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S17研究プロジェクトの構成
この新たな課題に対して有効な技術を効果的に開発すべく、現在の研究テーマリーダーを中心に1年間の議論を重ねて、4つのテーマからなる研究構成を設計しました。具体的には(1)災害・事故は本質的に非定常的な事象であることから、非定常的なリスク要因を解析し、評価するためのリスク評価手法の開発を行い、また、リスク管理のための情報基盤を確立するテーマ1、(2)端緒的な情報から異常を検知し、迅速な解析と対応を支援し、また、将来の推移を予測し得る拡散予測、汚染影響予測手法の整備を行うテーマ2、(3)緊急的な事態に対して、迅速かつ多様な物質に対応可能な分析技術の開発を可搬型、設置型双方を組み合わせて開発するテーマ3、 (4)化学物質の所在や排出可能性を提供する情報基盤と事後の対策技術の開発を目標とするテーマ4、の4テーマによる研究構成で進めることにしています。ここで、非定常的な環境リスクと言うのが一つの概念となると思っていますが、この用語はまだ未確立とも思われ、この研究では災害・事故において想定されうる突発的な、不測の、あるいは破壊的なさまざまな時間スケールの事象を総称して非定常という語を考えることにしています。
4テーマによる研究によって、影響の評価、異常検知、影響予測、状況把握、リスク評価、そして行政対応の各側面において平常時から異常発生、緊急対応、汚染の継続期(収束期)に求められる課題群をカバーするように考えています。この中には、化学物質の基礎情報、社会における対応力のあり方、非定常環境での影響評価、平常時に対する異常検知の手法、拡散予測手法、漏出・発生のシナリオ、広範な物性範囲をカバーし得る可搬型及び設置型の分析手法、PRTR等既存情報に基づく取扱量等の把握と関連部局との連携、残留監視に基づく対策技術などの課題が含まれると考えて4テーマとそれぞれのサブテーマを構成しています。
これらの研究を進めることにより、災害、事故に伴う環境リスクによる環境保全上の支障を最小化するリスク評価と管理の科学的手法と知見、情報を体系的に提示し、これによって環境研究技術推進戦略に言う行政ニーズに対して直接的かつ包括的な貢献を行うことを目指します。また、災害・事故時に懸念の可能性が高い物質リストの構成、新たな分析装置の開発とその応用に取り組むことによる分析機器技術発展の支援、多くの公的研究機関、⺠間分析機関の協同による連携体制の強化、化学物質に係る行政部門と研究部門の連携体制の強化などの副次的な成果を期待することが出来ると考えます。また、本研究の成果は、消防、危険物等災害などの防災諸分野とも共有、提供され、全体として我が国の災害対応力の強化に資するよう考えています。