審査委員会奨励賞第2回SDGs建築賞(大規模建築部門)
「Port Plus」
講評
本建築は、大林組の研修施設として建築されたものであり、我が国初の高層純木造耐火建築物(本建築物は11階建)を実現したことに最大の特徴がある。本建築物では木材使用量・炭素固定量を増大させるために、構造部材をすべて木造としているが、今後の木造中高層建築物のプロトタイプとなることを目指し、従来のS 造やRC 造の構造形態を木に置き換えたものではなく、宿泊室のサイズや運搬上の効率性を考慮し2.8mという独自サイズのユニットを基本としている。省エネ性能については、BEI 0.46(創エネ含む)と一定レベルに達しており、その後の運用実績においても、コロナ禍明けによる活動再開時期であるにもかかわらずコミッショニングやICR技術を活用した空調制御・ブラインド制御等を導入することで、設計性能を超える60%以上のエネルギー消費量削減を実現している。構造躯体も含め木質化を徹底することで躯体の軽量化を実現した結果、従前建築物(6階建て)の地盤・基礎をそのまま活用する方式で11 階建てを実現し、鉄やコンクリートを使わないことによるCO2削減効果を含め、エンボディドカーボンを約24%削減することに成功している。木材使用量は約2000m2、約1,652tのCO2吸収効果を持っていることを合わせ、ゴール15「陸の豊かさも守ろう」やゴール12「つくる責任つかう責任」、ゴール13「気候変動に具体的な対策を」に寄与する取組であると言える。また、宿泊室においては、睡眠の質向上のための環境制御システムが採用されており、現在はタブレット端末による管理となっているが、将来的にはセンサーによる自動制御も想定され、事務室においても、各階に置かれた大型タッチパネルスクリーンを通じた利便性と環境意識の向上のための仕掛けが施されるなど、ウェルビーイングの点でも様々な工夫が施されておりゴール3「すべての人に健康と福祉を」に貢献するものとなっている。自社の研修施設という性格上様々なことを試行できる条件は整っており、ここで実装された技術等がそのまま一般化できるものではないが、本計画の取組はSDGsに寄与するものであるという点で高く評価できるものである。