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最小多項式 (線型代数学)

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(2015年3月)

数学線型代数学において、 F 上の有限次元線形空間上の線形変換 T最小多項式(さいしょうたこうしき、: minimal polynomial)とは、T零点(T零行列)となる F-係数多項式のうち、モニック多項式(最高次係数が 1)で次数が最小のもののことである。特に正方行列 A に対して定義される。

A の最小多項式を p(x) とすると、q(A) = 0 となる F-係数多項式 q(x) は、最小多項式 p(x) で割り切れる。

次の3つの主張は同値である:

  1. λ ∈ F は、A の最小多項式 p(x) の根である。
  2. λ ∈ F は、A固有多項式の根である。
  3. λ ∈ F は、A固有値である。

A の最小多項式 p(x) における根 λ の重複度は、λ に対応する A のジョルダン細胞の最大次数を表す。

一般に、最小多項式は固有多項式と一致するとは限らない。例えば、2In を考える(Inn単位行列)。この行列の固有多項式は (x − 2)n である。一方、最小多項式は x − 2 である。従って、n ≥ 2 ならば、2In の最小多項式と固有多項式は一致しない。

ケイリー・ハミルトンの定理と上の注意により、最小多項式は常に固有多項式を割り切ることが従う。

定義

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F 上の有限次元 ベクトル空間 V 上の線型変換 T に対し、

I T = { p F [ x ] p ( T ) = 0 } {\displaystyle I_{T}=\{p\in \mathbf {F} [x]\mid p(T)=0\}} {\displaystyle I_{T}=\{p\in \mathbf {F} [x]\mid p(T)=0\}}

とおく。ここで F[x] は、F 上の一変数多項式環を表す。 I T {\displaystyle I_{T}} {\displaystyle I_{T}} は、F[x] の真のイデアルとなる。F は体だから F[x]主イデアル整域であり、任意のイデアルは F の単元倍を除いて一意的な1つの多項式によって生成される。したがって特に IT の生成元としてモニック多項式をとることができ、これを T最小多項式と言う。最小多項式は、 I T {\displaystyle I_{T}} {\displaystyle I_{T}} 中のモニック多項式の中で次数が最小のものである。

応用

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F 上の線形空間での線型変換 T が対角化可能であることと、すべてのジョルダン細胞の次数が 1 であることは同値である。従って、線型変換 T が対角化可能であるための必要十分条件は、T の最小多項式が F 上で一次式の積に分解し、すべての根の重複度が 1 であることである。

計算法の一例

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F 上のベクトル空間 V とその線型変換 T および V の元 v に対して、

I T , v = { p F [ t ] v Ker p ( T ) } = { p F [ t ] p ( T ) ( v ) = 0 } {\displaystyle I_{T,v}=\{p\in \mathbf {F} [t]\mid v\in \operatorname {Ker} p(T)\}=\{p\in \mathbf {F} [t]\mid p(T)(v)=0\}} {\displaystyle I_{T,v}=\{p\in \mathbf {F} [t]\mid v\in \operatorname {Ker} p(T)\}=\{p\in \mathbf {F} [t]\mid p(T)(v)=0\}}

と定義する。これは、F[t] の自明でないイデアルとなる。 μ T , v {\displaystyle \mu _{T,v}} {\displaystyle \mu _{T,v}} を、このイデアルを生成するモニック多項式とする。

この多項式は次の性質を満たす。

  • I T , v {\displaystyle I_{T,v}} {\displaystyle I_{T,v}} I T {\displaystyle I_{T}} {\displaystyle I_{T}} を含む。
  • d {\displaystyle d} {\displaystyle d} を、 v , T ( v ) , , T d ( v ) {\displaystyle v,T(v),\ldots ,T^{d}(v)} {\displaystyle v,T(v),\ldots ,T^{d}(v)}線型独立となるような最大の自然数とする。このとき、 ある α 0 , α 1 , , α n F {\displaystyle \alpha _{0},\alpha _{1},\ldots ,\alpha _{n}\in \mathbf {F} } {\displaystyle \alpha _{0},\alpha _{1},\ldots ,\alpha _{n}\in \mathbf {F} } が存在して、
α 0 v + α 1 T ( v ) + + α n T d ( v ) + T d + 1 ( v ) = 0 {\displaystyle \alpha _{0}v+\alpha _{1}T(v)+\dotsb +\alpha _{n}T^{d}(v)+T^{d+1}(v)=0} {\displaystyle \alpha _{0}v+\alpha _{1}T(v)+\dotsb +\alpha _{n}T^{d}(v)+T^{d+1}(v)=0}
が成り立ち、さらに
μ T , v ( t ) = α 0 + α 1 t + + α n t d + t d + 1 {\displaystyle \mu _{T,v}(t)=\alpha _{0}+\alpha _{1}t+\dotsb +\alpha _{n}t^{d}+t^{d+1}} {\displaystyle \mu _{T,v}(t)=\alpha _{0}+\alpha _{1}t+\dotsb +\alpha _{n}t^{d}+t^{d+1}}
となる。
  • V の1つの基底 (v1, ..., vn) を取ったとき、T の最小多項式は、すべての μ T , v i {\displaystyle \mu _{T,v_{i}}} {\displaystyle \mu _{T,v_{i}}} たちの公約元である。

関連項目

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参考文献

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連立一次方程式
ベクトル
ベクトル空間
計量ベクトル空間
行列線型写像
演算・操作
不変量
クラス
行列式
多重線型代数
数値線形代数
基本的な概念
ソフトウェア
ライブラリ
反復法・技法
人物
行列値関数
その他
カテゴリ カテゴリ

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