都市機能を支えるライフライン系の都市インフラ(電気、ガス、上下水道、情報、エネルギー)の安全な保全は、社会・産業インフラ維持管理・更新等の重要な社会課題の一つとして捉えることができる。すなわち健全な社会活動・生活を提供する都市機能としては、都市を構成するビル、橋梁、道路等の構造物自体の適切な維持管理とともに、都市全体を有機的に活き活きと機能させるライフライン系の都市インフラの安全な維持管理が極めて重要となる。人間で言えば骨格、筋肉とあわせ呼吸器、神経、循環器、消化器系機能の完全性が保たれて生活が可能となるように、都市インフラ(ライフライン)の維持管理が適切になされて、はじめて社会の持続的発展が得られることとなる。
都市インフラ(ライフライン)は、これまで経験にもとづく非定常な保守管理が主体であり近年各種の管理システムが進化しているとはいえ、システムへの投資効果が確認されにくく、普及については緒に就いたばかりである。特に、病院、地域エネルギー供給システムなどのインフラはその公共性も高く、その中核となる発電機、ボイラ、ポンプ、医療情報機器などの駆動機器、回転機器を核としたシステムの保全が都市機能の安定化・安全化に重要な役割を担う。
災害時の地域救命センターを担う総合病院では、巨大地震等の発生に備え、ライフラインの寸断を想定して自家発電・受水槽給水設備が備えられているが、それらも損傷・故障するリスクを抱えている。また、災害時の避難場所・防災拠点に指定され、災害用の自家発電設備を備えた公共施設においても、同様のリスクが考えられる。ライフラインが抱えるこのようなリスクを極小化することが重要であるが、ライフライン全体としては広範囲に広がっているため効果的なリスク低減の方策が求められる。
そこで、本研究開発では、上記の共通的課題を解決し、ライフラインのコア設備の早期異常検知、健全性確保が行える、常時モニタリングシステム技術開発について取り組む。
すなわち、現状の離散的な点検及び災害発生直後の異常検知を補完できるシステムとして、以下の開発を行う。
- 設置場所・コストの制約を大幅低減できる自立電源で駆動するライフラインコアモニタリング用振動センサデバイスと、センサを駆動させ無線データ通信を可能にする自立センサ端末の開発を行う。(下記研究内容の1〜3)
- 遮蔽物・電磁波発生環境でも高信頼性通信を確保し、自立電源で無線通信可能な低消費電力のネットワークシステムの開発を実施する。(下記研究内容の4)
- 自立センサ端末から得られる計測データのフィルタリング手法、異常個所の特定と交換時期の予測を行うモニタリングシステムの開発、およびエネルギー供給施設での実証実験を行う。(下記研究内容の5)