生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR: Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)の推進のため、Eco-DRRのポテンシャルがあると考えられる場所を可視化する「生態系保全・再生ポテンシャルマップ」を作成するために必要な基礎情報のダウンロード可能なデータを掲載しています。
基礎情報説明ページ
生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR: Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)は生態系の保全・再生を通じて防災・減災や生物多様性を含めた地域の課題を複合的に解決しようとする考え方です。Eco-DRRには、洪水緩和に向けた湿地の保全・再生や、土砂災害の防止や水源涵養を目的とした森林整備、沿岸域の海岸防災林や河川の水害防備林の保全など、様々な自然災害を対象とした幅広い取組が含まれます。また、Eco-DRRは防災・減災や生物多様性の保全に寄与するだけではなく、地域に自然と触れ合う場を提供するといった社会的な効果や、エコツーリズムの実施等による経済的な効果、さらには、森林や泥炭湿地などの自然生態系は二酸化炭素の吸収源にもなるため、気候変動緩和策としての効果も期待できます。 Eco-DRRを推進するにあたって、Eco-DRRのポテンシャルがあると考えられる場所を可視化する「生態系保全・再生ポテンシャルマップ」の作成方法やその活用方法を示した手引きを公表しています。詳細は「持続可能な地域づくりのための生態系を活用した防災・減災の手引き」をご参照ください。 「持続可能な地域づくりのための生態系を活用した防災・減災の手引き」 https://www.env.go.jp/nature/biodic/eco-drr.html
生態系保全・再生ポテンシャルマップは、生態系の保全・再生を図ることで、生物多様性の保全だけではなく、防災・減災にも寄与すると考えられる場所を可視化するためのツールです。災害に強く自然と調和した地域づくりの手段としてEco-DRRを進める際に、その効果が高いと見込まれる具体的な場所を可視化し、施策の検討や合意形成を図るために活用することを目的にしています。その作成にあたっては、図1に示した3つのステップで作成することを想定しています。 環境省では、湿地環境を主たる対象とした生態系保全・再生ポテンシャルマップの作成に必要な基礎情報として、Eco-DRRのポテンシャルを評価するための指標のうち、以下の指標による評価結果をベースマップとして公表しています(2023年3月公表)。
図1 生態系保全・再生ポテンシャルマップの作成方法
[画像:図1 生態系保全・再生ポテンシャルマップの作成方法]項目 | 評価指標 | |
---|---|---|
1.湿地環境のポテンシャルがある場所 | 湿地としてのポテンシャルがあり、一時的に水を貯留できる可能性がある場所 | TWI(地形的湿潤度指数) |
HAND(最近接水路鉛直距離) | ||
緑地として残すことで雨水の浸透が期待される場所 | 地形・地質等から期待される雨水浸透機能(雨水浸透機能を「最適地」、「適地」、「不適地」などで分類。)※(注記)分類の詳細は、後述の「凡例について」を参照。 | |
2.生物多様性保全を図る上で重要な場所 | 自然的景観の多様度 | |
水田の占有率 |
湿地としてのポテンシャルがある場所は、動植物の生息・生育場として重要な場となるだけではなく、一時的に降雨を貯留し、雨水の流出抑制に貢献する可能性があります。このような場所は、周囲に比べて土地が低くなっている場所や河川等の水位と同程度の高さの低地など、地形的に表流水が貯まりやすい場所が該当すると考えられます。そのため、地形のデータ(数値標高モデル:DEM)を用いて、地形的に水が貯まりやすいと考えられる窪地や低地を評価するための指標を用いることが有効です。 本ホームページでは、基盤地図情報数値標高モデル(10mメッシュ)を用いて、全国を対象に約30mメッシュで算出したTWI、HANDのデータを公表しています。
評価指標 | 概要 | |
---|---|---|
TWI(Topographic Wetness Index:地形的湿潤度指数) | ・評価対象となるメッシュ上部の集水面積が大きく傾斜が小さいほど大きな値となり、湿地的条件であることを示しているといえる。。 ・洪水浸水想定区域図において浸水範囲となる低平地などの評価にも用いることができると考えられる。 |
|
HAND(Height Above Nearest Drainage:最近接水路鉛直距離) | ・評価対象となるメッシュに最も近い水路からの高さを示し、値が小さいほど湿地的条件であることを示しているといえる。 ・土壌の水分条件や潜在的な湿地地帯を評価する際に、TWIと併せて活用することで、より精度が高くなるとされている。 |
《データの作成方法》
【TWI(Topographic Wetness Index:地形的湿潤度指数)】
下記の通り計算する
TWI=ln(累積流量+/tan((セルの傾斜角+0.01)*0.01745)
※(注記)値が分子または分母が0となることを防ぐため、便宜的に分子に1を母に0.01を加える。またtanを計算するため近似的に0.01745をかけてラジアンに変換する。
【HAND(Height Above Nearest Drainage:最近接水路鉛直距離)】
雨水の浸透が期待される場所については、地形や地質に関するデータ(地形分類図、表層地質図)を用いて、雨水浸透の促進が期待できる場所を評価するためのマップを作成することが考えられます。
本ホームページでは、全国を対象に地形分類図・表層地質図から想定される雨水浸透機能を示したマップを公表しています。
ただし、全国規模の地形分類図・表層地質図を用いた概略の評価であり、ベースマップによる評価を踏まえて実際に施策を実施する場合には、現地調査等による確認を行った上で判断する必要があります。特に、地下水位が高い地域では浸透能力が低くなるため、地下水位に関するデータが入手できる場合には、雨水浸透機能の評価指標として考慮することが望まれます。また、地方公共団体が浸透適地マップ等を公表している場合には、現地調査結果を用いるなどより精度の高い手法で作成している場合もあるため、これらのマップを活用することが有効であると考えられます。
<凡例について>
このベースマップでは、雨水浸透の促進が期待できる場所を、「最適地」、「適地」、「不適地」、「判定不能(地形分類データから判定困難)」、「判定不能(地形分類データなし)」、「判定対象外(山地等)」、「除外区域」の7つの凡例に分けて公表しています。それぞれの凡例の意味は以下のとおりです。
※(注記)「最適地」、「適地」「不適地」は、地形分類データと表層地質データの分類属性の組み合わせにより判定しています。反映方法の詳細は<データの作成方法>を参照ください。
《データの作成方法》
★主な分類基準は以下のとおり
★主な分類基準は以下のとおり
里山など生態系のモザイク性が高い場所は、生物多様性が高いことが明らかになっています。そのような場所を評価する指標として、「自然的景観の多様度」を活用することが考えられます。樹林、水田、畑地、湿地、ため池、草地など、生態系のモザイク性を構成する要素の分布を「植生図:自然環境調査Web-GIS」を基に整理し、多様な生態系が周辺に分布している場所を評価します。
例えば、周辺に斜面林等の樹林やため池等の水域が分布している水田など、景観の多様性が高い場所の水域は動植物にとっても貴重な環境になります。Eco-DRRを推進する上でも、生物多様性の保全を効果的に進めることができる可能性があります。
本ホームページでは、第6・7回自然環境調査植生図を用いて、評価対象となるメッシュ(×ばつ50m)を中心として半径500mの自然的景観の多様度を算出したマップを公表しています。なお、第6・7回植生調査は実施中のため北海道や青森県の一部等に一部データの欠損があります。これらの地域に関しては計算処理を実施せず、欠損データとして扱っております。
《データの作成方法》
大型鳥類の餌場となるまとまった水田など、生態系のモザイク性だけではなく占有率が生物多様性の保全を図る上で重要な要素となる場合もあります。特に、まとまった水田の分布を評価する指標として「水田の占有率」を用いることが考えられます。「自然的景観の多様度」では、まとまった森林や水田などの環境はポテンシャルの高い場所としては評価されません。一方で、生物多様性の保全のためには、生態系のモザイク性の高い場所だけではなく、まとまった森林や水田も重要な要素となります。
本ホームページでは、第6・7回自然環境調査植生図(自然的景観の多様度と同様、第6・7回のデータが未整備の場所はデータ欠損とする)を用いて、評価対象となるメッシュ(×ばつ50m)を中心として半径500m内の水田の占有率を算出したマップを公表しています。
《データの作成方法》
環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性戦略推進室
03-5521-8275
環境省自然環境局 生物多様性センター 〒403-0005 山梨県富士吉田市上吉田剣丸尾5597-1
Tel:0555-72-6031 | Fax:0555-72-6035
トップページ | プライバシーポリシー | 利用規約 | お問い合わせ・ご意見 | 地図・交通案内
All rights Reserved, Copyright Ministry of the Environment.