国土交通大臣賞第2回SDGs建築賞(大規模建築部門)
「古平町複合施設かなえーる」
講評
北海道は積丹半島東部中央の日本海側に位置する古平町の「古平町複合施設かなえーる」は、古くなった町役場と文化会館の二つの施設の機能をあわせた建築である。津波の浸水レベル以下だった旧役場からより安全な高台の敷地に移動し、地域コミュニティの中心施設かつ防災拠点となるよう整備された。北海道の自治体としてはじめて掲げた町のゼロカーボンシティ宣言にふさわしい建築にするため、北海道の公共施設ではじめてZEB Readyの認証も取得した、環境配慮建築である。建物正面から入ると階段のある吹き抜けがあり、その左側が庁舎機能で右側が交流機能となるホールや図書館と、誰にでもわかりやすい空間構成となっている。外観はガラスとコンクリートの壁柱で覆われ、4方向に多数の窓が設けられており、内部のどこにいても町の風景が目に入る開放的なつくりとなっている。一方北海道の気候から冬でも暖かい内部環境を実現するため、高い断熱性能を確保している。外壁と屋根は外断熱とし、コンクリートは蓄熱体として機能している。また内部に露出したコンクリート面には輻射冷暖房を設置し、快適な内部空間を実現している。エネルギー源としては、地中熱ヒートポンプを採用し、中間期には大きな換気窓を用いて外気を取り入れるなど、自然エネルギーも積極的に利用している。竣工後2年間は設計者がエネルギー等のモニタリングを行い、利用者とともに使い方を検討して、高いレベルの省エネを実現している。内部には、地産地消の観点から北海道産のカラマツを使った集成材等を利用し、室内側のコンクリート打ち放し面にも型枠にカラマツを採用して、木目が施されたやさしい仕上げとなっている。さらに和室では、その使用済み型枠でつくった天井ルーバーを再利用するなど、資源を大事にするという姿勢も建築として表現している。あらゆる年代の町⺠が利用することから、ユニバーサルデザインにも力を入れている。現地視察の当日は、小学生がユニバーサルデザインについて学ぶイベントも行われていた。またRC打ち放し壁のP コーンあとに地元の子供たちが描いた絵を埋め込むことで、⻑く愛着を持ってもらえるように工夫している。ホールや調理実習室などは、可動の間仕切りで様々なタイプの活動に対応できるようになっている。このように、町に開かれた交流施設として、冬でも快適な空間を確保する省エネ建築となっているだけでなく、地域材としての木材の利用や省資源にも積極的な設計となっていることや、防災拠点としても高い性能を有していること等から、SDGsの数多くのゴールを目指し、実現している建築となっていることを高く評価し、国土交通大臣賞として選出した。