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VOL.208 OCTOBER 2025
KAWAII CULTURE FROM JAPAN 世代を超えて愛され続ける「kawaii」文化の先駆者 水森(みずもり) 亜土(あど)さん


幅広い世代から支持される水森みずもり 亜土あどさんのイラスト
イラスト提供: 亜土工房

女の子や猫などの動物たちを愛らしくデフォルメし、可憐な雰囲気のイラストを描いてきた水森みずもり 亜土あどさん。そのキュートで自由な世界は1960年代から女性を中心に人気を誇っている。今もなお「kawaii」文化の牽引者であり続けるアーティストの人柄と作品の魅力を紹介する。

2020年代に入り、日本では「レトロかわいい」という言葉が流行している。懐かしさを感じさせる古風で愛らしいデザインやファッション、特に1960年代から1980年代の文化が持つ、温もりを帯びたアナログ感やデザインが再評価されているのである。中でもイラストレーター・画家・歌手・舞台女優として活躍してきた水森 亜土さんのイラストを用いた『亜土ちゃんグッズ』は、「レトロかわいい」を牽引するアイテムだ。水森さんのイラストは、ポップでカラフルに彩られた女の子を描いたかわいらしい作品から、大きな瞳にふわふわの髪を持つロマンティックな女性を描いた作品まで様々なタッチで表現されており、1960年代から現在まで、幅広い世代から支持を得ている。彼女のイラストをあしらった『亜土ちゃんグッズ』はハンカチ、文房具、オルゴール、ファンシーケースなどに展開され全国の百貨店や文具店で人気を博し、当時の少女たちの心を掴んでいった。近年はマスコットキーホルダーや刺繍アート、モバイルアクセサリーなどの現代の感性にも響くアイテムが続々と登場している。なぜ彼女の作品はこれほどまでに時代を超えて愛されるのだろうか。


1970年代に発売されたハンカチは水森さん自ら制作に積極的に携わっていた「亜土ちゃんグッズ」の原点ともいえる商品。
写真提供: 河出書房新社

現在販売されている水森 亜土さんのイラストがあしらわれたアイテム。スマートフォンケースやモバイルバッテリーなど最新ガジェットがレトロな雰囲気に。
写真提供:株式会社グルマンデーズ

水森さんは東京都中央区日本橋生まれ。2020年に出版されたエッセイ集1によると、芸事が得意で華道の先生であり日本画家でもあった母親が「カバンの中にはいつもスケッチブックと色鉛筆を入れておいてくれた」ため、幼少期から絵を描いていた。ジャズ音楽、タップダンスなどの芸術を好み、好奇心旺盛な少女時代を過ごした。高等学校を卒業後、当時は珍しかったハワイの大自然が広がるモロカイ島への遊学(海外留学)を経験し、「自然豊かな島で暮らしているうちに、人生観が180度変わりました」と振り返るほど貴重な体験となった。母親との約束で、当時ハワイで毎日描いていた絵日記のイラストが帰国後に評価され、イラストレーターとしてのデビューのきっかけとなった。同時期にジャズシンガーや舞台女優としての初舞台を踏むなど、多方面で活躍するアーティストとなった。


水森みずもり 亜土あどさん
写真提供: 亜土工房

水森さんの名前が全国的に知られるようになったのは、教育番組「たのしいきょうしつ」でのパフォーマンスである。透明なアクリル板に両手で絵を描き、多くの視聴者を驚かせた。このパフォーマンスは「番組オーディションのときに特技を聞かれ、「両手で絵が描けます」と答えたのが誕生のきっかけだった」2とされる。短い時間に鮮やかで愛らしいイラストを描き出す「亜土たんコーナー」は本人の明るく愛嬌あるキャラクターと相まって人気を集め、1970年代以降、水森さんの描くイラストは多くの商品に採用され、国民的な人気を確立した。

当時人気だった漫画雑誌「別冊少女フレンド」3の表紙を担当するなど、イラストレーターとしての地位を確立する一方で、舞台女優やジャズシンガー、油絵画家など多方面にわたり活躍してきた水森さん。「一番好きなのは…やっぱり絵が好きなのかな。世の中に出したいと思って描いてないんですよ(中略)歌や芝居と違うところは絵だけは一人じゃないと描けないってことかな。孤独と静寂っていうか」2と絵と向き合う時の思いを吐露している。


大きな瞳にふわふわの髪、愛らしい髪飾りなどに彩られた少女を描いた水森さんのイラスト
イラスト提供: 亜土工房

水森さんが描く女の子はロマンティックで愛らしいが、じっと見つめているとどこかアンニュイさや寂しさがにじみ、水森さん自身の内面にあるクリエイティブへの想いが吹き込まれているようだ。ジャズや演劇で培った豊かな表現力があるからこそ、単なる可愛らしさを超えた奥深い魅力を持つ水森さんの作品。その感性は後に発展し多様化する「kawaii」文化に通じる自由さをたたえながらロリータファッション4や「夢かわいい」5といった女性たちの表現とも響き合い、今もなお多くの人々に愛され続けている。

By MOROHASHI Kumiko
Photo: Ado Studio; Gourmandise Co., Ltd.; Kawade Shobo Shinsha, Ltd

cADO MIZUMORI

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