2023年8月1日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
楽天モバイル株式会社
NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」(以下、本事業)の一環で楽天モバイル(株)は、汎用(はんよう)ハードウエアとクラウド技術を用いた完全仮想化「Stand Alone(SA)方式5Gモバイルネットワーク(5G SA)」無線アクセス装置を構築し、商用化に向けた各種研究を完了しました。
本事業では、仮想化技術を用いて5G SA、RANネットワークスライシングの実装、各種機能拡張と性能向上を行い、専用のハードウエアおよびソフトウエアを必要とする従来型のモバイルネットワークと比較して、設備投資(CAPEX)・運用コスト(OPEX)を30%以上削減しました。これにより汎用ハードウエアを用いた、経済性の高い5G SAの普及が大きく加速されます。
楽天モバイル(株)は今後、本技術を商用の5G SAに導入し、傘下の楽天シンフォニー(株)を通じて日本発かつ世界最先端の完全仮想化5G SAプラットホームの世界展開を加速します。
5Gおよびポスト5G社会の進展にともない、超高速・超低遅延・多数同時接続といった特徴を活用したサービスの需要増加が予測されています。各種サービスでの高度なネットワーク品質要求に対し、高い信頼性や経済性を持つ通信装置の開発が必要となります。
このような背景の下、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、本事業※(注記)1においてポスト5Gに対応した情報通信システム(以下、ポスト5G情報通信システム)の中核となる技術を開発することで、日本のポスト5G情報通信システムの開発・製造基盤強化を目指しています。その一環で楽天モバイル株式会社(以下、楽天モバイル)は、2020年7月より本事業で「仮想化5G無線アクセス装置の研究開発」(以下、本テーマ)に取り組んできました。
本テーマでは、5G SA※(注記)2における、汎用ハードウエアとクラウド技術を用いた完全仮想化5G無線アクセス装置の拡張に取り組んできました。そして今般、超高速・超低遅延・多数同時接続を実現するRANネットワークスライシング※(注記)3の実装、各種機能拡張および性能向上を実施し、商用化に向けた各種研究を完了しました。その結果、クラウドプラットホームやソフトウエア処理に起因するオーバーヘッド(処理の増加)に対処することで、既存LTEネットワークに比べて3倍以上の接続端末数のサポートが可能となりました。
今回の成果により、専用システム(専用のハードウエアおよびソフトウエア)を用いた従来型のモバイルネットワークと比較して、設備投資(CAPEX)・運営コスト(OPEX)※(注記)4を30%以上削減し、高信頼性・柔軟性・経済性を持つ5G SAの構築が可能になります。
仮想化技術を用いた無線アクセス装置を用いて、5G SAの各種基本機能のエンドツーエンド接続試験を完了しました。これにより、5G SAサポート端末と楽天モバイルの5G SAを用いて無線からコアネットワークまで完全仮想化された5G SA上での通信を可能にしました。また、商用展開時の運用効率向上のため、無線アクセスネットワークの構築から運用・保守までを自動化する仕組みを構築しました。
NEDOの委託事業「AIを用いた5Gスライスオーケストレーション高度化技術※(注記)5」と協調し、RANネットワークスライシングの機能開発を行いました。これにより、5G SAの最大の特徴の一つである超高速・超低遅延・多数同時接続の実現が可能となります。これらの特徴の検証例として、日本電気株式会社(以下、NEC)の映像解析技術を搭載した侵入検知システム(FieldAnalyst for Scene Understanding※(注記)6)と、本研究で開発した5G SA上で動作するRANネットワークスライシング機能を連動するシステムを構築しました(図2)。その結果、侵入検知時にRANネットワークスライシング機能によって、リアルタイムに5G無線帯域を拡張し、通常時より高画質かつ低遅延で映像監視を行うことが可能となり、本機能の有効性を確認できました(図3)。
仮想化技術の導入にともない発生するクラウドプラットホームやソフトウエア処理に起因するオーバーヘッドを考慮した上で、今後ネットワークに要求される性能向上や機能拡張を見据えた研究項目を設定し、開発と検証を行いました。特に、基地局のDistributed Unit(DU)※(注記)7、Radio Unit(RU)※(注記)8サポート数拡張では、1vCU(Virtualized Central Unit)※(注記)9あたりのセル※(注記)10数を256セルまで拡張することによって、クラウドリソースを削減し、従来型LTEネットワークに比べて3倍以上の接続端末数のサポートが可能となりました(図4)。また、TCP stabilizer※(注記)11検証では、仮想化環境下の最適な位置にTCP stabilizerを配置することによって、複数端末によるエンドツーエンドでのTCP通信トラフィックの安定化と総合的なスループットの向上を確認しました(図5)。
本研究成果を商用の5G SAに導入することで開発や運用コストが低減され、あらゆるモノがインターネットでつながるIoTなど、5Gネットワークを用いたさまざまなサービスでの高度なネットワーク品質要求に柔軟に対応できます。これにより、現状の通話・インターネット閲覧などの用途だけではなく、暮らしやビジネス上の利便性向上にも寄与することが期待できます。
楽天モバイルは、本技術を商用の5G SAに導入し、新たなサービスや産業の創出を促すことで生活の利便性向上や産業の発展に貢献するとともに、傘下の楽天シンフォニー株式会社を通じて日本発かつ世界最先端の5Gモバイルネットワークプラットホームの世界展開を加速いたします。
NEDOは、本技術を始め、今後もポスト5Gに対応した情報通信システムの中核となる技術を開発することで、日本のポスト5G情報通信システムの開発および製造基盤の強化を目指します。
NEDO IoT推進部 担当:田上(信)、小池 TEL:044-520-5211
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