○しろまる 概要
1.概要
本症はATP7A遺伝子異常症で、同じ遺伝子異常疾患であるメンケス(Menkes)病の極軽症型である。後頭骨に角様変化が認められるのが特徴で、本症の名前の由来になっている。銅欠乏による結合織異常が主症状で、皮膚過伸展、血管異常、筋力低下、膀胱憩室などが見られる。発症時期は多くは学童期以降、知能障害は軽度〜正常でけいれんはない、頭髪異常は見られないなどの点がメンケス(Menkes)病と異なり、現時点では両者を統一的に取り扱う疾患概念は確立されていない。現在治療法はない。X染色体劣性遺伝性疾患で、発症は原則男性である。
2.原因
銅輸送ATPaseの1つであるATP7A遺伝子異常である。スプライトサイト異状やミスセンス異状で、ATP7Aの活性がある程度残存していると考えられる。
3.症状
皮膚過伸展、関節過伸展、血管蛇行などの血管異常、結合織異常による骨粗鬆症や膀胱憩室、筋力低下、歩行障害などを認める。
4.治療法
有効な治療法はない。
5.予後
多くは成人まで生存する。膀胱憩室による頻回の尿路感染症、関節過伸展・筋力低下などが徐々に進行し、歩行障害が見られ、日常生活は介護を必要となる場合が多い。
○しろまる 要件の判定に必要な事項
1. 患者数
100人未満
2. 発病の機構
不明(遺伝子異常による。)
3. 効果的な治療方法
未確立(対症療法のみ。)
4. 長期の療養
必要(進行性である。)
5. 診断基準
あり(研究班作成の診断基準あり。)
6. 重症度分類
Barthel Indexで85点以下を対象とする。
○しろまる 情報提供元
「Menkes病・occipital horn症候群の実態調査、早期診断基準確立、治療法開発班研究班」
研究代表者 帝京大学病院小児科 客員教授 児玉浩子
<診断基準>
Definite、Probableを対象とする。
オクシピタル・ホーン症候群の診断基準
A.症状
主症状
1. 筋力低下
2. 歩行障害
随伴症状
3. 繰り返す尿路感染症
4. 骨粗鬆症による骨折
5. 関節変形
B.検査所見
1. 血液・生化学的検査所見
血清銅低値、血清セルロプラスミン低値(施設基準で低値)
2. 画像検査所見(以下の3項目のうち2項目以上)
頭部側面単純レントゲン撮影で、オクシピタル・ホーン(occipital horn)所見(後頭骨に角様の突起が見られる。)
腹部超音波又はCTで、膀胱憩室
MRAで、血管蛇行所見
3. 生理学的所見
骨密度低下
4. 病理所見
皮膚組織所見:結合織異常
C.鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
エーラス・ダンロス症候群、ミトコンドリア遺伝子異常症
D.遺伝学的検査
ATP7A遺伝子の変異
<診断のカテゴリー>
Definite:Aの1、2のうち1項目以上+Bのうち2項目以上を満たしCの鑑別すべき疾患を除外し、Dを満たすもの。
Probable:Aの1、2のうち1項目以上+Bのうち2項目以上を満たしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。
<重症度分類>
Barthel Indexで85点以下を対象とする。
質問内容
点数
1
食事
自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える
10
部分介助(例えば、おかずを切って細かくしてもらう)
5
全介助
0
2
車椅子からベッドへの移動
自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(歩行自立も含む)
15
軽度の部分介助又は監視を要する
10
座ることは可能であるがほぼ全介助
5
全介助又は不可能
0
3
整容
自立(洗面、整髪、歯磨き、ひげ剃り)
5
部分介助又は不可能
0
4
トイレ動作
自立(衣服の操作、後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む)
10
部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する
5
全介助又は不可能
0
5
入浴
自立
5
部分介助又は不可能
0
6
歩行
45m以上の歩行、補装具(車椅子、歩行器は除く)の使用の有無は問わず
15
45m以上の介助歩行、歩行器の使用を含む
10
歩行不能の場合、車椅子にて45m
以上の操作可能
5
上記以外
0
7
階段昇降
自立、手すりなどの使用の有無は問わない
10
介助又は監視を要する
5
不能
0
8
着替え
自立、靴、ファスナー、装具の着脱を含む
10
部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える
5
上記以外
0
9
排便コントロール
失禁なし、浣腸、坐薬の取り扱いも可能
10
ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取り扱いに介助を要する者も含む
5
上記以外
0
10
排尿コントロール
失禁なし、収尿器の取り扱いも可能
10
ときに失禁あり、収尿器の取り扱いに介助を要する者も含む
5
上記以外
0
※(注記)診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
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