国土交通大臣賞第5回サステナブル建築賞(商業施設その他部門)
「東京電機大学東京千住キャンパス」
講評
このプロジェクトは、都心部にあった大学キャンパスの移転計画である。敷地は駅前であり、すこぶる利便性の高い立地である。ここに分棟形式で4棟の校舎棟が計画されている。特筆すべきは、街の中に溶け込むかのような配置計画である。建物群の中央を公道が貫き、その足もとも開放されている。各所のランドスケープの提案も充実しており、質の高い都市空間が形作られ、街へと提供されている。都市型の大学キャンパスとして、周辺への高い意識が感じられるものであった。
建築の外装は、洗練されたカーテンウォールとなっており、技術的にも近赤外域再帰反射フィルムなどの新たな技術が実験的に組み込まれ、意欲的なファサード・デザインといえよう。ここで提案されているファサードの考え方は、基本的にはオフィスビルのそれと変わらないが、一部アルコーブ状に手動開閉式の自然換気口が設けられ、デザイン上のアクセントとなるなど、性能を確保するだけのファサード・デザインに終わらせないという、設計者の強い意思がうかがえた。
機械設備的にも、学校という特性を活かし、縦連結型の蓄熱槽を設け、時間差による熱融通を行うユニークな試みがなされている。蓄熱槽は平面の中央に置かれ、「見える化」され、利用者にアピールするものとなっている。発注サイドの研究的なスタンスが、うまく計画にも汲みあげられている。空調や照明の管理には高度な自動制御システムが実験的に提案されている。その成果を今後の建築設備にフィードバックして行こうという発注者・研究者の姿勢もすばらしいものといえよう。
ただ学校建築としてみたとき、教育的な視点から、環境行動を呼び起こすような工夫があればとの感は残った。さらにそれがデザイン・計画に昇華されれば、学校建築としての環境デザインの大いなる可能性を切りひらくことにつながろう。そういった可能性が見えてきたということは、それだけレベルの高い提案がなされた作品であることの証左でもある。関係した建築主、研究者、設計者、施工者、いずれもの高い意識に基づいたプロジェクトして、高く評価されるものである。