「令和6年能登半島地震」1月1日の地震に伴う津波に関する調査・研究の取組


最終更新日:2025年9月16日

気象研究所では、「地震と津波の監視・予測に関する研究」(令和5年度まで)および「地殻活動・地震動・津波の監視・予測に関する研究」(令和6年度から)の一環として、「令和6年能登半島地震」の調査・研究に取り組んでいます。 これまでに得られた以下の成果の概要をおしらせいたします。

(1)津波波源域の推定
(2)現地調査による津波の高さの測定
(3)ライブカメラ映像からの津波データの抽出

(1)津波波源域の推定

日本海沿岸で観測された津波の到達時刻から逆算して津波波源域を推定したところ、その長さは約100 kmにわたり、能登半島の東北東方向の沖合まで及ぶことがわかりました(下図1の赤色の領域)。
また、富山の検潮所における早い到達時刻は、その近傍にも津波波源が存在する可能性を示唆します(下図2)。
これらの解析結果は、地震調査研究推進本部地震調査委員会の令和6年能登半島地震の評価(令和6年1月15日公表)に活用されています。(注記)1 また、下記(3)で得られた津波の到達時刻も活用した波源の解析結果をもとに、海上保安庁において富山県高岡市伏木沖の海底地形調査を実施したところ、海底谷の斜面崩壊が確認されました。(注記)2

図1
「令和6年能登半島地震」1月1日の地震における津波波源域の推定結果

左図のさまざまな色の曲線は、各観測点(右図)の津波到達時刻から推定される津波波源域までの距離を示す。各曲線には、観測点名、地震発生から津波到達までの時間(単位:分)、及び津波第一波の押し(U)・引き(D)の別を併記した。 複数の観測点から描かれた曲線で囲まれる領域を津波波源域として推定した。星印は2024年1月1日16時10分のM7.6の地震、黒丸印は同日16時以降1日間の地震の震央をそれぞれ示す。 解析に用いたデータ等については、関連リンク(注記)1 を参照されたい。

(2)現地調査による津波の高さの測定

1月に石川県七尾市から富山県富山市にかけて津波の現地調査を実施しました。 気象研究所が調査した七尾市下佐々波漁港と射水市海竜新町における津波の高さの測定成果も含め、気象庁としてとりまとめた調査結果が1月26日付報道発表(注記)3 にて公表されております。 また、地震調査研究推進本部地震調査委員会の令和6年能登半島地震の評価(令和6年2月9日公表)(注記)1 に活用されています。
また、3月に追加の現地調査を実施しました。気象研究所が調査した津波の高さの測定成果を含めるとともに、それまでの測定値を精査して、気象庁として調査の最終結果をとりまとめて、「災害時地震・津波報告 令和6年能登半島地震」(気象庁令和6年9月9日発行)(注記)4 で公表されています。
上述の1月、3月の現地調査の詳細は、気象研究所技術報告に掲載されています(令和7年9月16日発行)(注記)5

(3)ライブカメラ映像からの津波データの抽出

富山県高岡市雨晴海岸と富山市岩瀬浜のライブカメラの映像を解析し、日没までの津波時系列データを抽出することができました。 各解析対象地点で得られた津波時系列データは、各近隣の観測点(伏木港検潮所と富山検潮所)の津波観測データと似た傾向を示していますが、ライブカメラの解析対象地点の方が最大波高がやや高いなどの違いや津波到達時刻の違いも見られます(下図)。この解析で抽出した津波時系列データは、検潮所とは独立の観測情報として研究に活用できます(たとえば、(1)に記した富山県高岡市伏木沖の波源の可能性に関する取組)。
研究内容をまとめた論文は、土木学会論文集に掲載されています(令和6年11月1日発行)。(注記)6

図2
図3
ライブカメラ映像から抽出した「令和6年能登半島地震」1月1日の地震における津波の時系列データ

地図上に解析対象地点と、比較に用いた常設の近隣の観測点(検潮所)の場所を示す。左図は、最大波高時のライブカメラ映像から切り出した画像である。右図は、ライブカメラ映像から抽出した津波時系列データと近隣の検潮所の観測データを比較したものである。 解析に用いた雨晴海岸の映像は高岡ケーブルネットワークより、岩瀬浜の映像はケーブルテレビ富山より提供いただいた。

(注記)1
令和6年能登半島地震の評価資料
令和6年1月15日 地震調査研究推進本部地震調査委員会
(津波波源域の推定について49枚目に記載あり。)
https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2024/20240101_noto_2.pdf
令和6年2月9日 地震調査研究推進本部地震調査委員会
(津波波源域の推定について28枚目、現地調査について11枚目に記載あり。)
https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2024/20240101_noto_3.pdf
注:地震調査委員会による評価資料に記された測定値や解析結果は速報値です。気象庁災害時自然現象報告書に記された精査後の値を利用してください。
(注記)2
富山湾の海底で斜面崩壊の痕跡を確認(第3報)〜高岡市伏木沖の海底でも斜面崩壊〜(令和6年12月2日 海上保安庁)
https://www.kaiho.mlit.go.jp/info/kouhou/post-1156.html
(注記)3
令和6年能登半島地震における気象庁機動調査班(JMA-MOT)による津波に関する現地調査の結果について(令和6年1月26日 気象庁地震火山部)
https://www.jma.go.jp/jma/press/2401/26a/20240126jma_mot.html
(注記)4
気象庁災害時自然現象報告書
令和6年9月9日 気象庁「災害時地震・津波報告 令和6年能登半島地震」(気象庁災害時自然現象報告書2024年第1号)
(津波波源域の推定について10ページ、現地調査について58〜60、90〜116ページに記載あり。)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/saigaiji/saigaiji_2024/saigaiji_202403.pdf
(注記)5
気象研究所技術報告
「2024年能登半島地震に伴う津波の現地調査報告」(著者:南 雅晃・対馬 弘晃・林 豊・中田 健嗣) 気象研究所技術報告88号(令和7年9月16日 気象研究所発行)
https://doi.org/10.11483/mritechrepo.88
(注記)6
発表した論文
「ライブカメラ映像から抽出した2024年能登半島地震の津波時系列データ」(著者:南 雅晃・対馬 弘晃・林 豊) 土木学会論文集特集号(海岸工学)80巻17号(令和6年11月1日 土木学会発行)
https://doi.org/10.2208/jscejj.24-17075

更新履歴

2024年02月02日:第1版掲載
2024年02月16日:第2版更新
2024年11月01日:第3版更新
2024年12月03日:第4版更新
2025年09月16日:第5版更新

問い合わせ先

気象庁気象研究所企画室
〒305-0052 茨城県つくば市長峰1-1

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /