を促すことを初めて示した。

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2009年11月13日金曜日

樹状細胞ワクチン療法

(レーベンスクラフト最新医療情報2009年3月27日)

バイオベンチャーのテラは免疫機能の司令塔である樹状細胞の働きを高め、がんを狙い撃ちする治療法を医療機関に提供している。

この「樹状細胞ワクチン療法」は副作用が少なく再発や転移したがんにも効果を示すという。従来の治療法では治せなかったがん患者を救おうと次世代型の治療法確立を視野に入れている。

樹状細胞は体内の異物を食べて特徴を認識、リンパ球に異物の特徴を覚え込ませる。これによりリンパ球は異物に照準を絞って攻撃できる。テラの治療法では、がんに細胞に特有なたんぱく質の断片を再現した人工抗原「WT1ペプチド」を樹状細胞に与え、リンパ球への司令を出させる。

大阪大学が持つ人工抗原に関する基礎技術を導入した。阪大はがん細胞が増殖したり生存したりするのに必要なたんぱく質断片を発見、多様ながんに使えるWT1ペプチドを開発した。従来の人工抗原はがんの種類によっては使えなかった。

樹状細胞ワクチン療法を提供しているのは、信州大学医学部付属病院などテラが契約した全国で約10ヶ所の医療機関。患者の血液から単球と呼ぶ細胞を採取・培養して樹状細胞を作製する。

そこに人工抗原を入れ患者に注射。治療は4ヶ月ほどで終わるのが特徴だ。東大発の培養技術に阪大の人工抗原を組み合わせることにより、新たながんの免疫療法を生み出した。

免疫療法で主流の「活性リンパ球療法」はリンパ球を増殖させて体内に戻す。がん細胞を攻撃する「兵隊」を増やす手法だが、司令塔の樹状細胞が標的であるがん細胞の特徴をとらえていないために的確な命令が下せず、がん細胞を見逃してしまう恐れがある。

がん治療には外科手術や放射線治療など様々な手法があるとはいえ、転移したり、抗がん剤に耐性を持ったりしたがんの根治は難しい。樹状細胞ワクチン療法は、68万人いると言われているがん難民に新たな治療法を提供出来る可能性がある。

現時点でテラの樹状細胞ワクチン療法は臨床試験(治験)を実施しておらず、薬事法に基づく承認も受けていないため、保険適用外の自由診療として提供される。

樹状細胞を活用した治療法の歴史は浅く、エビデンス(科学的根拠)の蓄積も足りないのが実情。同社の累計症例数は1000件を超えているが、テラ以外では世界でも2000~3000件にすぎず、実績の積み上げが課題になる。
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2009年11月7日土曜日

粒子線治療装置を小型化(従来の10分の1)

(産経新聞 2009年10月13日)

患部を切らずにがん細胞を破壊する「粒子線治療」で使われる装置を従来の10分の1程度に小型化する技術の開発に、日本原子力研究開発機構光医療研究連携センター(京都府木津川市)の福田祐仁研究副主幹らの研究チームが成功した。現在は300万円前後かかっている粒子線による治療費も、新技術導入で約30万円に抑えられる見通しという。成果は13日付の米物理学会誌フィジカル・レビュー・レターズ(電子版)で発表される。

粒子線治療は高速で照射する炭素などのイオンが身体の表面ではあまり作用せず、がん細胞を重点的に破壊する効果がある。現在使われている粒子線治療装置は大型の加速器を使っているため、体育館サイズの施設が必要で治療費も高額となっている。

福田さんらは特殊なノズルを使って、真空中に高圧の二酸化炭素・ヘリウム混合ガスを噴射し、横からレーザー光を当てる手法で、炭素イオンなどを加速させる手法を開発した。この技術を使えば大型の加速器が不要になり、治療装置は教室サイズに小さくできるという。福田さんは「7年後を目標に試作機を完成させ、実用化のメドをつけたい」と話している。
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膠芽腫にウイルス療法が効果的

もっとも悪性度が高い脳腫瘍(しゅよう)「膠芽腫(こうがしゅ)」の増殖をウイルスを利用して抑える方法を、東京大のチームが見つけた

膠芽腫は脳腫瘍の約1割を占め、放射線や抗がん剤でたたいてもやがて再発し、患者の7割が診断から2年以内に亡くなるという。東京大医学系研究科博士課程4年の生島弘彬さんと東京大病院の藤堂具紀特任教授は、再発の理由は脳腫瘍のもとになる「がん幹細胞」が生き残るためだと考え、脳腫瘍患者から見つかった細胞増殖因子「TGFベータ」に着目した。その働きを抑える阻害剤を膠芽腫患者のがん幹細胞に作用させたところ、増殖が抑えられた。

ドイツの企業が脳腫瘍患者の脳にTGFベータ阻害剤を直接注入する臨床試験を実施中で、生島さんらは今回そのメカニズムを解明した。

チームの宮園浩平教授(分子病理学)は「がん幹細胞を阻害剤で無力化させ、残ったがん細胞を放射線や抗がん剤でたたくという組み合わせで、膠芽腫の治療が可能になるかもしれない。他のがんにも有効か今後調べたい」と話す。

膠芽腫は、脳腫瘍の約4分の1を占める神経膠腫(グリオーマ)のうち最も悪性とされ、年間10万人に1人の割合で発症。手術後、放射線治療と化学療法をしても平均余命は診断から1年程度で、特に再発した場合は有効な治療法はなかった。

藤堂特任教授らのウイルス療法は、口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルス1型を利用、3遺伝子を改変し、がん細胞だけで増殖するようにした。このウイルスをがん細胞に感染させると増殖し、感染したがん細胞を死滅させ、増殖したウイルスはさらに周囲のがん細胞に感染、次々と死滅させる。正常細胞に感染しても増殖しない。
ウイルス療法は、放射線治療や抗がん剤による化学療法と並び、新たな治療の選択肢になるのではないかとしている。
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