2011年02月23日
ゲームAIの二つの適用レベル
一つは、コンテンツ層。ゲームユーザーに触れる部分である。
もう一つは、デジタル空間。これは、ゲームを成り立たせている、
ソフトウェアが相互作用する空間である。
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ソフトウェア空間は、コンテンツ層へ向けて表現されるので、
この二つははっきりと区分けしにくいが、
その導入場所がユーザーに近い部分でユーザーを対象に展開されるものか、
或いは、ソフトウェア空間で、ソフトウェアを対象にされるかで、見分けることが出来る。
例えば、一般的な自然言語処理解析や最適化アルゴリズムは、
コンテンツとは独立なソフトウェア部分の処理であり、
キャラクターAIは、コンテンツ空間の中でユーザーに直接認識されるキャラクターという対象にまつわるAIである。
また、通常、キャラクターAIは、ゲームステージ上(コンテンツ層)で、ユーザーの仮託するアバターと出会う。
つまり、ロボットや、シーマンのような対人型ソフトと違って、ユーザーとAIがそれぞれ、
デジタル仮想空間上に参加することで、初めて、その仮想空間で相互作用する。
ゲームAIは仮想空間で生息するAIであり、現実空間で活躍するロボットや検索エンジンのAIとはそういった違いがある。
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2011年02月16日
「デジタルゲームの教科書」 フリートークラジオ第18回のお知らせ「ルールズ・オブ・プレイ(上)」(2/17(木)22:00-)
では、先日、発売されたばかりの
「ルールズ・オブ・プレイ(上)」
を翻訳されました、山本貴光様をゲストにお呼びして、本書の内容や翻訳について伺います。
日時 : 2月17日(木) 22時〜23時頃
DJ : 松井、三宅
上記の放送中、Social Stream で随時、質問や感想を受け付けます。
ゲームが見る夢、ユーザーが見る夢
これからの10年代のゲームの方向性について語ったものを、
「ゲームが見る夢、ユーザーが見る夢」というタイトルでまとめたところ、
3000を超えるアクセスを頂く反響がありました。
togetterまとめ
「ゲームが見る夢、ユーザーが見る夢」
http://togetter.com/li/100963
また、これを土台に、いろいろな議論の展開を頂きました。
そういった意味で、何らかにせよ議論の出発点にして頂ければと思います。
2011年02月14日
「冬の恋人たち」(小説)
「冬の恋人たち」
* * *
それは深い雪が降った日のことだ。僕は校庭で一緒に遊んでいて怪我をした友人の見舞いに行った。当時、僕ら3人は、何気なく一緒につるむようになって、捉えどころのない漠然とした 高校生活というものを、よくわからないまま一緒にふらふらしていた。
友人の一人が、 休み時間に遊んでいるうちに、校庭で怪我をして入院した。たった2人になってしまった僕らは、 暇と寂しさを紛らわすために、その病院へ足繁く通った。それ以外に、放課後でするべきことも、 たいして思いつかなかった。結局のところ、学生時代の僕には、ごく親しいと呼べる友人は彼らしかいなかったわけだ。
その病院は、山の中、と言ったような、郊外の高台にあった。まるで、あまりに大きな屋敷を、 無理をして山にあらがって作ったように、生い茂る森に囲まれて、かろうじて、その灰色のコンクリートで出来た姿を、遠くからでも確認するほどに見せていた。僕らは、雪の降る坂道を、話すこともなく半時ほど登って、そこへたどり着いた。
* * *
午後の病院は静かで、ロビーに座っている人は、料金支払いか、 薬を待っているだけで、テレビから流れるつまらないニュースが館内に響いていた。 受付でいつものように記帳をしながら、係りのおばさんに、また来たの、学校は暇なのか、面会期限までには帰れ、などと何十回も聞いただろう会話をくり返して、やっと人心地のつくロビーに入った。清潔ではないが、 暖かい空気が流れて来る。
友人は僕にお菓子を買って来るように言って、階段を登って行った。お見舞いのお菓子は、だいたい300円程度のものを、交替で彼と買って行くことになっていた。そうはいっても、食欲のたいしてない病人の前で、僕らが殆ど食べてしまう、スナック菓子とポッキー、ハッカ飴を買って、ロビーをまっすぐに横切って行った。
緑色の床が雪の明かりに照らされて、そこに彼女は立っていた。
ピンク色の柄がついたパジャマに クリーム色のカーディガンを着ていた。彼女は雪を見ながら、少しも動こうとしなかった。まるで、 その廊下は、真っ白になった窓と一緒に時が止まっているような錯覚におそわれた。 僕は、まるで、金縛りに合ったように、動くことが出来なかった。その静寂があまりに神聖に感じられて、破ることを畏れたのだ。ただ、僕は彼女の後ろ姿をずっと眺めていた。彼女も少しも動こうとはしなかった。ずっと窓の外にある何かを見つめる彼女は、白い風景の中で、止まったように見えた。でも、ずっと見ているうちに、 少しずつ、彼女が呼吸をしている、わずかな動作が服の上から感じられるようになった。それはゆっくりとした呼吸だった。
今、この世界全体が、そんな微かなリズムで振動しているように感じられた。
声をかけようと思った。なぜ? 名前も、顔さえ見たことのない人間に?
震えていた。まるで僕の声とは思えなかった。しまった、と思ったときには、 遅かった。それまでの完全な静寂は破られ、彼女はゆっくりと首を回して僕を見た。
* * *
少し乱れた髪の 向こうから、まっすぐに穢れのない二つの瞳が僕を見つめていた。そんな無防備な瞳にさらされたのは、 生まれた初めてだった。僕は立ち尽くして、息を呑んだ。その瞬間は永遠に思われた。その瞳の向こうの 彼女という存在が、この時間と空間の向こうで、確かにこの世界に息づいていることがはっきりと感じられた。
彼女の頬の肌は、雪のせいか、とても白く見えたが、赤くはれたほっぺたが、この世の存在であることを印していた。やがて彼女は、ゆっくりと再び、窓の外へ目をやった。 僕は、その時、僕が、この静寂に彼女と共に存在することを、許されたように思えた。僕は、この白さと 静けさを、彼女と共に感じる特権を許されたように思えたのだ。だから、僕がここで何かを言うことが 自然に思えたのだ。
「雪を、雪を見ているのです」彼女は言った。
「天上で離れた雪が、こうして地上で再び出会えるのをずっと見ているの。
遠く失われた絆が、再びここで結ばれるのを、私はずっと見ている...。」
「雪が雪を待っている」
「雪が雪を待っている」僕と彼女の口から同時に同じ言葉が出る。それは、古いイギリスの詩だった。
「あなたもその詩をご存知なのね。」彼女は、窓を見つめたまま話し続ける。
「雪が雪を待っている。そう、白さが白さを求めるように、この世界が白く閉じて行く。 私は、こうして、世の中の外から、そうやって世界が白く隠されていくのを見続けてい る。 それはずっと昔に決められた約束事のように、私はただ、彼らを見守っている。」
僕は、その姿を見送る。それは、まるで完成されたフィルムを何度も見返しているように、ゆっくりと鮮明に浮かび上がる。今でも僕の脳裏にはっきりと焼きついている。窓の外には、一面の雪、 彼女のピンク色のパジャマとクリーム色のカーディガン、深い緑の廊下...。僕は、ただ一人残される。
何かが起きたようで、まだ何も起きていない、そして、何もなかったかの時間のように。 僕は再び、廊下を引き返して喧騒の中に戻って行く。
息が苦しい。胸が激しく鼓動する。僕は菓子袋を抱えたまま、病院の出口を出る。
雪が僕の上に積もる。そうだ、と僕は理解する。僕は恋に落ちたのだ。
(冬の恋人たち 終わり)
2011年02月13日
グローバル・ゲーム・ジャム 2011 レビュー祭 Ustream
ggj_review_2011.jpg
7500人が参加し1500個のゲーム http://www.globalgamejam.org/games/2011
が作られた、世界同時48時間ゲーム製作イベント
グローバル・ゲーム・ジャム(Global Game Jam) 2011
http://www.globalgamejam.org/
今回は製作された1500個のゲームから、30個ほどのゲームを選んで
一つ数分でレビューしながら談笑するイベントが、
東京工科大学 @_Banyak Ustream 放送 http://www.ustream.tv/channel/banyak-ch
で開催されました。
録画 http://www.ustream.tv/recorded/12640456
GGJ はゲームを製作するだけではなくて、出来たゲームをレビューすることにも、
もう一つの大きな意義があります。「レビューするまでがGGJ」。その意義を
伝えられたらと思います。上記の録画からご覧ください。
この放送のつぶやきまとめはこちらです。 http://togetter.com/li/100269
@kono3478 セレクション
Snobli Run
http://www.globalgamejam.org/2011/snobli-run
Ned, You Really Suck the Life Out of a Room
http://www.globalgamejam.org/2011/ned-you-really-suck-life-out-room
Bewbees
http://www.globalgamejam.org/2011/bewbees
DEATH PIZZA
http://www.globalgamejam.org/2011/death-pizza
@nosawa さんセレクション
Monochrome
http://www.globalgamejam.org/2011/monochrome
Sumi-E
http://www.globalgamejam.org/2011/sumi-e
Hi No Kaze - by Team Jetset Lepers
http://www.globalgamejam.org/2011/hi-no-kaze-team-jetset-lepers
Burn, Comic, Burn
http://www.globalgamejam.org/2011/burn-comic-burn
Battery Life
http://www.globalgamejam.org/2011/battery-life
Mate or Die
http://www.globalgamejam.org/2011/mate-or-die
@miyayou セレクション
tree.
http://www.globalgamejam.org/2011/tree-0
lextinction
http://www.globalgamejam.org/2011/lextinction
Phoenices
http://www.globalgamejam.org/2011/phoenices
A Place To Bury Strangers
http://www.globalgamejam.org/2011/place-bury-strangers
The Last Book
http://www.globalgamejam.org/2011/last-book
@yumatsui セレクション
Butterfly Garden
http://globalgamejam.org/2011/butterfly-garden
Tilting Zombies
http://www.globalgamejam.org/2011/tilting-zombies
KAZZ.ED
http://www.globalgamejam.org/2011/kazzed
From Beyond
http://www.globalgamejam.org/2011/beyond
Benny Lava
http://www.globalgamejam.org/2011/benny-lava
Zombie Sheep
http://www.globalgamejam.org/2011/zombie-sheep
@mkmtut セレクション
Somyeol2D
http://www.globalgamejam.org/2011/somyeol2d
Dino Fling!
http://www.globalgamejam.org/2011/dino-fling
東京工科大学セレクション
Super Sneeze Galaxy
http://www.globalgamejam.org/2011/super-sneeze-galaxy
Rush Ball
http://www.globalgamejam.org/2011/rush-ball
Black Mold
http://www.globalgamejam.org/2011/black-mold
Happy Utopia
http://www.globalgamejam.org/2011/happy-utopia
2011年02月10日
「デジタルゲームの教科書」 フリートークラジオ第17回のお知らせ(2/10(木)22:00-)
「デジタルゲームの教科書ラジオ」http://www.s-dogs.jp/dgame/index.html
ですが、
第17回目は、ゲストとして、年度末に発売された
「ゲームエンジン・アーキテクチャ」http://www.sbcr.jp/products/4797360714.html
Jason Gregory 氏はアメリカから繋ぐため、後、早朝ということになりますので、
とりあえず予定ということでお伝えいたします。
よろしくお願いします。
アルベルタ大学におけるゲームAI研究とその成果
アルベルタ大学ゲーム研究室があります。
The University of Alberta GAMES Group
http://webdocs.cs.ualberta.ca/~games/
EA や Bioware のゲームのAIを実際に作っています。
特に、Bioware のゲームAIシステムを、まとめて作成しています。
Never Winter Night の スクリプトシステム 「Script Ease」
http://webdocs.cs.ualberta.ca/~script/
Dragon Age におけるパス検索システム
http://blogai.igda.jp/article/29628420.html
などです。
どちらも、一つのAIシステムを丸ごと大学で作ってしまっているのが特徴です。
2011年02月03日
ゲームにおけるプロシージャル技術とは何か?
dGame_Radio_miyayou_20110203_.jpg
本日のラジオの資料(一枚だけ)をアップしました。
ゲームにおけるプロシージャル技術の定義は難しいところがあります。
それは、プロシージャル技術は、特定の技術ではなくて、技術の使われ方と効果によって、
そう名付けられるからです。定義も考える次元ごとに複数用意しました。
[参考] 【CEDEC 2008】ゲーム開発のためのプロシージャル技術の応用 (Inside Games)
http://www.inside-games.jp/article/2008/09/11/31121.html
ゲームAI連続セミナー第6回「次世代ゲームにおける自動生成技術」資料
http://page.freett.com/gameboy/gate.html?gameai6.zip
昨年、出版した「デジタルゲームの教科書」では、
毎回、著者をお呼びして、継続してインターネットラジオを続けております。
http://www.s-dogs.jp/dgame/index.html
第16回は、第22章「プロシージャル技術」について、三宅が解説します。
教科書があった方がいいですが、なくても大丈夫です。
2月3日(木曜日) 22時頃スタートです。
ご興味のある方は、上記サイトまでお越しください。
Social Stream から、書き込みや質問も可能です。
「デジタルゲームの教科書」 フリートークラジオ第16回のお知らせ(2/3(木)22:00-)
第16回は、第22章「プロシージャル技術」について、三宅が解説します。
2月3日(木曜日) 22時頃スタートです。
ご興味のある方は、上記サイトまでお越しください。
2011年01月31日
Life Game Shooter - Global Game Jam 2011 -
Global Game Jam 2011 http://www.globalgamejam.org/
という、世界で同時に48時間でゲームを作るイベントに参加して来ました。
自分は二日目から参加しました。
一人チームでしたが、ライフゲームを題材としたシューティングゲームを作りました。
ダウンロードして遊べます。
Life Game Shooter
http://www.globalgamejam.org/2011/life-game-shooter
(矢印キーで移動。スペースキーで撃つべし、撃つべし)
※(注記)普段、俯瞰視点からしか見れないライフゲームを、内側から楽しむ、というのがコンセプトなので、自機あたりはないです。
基本部分を作った、1月30日(日)17時の時点で GGJ のサイトにアップロードしなければならかったですが、
ブログへのリンクを張れるみたいなので、このページへのリンクを貼っておこうと思います。
フル実装が完成したら、このページにアップしようと思っています。