タルコフスキー『惑星ソラリス』解析(草稿2)

しろいしかく

〇はじめに
くろまる時間
くろまるブーツの紐
くろまる金属製の箱
くろまる
くろまるニセモノ
くろまる食事
くろまる幻(1)
くろまる記憶
くろまる生成
くろまる復旧
くろまるバックアップ
くろまる床のハッチと収納ボックス
くろまる物質と記憶と時間
くろまるデジャヴ
くろまるクリスとギバリャン
くろまるスナウトとサルトリウス
くろまるギバリャンとハリー
くろまる男性中心主義
くろまるクリス
くろまるモノクロ(1)
くろまる神と鏡
くろまるループ
くろまる母と父
くろまる
くろまる
くろまる伯母
くろまる音(1)
くろまる機械の部品
くろまる廊下を走るスナウト
くろまる2時間
くろまる夢(1) くろまる(1) くろまる(2) くろまる(3) くろまる(4) くろまる(5)
くろまるモノクロ(2)
くろまる帰還
くろまるメタ映画
くろまる生成と復旧
くろまる救済
くろまる夢(2)
くろまるモノクロ(3)
くろまる消滅
くろまるソラリスの海(1) くろまる(1) くろまる(2) くろまる(3) くろまる(4) くろまる圧縮(5) くろまる圧縮(6) くろまる圧縮(7)
くろまるソラリスの海(2)
くろまる三つの金属製の箱
くろまる1時間半の遅刻
くろまる消えるサルトリウス
くろまるコラール前奏曲
くろまるホームビデオ
くろまる幻(2)
くろまる夢の物質化
くろまるホームビデオの後
くろまるCのステーション
くろまる三つの層
くろまる映画
〇おわりに
くろまる追記



〇はじめに

『惑星ソラリス』解析・追記追記2を一つにまとめ、加筆修正しました。

旧解析には、多くの誤りがありました。
旧解析を、"解析(草稿)"とします。
新しく書き改めた解析は、サブタイトルを"タルコフスキーの映画術"としました。

登場人物の台詞と名前、また、場所、物、等の名称は、1978年日本海映画株式会社発行の映画パンフレットに採録されたシナリオと、
2016年と2023年に発売されたBlu-rayの日本語字幕を参照しました。


[フレーム]


くろまる時間

映画の物語の、時間の並びを簡単に書くと以下になります。

A:出発前日の地上
B:出発当日の朝の地上、カプセル(宇宙船)、ステーション
C:帰還後の地上

Bの地上は、出発の前日か当日かわかりませんが、出発当日の朝としました。

行って帰ってくる、帰路がない、という点では、『ストーカー』と似ています。

また、この映画は「起承転結」がはっきりしています。
Aが「起」、Bの"第2部"のクレジットの前までが「承」、"第2部"のクレジットの後からBの終わりまでが「転」、Cが「結」、です。

さて、「起」のAと「結」のCを、ひっくり返して入れ替え、「結承転起」にしてみます。

時間の並びは、C→B→Aになります。

AとCを見てみます。
Aの最後に焚火があります。
Cの家の前にも焚火があります。
AとCの焚火を同じとすると、AとCは繋がっていることになります。
AとCは、同じ日で時間が違うだけです。
時間は、Aが先でCが後です。

AとCは繋がっているので、時間の並びは、C→B→Aから、またCへと戻り、C→B→A→C→B→A→・・・、と無限ループします。
A→Cは、ループの繋ぎ目です。

Bのステーションから地上への帰還は、AもCも出発前日の地上になります。
どちらも、クリスは時間を遡って、出発前日の地上に帰還したことになります。

時間の並びをAから簡単に書くと以下になります。

映画の物語の、A→B→Cの、BとCが入れ替わって、そして無限ループする形になります。

A:出発前日の地上1
C:出発前日の地上2
B:出発当日の朝の地上、カプセル(宇宙船)、ステーション

これが、『惑星ソラリス』の、本来の映画の物語("本来の物語"とします)です。

C→Bの間にラストシーンの島があるのは不自然ですが、このままにします。
どこにも移動する場所がありません。
あえて移動するなら、Bの出発当日の朝とステーションへ到着する前の宇宙空間との間でしょうか?

Cの家の中ではクリスの父が、机の上に雑然と置かれた本を調べています。
クリスがAの最後の焚火で、焼かずに残した学位論文や研究論文かもしれません。
家の中を水が流れ落ちているので、Cの地上は、ソラリスが物質化したニセモノということがわかります。

AとCが繋がっているので、CがニセモノならAもニセモノです。

家や木や草や土や島、父も伯母も隣家の少女もバートンもバートンの子供のディークも犬も馬も小鳥も、地上の全てはソラリスが作ったニセモノです。
クリスも、ソラリスが作ったニセモノです。
液体酸素を飲んで自殺をした後、蘇生したハリーが言います。

「もしかするとあなたも?」(シナリオ)

本来の物語は無限ループしますが、映画の物語は無限ループしません。

『惑星ソラリス』は、無限ループする本来の物語を終わらせるメタ映画です。

また、『惑星ソラリス』の映画の物語は、本来の物語の順番を入れ替えただけで、内容は本来の物語と同じです。
これは、タルコフスキーが決めたルールです。

タルコフスキーが、『惑星ソラリス』でやりたかったことの一つは、映画の常識を壊す、ということだと思います。

しかし、それが巧妙に隠され、時代が早すぎて、当時は誰も気づくことはできませんでした。
タルコフスキーとの喧嘩が意図的に口裏合わせをしたものでないとしたら(タルコフスキーは、策士なので気をつけてください)、原作者のレムさえも。

『惑星ソラリス』や、それ以降のタルコフスキー映画は、鏡のように人を映します。
『惑星ソラリス』のラストシーンをノスタルジックに感じるとしたら、タルコフスキーがノスタルジックなのではなく、ノスタルジックに感じる人がノスタルジックなのです。

作家「自分の本性が現れるんだろう。」(『ストーカー』シナリオより)


くろまるブーツの紐

クリスはステーションへ到着してすぐに、ほどけていたブーツの紐を踏んで、床に手をついてころびます。
そして、ブーツの紐を結び直します。

このシーンは、重要です。

手をついて、謝っているようにも見えます。
タルコフスキーは、クリスが"ころぶ"ことによって、自ら告白しています。

ハリーがドアを破って部屋を出て、クリスの足元に倒れ込むシーンがあります。
クリスは、ハリーを抱え起こして、ハリーの服とケープを、片足で廊下の壁際の箱の後ろに押しやります。
その間、カメラはクリスの足元を映し続けます。
不自然さを感じさせるカメラワークだと思います。
クリスはブーツから地上で履いていた靴に履きかえています。

Aの最初で、クリスは池の水で手を洗います。
池の水は、澱んでいます。
これはクリスの靴を映すためです。

タルコフスキーは、矛盾点を指摘される前に予防線を張り、予め断っておいてツッコミを避けようとしています。
クリスがブーツを脱ぐ時に、自分はソラリスが物質化したニセモノだとわかるはずだと。
クリスのブーツと紐は、ハリーの服と紐と同じはずだからです。

猿が英語を話している時点で地球とわかるはずだ、というツッコミと同じ類のものです。

また、クリスがステーションへ到着して、自分の部屋でギバリャンの自撮りビデオを見た後、ベッドに腰掛けて仰向けになり、再び起き上がります。
そして、ブーツの紐をほどこうとします。(シナリオでは、"紐を結び直す")
クリスは突然何かを思いついたように部屋を歩き、鏡に映った自分を見ます。
自分を確かめているようです。
ブーツの紐とクリスが関係づけられています。
そして、クリスは、ブーツを履いたままベッドに横になり寝ます。
カメラは、クリスを足元から映します。
これは、ブーツを強調するためです。
その後、ハリーが現れます。
ブーツとハリーが関係づけられています。


くろまる金属製の箱

Aの最初で、クリスが持っているものが気になります。
SF的なガジェットにも見えますが、ただの何かの金属製の箱のようです。

この金属製の箱を、本来の物語の、Aから見ていきます。
A→C→B→A→・・・、の順になります。(くろまる時間)

Aの最初でクリスは、この金属製の箱を手に持って家の外に立っています。
バートンのビデオを見た後、クリスは金属製の箱を窓際に置きます。
Cでクリスが外から家の中を見ている窓際にも、この金属製の箱があります。

Aでクリスが金属製の箱を窓際に置く前に、壁にかかったクリスの母の写真が映ります。
バートンのビデオを見ている時、クリスは上着を着ていません。
雨に打たれて上着が濡れていたからです。
金属製の箱を窓際に置く時は上着を着ています。
濡れていた上着が乾いたからです。
母の写真のシーンは、金属製の箱とクリスの母が関係づけられていると考えます。
時間経過を表しているようにも見えますが、前後の会話は連続しているようです。

Bの出発当日の朝、土が入った金属製の箱がテーブルの上にあります。
クリスは金属製の箱に蓋をしてリュックサックの中に入れます。
この時、『ドン・キホーテ』の本が映ります。

『ドン・キホーテ』は、現実と物語の区別がつかなくなった郷士の物語です。
『惑星ソラリス』は、ホンモノとニセモノの区別がつかない物語です。
また、『ドン・キホーテ』は、メタフィクションです。
『惑星ソラリス』は、メタ映画です。(くろまる時間)

ステーションに到着してハリーが現れ、「私のスリッパは?」と言って、クリスのリュックサックの中を探します。
リュックサックの中からは、ハリーの写真と一緒に、Bの出発当日の朝、リュックサックに入れた金属製の箱が出てきます。
金属製の箱は、ハリーとも関係づけられています。
蓋が少し開いています。
土が入っていると思われますが、中はよく見えません。

ハリーを乗せたロケットを打ち上げた後、蓋が少し開いた金属製の箱が、クリスの部屋の窓際にあります。
そして、Bの最後に、土から茎が出ます。

次に、B→Aを見てみます。
Bの最後で、クリスは母の夢(シナリオでは"幻覚")を見ます。

夢でもあるのですが、鏡の部屋では目を見開いているので、幻とも言えます。
だから、Aのバートンのビデオの中で、バートンが見たと言っていた、ビデオに映っていなかったものは、やはり幻だったのです。

このクリスが見た夢の中には、母と抱擁する横の椅子の上に、茎が出た土の入った金属製の箱があります。
そして、夢から覚めると、水差しと青い布と金属製の箱の蓋が、物質化しています。
金属製の箱の蓋は、クリスの部屋の窓際に置かれたものと同じものです。

夢の中で、母はクリスの汚れた腕を洗います。
クリスの子供の頃の思い出かもしれません。
母がクリスに軽くキスをした時に電子音が聴こえますが、この音は『ストーカー』の軌道車のシーンで流れる音に似ています。
この音は、男性の性的快感、挿入または射精の音です。
ここで、クリスの思いが、ハリーから母にシフトしたと考えます。
水差しと青い布と金属製の箱の蓋が物質化されたのは、夢の中のクリスの部屋でハリーが座っていた椅子の上です。
金属製の箱は、母とハリーへの思いの置換です。

Bの最後に、金属製の箱は、中に入った土から茎が出て、過去から未来への時間の経過を表しています。
母とハリーが関係づけられた金属製の箱は、時間を過去から未来へと進めます。
BのステーションからAの地上へは、ステーションへの出発前日に帰還します。
時間が過去へ遡り、未来へ進みます。

過去は未来で未来は過去。

金属製の箱は、本来の物語を無限ループさせます。

「ペンローズの階段」、または、エッシャーの『上昇と下降』をイメージすると、わかりやすいと思います。
「ペンローズの階段」は、三次元の空間で作ることは不可能です。
イリュージョンのある二次元の平面でしか描くことができません。

1階→2階→3階→4階、と上昇し、4階→5階、ではなく、4階→1階、と下降して上昇します。


「ペンローズの階段」



クリストファー・ノーランの『インセプション』にも、「ペンローズの階段」のシーンがありました。
映画は二次元のスクリーンに遠近感のある映像を映すので、三次元のような「ペンローズの階段」のシーンを作ることができます。

あるいは、クリスが持つ金属製の箱は、神々の怒りを買ったシジフォスが運ぶ岩のようなものかもしれません。
本来の物語の、Bの最後に辿り着くと、時間を遡って、またAの最初に戻ってしまうという、無限ループは、クリスに課せられた「罰」とも考えられます。


くろまる

Aの地上で、突然、雨が降ります。
雷鳴が遠くから聞こえてきます。
雨が降っているのに晴れています。
自然現象としては天気雨ですが、どこか不自然な雨にも見えます。

ソラリスに自然の雨は降りません。
ソラリスの雲は水蒸気ではないからです。
バートンが、Aのビデオの中で言っています。

「ふつうの霧ではなく、コロイド状の粘着質の物で、窓に付着しました」

この雨は、本来の物語のB→A→C→・・・の、B→Aの、Bのステーションが消滅する時の、ソラリスの海へと還る水です。
そのソラリスへと還る水が、Aで、雨となって地上に降り注いでいます。
雷鳴は、ステーションの一部が水になり、バランスを崩してぶつかり合っている音です。

ステーションも、スナウトもサルトリウスもギバリャンの死体も、ソラリスが物質化したニセモノです。

ステーションがホンモノなら、ニセモノの地上を発見するはずです。

ハリーは、スナウトの誕生日に、図書室で言います。

「"お客"はあなた方自身なのです」(シナリオ、一部変更)

Bの終わりに、金属製の箱に入った土から出た茎がアップで映されます。
このシーンは、本来の物語のラストシーンになります。
新しい茎が、何か一縷の希望のようにも見えますが、これもソラリスが物質化したニセモノの茎です。

ニセモノの種子からはホンモノの茎は出ないし、ホンモノの花も咲きません。


くろまるニセモノ

クリスがステーションに来る時、宇宙空間の星が瞬いているので、ステーションの周囲には気体があると思われます。
ステーションの中では、無重力状態にもなります。

ハリーを乗せたロケットを打ち上げた発射室で、クリスは逃げ遅れます。
スナウトが言うように「焼け死んで」しまうはずです。

『ストーカー』解析では、「クリスの火傷の痕の治りが遅いから・・・クリスは本物のクリス」、と書きましたが、ソラリスが作ったニセモノの火傷の痕です。
ソラリスが、火傷の痕の治りを遅く見せてニセモノをホンモノらしく見せています。
ハリーの注射の痕も、そうです。
スナウトの左手の包帯の下が傷だとしたら、それもそうです。
ニセモノのホンモノらしく見せたニセモノです。

ハリーの注射の痕は、ハリーが死んだ時の状態の記憶、と考えられます。
ドアを破って血まみれになったハリーの傷がすぐに治って消えたのは、記憶を読み取った時の状態に戻したから、ということです。

液体酸素を飲んで自殺したハリーは、蘇生したわけではありません。
最初から死んでいませんので、自殺もしていません。
ソラリスが、ハリーを死んだように見せ、蘇生したように見せただけです。

そもそも、ニセモノたちは、生きているのでしょうか?
生きていなければ、死ぬこともできません。
死ぬこともなければ、蘇生することもできません。

死ぬことによって人間の死の恐怖を知り人間になった、『ブレードランナー』のアンドロイドより悲惨です。

ロケットの炎は、表面だけをソラリスがコピーしたニセモノの炎です。
だから、触っても熱くないし、火傷もしません。

ステーションの中と周囲の気体は、酸素ではありません。
ニセモノの気体です。
ニセモノに酸素は必要ないからです。

だから、火も燃えません。
地上の焚火も、ロウソクの火も、ニセモノです。
図書室での、無重力状態でのロウソクの火の燃え方が、重力場での普通の燃え方です。

『惑星ソラリス』でも特に人気のあるシーン、図書室でのクリスとハリーの浮遊は、本当に無重力で浮いているのでしょうか?

ソラリスは、物質を浮かせることができると考えます。

クリスとハリーは、無重力で浮遊しているのではなく、ソラリスが二人を風船のように浮かせたのです。
どことなく安っぽく、ロゴも塗装もぎこちない、ハリーを乗せたあのロケットは、打ち上げたのではなく、ソラリスが浮かせています。

地上の家にある気球の絵は、ソラリスが浮かせているステーションの置換です。
ステーションも地上の家の横にある風船も、ソラリスが浮かせています。

無重力もニセモノです。

ニセモノの無重力は、クリスとハリー、燭台、『ドン・キホーテ』の本、以外は浮遊していません。
これは、意図的なミス(?)だと思います。
タルコフスキーが無重力をニセモノに見えるようにした、メタレベルのニセモノです。


くろまる食事

Aのテラスでクリスは、食べ物が置かれたテーブルの横で雨に打たれ、家の中に入ろうとしません。
何かを食べようとしたのでしょうか?

Bの出発当日の朝、家の中のテーブルの上には、小皿に果物と、空のカップがあります。
何か飲み物を飲んだのでしょうか?

ステーションのスナウトの部屋には、缶詰が開けられ放置されています。
缶の中に、食べ物が入ったままです。
皿の上にも何か食べ物らしきものがりますが、カビが生えているように見えます。

深夜、クリスの部屋へ訪ねてきたスナウトは、明日は誕生日だから「ご馳走を用意するよ」と言って、図書室に来るように言います。
図書室のテーブルの上の食べ物は簡素です。
そして、誰も食べていません。

アルコールらしきものを、スナウトとサルトリウスは少し飲んでいます。
ハリーは水を飲もうとして、喉を詰まらせます。
サルトリウスとハリーは、タバコを喫っています。
スナウトも、自分の部屋でタバコを喫おうとしました。
ギバリャンの自撮りビデオの中で、"お客"はギバリャンに、ミルクのような飲み物をすすめます。

ステーションで、ハリーとスナウトとサルトリウスは、タバコを喫ったり飲み物を飲んだりはしていますが、何も食べていません。
食べるということが、できないのかもしれません。
タバコは、ニセモノの煙を吸い込んで、そのまま吐き出せばいいだけです。

クリスの夢の中の母だけが、果物を食べています。
物質化したニセモノは、何も食べていません。
夢や幻の方が、物質化されたニセモノよりホンモノらしく見えます。

水は飲めます。

ソラリスで、ホンモノは水だけです。

永遠にタルコフスキー的な。

沸騰したお湯は、沸騰しているように見せた水です。
採血したハリーの血液は、赤い水です。
液体酸素は、普通の水です。
超低温ではありません。
ハリーを凍ったように見せただけです。
気化もしません。
水が流れてソラリスの海に還るだけです。

図書室でスナウトは酔っています。
ソラリスは、夢や幻を見せることができるので、酔わせることもできるのでしょう。

ニセモノに、熱さや痛みも感じさせることができます。


くろまる幻(1)

クリスが乗ったカプセル(宇宙船)の中で、ステーションを呼び出しても応答がありません。
「不安定な状態だ、大丈夫か?」のクリスの声。

ハリーの服は、ハサミで切らなければ脱ぐことはできませんでした。
ソラリスは表面だけを見て真似をする、ただのコピー機だからです。
そんなコピー機が、実際に通信できる通信機器など、作れるのでしょうか?

実際にビデオを再生できるビデオプレーヤーや、実際に通話できるテレビ電話なども、作れるとは思えません。

では、どうしているのでしょうか?

Aのバートンのビデオの中で、バートンが見たと言っていた、映像に映っていなかったものは、幻です。(くろまる金属製の箱)

ソラリスは、幻を見せることができます。
その応用です。

映像は幻です。
音は幻聴です。

ソラリスは、物質化と幻の組み合わせを多用してニセモノを作っていると思われます。
例えば、ライトの光は幻でしょう。
火もそうでしょう。

Bの最後で、クリスが見る夢の中のテレビモニターに、『雪中の狩人』があります。
Aの最後で、伯母が見る広々とした地上も、『雪中の狩人』が絵であるように、幻です。

広々としたした地上は、島の周りに現れた幻です。

物質化は、島だけです。



ピーテル・ブリューゲル『雪中の狩人』(1565年)



未来都市東京首都高も、幻です。
コピー機が作った未来都市なので、どことなく変です。

今の映画のCGも幻のようなものです。
映画自体が幻のようなものです。
暗いところでしかはっきり見えないので、幽霊のようなものです。

『惑星ソラリス』が作られた当時は、CGではなく模型と合成による特撮でした。
コピー機が作った見た目だけの表面的な特撮、という当時の話題になったSF映画への皮肉でしょうか?
映画のタイトルはご想像にお任せします。


くろまる記憶

本来の物語は無限ループします。
地上は消滅しないので、父と伯母と隣家の少女の記憶は累積されると考えます。

Aの地上で雨が降る前に、父は空を見上げて雨を気にしているようです。
毎回のループで雨が降っているのでしょう。
また、父がバートンのビデオを「もう何度も見た」と言っているのは、前のループの記憶が残っているからです。

クリスには、昔の記憶はありますが、前のループの記憶はありません。
本来の物語を、C→B→A、の並びにしてみると、BではCの、AではBとCの記憶がないようです。

前のループの記憶がないのは、記憶が初期値に、リセットされるからです。
タイミングは、CからB、BからA、の地上とステーションとを移動する時です。

クリスの、地上とステーションとの移動は、消滅と生成で行われます。

生成時に記憶がリセットされ、初期値が設定されます。
他のニセモノもそうです。

生成のタイミングは、CからBは、Bのレンズのような物体が浮かぶ宇宙空間のシーンです。
ステーション、スナウト、サルトリウス、"お客"、もそうです。
BからAは、Aの水草が揺らめく流れる水のシーンです。

バートンとディークと二人が乗る車が、生成されるタイミングは、Aの水草が揺らめく流れる水のシーンより前です。
消滅するタイミングは、未来都市東京首都高のシーンです。

記憶のリセットは、生成と同じタイミングでは行われません。
タイムラグがあります。

ハリーが最初に現れた時、「あなたこそ髪を振り乱してスナウトみたい」と言います。
クリスは不思議に思い、「どうして彼を知っているんだ」と言います。
これは、2回目に生成された時の記憶が残っているからです。
ハリーは1回のループの中で2回生成されます。
つまり、1回目→2回目→1回目→2回目→・・・、とループしています。
だから、1回目の前は2回目です。
その後、記憶がリセットされ、宇宙服に着替えるために、ハリーは服を脱ごうとしますが、ハサミで切らなければ、服が脱げないことを忘れています。

記憶がリセットされる前に、ハリーは自分の写真を見ても、すぐに自分とは気づきませんでした。
前の記憶が残っていても、生成されてすぐは、自分が誰かはっきりしません。
他のニセモノもそうです。

ハリー2号が現れた時、服を脱ぐのに自分でハサミを使いました。
1回目に生成された時の記憶が残っています。
そして、クリスのベッドに入り、二人は抱き合います。
このベッドの中で、何もかも忘れて、記憶がリセットされたのでしょう。

バートンとディークの記憶が、リセットされるのは、車から下りる前です。

クリスは、CからBは、カプセル(宇宙船)の中で眠そうな表情をするところです。
BからAは、ステーションが消滅してソラリスの海へと還る雨が降るシーンです。(くろまる)

ステーション、スナウト、サルトリウス、ギバリャンの死体が、そしてハリーが、クリス自身が、雨となって地上に降り注ぎます。
クリスは、その雨に打たれます。

「思い出もやがて消える、時が来れば、涙のように、雨のように・・・」(『ブレードランナー』日本語字幕より)

サルトリウス、ハリー、"お客"は、ステーションより先に消滅して水になりますが、その水はステーションに吸収されて合体する、とします。
また、ステーションが生成された後に、ニセモノが現れる時は、ステーションの一部が水になり分離して、その水から生成される、とします。


くろまる生成

Aの水草が揺らめく流れる水は、生成の隠喩です。

クリスは、隠喩から生成されました。

水は、隠喩です。

水草が揺らめく流れる水は、物質化された地上の島にはありません。
物質化された地上の島にある水は、どこにも流れない大きな池にある澱んだ水です。

水草が揺らめく流れる水は、島とソラリスの海との水際にある、ソラリスの海の水です。
クリスは、Aのこの水から生成されました。

島の周りの広々とした地上の幻は、クリスの生成と同時に現れる、とします。
島の周りの広々とした地上の幻も、島とソラリスの海との水際にある、水草が揺らめく流れる水から現れました。

クリスは、Aの最初に池で手を洗います。(くろまるブーツの紐)
澱んだ池の水で手を洗うより、綺麗な水草が揺らめく流れる水で洗えばいいはずです。
しかし、水草が揺らめく流れる水は、水際にある地上の幻で見えなかったのでしょう。(くろまる幻(1))

バートンとディークと二人が乗る車も、道路とソラリスの海との水際から生成されました。
ソラリスの海の水が、高架の柱をつたって登っていき、道路上に生成されたのでしょう。

ソラリスは表面だけを見て真似をする、ただのコピー機なので、エンジンで動く車は物質化できません。(くろまる幻(1))
生成されてから、家の横までゆっくりと道路の上を移動させます。
消滅する時は、移動させる必要はなく、道路の同じ場所に停まったままでもかまいません。
バートンとディークが乗る車はハンドルのない自動運転です。
島の周りの地上と未来都市東京首都高の幻をキャビンのウインドウに映して、自動運転しているように見せているだけです。


くろまる復旧

Cの水草が揺らめく流れる水は、復旧の隠喩です。

クリスは、隠喩から記憶が復旧されました。

水は、隠喩です。

Cの水草が揺らめく流れる水は、家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水です。

Aの出発前日とBの出発当日の朝の地上で、失われたり破損したものが、現れたり元に戻ったりして、ここで復旧されます。
また、作られたり付け足されたりしたものが、消えたり元に戻されたりします。
A→Cは、ループの繋ぎ目です。(くろまる時間)

Cで復旧しているので、Aの最後で燃やした(ように見せて水になってソラリスの海に還った)ハリーの写真は、次のループのAの最後で、また燃やすことができます。

地上からステーションへ持って行ったリュックサックは、ここで復旧しています。
だから、また、次のループで、リュックサックを地上からステーションへ持っていくことができます。
クリスはAの最初で、金属製の箱を持って地上に生成されました。
従って、金属製の箱は、状態だけが復旧されます。

Aで燃やしたはずのハリーの写真が、Bのクリスのリュックサックの中から出てきます。
Cで復旧したハリーの写真を、出発当日の朝、金属製の箱と一緒にリュックサックに入れたのでしょうか?
だとしたら、Aの最初で、金属製の箱と一緒に持って、地上に生成されなければ、次のループのAの最後で、また燃やすことはできません。
ここは、ハリーが生成された時に、写真も一緒に生成されたと考えます。
ハリーの写真は同じものが二つ、地上とステーションにあります。

Cの復旧作業では、クリスの昔の書類や思い出の写真とともに、過去の記憶も全て復旧します。


くろまるバックアップ

島は物質化です。(くろまる幻(1))

ステーションが消滅して生成するのだから、島も消滅して生成しているかというと、そうではありません。(くろまる記憶)
映画の物語では、島は最後に現れたように見えますが、本来の物語では、島はソラリスの海の上に生成された時からあったのです。
『ドン・キホーテ』では、サンチョ・パンサに島が与えられますが、『惑星ソラリス』の本来の物語では、島は最初から与えられています。

どうして、地上も消滅して生成しないのでしょうか?
全て消滅してしまうと、もう二度と生成できないからと考えます。

ステーションにはかつて大勢の人がいたし、フェフネルや若い頃のバートンもソラリスへ行っています。
しかし、ステーションには、そうした人たちのニセモノが現れません。
過去の記憶データが消滅して存在していないから、物質化できないのです。
ソラリスの海自体は、記憶データを保存することができないと考えます。

ソラリスは表面だけを見て真似をする、ただのコピー機です。(くろまる幻(1))
コピー機には、ステーションの複雑な装置など、作れるはずがありません。
だから、X線の照射も、クリスの脳電図を送ることも、ハリーを光の化学反応で爆発させることも、できないはずです。
全てソラリスの自作自演です。
過去に、そういう事実があって、記憶データがあるから自作自演できるのです。

地上とステーション、そしてニセモノたちは、復旧・再生成しながら無限ループします。
復旧・再生成するためには、どこかに記憶データをバックアップしておく必要があります。
それが消滅しない地上の島のどこかにあるはずです。

では、どこに復旧・再生成用の記憶データがバックアップされているのか?というと、それは、馬です。

Bの出発当日の朝は、Cで復旧された記憶は残っています。(くろまる記憶)
庭を馬が歩いていて、その馬をクリスは見ています。

地上も消え、馬も消えてしまえば、もう二度と地上は現れません。


くろまる床のハッチと収納ボックス

島はステーションのほぼ真下にあります。
でなければ、ステーションが水になってソラリスの海へと還る時に、地上に雨は降りません。

クリスがステーションへ到着する時、ステーションの下から、さざ波が周囲に広がっていて、何かが下にあるようです。
このシーンのソラリスの海は、ラストシーンの島が浮かんだソラリスの海と同じです。
ステーションに隠れて、島は見えなかったのです。

島の周りの広々とした地上は、物質化ではなく幻です。(くろまる幻(1))
ここでは、その幻は消えています。


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上で、ラストシーンの島を「あえて移動するなら、Bの出発当日の朝とステーションへ到着する前の宇宙空間との間」、と書きました。(くろまる時間)
あえて移動したラストシーンの島と、ステーションへ到着する前の宇宙空間の、カプセル(宇宙船)から見たステーションを並べると、この二つの動画になります。

島がステーションのほぼ真下にあるので、ステーションの窓から島は見えません。
スナウトは、誕生日のお祝いが終わって、廊下でクリスに言います。

「床のハッチを開けて、彼らに向かって叫ぼうかね」

「床のハッチを開けて」ステーションの下にある島を見ることはできません。

ハッチは、開けることができません。
ステーションと一体化しています。

ハリーの服と同じです。

クリスがハリーを、スナウトとサルトリウスに紹介するシーンで、ハリーが廊下にある何かの装置から、紐を引き抜きます。
この紐は、ハリーの服の紐と同じようなものです。

その紐をサルトリウスが取り上げて、廊下を歩く横で、スナウトが収納ボックスに座って、ボックスの留め具を触っています。
ハリーの服の紐と収納ボックスが、関係づけられています。
また、収納ボックスがある廊下は、スナウトが、「床のハッチを開けて」と言った付近です。

スナウトは、何かを諦めたように収納ボックスから離れます。
これは、スナウトが何気なく留め具を外そうとして、できなかったからです。

収納ボックスの蓋は、留め具を外して開けることはできません。
蓋と本体と留め具は一体化しています。

ハリーの服と同じです。

ハリーが最初に現れて、ハリーの服をハサミで切った後、クリスはドアの前に置いた収納ボックスを、ハリーが廊下から部屋へ入ってきたのではないか?と、いぶかしげに見ます。
ハリーの服と収納ボックスが、関係づけられています。

この後、二人は服を着替えて、ロケットの発射室へ行きます。
ハリーはクリスと同じブーツを履いています。

ブーツは、ハリーが着ていた服と同じはずです。(くろまるブーツの紐)

クリスがブーツの紐を踏んで転んだのは、同じロケットの発射室です。(くろまるブーツの紐)


くろまる物質と記憶と時間

スナウトが、深夜、クリスの部屋を訪ねてくる前に、シャワーの水が流れ落ちるシーンがあります。
この水は、Cの家の中を流れ落ちる水に似ていますが、時間経過も表しています。

ソラリスの海の水は、物質と記憶と時間の隠喩です。(くろまる生成)(くろまる復旧)

永遠にタルコフスキー的な水です。

映画フィルムの現像はしたことがないのですが、アナログ写真の現像は、現像液に浸けた印画紙から、幻が浮かび上がってくるようです。

ソラリスの海の水は、究極的には、映画の隠喩だと思います。

映画の隠喩は、その隠喩を紐解くと映画になり、その映画の中にソラリスの海の水の隠喩があり、合わせ鏡の中のように、隠喩の中の隠喩が繰り返されます。

映画はスクリーンに、映像という幻を映します。
映画は何度も上映され、無限ループします。
家庭でビデオを観る時は、好きなシーンだけを何度も繰り返したり、時間を早く送ったり戻したり、順番を入れ替えて観ることもできます。

『惑星ソラリス』は、全ての映画を包含し超越するメタ映画です。

『惑星ソラリス』は、映画の隠喩です。


くろまるデジャヴ

ホンモノのクリスの記憶からニセモノのクリスを物質化するには、ホンモノのクリスが過去に一度、ステーションに来ていなければいけません。
そうでなければ、ソラリスが記憶を読み取ることができません。

ホンモノのクリスはホンモノのステーションに来ています。
ニセモノのクリスはニセモノのステーションに来ています。

ニセモノのクリスに、ホンモノのクリスがステーションに来た記憶があったから、ニセモノのクリスはステーションに来たのです。

そうすると、行動はデジャヴになるはずですし、未来の行動も分かってしまうはずです。
本人の記憶から物質化された、本人のニセモノを、本人のホンモノがいた場所に立たせると、そうなります。

また、他人の記憶から物質化された、他人の他人のニセモノを、他人のホンモノがいた場所に立たせても、客観的部分的にデジャヴになります。
クリスの記憶から物質化されたニセモノのハリーには、クリスのステーションでの記憶があるので、ハニーは自分のステーションでの行動が、部分的にわかってしまうはずです。

これを回避するために、Aの生成時の記憶の初期値は、Aの出発前日以前の記憶、つまりループの外の記憶が設定され、ループ内の記憶は全て消えます。
時間を遡ったので記憶も過去に戻ります。

クリスは、Aのバートンのビデオを憶えていて、スナウトに「幻覚ですか?」と聞きます。
Bでは復旧後のCのことは忘れていても、その前のAのことは憶えています。
Bの生成時の記憶の初期値は、Cで復旧された記憶とBの出発当日の朝の記憶は消え、ループの外の記憶と、ループ内のAの記憶が残ることになります。

クリスの場合、Aの生成ではAの、Bの生成ではCの、水草が揺らめく流れる水のシーンの前まで、それぞれ記憶が戻ります。(くろまる記憶)

Bのステーションのクリスは、Aの焚火でハリーの写真を焼いたことは憶えているはずです。
それがリュックサックの中にあったので、クリスは不思議に思うはずですが、そんなことを思う心の余裕などなかったのでしょう。


くろまるクリスとギバリャン

Aの焚火で燃えている図面は、理系の図面のように見えます。
しかし、クリスは心理学者のはずです。

Bの最後の、クリスの夢の後に、水差しと青い布が物質化されました。

そして、この水差しと青い布と同じものが、ギバリャンの部屋にもあったのです。

クリスは、ギバリャンの記憶から物質化されたのでしょうか?

しかし、クリスがステーションに到着した時は、ギバリャンは自殺して、この世にいませんでした。
だからギバリャンは、クリスがステーションへ出発する前日と当日のことなど、知らないはずです。
それに、10年前に死んだハリーのことを、どうしてそんなに詳しく、知ることができるのでしょうか?

それは、ハリーが10年前に死んだギバリャンの妻だからです。

クリスの母は、ギバリャンの母です。

父と伯母は、ギバリャンの父と伯母です。

クリスは、ギバリャンです。

スナウトは、クリスに言います。

「君は?君は一体誰だ?」(シナリオ)

ハリーは、ニセモノのクリスを介しての、ギバリャンの記憶からの物質化です。
直接的には、ハニーは、ニセモノのクリスの記憶からです。
だから、クリスを夫と思っていると考えます。

ギバリャンの部屋に馬の絵がありました。
あの馬は、地上にいた馬です。

地上の家は、ギバリャンがいた家です。

地上は、ギバリャンの記憶からの物質化です。

父と伯母と隣家の少女も、ギバリャンの記憶からの物質化です。
バートンとディークは、ステーションへ行く出発前日に地上の家に訪ねに来た時の記憶からの物質化です。
クリスは、父にバートンのことを「変人だな」と言います。
父とバートンは、20年の付き合いですが、クリス(ギバリャン)とバートンは、昔からの親しい付き合いではないようです。
ディークは、バートンの息子にしては年齢が離れすぎています。
また、孫とも言っていません。
バートンが若かった頃の息子かもしれません。
ビデオの中の若かった頃のバートンとの、記憶の混乱があるかもしれません。

ギバリャンとスナウトの部屋、図書室、地上の家にある調度品や装飾品には、どこか共通するものがあります。
『ドン・キホーテ』の本も、ステーションの図書室と地上の家にあります。
形は別のものですが、ソクラテス(ギバリャンに似てなくもない)のような石膏の胸像もあります。

地上の家には、カウボーイハットを被った人体解剖模型があります。
あまり、趣味がいいとは思えません。
ステーションの図書室には、角が生えた毒々しい感じのお面のようなものが飾られています。
これも、趣味がいいとは思えません。
共通した趣味の悪さです。

ステーションも、ギバリャンの記憶からの物質化です。

Bの最後の、クリスの夢の後に、水差しと青い布と一緒に金属製の箱の蓋も物質化されました。

金属製の箱も、ギバリャンの記憶です。


くろまるスナウトとサルトリウス

スナウトは、クリスの火傷の手当をしながら、クリスの昔の妻の名がハリーと聞いて、少しうろたえます。
ギバリャンとハリーとスナウトは、昔からの付き合いだったのかもしれません。
だとしたら、スナウトはハリーを見て、クリスがギバリャンだと気づいてもいいはずです。
スナウトの部屋には、地上の家にあるものとは別のものですが、蝶の標本があります。
また、クリスの夢の中にも、蝶の標本があります。
地上の家とステーションの図書室には、ホルンがあります。
スナウトは、歌うのが好きなようです。
部屋には、レコードらしきものがあります。
スナウトが、タバコを喫おうとしたシーンです。

スナウトも、ギバリャンの記憶からの物質化です。

ギバリャンとサルトリウスとの関係は、はっきりしません。
サルトリウスと"お客"の関係も、はっきりしません。

サルトリウスは、ギバリャンに対して批判的です。

クリスがハリーを、スナウトとサルトリウスに紹介するシーンで、ハリーが子供の写真を見て、サルトリウスに「まあ、可愛い!あなたの?」と聞きます。
サルトリウスは、「いいえ、スナウトの」と言います。
スナウトの"お客"は、スナウトの息子でしょうか?
スナウトの"お客"の子供は、ニセモノのスナウトを介してのギバリャンの記憶からの物質化です。(くろまるクリスとギバリャン)
直接的には、ニセモノのスナウトからの記憶からです。
だから、"お客"は、スナウトを父親と思っています。
しかし、スナウトは、"お客"を自分の息子とは思っていません。
スナウトは言います。
「君は運がいい、身内が現れたのだから、全然知らない、想像しただけの物が現れたらどうする」
スナウトの"お客"は、ギバリャンの記憶です。
スナウトの"お客"は、ギバリャンの息子と考えます。

スナウトの"お客"は、スナウトの記憶だけの想像物です。
スナウトが、クリスの昔の妻の名をハリーと聞いて、少しうろたえたのは、ハリーがスナウトの記憶だけの想像物だからです。
スナウトは、ハリーを想像したことがあります。
だから、クリスからハリーを紹介された時、どことなく嬉しそうに握手をしたし、図書館でハリーの手に接吻しました。
サルトリウスも、ハリーを想像したことがあるかもしれませんが、ストイックなキャラなので、隠していたのでしょう。
しかし、最後に"お客が"現れなくなった後、ハリーが突き破って壊したドア越しに、サルトリウスはクリスの部屋を覗いています。
ハリーが消えてしまったことを、寂しく思っているようにも見えます。


くろまるギバリャンとハリー

ハリーがサルトリウスから聞いた話は、ハリーの自殺は、「毒を飲んだ」ということです。
クリスは、「夜中にか・・・」と聞き返します。
サルトリウスがハリーに説明するシーンはありません。
この聞いた話は、睡眠中のハリーにソラリスが送った、ギバリャンの改竄された記憶かもしれません。
クリスの説明では、ハリーの自殺は注射です。
ギバリャンは周囲に、「ハリーは毒を飲んで自殺した」と言っていたのかもしれません。

ハリーの注射の痕の位置は、自分で注射を打つような場所ではなく、他人が打つような場所です。

ハリーは自殺ではなく、他殺です。

では、誰が殺したのか?という、『惑星ソラリス』は推理ドラマでもあります。
推理ドラマは、複数の線と謎を設定して、それらを紐解きながら推理を進めます。
しかし、ハリーの服と紐のように、紐を解いても服が解けずに、新たな謎が現れる場合もあります。
『惑星ソラリス』以降のタルコフスキー映画には、複数の線と謎が設定されています。
そして、複数の推理と解釈が語られることになりました。

殺したのはギバリャンです。

10年前に自分が殺した妻が、目の前に現れたのです。(くろまるクリスとギバリャン)

殺しても殺しても、ハリーは何度も生き返って、再び目の前に現れる。

これが、ギバリャンの自殺の理由です。

ギバリャンが言う、「自分を裁く」「良心の問題」とは、このことです。

自撮りビデオのギバリャンは、伯母が地上で見るニュース映像のギバリャンと違って、髭を生やしています。
髭を生やしたギバリャンの風貌は、何となくキリストのようにも見えます。

冷凍保存されたギバリャンの死体は、マンテーニャの『死せるキリスト』です。(くろまるブーツの紐)

クリスは、ギバリャンです。(くろまるクリスとギバリャン)



アンドレア・マンテーニャ『死せるキリスト』(1480年頃)



ギバリャンの"お客"の姿から想像して、ハリーを殺した理由は、女性関係だったのかもしれません。

"お客"はギバリャンに、ミルクのような飲み物をすすめます。
これは、"お客"とギバリャンが、一緒に生活していたことを想像させます。
家の外だけの関係だったら、別の飲み物をすすめるでしょう。
"お客"が持っていたタオルも、何となく生活を感じさせます。

『惑星ソラリス』以降の全て、5作品のタルコフスキー映画には、ミルクが登場します。
それらのミルクは、精子(精液)の置換です。

ニセモノのハリーと"お客"が同時に現れた、ということも考えられます。
10年前のことが再現されたのかもしれません。

ギバリャンの部屋のドアに、「人間」というタイトルの子供が描いた絵が貼ってあります。
絵を描いたのは、スナウトの"お客"として考えてみます。
ギバリャンが生きている時に、ギバリャンの記憶から、直接的に"お客"が物質化されたとしたら、"お客"はギバリャンを父親と思うでしょう。
自分の父親を描いたとしたら、タイトルは「お父さん」にすると思います。
では、ギバリャンは死んでいたのでしょうか?
しかし、すでに死んだ人間の絵を描いて、「人間」というタイトルはつけないと思います。
では、ギバリャンが自殺した後に、ニセモノのギバリャンが物質化されたのでしょうか?
だとしたら、ギバリャンは死ぬことができずに、ニセモノのスナウトとサルトリウスと一緒に、ステーションにいるはずです。
しかし、ギバリャンのニセモノの死体があります。
ソラリスが物質化したのは、生きているギバリャンではなく、死んだギバリャンです。
ギバリャンはステーションで死んでいます。

スナウトの"お客"は、ギバリャンが生きている時に物質化されました。
スナウトの"お客"は、ギバリャンの記憶から物質化されたニセモノのスナウトを介しての、ギバリャンの記憶からの物質化です。(くろまるクリスとギバリャン)
ギバリャンが、まだ生きている時に、ホンモノのスナウトは、ステーションからいなくなっていたのです。
ホンモノのスナウトがステーションにいたら、ギバリャンの"お客"のハリーを見ているはずです。
ニセモノのスナウトが、ホンモノのスナウトの記憶からの物質化だったら、ハリーのことを知っているはずです。
この時、サルトリウスも一緒に、ステーションからいなくなっていたかもしれませんが、わかりません。
また、本人が生きていて、本人の目の前に本人のニセモノが現れるかどうかも、わからないので現れないとします。
生きているホンモノのギバリャンの目の前に、自分の息子が現れたのに、その息子は、ニセモノのスナウトを父親と思いました。(くろまるスナウトとサルトリウス)
自分を父親とは思ってくれませんでした。

但し、サルトリウスの"お客"が絵を描いたとしたら、また違ってきます。
サルトリウスの"お客"は、シナリオでは"異常な"と書かれています。
サルトリウスの"お客"は、例外的な存在として、これ以上のことは考えないことにします。

自撮りビデオに映っているギバリャンは、生前のギバリャンです。
自撮りした直後に自殺したギバリャンは、自撮りビデオを見ることができません。
そして、自分で自分の死体を見ることはできません。

ギバリャンが自殺した時はすでに、スナウトはニセモノです。
ギバリャンの自撮りビデオと死体は、ニセモノのスナウトかサルトリウスの記憶になります。
あるいは、ホンモノのクリスの記憶です。

ハリーが子供の写真を見て、サルトリウスに「まあ、可愛い!あなたの?」と聞いた後、サルトリウスは、子供の写真をカーテンで隠します。
サルトリウスは、何かを隠そうとしているようにも見えます。(くろまるスナウトとサルトリウス)

スナウトの"お客"は、ハリーが産んだのかもしれません。


くろまる男性中心主義

この映画には、男性の大人と子供の関係が、クリスと父、スナウトと"お客"、サルトリウスと"お客"、バートンとディーク、の4組あります。
サルトリウスの"お客"は、シナリオでは"小人"と書かれていますが、ここでは子供とします。
バートンのビデオの中の話に登場するフェフネルと、バートンが見た赤ん坊の幻も含めると、5組になります。

Aの地上に隣家の少女が登場しますが、地上に隣家はありません。
隣家の少女には、名前もありません。
少女の親は地上にいません。
しかし、親子関係は束縛でもあるので、隣家の少女は、その束縛から外されています。
母と子の関係は、クリス(ギバリャン)と母の1組だけです。
母の役割は、子に愛情をそそぐだけの存在のようです。

これは、タルコフスキーが家父長的な男性中心主義だからでしょうか?

母の夢を見る少し前のクリスが、ハリーとスナウトに両脇を支えられ、朦朧として廊下を歩きながら言います。
ギバリャンは「恐怖じゃない、恥のために死んだ」。
クリスはギバリャンなので、これは本音のようにも聞こえます。

「恐怖」とは、10年前に殺した妻が目の前に現われ、殺しても殺しても、何度も生き返って、再び目の前に現われることです。
「恥」とは、愛人の存在です。
ここでも、女性が軽んじられ排除される男性中心主義の身勝手さを感じさせます。
また、「彼は息子が生まれた直後に、家庭を捨てていた」と、バートンの話すフェフネルも、男性の身勝手さがあります。

ギバリャンは、自撮りビデオの中で、最後に注射器を取ります。
「恥のため」だったとしたら、妻を殺した同じ方法で、自殺する必要はあるでしょうか?
部屋にあったピストルで自殺すればいいはずです。
妻を殺した同じ方法で自殺したのは、「恐怖」から逃れたくて、許しを請うたからです。
「恐怖じゃない」というのは、男性の虚栄心のようにも思えます。

ハリーが、最初に現れた時、ベッドに横になったハリーは、ピストルを床に蹴落とします。
これは、私を殺さないでね、という意味にもとれます。
また、ピストルは、ハリーを殺したギバリャンと関係づけられています。
そして、クリス(ギバリャン)は、ハリーをロケットに乗せて打ち上げます。

『惑星ソラリス』では、水以外の全ては、ソラリスの物質化と幻のニセモノです。(くろまる食事)
それらの大部分は、ギバリャンの記憶によるものです。
だから、ギバリャンの考え方も見えてくるはずです。

男性中心主義はギバリャンです。

ギバリャンはクリスです。(くろまるクリスとギバリャン)

クリスは言います。

「非道徳でも目的は遂げられます、ヒロシマのように」

非道徳でも目的を遂げるのが、ギバリャンの考え方のようです。

しかし、もう一度考えてみました。

クリスの父の息子は、ギバリャンです。(くろまるクリスとギバリャン)
スナウトの"お客"の父は、ギバリャンです。(くろまるスナウトとサルトリウス)
サルトリウスと"お客"の関係は、はっきりしません。(くろまるスナウトとサルトリウス)
バートンとディークは歳が離れすぎていますし、あまり仲がいいようにも見えません。
フェフネルは、赤ん坊が生まれた直後に家庭を捨てました。

一般的な父と子の関係は、この中にはありません。
幸せそうな関係もありません。
コピー機が表面だけを見て真似をした、見た目だけの親子です。(くろまる幻(1))

ギバリャンの部屋のドアに貼ってあった、子供が描いた絵のタイトルの「人間」、その「人間」は、ホンモノの感情を持っています。
生きているホンモノのギバリャンの目の前に、自分の息子が現れたのに、その息子は、ギバリャンを父親とは思ってくれませんでした。(くろまるギバリャンとハリー)
それは、どんなに悲しいことでしょう。
しかし、表面だけを見て真似をする、ただのコピー機は、「人間」の悲しみも喜びも苦しみも、区別をしません。(くろまる幻(1))

信号の強弱でしかありません。

その強い信号を、ソラリスは読み取って、機械的にコピーを反復したのかもしれません。

『惑星ソラリス』は、「人間」の喜びではなく悲しみと苦しみの映画です。

ただのコピー機は、善悪の区別もありません。

ヒロシマとナガサキに原爆が落とされたことへの怒りも、信号の強弱です。


くろまるクリス

ホンモノのクリスの、ステーションでの行動は不明です。
帰還して、ステーションの状況を報告し、ソラリス研究は打ち切られたのでしょう。
でなければ、ニセモノのステーションは、ホンモノの人間に発見されています。

そして、それから数年経ったのかもしれません。
何十年と経ったのかもしれませんし、百年以上の孤独な年月が流れたのかもしれません。

ニセモノとは別人のホンモノのクリスは、ステーションへ来ています。(くろまるデジャヴ)
ニセモノのクリスは、外見と自覚はクリスで記憶はギバリャン、二人を圧縮した合体物、ラカンの言う隠喩です。

ニセモノのクリスは、ステーションへ到着して、自分の部屋の鏡で、自分が誰なのか確認しているように見えます。(くろまるブーツの紐)

ギバリャンは自撮りビデオで、自分の記憶を持ったニセモノのクリスに、語りかけることになりました。
ビデオの中から、自分で自分に語りかける、『トータル・リコール』のようです。

誰もギバリャンがハリーを殺したことに気づかないのは、ギバリャンの記憶が改竄されているからです。(くろまるギバリャンとハリー)


くろまるモノクロ(1)

この映画には、所々にモノクロシーンがあります。

モノクロシーンは、その前または後に、ニセモノが現れたり消えたりします。

バートンのビデオの無彩色モノクロ。
途中に数回、ビデオを見ている部屋のカラーシーンになりますが、ビデオのモノクロと見ている部屋のカラーは切り離して、ビデオのモノクロが続いているとします。
バートンが見たビデオに映っていない幻は、ビデオの中のビデオになります。
ビデオの中は、ビデオの中のビデオの、メタレベルです。
ビデオを見ている部屋は、さらにそのメタレベルになります。
ビデオの中のモノクロの前に、ビデオの中のビデオに映っていない幻が現れます。
ビデオの中のビデオがカラーになり、ソラリスの海と雲が映ります。
ここでのカラーは、ブルーのモノクロにも見えますが、色味があるのでカラーです。
再度、ビデオの中のモノクロになり、その後にビデオの中のビデオに映っていない幻が消えます。
そして、ビデオのスイッチがOFFにされます。
厳密には、ビデオの再生を停止させただけかもしれませんが、スイッチがOFFにされたとします。

ビデオ映像は幻です。(くろまる幻(1))
ビデオ映像の幻が現れたり消えたりするのは、ビデオプレーヤーのスイッチのON/OFFによるとします。

伯母がテレビでソラリスについてのニュース映像を見ています。
着信音とともに、テレビ画面が白の無彩色モノクロになります。
ニュース映像は、この白の無彩色モノクロの前に現れます。
ニュース映像も幻です。
ニュース映像は、ブルーの寒色系モノクロです。
また、白の無彩色モノクロの後に、バートンの顔がテレビ電話に映ります。
ここでも途中、テレビ電話を見ている部屋のカラーシーンになりますが、テレビ電話が続いていると考えます。
テレビ電話は薄いブルーの寒色系モノクロです。
この薄いブルーの寒色系モノクロの後に、テレビ電話の中の、バートンとディークが乗る車のウインドウの内側に、未来都市東京首都高の幻が映ります。(くろまる生成)
画面が無彩色モノクロになります。
バートンの顔と後部座席のディーク、車のリアウインドウに映った東京首都高の幻が、テレビ電話に映っています。
この時のリアウインドウの映像は、フロントウインドウの映像を逆回ししたものを使用しています。
横を走っているトラックがバックしています。
これは、タルコフスキーがニセモノに見えるようにした、メタレベルのニセモノです。(くろまるニセモノ)
続いて、バートンとディークが乗る車の、フロントウインドウに映った東京首都高の幻。
これは、テレビ電話ではなく、車の中の物質化されたバートンとディークが見ている幻です。
テレビ電話の会話は終わります。
テレビ電話と同じ映像の前から見たバートンの顔、リアウインドウに映った東京首都高の幻。
ここでのリアウインドウの映像は、正常に見えます。
テレビ電話の会話は終わっているので、テレビ電話に映っていたバートンではなく、物質化されたバートンです。
リアウインドウに映った東京首都高の幻は、テレビ電話の中の映像ではありません。
続いて、後部座席から見たバートンとディーク、フロントウインドウに映った東京首都高の幻。
バートンとディークは、テレビ電話に映ったバートンとディークではなく、物質化されたバートンとディークです。
フロントウインドウに映った東京首都高の幻は、テレビ電話の中の映像ではありません。
続いて、フロントウインドウに映った東京首都高の幻、画面はモノクロから徐々に彩度を高くしてカラーになります。
カメラは、フロントウインドウからソラリスの海の上に、徐々に移り換わり、ソラリスの海のどこかに未来都市の幻が、徐々に現れます。
続いて、車の助手席から見た物質化されたバートンとディーク、サイドウインドウに映った東京首都高の幻、のモノクロ。
ディークが、サイドウインドウに映った幻を見上げています。
その後に、物質化されたバートンが消滅します。
続いて、普通の彩度のカラーで、東京首都高の幻。
この東京首都高は、フロントウインドウに映った幻ではなく、ソラリスの海の上のどこかに現れた幻です。
続いて、東京首都高のモノクロ。
このモノクロの後に、物質化されたディークと車が消滅します。
このモノクロの最初に、ディークがサイドウインドウから見上げて見たような東京首都高のショットが、一瞬入ります。
従って、このモノクロでは、ディークは消滅していないと考え、バートン、ディーク、車、の順に消滅したと考えます。
このモノクロの東京首都高は、サイドウインドウとフロントウインドウに映った幻です。
そして最後に、ソラリスの海の上のどこかに現れた、カラーの未来都市東京首都高の幻。(くろまる幻(1))
この幻は、『惑星ソラリス』を観ている者以外には、誰も観る者はいません。

Aの最後の焚火のシーンのブルーの寒色系モノクロ。
その後に、本来の物語のAの続きのCで復旧作業が行われ、失われたものが現れ、作られたものが消され、破損したり付け足されたものが元に戻されます。(くろまる復旧)
このモノクロシーンの中で、家の横の道路を車が走りますが、物質化された車ではなく幻です。(くろまる生成)

ここで注意しなければいけないのは、映画の物語は本来の物語の順番を入れ替えただけで内容は同じ、ということです。(くろまる時間)
Aの続きはCです。
Bではありません。
Bの最初、出発当日の朝は、何も現れたり消えたりしません。

本来の物語のCの続き、Bの出発当日の朝のブルーの寒色系モノクロ。
カラーの机の上が映ります。
カメラが移動して金属製の箱が映って、モノクロになります。
その後に、クリスが地上から消滅して、カプセル(宇宙船)に入ったクリスが宇宙空間に生成されます。
それと同時に、ステーション、スナウト、サルトリウス、"お客"、が生成されます。(くろまる記憶)
そして、島の周りの広々とした地上の幻が、ここで消えます。(くろまる幻(1))(くろまる床のハッチと収納ボックス)
ソラリスの海の上のどこかに現れた、未来都市東京首都高の幻も、ここで消えます。

クリスがギバリャンの部屋で見る、ギバリャンの自撮りビデオのグレーがかった薄いブルーの寒色系モノクロ。
ここでもやはり、ビデオと見ている部屋は切り離して、ビデオの中のモノクロが続いていると考えます。
クリスがビデオを止めて、自分の部屋で見るギバリャンの自撮りビデオの中に、ギバリャンの"お客"が現れます。
モノクロはビデオの中なので、ステーションではなく、ビデオの中に"お客"が現れます。
ステーションにいた"お客"は、ステーションが生成された時からいたと考えます。(くろまる記憶)

クリスが自分の部屋で見るギバリャンの自撮りビデオ、ビデオを見ているクリスとクリスの部屋、クリスがベッドで寝ているシーン、のブルーの寒色系モノクロ。
その後に、ハリーが生成されます。

最初に現れたハリーをロケットに乗せて打ち上げた(ように見せて浮かせた)後、薄いセピアのようなピンクのような暖色系モノクロ。
この前に、ロケットで打ち上げた最初のハリーが消滅し、そして、クリスの部屋に再生成されます。

クリスの夢の薄いブルーの寒色系モノクロ。
その後に、水差しと青い布と金属製の箱の蓋が物質化されます。
また、スナウトがハリーの置手紙を読む時に使った、クリスの部屋にあった眼鏡も、物質化されたのではないでしょうか?
クリスが図書室で本を読んでいた時は眼鏡を使っていなかったので、部屋に都合よく眼鏡があるのは不自然です。

ソラリスは、同じ時間に同じ人物のニセモノを二人以上物質化しませんが、同じ時間に同じ物のニセモノを二個以上物質化します。
ハリーの服とケープがそうです。
地上とステーションにある、同じハリーの写真もそうです。(くろまる復旧)
水差しと青い布が、ギバリャンとクリスの部屋に二つあります。
また、同じ金属製の箱の蓋が、クリスの部屋に二つあります。
それを見てクリスは、不思議に思うはずですが、ハリー2号が消えて、そんなことを思う心の余裕などなかったのでしょう。

ハリー2号が消滅したのは、ハリーとスナウトに両脇を支えられ、クリスが朦朧として歩く廊下の後の、薄いセピアの暖色系モノクロの前です。

Bの最後の、図書室の前の廊下で、ボールを持って歩くサルトリウスの後ろ姿が、ディゾルブで消えていきます。
消えた後の廊下のシーンで時計の時を告げる音がして、次の図書室のシーンまで続きます。
二つのシーンは繋がり、図書室のシーンの最後、つまり、クリスのナレーションが入る、雲が広がるソラリスの海の無彩色モノクロの前に、サルトリウスが消滅します。

ステーション、スナウト、サルトリウス、"お客"、は同時に生成されました。(くろまる記憶)
なぜ、スナウトが残って、サルトリウスが先に消滅するのでしょうか?
ギバリャンとサルトリウスとの関係は、はっきりしませんでした。(くろまるスナウトとサルトリウス)
考えられるのは、サルトリウスはホンモノのスナウトの記憶からの物質化、ということです。
そして、ニセモノのサルトリウスの"お客"は、スナウトの息子で、ニセモノのサルトリウスを介してのホンモノのスナウトの記憶からの物質化、ということです。
ギバリャン、ギバリャンの息子、ニセモノのスナウト、ニセモノのスナウトの"お客"、との関係と同じです。(くろまるスナウトとサルトリウス)
スナウトとサルトリウスがステーションへ来て、サルトリウスがステーションからいなくなり、スナウトの記憶から、サルトリウスのニセモノが物質化されます。
その後に、ギバリャンがステーションへ来たら、ギバリャンは、サルトリウスがニセモノと気づきません。
ニセモノのスナウトは、ギバリャンの記憶からの物質化です。(くろまるスナウトとサルトリウス)
従って、ニセモノのスナウトは、ニセモノのサルトリウスがホンモノのスナウトの記憶からの物質化とは気づきません。
また、ニセモノのスナウトは、ニセモノのサルトリウスの"お客"が、ホンモノのスナウトの息子とはわかりません。
但し、ニセモノのサルトリウスの"お客"は、例外的な存在で、他と関係づけられていない、無からの想像物とも考えられます。(くろまるギバリャンとハリー)

ステーション、スナウト、サルトリウス、"お客"、が同時に生成されたのなら、ハリーも同時に生成されてもいいはずです。
そう考えると、"お客"が生成されたのは、ステーション、スナウト、サルトリウスが生成された後かもしれません。

スナウトがクリスに言います。
「君の脳電図を送ってから"お客"はだれも来なくなった、それに海の様相も変りつつある、島ができ始めたよ」
「脳電図」は、送っていません。(くろまるバックアップ)
"お客"が消え、島ができ始めたのは、クリスの夢の薄いブルーの寒色系モノクロの後です。
水差しと青い布と金属製の箱の蓋が物質化されたのと、同じタイミングです。

スナウトがクリスに、「"お客"はだれも来なくなった」と言うのは、サルトリウスがディゾルブで消えるシーンです。
"お客"の消滅とサルトリウスの消滅が、関係づけられています。
ニセモノのサルトリウスと、ニセモノのサルトリウスの"お客"は、ホンモノのスナウトの記憶からの物質化、と考えられました。
スナウトの"お客"の子供は、ニセモノのスナウトを介してのギバリャンの記憶からの物質化です。(くろまるスナウトとサルトリウス)
だとすると、ギバリャンの"お客"の、ステーションの青い服の女性は、ニセモノのスナウトを介しての、ギバリャンの記憶からの物質化、とも考えられます。
つまり、記憶だけの想像物です。(くろまるスナウトとサルトリウス)
しかし、ステーションの青い服の女性は、ギバリャンの死体がある冷凍室へ行きました。
ギバリャンは、自分の死体を見ることはできません。(くろまるギバリャンとハリー)
冷凍室に、自分の死体があることを知らないはずです。
だとすると、ステーションの青い服の女性は、ニセモノのスナウトの記憶からの物質化です。(くろまるギバリャンとハリー)
ギバリャンの自撮りビデオで、ニセモノのスナウトとニセモノのサルトリウスは、ギバリャンの部屋のドアをノックします。
従って、ギバリャンの"お客"の青い服の女性を、ニセモノのスナウトは見ているはずです。
スナウトは、クリスに青い服の女性のことを言われて、「君は一体誰だ!」と言って取り乱します。
青い服の女性に、特別の感情でもあるのでしょうか?
サルトリウスは、スナウトの誕生日のお祝いに、本人が来ないので、「"お客"がいるかも」と言います。
"お客"とは、青い服の女性のことです。

寒色系モノクロは、その後にニセモノが現れるか消えます。
暖色系モノクロは、その前にニセモノが現れるか消えます。
無彩色モノクロは、規則性がありません。


くろまる神と鏡

地上の家と図書室にあった『ドン・キホーテ』、サルトリウスが図書室で言う「ドストエフスキーの小説」、ハリーが消えた後にスナウトが言う『シジフォスの神話』が、
『惑星ソラリス』の物語と関係していると思います。(くろまる金属製の箱)(くろまる金属製の箱)

図書室のブリューゲルの『雪中の狩人』がある絵の並びの一番端に、『バベルの塔』があります。



ピーテル・ブリューゲル『バベルの塔』(1563年頃)



ソラリス研究は、人類が神の領域に手を伸ばそうとして建てた、バベルの塔でしょうか?

ソラリスは神なのでしょうか?

ソラリスに、知性はあるのでしょうか?

むしろ、何も無い。

無のように思えます。

クリスは、鏡を見て自分を確かめます。(くろまるブーツの紐)
ハリーは、鏡を見て写真が自分であると分かります。(くろまる記憶)

ステーションの廊下には、間隔を空けて凹面鏡が設置されています。

液体酸素を飲んで自殺しようとしたハリーの凍った顔が、凹面鏡に歪んで映って、幽霊か幻が浮かんでいるようです。

クリスは鏡の部屋で、夢(あるいは幻)を見ます。

ソラリスは、透明でそれ自体は見ることができない、水面や鏡のようにも思えます。

スナウトは誕生日の図書室で言います。
「必要なのは鏡だ!」(シナリオ)
ソラリスは、ニセモノには必要です。
「人間に必要なのは人間だ!」(シナリオ)
ホンモノには、ソラリスは必要ありません。

ソラリスは、神(かみ)ではなく鏡(かがみ)です。

神はタルコフスキーです。

Bの、雲が広がるソラリスの海のモノクロシーンの最後で、クリスは言います。
「いまだ見ぬ、新しい奇跡を待つのだ」
「奇跡」とは、無限ループする本来の物語を、メタレベルで終わらせることです。

「奇跡」を起こせるのは、メタレベルの神、タルコフスキーだけです。

『惑星ソラリス』は、無限ループする本来の物語を終わらせるメタ映画です。(くろまる時間)

ニセモノたちは、本来の物語の無限ループの中にいます。
無限ループに閉じ込められて、解放されることはありません。

『惑星ソラリス』は、本来の物語を終わらせ、ニセモノたちを無限ループから解放して、救済する映画の物語です。


くろまるループ

「用意はいいか」「準備完了」
カプセル(宇宙船)の中と発着場、らしきところとの交信です。
クリスの相手の声は幻聴です。
地上の発着場をクリスが見ているとしたら、夢か幻です。

「何も心配いらん、安心しろ、元気でな」
この後、クリスは地上から消滅するように思えますが、そうでしょうか?
「出発は?」「もう飛び立っている」
宇宙空間に生成された後です。

交信は、消滅と生成の間の時間がなく、連続しています。
どちらも、生成した後の交信と考えます。

クリスは、「出発は?」と聞いているので、クリスの知らない間に「飛び立って」、消滅と生成が行われています。
消滅と生成は、クリスの意志に関係なく、ソラリスの自作自演で行われていることになります。(くろまるバックアップ)
逆らうことはできません。

Aの焚火のシーンで、クリスは言います。
「あのフィルムは持っていきますから、探さないように。あれは草と一緒に持っていきますよ」(シナリオ)
「草」というと、麻薬のようにも思えますが、金属製の箱の中の茎のことです。
Aの最初で、クリスが出発前日に帰還して生成された時に持っていた金属製の箱の中には、Bの最後に茎が出た土が入っています。

茎は成長し(たようにソラリスが見せ)ようとします。(くろまる金属製の箱)
時間が過去へ遡り、未来へ進みます。

Aで生成した後に記憶がリセットされ、金属製の箱の中のことは忘れてしまいました。(くろまる記憶)

Bの最初の出発当日の朝は、金属製の箱の中は、茎がなくなり土しか見えません。
Cの復旧作業で、金属製の箱の中は土と種子になったからです。(くろまる復旧)
金属製の箱の上に水が流れ落ちています。

ギバリャンの金属製の箱の中には、最初は土と種子が入っていました。
ホンモノのギバリャンは、ソラリスに木を植え、花を咲かせ、果物を実らせようとしたのかもしれません。

ソラリスが地上を物質化させたのは、ギバリャンのこの思いからかもしれません。

あるいは、サルトリウスが言う、「ギバリャンは地球に帰りたがった」(シナリオ)思いからかもしれません。

Cの復旧作業で、クリスは全てを知ります。(くろまる復旧)
Bの出発当日の朝は、復旧された記憶は残っています。(くろまるバックアップ)
だから、金属製の箱の中の土と種子のことも知っているはずです。
知っていて、クリスは金属製の箱をリュックサックの中に入れます。

Bのステーションに到着する前に、記憶は再びリセットされました。(くろまる記憶)
金属製の箱の中を見たら、土と何かの種子があった。
クリスは部屋の窓際に金属製の箱を置き、陽の光をあて水をやり育てようとしたのです。

金属製の箱は、母とハリーが関係づけられていました。(くろまる金属製の箱)(くろまる金属製の箱)
金属製の箱は、母とハリーへのクリス(ギバリャン)の思いの置換です。(くろまる金属製の箱)

ギバリャンがソラリスに木を植え、花を咲かせ、果物を実らせようとしたことと、母とハリーへの思い、この二つが重なって、無限ループすることになったのかもしれません。


くろまる母と父

クリス(ギバリャン)の夢の中に、ハリーと同時に現れた母は、ハリーと同じ下着姿でした。

ギバリャンの罪は、もう一つあったのです。
そして、母も罪を犯しました。
母の死は自殺かもしれません。

Cの復旧作業で、クリスに、ギバリャンの改竄されていない、生(なま)の記憶が復旧します。(くろまるクリス)
クリス(ギバリャン)は、ここで全てを知ります。(くろまる復旧)
ハリーを殺したことも、母との関係も、自分がクリスではなく自殺したギバリャンであることも。

父は、クリス(ギバリャン)を見て優しげな表情になり、両足を揃えた姿勢で家の前に立ち、クリス(ギバリャン)を待ちます。

父は、ギバリャンの記憶からの物質化です。(くろまるクリスとギバリャン)
父は、ギバリャンの記憶と、累積されたループ内の記憶で、全てを知っていました。(くろまる記憶)

クリス(ギバリャン)は父の前に跪きます。
父は子の肩へ手を置き、温かく向かえ入れます。

父への謝罪であり、父との和解です。

「父よ、わたしは天に対しても、あなたに対しても罪を犯しました。もうあなたの息子と呼ばれる資格はありません」

レンブラントの『放蕩息子の帰還』です。

クリス(ギバリャン)は、天に対しても、父に対しても、罪を犯しました。
そして、クリスは父の息子ではなく、父の息子はギバリャンです。



レンブラント・ファン・レイン『放蕩息子の帰還』(1668年頃)



父とクリス(ギバリャン)が撮ったホームビデオには、生前のハリーが映っています。
ハリーは、このホームビデオを見た後、「自分のことが、何一つ分からない」と言います。
ハリーのホームビデオの記憶は、クリス(ギバリャン)の記憶です。
つまり、ビデオを撮られた記憶ではなく、撮った記憶です。

青年も映っていますが、これはギバリャンではなく、クリスのように見えます。
だとしたら、クリスはギバリャンの昔からの友人で、ギバリャンが撮ったと考えられます。

クリスとハリーとの間には、何か関係があったのかもしれません。

ギバリャンは、「同様のことが、君にも起こるかもしれない」と言っています。
ハリーが現れるという、ギバリャンと同様のことがクリスにも起こりました。

罪はギバリャンだけでなく、クリスとハリーにもあったのかもしれません。


くろまる

母はクリスの夢の中だけに現れて、物質化されていません。
しかし、母は物質化されています。
ステーションでハリーが物質化されたように、地上では母が物質化されています。

図書室でハリーが、じっと見入っている『雪中の狩人』の犬が、アップで映されます。

クリスが夢を見る前に、本の頁のような紙片を拾い、見てすぐにそれを捨てます。
そこには犬が描かれています。

クリスの夢の中に、母とハリーと同時に地上の犬が現れました。
父が撮ったホームビデオの中で、母は子犬を抱いています。
子犬の鼻筋は白で地上の犬とは違いますが、親子かもしれません。
ちなみに、黒澤明は『七人の侍』で、馬の鼻筋を白く塗ったそうです。

クリスと同じで、犬も合体物、ラカンの言う隠喩です。(くろまるクリス)

レンブラントの『放蕩息子の帰還』で、左上のほとんど見えない人物は、母親です。
犬は、父と子の左横にいます。

犬は母です。

クリスが見る夢の中で、クリスは言います。

「母さん、僕、少し変なんだ、母さんの顔を忘れてる」

母さんの顔を忘れているのは、母さんだと思って見たら、母さんの顔が犬だったからです。

そう考えると、手に鈴をつけた青い服の女性は、猫だろうか?


くろまる

地上の馬は、ギバリャンの部屋の絵からの物質化で、想像物です。(くろまるクリスとギバリャン)
ディークを、「じっと見てる」のは、何かを言いたかったからかもしれません。
表面だけを見て真似をする、ただのコピー機は馬と人間の区別をしません。(くろまる幻(1))
だから、この馬は人間の言葉を理解するし、人間の声帯があれば話せるかもしれません。
犬も小鳥もそうです。

馬も犬も小鳥も食事はしません。(くろまる食事)

馬小屋と車庫が一緒で、車の上に藁があるのは、記憶の混乱です。

馬は復旧・再生成用の記憶データをバックアップするための媒体です。(くろまるバックアップ)
それ以外に馬の役割はありません。
馬は、ディークを「じっと見て」、何かを言いたげです。
見た目は馬ですが、人間と同じです。
ギバリャンの想像物の馬が、この映画で最も悲惨です。
ハリーは図書室で、「私は人間になります」と言いますが、馬は人間になれません。

地上は消滅しないので、父と伯母と隣家の少女の記憶は累積されます。(くろまる記憶)
犬(母)と馬の記憶も累積されます。


くろまる伯母

隣家の少女が最初にアップになった時の表情が気になります。
不自然さを感じさせるアップでもあります。
父と伯母と隣家の少女の三人は、ギバリャンの記憶からの物質化です。(くろまるクリスとギバリャン)
三人は、復旧されたギバリャンの記憶と、累積されたループ内の記憶で、全てを知っています。(くろまる記憶)
三人は、クリスとバートンとディークに話を合わせていたことになります。

クリスの父がテレビ電話でバートンと話をするシーンがあります。
これも、父がバートンに話を合わせていたことになります。
ソラリスは表面だけを見て真似をする、ただのコピー機です。(くろまる幻(1))
実際に通信できるテレビ電話は、物質化できません。
テレビモニターの映像は幻です。(くろまる幻(1))
会話は糸電話のように、やりとりしていたのでしょう。
また、クリスがハリーを、スナウトとサルトリウスに紹介する前に、スナウトがクリスに電話をしてきます。
スナウトが、「大きな声で話してくれ」と言うのは、糸電話で声がよく聞こえないからです。

伯母はどこか淡々として、無限ループもあまり苦痛ではないようにも見えます。
前のループの記憶が残っているので、父はバートンのビデオを、「もう何度も見た」と言って見ません。(くろまる記憶)
しかし、伯母は見ます。

毎回のループで分かり切っていることなのに、伯母は父に、「お客様の泊まるお部屋は?」と聞きます。
父は伯母をじっと見て、「二階がいい」と言います。
他に何か言いたげな表情にも見えます。
そして、最後は少し怒ったように、「部屋で待っててくれ」と言います。

伯母は前のループの記憶が、あまりないようです。
伯母は軽い認知症ではないか?と思います。

Aの最後で、伯母が見る地上の方角は、クリスがステーションでハリーと一緒に見る、クリスの子供時代のホームビデオの、ブランコの背景と同じ方角です。
この方角は、水草が揺らめく流れる水から、クリスが生成された方角です。(くろまる生成)

ホームビデオに映った背景は、雪が積もっているので、ブリューゲルの『雪中の狩人』と関係づけられているようにも見えます。
伯母が見る広々とした地上は、『雪中の狩人』が絵であるように、幻です。(くろまる幻(1))
ホームビデオの映像も幻です。(くろまる幻(1))
このブランコは、鎖の付き方が少し違いますが、Aの地上の家の横にあるブランコと同じものです。

Aの最後とクリスの子供時代のホームビデオを見ると、地上の家と庭は、丘の上にあるように見えます。
しかし、ラストの島は平らな場所です。
島がソラリスの海に沈んでいくようにも見えます。

軽い認知症の伯母は、広々とした地上の幻を見て泣いています。

涙は水なのでホンモノです。(くろまる食事)
ハリーが流す涙もホンモノです。

しかし、なぜ伯母は、ここで泣いているのでしょうか?
同じ出来事の無限の繰り返し、自殺しても死ねない永遠の苦しみ、そうした悲劇の涙でしょうか?

作家「永遠にではあるまいな。永遠は恐ろしい。」(『ストーカー』シナリオより)

それもあるかもしれませんが、Aの次のCで復旧作業があるからです。(くろまる復旧)
復旧作業でクリスは全てを知ります。(くろまる復旧)
それを思っての涙です。

このシーンのブルーのモノクロは、この後に、本来の物語のAの続きのCで、復旧作業がある、という意味です。(くろまるモノクロ(1))

つまり、ブルーのモノクロと伯母の涙は、Aの次はCという、本来の物語の時間の順番で関係づけられ、本来の時間の順番を強調しています。

伯母は軽い認知症であるのに、前のループのことを憶えていて泣いています。
重ねて、本来の物語の時間の順番を、強調しています。

映画の物語は本来の物語の順番を入れ替えただけで、内容は本来の物語と同じです。(くろまる時間)(くろまるモノクロ(1))


くろまる音(1)

林の中から聞こえてくる、小鳥の囀りは幻聴です。
野生の小鳥を、全て物質化していないと思います。

羽虫の羽音もそうです。

ソラリスで見えるもの全ては、物質化と幻のニセモノです。(くろまる幻(1))
しかし、籠の小鳥の囀りはホンモノです。
人の声もホンモノです。
幻聴とは思いたくありません。

スナウトは、酔って歌っています。

『雪中の狩人』の絵の中の狩人は、腰に角笛をぶら下げています。
ギバリャンの部屋と地上の家には角笛があり、夢の中の母は角笛を見て、過去を懐かしむように触ります。

地上の家とステーションの図書室には、ホルンがあります。

Bの最後のステーションの図書室で、クリスの耳がアップで映されます。
クリスとギバリャンが関係づけられています。(くろまるクリスとギバリャン)
この耳の穴は毛が生えてリアルです。
この耳は、音を、そして音楽を聴くリアルな耳です。
ギバリャンは、音に敏感だったと思います。

流れる水の音、遠くの雷の音と雨が降る音、鈴の鳴る音や物が落ちる音、人の声や小鳥の囀り、木の葉のような紙の音、、、

ソラリスでは、水以外に物質化されたニセモノが出す音もホンモノです。
音はニセモノの気体が伝えます。(くろまるニセモノ)

水草が揺らめく流れる水の音は、ホンモノが出すホンモノの音です。(くろまる食事)


くろまる機械の部品

映画の最後に、カメラが上空に移動して、地上が映し出されます。
地上は3回、雲に隠れます。

2回目の雲が晴れた後、島がソラリスの海に浮かんでいます。
島は海底が隆起しているのではなく、物質化したものを浮かべているのだと思います。
この時、1回目の雲が晴れた後にカメラは揺れながら上空に移動して、大きく揺れた時に映っていた地上部分がなくなっています。

3回目は雲が晴れずに、そのまま画面が白くなってエンドクレジットです。

1回目の雲が晴れた後、よく見ると家の前にあった機械の部品のようなものが消えています。
つまり、水になってソラリスの海へ還っています。

この機械の部品のようなものは何でしょうか?気になります。

この機械の部品のようなものは、映画が始まった最初からあります。
Aの最初で、ブランコの方向に、クリスが歩いているシーンです。
機械の部品のようなものは、半分以上が木に隠れていますがあります。

生前のハリーが映っているホームビデオの中は、石に隠れてよく見えません。
しかし、10年以上も家の前に、機械の部品のようなものを放置しておくのは不自然です。

元々、地上にあった、とも考えられますが、そうだとしたら、ラストで家より先に消す必要はありません。

この機械の部品のようなものが消えたのは、復旧作業で消された、と考えます。(くろまる復旧)

元々、地上にあったものではなく、ループ内のどこかで置かれた、ということです。
復旧作業は、元に戻す作業なので、元々なかったものは消されます。

置かれたのではなく、落ちてきたと言う方がいいでしょう。
機械の部品のようなものは、ステーションの部品の残骸ではないか?と考えます。
水となって雨が降る前に、空から落ちてきて、そのまま残ったということです。(くろまる)

しかし、そうだとしたら、もっと部品の数があってもよさそうです。
家に落ちてきてもいいはずです。
それに、映画が始まった最初からあるのは、早すぎます。
雨と一緒か、その前後に落ちてきていいはずです。

他には考えられないでしょうか?

空から落ちてくるものは、もう一つあります。

ハリーを乗せて打ち上げたロケットです。

毎回のループで地上から、ロケットが落ちてくるところが見えたと思います。

ロケットは、ソラリスが適当に浮かせています。(くろまるニセモノ)
そして、適当に落としています。
ほとんどは幻の地上、つまり海に落ちたのですが、今回は物質化された地上の島に落ちてきた、ということです。
ステーションのクリスの部屋の窓から見えるロケットらしきものは、窓に映した幻です。
シナリオにも、「窓に、遠く消え去るロケットが映る」と書かれています。
物質化されたロケットは、ほぼ真下の島へ落ちています。(くろまる床のハッチと収納ボックス)

しかし、ステーションの窓に映った、ハリーを乗せたロケットの幻が現れる前後に、モノクロはありませんでした。
ステーションの全ての窓の幻は、ステーションが生成されると同時に現れたからと考えます。(くろまるモノクロ(1))
ステーションのほぼ真下にある島が、ステーションの死角から外れていたとしても、ステーションから島は見えません。

この窓の幻も、ギバリャンの記憶によるものなので、ギバリャンも、ハリーをロケットに乗せて打ち上げたことになります。(くろまるクリスとギバリャン)

「島ができ始めたよ」と、スナウトが言う「島」は、窓に映した幻のことです。(くろまるモノクロ(1))
従って、この幻が最初に現れたのは、クリスの夢の薄いブルーのモノクロの後ではなく、Bの出発当日の朝のブルーのモノクロの後です。(くろまるモノクロ(1))

カプセル(宇宙船)からクリスが見る、ステーションとソラリスの海も幻かもしれません。(くろまる床のハッチと収納ボックス)

ロケットは落ちた衝撃で砕け散りました。
飛び散った細かい部品は処分され、大きな部品の残骸だけが残りました。

ハリーも一緒に落ちてきました。
そして、水となってソラリスの海へ還り、再びクリスの前に現われました。(くろまるモノクロ(1))


くろまる廊下を走るスナウト

本来の物語のニセモノたちは、無限ループから抜け出すことはできません。
死ぬこともできません。(くろまるニセモノ)

液体酸素を飲んで自殺したハリーが、蘇生した(ようにソラリスが見せた)後、スナウトが部屋から慌てて出てきて、廊下を走る謎のシーンがあります。

廊下の向こう側へ走り、再び現れた時、金属製の箱を持っています。
この時、ステーションの装置の間から、廊下の向こう側が映りますが、スナウトは消えたように見えます。

このシーンは、クリスの、BのステーションからAの地上への移動の、消滅と生成の置換です。

だとすると、スナウトの部屋はBのステーションで、クリスとハリーのいる廊下の場所はAの地上、ということになります。
このシーンで、スナウトが部屋を出る時に、上着らしきものをドアに引っ掛けて取ろうとしますが、取れずにあきらめます。
これは、収納ボックスの留め具の置換です。(くろまる床のハッチと収納ボックス)
ドアと上着は一体化しているので、取れないのです。

廊下に設置された凹面鏡は、地上からステーションへの移動で、クリスが乗ったカプセル(宇宙船)が生成した、宇宙空間に浮かぶレンズのような物体のように見えます。

スナウトはクリスとハリーがいる廊下の場所とは逆の方向へ走り、遠回りしていますが、スナウトの部屋とクリスとハリーがいる場所は、すぐ近くです。
島はステーションのほぼ真下にあります。(くろまる床のハッチと収納ボックス)

スナウトは、クリスの置換です。
クリスは、地上にいる父や伯母のニセモノの置換です。

ハリーは、ロケットに乗って地上に落ちてきたハリーそのものです。

スナウトが持っていた金属製の箱は、クリスがAの地上へ移動する時に持っていた金属製の箱です。
クリスは、Bのステーションから何も持たずに消滅して、Aの地上に必ず金属製の箱を持って再生成されます。(くろまる復旧)

スナウトはクリスとハリーがいるAの地上を走り去ります。
その後どうなったのか分かりません。

廊下を一周してループすると、スナウトは自分の部屋のBのステーションへ戻りますが、スナウトは廊下をループしていないかもしれません。


くろまる2時間

映画の物語は、A→B→Cですが、本来の物語は、A→C→Bです。(くろまる時間)(くろまる時間)
本来の物語の、Aの終わりとCの始まりに、映画の物語では時間差ができます。
A(→B→)Cの、()内の時間です。
その時間差は、映画の物理的な上映時間で2時間です。
映画の物語のCの始まりは、本来の物語よりメタレベルで、Aの終わりから2時間遅れます。


[フレーム] [フレーム]


このメタレベルの2時間の遅れが、クリスが薄いブルーのモノクロの夢の中で母に言っていた、「2時間遅れた」の意味です。

つまり、薄いブルーのモノクロの夢は、B→Aの本来の物語ではなく、B→Cの映画の物語で見ている夢です。

この夢の最後で、母がクリスの腕を洗う音とともに、水が流れる音が聴こえてきて、次のクリスが目覚めるシーンまで続き、水が沸騰する音と重なって消えます。
この水が流れる音は、Cの水草が揺らめく流れる水の音です。

2時間の遅れは、本来の物語のA→Cから、映画の物語のB→Cまでの時間差です。
だとしたら、この夢のシーンは映画の物語のBとCの間になければいけません。
しかし、この夢のシーンは、BとCの間より前、Bの終わりから映画の物理的な上映時間で7分半〜14分ほど前にあります。

Bの終わりに、茎の出た土が入った金属製の箱がクリスの部屋の窓際にあります。
それと同じものが、夢の中で母と抱擁する横の椅子の上にもあります。
これは、夢のシーンとBの終わりの時間が同じですよ、という意味です。

クリスがこの夢を見るのは、Bの終わりです。
Bの終わりから、映画の物理的な上映時間で、7分半〜14分ほど前には、クリスはこの夢を見ていません。
だから、目を覚ました時に、母ではなくハリーの心配をしたのです。
母の夢を見た後に、ハリーのことを心配するのは不自然です。

夢の中の母はクリスに、「旅はどうだった?」と聞きます。
ステーションへの旅のことです。
「どうだった?」という過去形です。
映画の物語のBのステーションは、過去のことです。

では、なぜ夢のシーンがBの終わりより、映画の物理的な上映時間で、7分半〜14分ほど前にあるのでしょうか?
映画の物語のB→Cが、本来の物語のA→Cに合わせようとして、夢のシーンが本来の物語のCの場所へ、映画の物理的な上映時間を遡ったからと考えます。
しかも、その物理的な上映時間を遡った場所で、夢のシーンのモノクロが、その前後と関係づけられています。
だから、薄いブルーのモノクロの夢のシーンの後に、水差しと青い布と金属製の箱の蓋が、物質化されました。(くろまるモノクロ(1))

いくら映画の常識を壊すとは言え、こんなことをするのは、タルコフスキーしかいません。(くろまる時間)


くろまる夢(1)

くろまる(1)

薄いセピアのモノクロの夢の、家の中は、Bの出発当日の朝です。
部屋にリュックサックがあり、庭に焚火がありません。
薄いセピアのモノクロの夢も、B→Aの本来の物語ではなく、B→Cの映画の物語で見ている夢です。
この夢のシーンも、映画の物理的な上映時間を7分半〜14分ほど遡っています。
この夢のシーンは、Bの出発当日の朝の前、つまり本来の物語のCの最後まで遡ろうとしています。

映画の物語が、メタレベルに逆らって、本来の物語に戻ろうとしています。

くろまる(2)

鏡の部屋で、クリスがうなされベッドで横になっています。
この鏡の部屋は、合わせ鏡の中のように、隠喩の中の隠喩が繰り返される、ソラリスの海の水です。(くろまる物質と記憶と時間)
永遠にタルコフスキー的な水です。
Cの水草が揺らめく流れる水で、家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水です。(くろまる復旧)
ここでクリスは、全てを知ります。(くろまる復旧)
ハリーを殺したことも、母との関係も、自分がクリスではなく自殺したギバリャンであることも。

くろまる(3)

ステーションのベッドは枕元が壁に取り付けられていますが、鏡の部屋のシーンの後、クリスが寝ている部屋のベッドは壁から離れています。
ベッドの形状も少し違います。
部屋の様子から夢の中です。

時間が過去へ遡っています。
この時間は、物理的な上映時間ではなく、物語の時間です。
ベッドが壁から離れた部屋は、時間が過去へ遡った、昔のステーションと考えます。
ベッドと壁の一部が透明のビニールシートで覆われています。
透明のビニールシートは工事用です。
昔、ベッドを壁に取り付ける工事があったのではないか?と思います。

しかし、そんな昔の記憶は、クリスにはないはずです。
ステーションは、ギバリャンの記憶からの物質化です。(くろまるクリスとギバリャン)
夢もギバリャンの記憶です。
鏡の部屋の夢の、復旧作業で、クリスは自分がギバリャンであることを知ります。
クリス(ギバリャン)に、昔のステーションの記憶が蘇ります。

くろまる(4)

カラーの夢の中の、クリスの部屋には、下着姿のハリーと同じ下着を着た母、部屋の壁際に地上の犬がいます。
母と犬が関係づけられています。
母は、ハリーのケープを持っています。
母とハリーが交錯します。
茎が出た土の入った金属製の箱が窓際にありません。
部屋はステーションのクリスの部屋です。
窓際に、白い布があるので、金属製の箱は、この白い布の下かもしれません。
この夢は、時間が過去へ遡っているようには見えません。
この夢は、映画の物理的な上映時間を7分半〜14分ほど遡った夢とは、別の夢です。

クリスが見るこの夢は、Bの終わりから、映画の物理的な上映時間で、7分半〜14分ほど前に見ている夢です。

この夢を見ているクリスは、自分がギバリャンであることを知りません。

このカラーの夢の中に、地上の家と鏡の部屋にあったものと同じようなガラスの花瓶と花があります。
壁にベッドの上掛けが掛けられていて、透明のビニールシートと関係があるようにも見えます。
他の夢と関係があるように見せていますが、違います。

この夢は、B→Cの映画の物語ではなく、B→Aの本来の物語で見ている夢です。(くろまる2時間)
この夢を見ているのは、ステーションのクリスの部屋で、クリスが寝ている時です。
クリスは、この夢から覚めて、ハリーの心配をしたのです。

くろまる(5)

薄いブルーのモノクロの夢の中は、ステーションのクリスの部屋と、地上の家の部屋が混在しています。

ここでのクリスは、自分がギバリャンであることを知っています。
母は、クリス(ギバリャン)のことを、クリスともギバリャンとも、言っていません。

地上の家の、部屋のテーブルとベランダのテーブルの上にあった陶器と果実と似たような陶器と果実が、夢の中のテーブルの上にあります。
出発当日の朝、地上の家にあった、スプレーボトルが夢の中にもあります。
しかし、地上のスプレーボトルの方が夢の中のスプレーボトルより汚れているので、夢の中のスプレーボトルは、地上のものよりも昔のものです。
地上の家の人体解剖模型は、出発前日はカウボーイハットを被っていますが、夢の中では被っていません。
壁の色や絵も違います。
ステーションのギバリャンの部屋にあった金属のトレーと似たトレーがあります。
Aの焚火で燃やした図面のような、理系の図面もあります。

夢の中の地上の家の部屋は、母が生きていた時代の部屋です。

夢の中にある、ステーションのクリスの部屋のものは、ベッドと丸いテーブルと椅子、そして、銀色の大きな収納ボックスです。
収納ボックスは、クリスがステーションに到着した日に、クリスの部屋で最初に触った物です。
また、ベッドが壁から離れた部屋に掛けてあった、透明のビニールシートも、壁とベッドに掛けてあります。

母は、壁に飾ってあった角笛を見て触ります。
Cの水が流れ落ちる部屋には、ナチュラルホルンがありました。
ステーションの図書室には、フリューゲルホルンがありました。
場所が関係づけられています。
楽器のホルンという名称は、角笛を語源としているそうです。
母は、角笛を触る時に過去を懐かしむようにしました。
時間の過去と未来が関係づけられています。

薄いブルーのモノクロの夢の中は、二つの場所と複数の時間が混在します。
地上とステーションの二つの場所と時間、復旧作業で復旧される過去の記憶、それらが混在します。

薄いブルーのモノクロの夢は、映画の物語のB→Cが、本来の物語のA→Cに合わせようとして、映画の物理的な上映時間を遡ってしまいました。(くろまる2時間)
夢の最後に聴こえる、Cの水草が揺らめく流れる水の音が、次のクリスが目覚めるシーンまで続きます。(くろまる2時間)

夢が終わっても続く、その音は、夢が遡った時に付いた、夢を引きずった跡の音です。


くろまるモノクロ(2)

ハリーとスナウトに両脇を支えられ、クリスが朦朧として歩く廊下で、クリスが身体を不安定に揺らします。
カメラに向けられた廊下のライトが、クリスの身体に隠れたり、現れたりします。
カメラに向けられたライトが現れた時は、画面が白くなります。
白は無彩色モノクロです。
この白の無彩色モノクロの後に、薄いセピアのモノクロ、鏡の部屋、ベッドが壁から離れた部屋、薄いブルーのモノクロ、の夢("四つの夢"とします)が現れます。
それらの夢は繋がっています。

それらの夢が消えるのは、薄いブルーのモノクロの夢の終わりに、画面がフェードアウトして暗くなり、無彩色モノクロになった後です。
あるいは、薄いブルーのモノクロは、自分自身の夢を消しています。

また、カメラに向けられた廊下のライトで画面が白くなるのは、薄いセピアのモノクロの夢の前だけではなく、その前にもあります。
しかし、その前後に、ニセモノが現れたり消えたりしません。
また、クリスがステーションへ到着して、カメラが窓に接近し、画面が黒い無彩色モノクロになるシーンが2回ありますが、この前後も、ニセモノが現れたり消えたりしません。
無彩色モノクロは、規則性がありません。(くろまるモノクロ(1))

ベッドが壁から離れた部屋でハリーがクリスの額に手をやった後に、カメラに向けられたライトで画面が白くなります。
この白の無彩色モノクロの後に、同じ下着を着た母とハリーの夢が現れます。
この夢は、四つの夢とは別の夢です。(くろまる夢(1)(4))
この夢を見ているのは、ステーションのクリスの部屋で、クリスが寝ている時です。(くろまる夢(1)(4))
クリスが目覚めて、この夢からも覚めます。
従って、この夢とクリスが目覚めるシーンは繋がっていると考えます。
薄いブルーのモノクロの夢の終わりに、画面がフェードアウトして暗くなり、クリスが寝ている部屋の、暗い窓の無彩色モノクロにカメラが切り換わります。
このモノクロの後に、同じ下着を着た母とハリーの夢が消えます。

そして、カメラが移動して明るい部屋で寝ているクリスを映し、クリスが目覚めます。
薄いブルーのモノクロの夢の終わりのモノクロと、ステーションのクリスの部屋の窓のモノクロは繋がっているので、これら全ての五つの夢は、クリスが目覚めると同時に消えます。


くろまる帰還

『惑星ソラリス』の映画の物語は、本来の物語の順番を入れ替えただけで、内容は本来の物語と同じです。(くろまる時間)

本来の物語では、Cの地上にAのクリスはまだいます。
映画の物語では、CのクリスはBのステーションから帰還したクリスです。
しかし、Bで消滅したクリスがCに再生成されたら、クリスは二人いることになってしまいます。

ソラリスは、同じ時間に同じ物のニセモノを二個以上物質化しますが、同じ時間に同じ人物のニセモノを二人以上物質化しません。(くろまるモノクロ(1))

CのクリスはBのステーションから帰還したクリスではなく、Aの地上にいたステーションへ出発する前日のクリスです。
クリスはステーションから帰還していません。
Bのクリスは消滅したままで、Cに再生成されていません。
Cのクリスが、いぶかしげな顔をしているのは、復旧作業で過去の記憶が復旧されてすぐなので、自分が誰かはっきりしないからです。(くろまる記憶)


くろまるメタ映画

薄いブルーのモノクロの夢の中で、母はテーブルの上にあった本を手に取り、頁をパラパラとめくって読んでいます。

母が手に取った本は、『惑星ソラリス』のシナリオです。

『惑星ソラリス』は、メタ映画です。(くろまる物質と記憶と時間)

時計が2時を打ち、時を告げます。

Aの終わりを0時として、今は2時です。(くろまる2時間)

母は言います。

「あの人たち、また遅れるのね、呼んでくるわ」

母はシナリオを読んで、未来がわかっています。
「あの人たち」は、父以外の、伯母と隣家の少女、そしてバートンとディークの四人です。
しかし、この四人は今まで遅れたのでしょうか?

薄いブルーのモノクロの夢は、映画の物語で、BからCへ移動する時に見る夢です。
Bの続きは、本来の物語では、Aです。
それが、映画の物語では、Cです。
つまり、Aがないので、四人は登場しません。
それを、「遅れる」と言っています。

Aがないので四人が登場しないことを、『惑星ソラリス』の出演者やスタッフが読むシナリオから読み取ることは困難です。
母が読んでいるシナリオは、タルコフスキーの頭の中だけにあるシナリオです。
従って、そのシナリオは、メタレベルのメタレベルになります。

Bの最後のステーションの図書室で、クリスの耳がアップで映され、クリスとギバリャンが関係づけられます。(くろまる音(1))
図書室のシーンの前の、ディゾルブでサルトリウスが消えた後の実験室の前の廊下のシーンで、時計が時を告げ、図書室のシーンまで続きます。(くろまるモノクロ(1))
時を告げる音は、聴き取りにくいのですが、サルトリウスの実験室の前の廊下で2回、図書室で2回、です。
つまり、それぞれ2時です。
夢の中の、母がメタレベルのメタレベルのシナリオを手に取るシーンと関係づけられています。

図書室でクリスとスナウトが対話します。
対話の内容は、メタ的な意味があります。

スナウト「人間は幸せなときはね、人生の意義とか、その他永遠のテーマとかには興味を持たないものだ。そういうことは死にぎわに考えればいいんだ」(シナリオ、以下同じ)
クリス「その最期がいつ来るか、我々にはわからない。だから焦っているんだ」

ニセモノは、「幸せ」ではないので、自分は何者で、何のために存在しているのかという「人生の意義」を考えます。
「永遠」とは、無限ループのことです。
無限ループの「最期がいつ来るか、我々にはわからない。だから焦って」います。

スナウト「君は急ぐことはない。幸せな人とは、決してこうした忌わしい問題に興味を示さない連中をいうのだ」
クリス「問題は、知りたいという絶えざる願望にあるんだな。だが、平凡な人間の真実を守るためには、秘密も必要だ。幸せの秘密、死の秘密、愛の秘密!」

ニセモノは「幸せ」ではないから、消えて二度と再生成しない、無限ループの終わりを、「知りたいという絶えざる願望」にあります。
「平凡な人間」とは、自分がホンモノだと思っている人間のことです。
Cの復旧作業で、クリスは、自分がホンモノではなくニセモノだという「真実」を知ります。
「秘密」とは、『惑星ソラリス』の隠された秘密です。

スナウト「もしかすると君は正しいかもしれない。しかし、そういうことは考えないようにしたまえ」
クリス「だが、それを考えることは、自分の死の時を知ることでもある。それを知らなければ、実際には我々は不死になってしまうんだな」

自分の「真実」を知らない方が幸せです。
「自分の死の時を知る」ことは、無限ループする本来の物語が終わる時を知ることです。
「不死」とは、同じ出来事の無限の繰り返し、自殺しても死ねない永遠の苦しみ、そうした悲劇のことです。(くろまる伯母)
『惑星ソラリス』は、「人間」の喜びではなく悲しみと苦しみの映画です。(くろまる男性中心主義)
消えて二度と再生成しない、無限ループを終わらせる方法を「知らなければ」、永遠の苦しみが続きます。


くろまる生成と復旧

映画の物語はCで終わり、無限ループする本来の物語は終わるのでしょうか?(くろまる時間)

本来の物語の、Cの続きはBです。(くろまる時間)
映画の物語は、本来の物語の順番を入れ替えただけで、内容は本来の物語と同じです。(くろまる時間)

クリスはもう一度、Bのステーションへ行くことになります。

そして、映画の物語では、BからCの地上へ、もう一度帰還します。

薄いブルーのモノクロの夢の中で、部屋を出た母とクリスが、もう一度同じ部屋に戻っているのは、このことです。

薄いブルーのモノクロの夢は、B→Cの映画の物語で見ている夢です。(くろまる2時間)

映画の物語の、時間の並びは、A→B→C1→B1→C2、になります。

薄いブルーのモノクロの夢の始まり、クリスがベッドから起き上がり、母と抱擁するまでが、Bです。
母と抱擁してから、母とクリスが部屋を出るまでが、C1です。
また同じ部屋に戻り、母がクリスの腕を洗うために、水の入ったタライを持ち上げる前までが、B1です。
母が水の入ったタライを持ち上げてから、薄いブルーのモノクロの夢の終わりまでが、C2です。

クリスと母との抱擁は、BとC1では、クリスと母の向きが違います。
BとC1のクリスは、別のクリスです。(くろまる帰還)
Bのクリスは、こちらを向いていますが、C1のクリスは、あちらを向いています。
C1の地上の初めで、クリスは池を見て、あちらを向いています。
茎が出た土の入った金属製の箱があるのは、BとC1の間です。
B1の、テレビモニターの『雪中の狩人』は、ステーションのクリスの部屋で、ハリーと一緒に見る、父とクリスが撮ったホームビデオの、テレビモニターに映った幻です。(くろまる伯母)
また、テレビモニターの『雪中の狩人』は、ステーションの窓に映った幻です。
ハリーを乗せて、遠くへ飛び去るロケットが映る窓です。(くろまる機械の部品)
だから、図書室でハリーは、『雪中の狩人』を、じっと見ていたのです。
C2の、母がクリスの腕を洗うタライの水は、水草が揺らめく流れる水で、家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水です。(くろまる復旧)

C1の部屋の母は、壁に掛けてある角笛を触り、カメラ目線になり、微笑み、そして部屋を出ます。
これは、角笛をよく見てね、という意味です。
角笛の横に掛けてあるものが、C1は気球の絵で、C2は蝶の標本です。
壁の向きが違う左横(人体解剖模型の左横)にある絵も違います。
C1の人体解剖模型の左横にある絵は、B1では違う壁に掛けてあります。
また、壁の向きが違う右横(ベッドの横)にあるものも違います。
B1は、ステーションの椅子です。
C2は木の椅子で、その上に鉢植えが置いてあります。
この木の椅子は、C1で、母とクリスが抱擁する横にあった、茎が出た土の入った金属製の箱が置かれた、木の椅子と同じです。
鉢植えは、Aの地上の家の、人体解剖模型の前にあった鉢植えと同じです。
Bでは、ステーションの椅子らしきものが映りますが、よくわかりません。
C1では、ステーションの椅子は映りません。
BとC1とB1のベッドの横の壁にあるものは、Aの地上にあったものと似ていますが、よくわかりません。

BとC1の部屋で、母とクリスが抱擁する横の椅子の上に、茎が出た土の入った金属製の箱は、クリスがステーションから持ち帰った金属製の箱です。
C1でも復旧作業が行われますが、金属製の箱は、まだ復旧されておらず、クリスがステーションから持ち帰ったままで、茎が出た土が入っています。
C1の部屋の、収納ボックスは、クリスがステーションに到着した日に、クリスの部屋で最初に触った物です。(くろまる夢(1)(5))
C1の、収納ボックスと丸いテーブルは、ステーションへの旅の思い出でしょうか?(くろまる2時間)

BとC1、C1とB1は、場所が違いますが、映画の物語の時間は続いています。
BとB1は、時間が離れていますが、場所は同じです。
だから、BとC1とB1は、ベッドの横の壁にあるものが同じで、C1とB1は、同じ絵が別の壁にあります。
C1とC2は、場所は同じですが、時間が離れています。
だから、C1とC2は、壁に同じ角笛があり、違う絵があります。
また、Aの地上にあった鉢植えと、C1にあった木の椅子が、C2の部屋では別の場所にあります。

本来の物語と映画の物語の、時間の並びは、A→C→B→・・・A→C→B→A→C1→[島]→B1→C2→[島]・・・、になります。
B1までが本来の物語で、B1→C2、が映画の物語になります。

今まであったAは、C1→B1→C2では、切り離されることになります。

Aで父とクリスが、「最後の日」と言っていたのは、メタ的な意味でこのことです。

Aが切り離されることによって、伯母と隣家の少女は登場しません。
バートンとディークはAがないので、生成されません。
しかし、馬に、復旧・再生成用の記憶データがバックアップされています。(くろまる)
島もまだ残っています。
どこかで、再生成されるかもしれません。
島が消えて、馬も消えてしまうまで、救済されません。

C1は、本来の物語でAの続きです。
だから、C1のクリスはBのステーションから帰還したクリスではなく、Aの地上にいたステーションへ出発する前日のクリスです。(くろまる帰還)
しかし、Aが切り離されてしまったC2のクリスは、ステーションから帰還したクリスになります。

C1は、ステーションへ出発する前日なので、窓際に金属製の箱があります。
C2は、ステーションから帰還した後なので、地上に金属製の箱はありません。
リュックサックもありませんが、リュックサックは復旧作業で復旧します。

C2のクリスは、Aの最初と同じように、水草が揺らめく流れる水から、金属製の箱を持って地上に生成されます。
金属製の箱の中には、Bの最後に茎が出た土が入っています。(くろまるループ)
そして、Cの復旧作業で、金属製の箱の中は土と種子になります。(くろまるループ)

C2の水草が揺らめく流れる水から、クリスは生成されます。
C2の水草が揺らめく流れる水は、家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水です。

水は、隠喩です。

Aの水草が揺らめく流れる水は、生成の隠喩でした。(くろまる生成)
C1の水草が揺らめく流れる水は、復旧の隠喩でした。(くろまる復旧)

C2の水草が揺らめく流れる水は、生成と復旧の隠喩です。

クリスは、隠喩から生成され、隠喩から記憶が復旧されます。

島の周りの広々とした地上の幻も、クリスの生成と同時に現れます。(くろまる生成)

Bの最初で、馬が庭を歩いています。(くろまるバックアップ)
馬は復旧・再生成用の記憶データをバックアップするための媒体です。(くろまる)
Aが切り離されるので、馬をBへ退避したということになります。
Aの最初でも、馬は庭を歩いていて、AとBが関係づけられています。
犬が鳴いているので、母がいることがわかります。(くろまる)

島に登場するのは、父とクリスと犬(母)、そして馬になります。
小鳥は、C1の水が流れ落ちる家の篭の中にいるかどうか?見えません。
Aが切り離されて、小鳥もどこかへ行ってしまったのでしょう。

ここで、液体酸素を飲んで自殺したハリーが、蘇生した(ようにソラリスが見せた)後、スナウトが部屋から慌てて出てきて、廊下を走るシーンを、もう一度見てみます。
上で、「このシーンは、クリスの、BのステーションからAの地上への移動の、消滅と生成の置換」と書きましたが、誤りです。(くろまる廊下を走るスナウト)
このシーンは、クリスのB1のステーションからC2の地上への移動の、消滅と生成の置換です。

スナウトは、クリスです。
クリスは、C2の父です。
ハリーは、C2の犬(母)です。

Bの最後にクリスが見る、同じ下着をつけた母とハリーの夢で、母とハリーが交錯します。(くろまる夢(1)(4))

ハリーは言います。

「これは私?」「何・・・?なぜ?違う、私じゃない」

これは、犬の母の苦悩でもあります。
ここで、クリスは自分への「罰」のことを言います。(くろまる金属製の箱)
それは、母への「罰」でもあります。
父には、「罪」はありません。

「罪」があるのは、ギバリャン(クリス)です。(くろまる母と父)
そして、それは母の「罪と罰」です。(くろまる神と鏡)


くろまる救済

無限ループは、前よりもループが小さくなり、人も少なくなってしまいました。

クリスは帰還したら、すぐに記憶が全て復旧して苦しみます。
そして、前よりも地上に長くはいてくれません。
Aの父はクリスに言います。

「お前と話していたい」

父は、クリスと話がしたくて、毎回のループで、クリスの帰還を待ちわびていたのかもしれません。

クリスがステーションへ行ったら、父は孤独です。
話し相手になってくれる伯母は、もういません。
隣家の少女もいません。
篭の中の小鳥もどこかへ行ってしまったようです。
バートンとディークも、もう訪ねに来てはくれません。
犬の母はいますが、こちらの言うことは理解できても、人の言葉はしゃべれません。
馬もそうです。(くろまる)


くろまる夢(2)

薄いブルーのモノクロの夢は、B→Aの本来の物語ではなく、B→Cの映画の物語で見ている夢でした。(くろまる2時間)
しかし、『惑星ソラリス』の映画の物語は、本来の物語の順番を入れ替えただけで内容は同じでした。
これは、タルコフスキーが決めたルールです。(くろまる時間)

本来の物語の内容で、映画の物語のB→Cの夢は見ることはできません。

タルコフスキーは、自分で決めたルールを自分で違反しているのでしょうか?
ここは、本来の物語の内容で、B→Cの夢を見ることにします。
B→Cが、本来の物語になる、ということです。
映画の物語のB→Cが、本来の物語のA→Cに合わせようとして、夢のシーンが本来の物語のCの場所へ、映画の物理的な上映時間を遡ったように。(くろまる2時間)

本来の物語の、時間の並びは、(A→C→B→・・・A→C→B→A→C1→[島]→)B1→C2→[島]・・・、になります。
()内は、古い本来の物語です。

新しくできた本来の物語は、B1→C2→[島]・・・、になります。

では、映画の物語は、どうなるのでしょうか?

B1→C2は、今まで通り、映画の物語のままです。

映画の物語は、本来の物語の順番を入れ替えただけで、内容は本来の物語と同じです。(くろまる時間)
本来の物語からAが切り離されたら、映画の物語からもAが切り離されます。
「本来の物語」とは、「本来の映画の物語」のことです。(くろまる時間)

Aが切り離されると、残りはBとCの二つしかありません。
順番がB1→C2か、C2→B1の違いだけです。
元々の映画の物語の時間の並びは、A→B→Cです。
映画の物語の時間の並びは、B→Cになります。
クリスが薄いブルーのモノクロの夢の中で母に言う、「2時間遅れた」からも、C2がB1より後であることがわかります。(くろまる2時間)

映画の物語の、時間の並びは、(A→B→C1→[島]→)B1→C2→[島]・・・、になります。
()内は、古い映画の物語です。

B1→C2は、映画の物語と本来の物語が一致する時間の並びになります。

B1→C2→[島]→・・・が、『惑星ソラリス』の映画の物語と本来の物語になります。

C1にいるクリスは、Bのステーションから帰還したクリスではなく、Aの地上にいたステーションへ出発する前日のクリスです。
クリスはステーションから帰還していません。
Bのクリスは消滅したままで、C1に再生成されていません。(くろまる帰還)
四つの夢は、BからCへ移動する時に見る夢です。(くろまるメタ映画)
四つの夢は、B1→C2で見る夢です。

Aの地上の、伯母と隣家の少女、そしてバートンとディークの四人は、C1でも現れません。(くろまるメタ映画)
C2でも現れません。
これが、薄いブルーのモノクロの夢の中の母はが言う、「あの人たち、また遅れるのね、呼んでくるわ」の、「また」の意味です。

Bの最後は、B→C1(本来の物語では、B→A)とB1→C2の、二つのループの違う夢が混在しています。
B→C1(本来の物語では、B→A)は、同じ下着を着た母とハリーの夢です。(くろまる夢(1)(4))
B1→C2は、四つの夢です。

これは、タルコフスキーがそのように編集しているからです。

Cの最後に、カメラが上空に移動して、地上が映し出され、地上は3回、雲に隠れます。
1回目に雲が隠れた時、違う空間に飛んだかのように、フィルムを切って繋いでいます。
雑な編集のようにも見えます。

これは、タルコフスキーがそのように編集しているからです。

これは、雲に隠れる前と雲が晴れた後の時間が違う、と考えます。
時間が違うので、違う空間とも言えます。
雲に隠れる前はC1、雲が晴れた後はC2、です。

Cの最後は、二つのループの違う時間が連続しています。

家の前にあった、機械の部品のようなものは、Bのステーションで、ハリーを乗せて打ち上げたロケットが、地上の島へ落ちてきた残骸でした。(くろまる機械の部品)
このロケットの部品が、1回目の雲に隠れる前のC1にあって、雲が晴れた後のC2では消えています。(くろまる機械の部品)
これは、復旧作業で消滅しました。(くろまる機械の部品)
C1とC2は、二つの違うループでしたが、時間が連続しているように見えます。
例えば、C1を昨日の8時として、C2を今日の8時半とします。
毎日8時15分に復旧作業があります。
C1は、復旧作業前なので、ロケットの残骸はあります。
C2は、復旧作業後なので、ロケットの残骸は水になってソラリスの海へ還り、消えてありません。
あるいは、ソラリスはロケットを、適当に浮かせて、適当に落としているので、C1の前のBでは島へ落ちたが、C2の前のB1では海に落ちた、ということです。(くろまる機械の部品)

本来の物語の、時間の並びは、(A→C→[島1]→B→・・・A→C→[島1]→B→A→C1→[島1]→)B1→C2→[島2]・・・、になります。
()内は、古い本来の物語です。
[島1]は、1回目の雲に隠れる前の島で、[島2]は、1回目の雲が晴れた後の島です。

2回目の雲に隠れて晴れた後、[島2]の周りの広々とした地上の幻は、消えています。
2回目の雲の前と後も、フィルムを切って繋いでいるのがわかりますが、普通に繋いだ感じで、1回目のような雑な感じはしません。
2回目の雲に隠れる前はC2("C2(1)"とします)、雲が晴れた後もC2("C2(2)"とします)、同じループ内です。
それぞれC2(1)とC2(2)で、時間はそれほど飛んでいない、と考えます。
本来の物語の、時間の並びは、以下です。
<B→A→C1→[島1]>→<[1回目の雲(B1)]→C2(1)→[島2(1)]→[2回目の雲]→C2(2)→[島2(2)]→[3回目の雲]>→[エンドクレジット]、です。
<>内は、同じループ内です。
B→A→C1→[島1]は、映画の物語では、A→B→C1→[島1]、になります。

B1→C2の、B1が1回目の雲に隠れています。
この雲は、B1のステーションの、開けることができない「床のハッチを開けて」見た雲、という意味もあります。(くろまる床のハッチと収納ボックス)
あるいは、B1へ到着するカプセル(宇宙船)から見た雲です。(くろまる床のハッチと収納ボックス)
2回目の雲は、B1のステーションが、水となってソラリスの海へ還る雨を降らす、水蒸気かもしれません。(くろまる)

島の周りの広々とした地上の幻は、AとC2の最初の、クリスの生成と同時に現れます。(くろまる生成)(くろまる生成と復旧)
そして、地上の幻は、Bの、カプセル(宇宙船)に入ったクリスの生成と同時に消えます。(くろまるモノクロ(1))
従って、C2では、地上の幻は見えているはずです。
しかし、C2(1)で、カメラは揺れながら上空に移動して、大きく揺れた時に映っていた地上部分も含めて、地上の幻は、C2(2)で消えています。(くろまる機械の部品)
大きく揺れた時に映っていた地上部分が、物質化された島の一部だとすると、幻が消えると同時に、物質化された島の一部も消滅しています。

[2回目の雲]で、地上の幻は消え、物質化された島が消滅し始めています。

島は、ソラリスの海へ沈んでいくようです。(くろまる伯母)


くろまるモノクロ(3)

モノクロシーンは、その前または後に、ニセモノが現れたり消えたりすることを意味していました。(くろまるモノクロ(1))

Aの最初で、クリスは、水草が揺らめく流れる水から生成されます。(くろまる記憶)
また、島の周りの広々とした地上の幻も同時に現れます。(くろまる生成)
このシーンの前後に、モノクロはあったでしょうか?
Aの地上に降る雨は、Bのステーションが消滅して、ソラリスの海へと還る水でした。(くろまる)
この雨のシーンの前後には、モノクロはありません。
Bのステーションはいつ消滅したのでしょうか?
そして、その消滅の前後に、モノクロはあるのでしょうか?

タイトルクレジットとエンドクレジットがあります。

タイトルクレジットは、黒地に白文字の無彩色モノクロです。
エンドクレジットは、白地に黒文字の無彩色モノクロです。

Aの最初で、クリスが、水草が揺らめく流れる水から生成されるシーンの前には、タイトルクレジットがあります。

Aが切り離される前の、本来の物語の時間の並びは、A→C→Bでした。(くろまる時間)
この時間の並びのラストシーンは、Bのステーションのクリスの部屋の窓際に置かれた、金属製の箱に入った土から出た茎のアップです。
この本来の物語のラストシーンの後には、エンドクレジットがあります。

タイトルクレジットの後に、クリスは生成され、島の周りの広々とした地上の幻も現れます。

では、バートンとディークも、タイトルクレジットの後に生成されたのでしょうか?

そうだとしたら、クリスの記憶がリセットされる同じタイミングで、バートンとディークの記憶もリセットされるはずです。
クリスの記憶がリセットされるのは、雨に打たれるシーンでした。(くろまる記憶)
バートンとディークも同じタイミングで記憶がリセットされたら、車から降りてクリスの父と会う時は、バートンには、まだ前の記憶が残っているはずです。
ディークには、隣家の少女の記憶が残っているはずです。

バートンとディークの記憶が、リセットされるのは、車から下りる前です。(くろまる記憶)
バートンとディークと二人が乗る車が、生成されるタイミングは、Aの水草が揺らめく流れる水のシーンより前です。(くろまる記憶)
タイトルクレジットとエンドクレジットも含めると、本来の物語の時間の流れは以下のようになります。

・・・C→B→[エンドクレジット][タイトルクレジット]→A→C→・・・

バートンとディークと二人が乗る車は、エンドクレジットの前に生成されます。

Bのステーションは、バートンとディークと二人が乗る車が生成するタイミングと同じで、エンドクレジットの前に消滅します。
そして、Aの地上に雨を降らせ、クリスは、その雨に打たれます。(くろまる)(くろまる記憶)

タイトルクレジットの前に、モスフィルムのオープニングロゴあります。
2023年発売のBlu-rayには、オープニングロゴの前と、エンドクレジットの後に、ロシア語のクレジットがあります。
モスフィルムのオープニングロゴは、無彩色モノクロです。
ロシア語のクレジットは、黒地に白文字の無彩色モノクロです。
このオープニングロゴとロシア語のクレジットも、それぞれをタイトルクレジットとエンドクレジットに含めることにします。

ニセモノが現れたり消えたりするから、その前後にモノクロがあるのではなく、モノクロがあるから、その前後にニセモノが現れたり消えたりします。

ニセモノが現れたり消えたりするのは、物語の内容です。
モノクロは、映画の形式です。
形式は内容より上位で、メタレベルです。

『惑星ソラリス』には、タイトルクレジットとエンドクレジットの他に、もう一つクレジットがあります。
最初に現れたハリーを、ロケットに乗せて打ち上げようとして、ロケットの発射室へ行く前の、"第2部"のクレジットです。

"第2部"のクレジットは、黒地に白文字の無彩色モノクロです。

しかし、"第2部"のクレジットの前後には、ニセモノが現れたり消えたりしません。

無彩色モノクロは、規則性がありません。(くろまるモノクロ(1))(くろまるモノクロ(2))

あえて何かが現れたとしたら、ハリーを乗せてロケットを打ち上げた発射室で、逃げ遅れたクリスが頭に被った石綿の敷物でしょうか?
しかし、"第2部"のクレジットの後に、クリスとハリーが発射室に入った時には、あの場所にそれらしきものが現れてはいませんでした。
石綿の敷物は発射室のどこかに、最初からあったのでしょう。


くろまる消滅

1回目の雲の無彩色モノクロ(または寒色系モノクロ)の後に、B1のステーションが消滅し、C2の最初の、水草が揺らめく流れる水からクリスが生成されます。(くろまる夢(2))

寒色系モノクロは、その後にニセモノが現れるか消えます。(くろまるモノクロ(1))
無彩色モノクロは、規則性がありません。

3回目の雲とそれに続く、エンドクレジットの無彩色モノクロの後に、島2が消え、無限ループは終わります。(くろまる夢(2))

島が消えて、切り離されたAの地上と、伯母と隣家の少女とバートンとディークが消え、B1の地上も消えます。
全てが無限ループから解放され、救済されます。(くろまる神と鏡)
復旧・再生成用の記憶データがバックアップされた馬も消えて、『惑星ソラリス』のニセモノは、もう二度と現れません。(くろまるバックアップ)

仮に、本来の物語を、C2→B1とすると、タイトルクレジットの後にクリスが生成され、エンドクレジットの前にステーションが消滅して、無限ループが続きます。
しかし、そんなことはないでしょう。(くろまる夢(2))

スナウトも、B1の自分の部屋から、C2のクリスとハリーがいる地上へ走ります。(くろまる生成と復旧)
スナウトが走り去った後、自殺して蘇生して苦悩していたハリーが、無限ループから解放され、いつのまにか手品のように救済されて、キツネにつままれたような顔をしています。


くろまるソラリスの海(1)

『惑星ソラリス』には、ソラリスの海のカラーシーンが、七つあります。

それぞれを、ソラリスの海のカラーシーン(1)〜(7)、とします。

ソラリスの海のカラーシーン(1)〜(7)は、モノクロシーンと同じように、その前または後に、ニセモノが現れます。(くろまるモノクロ(1))

では、ソラリスの海のカラーシーン(1)〜(7)を、順番に見ていくことにします。

くろまる(1)

バートンが見たという幻が映っていない、ビデオの中のビデオの、ソラリスの海のカラーシーン(1)。

その前後に、地上の家のテレビモニターに、"バートン報告"のビデオ映像の幻のニセモノが現れます。(くろまる幻(1))

上で、「ビデオ映像の幻が現れたり消えたりするのは、ビデオプレーヤーのスイッチのON/OFFによる」と書きましたが、誤りです。(くろまるモノクロ(1))
「ビデオのモノクロと見ている部屋のカラーは切り離して、ビデオのモノクロが続いている」としたのは、そのままです。(くろまるモノクロ(1))

この、ソラリスの海のカラーシーンがあるので、その前後に、"バートン報告"のモノクロ映像があります。
しかし、このソラリスの海は、バートンが撮ったビデオ映像なので、テレビモニターに映る幻のニセモノです。
だから、このソラリスの海のビデオ映像のニセモノは、"バートン報告"のモノクロ映像の、その前か後に現れることになります。
これでは、"鶏が先か、卵が先か"と同じで、原因と結果が循環してしまいます。

それに、ソラリスの海のビデオ映像は、"バートン報告"のビデオの中のビデオです。
"バートン報告"のビデオ映像は、ソラリスの海のビデオ映像の上位で、メタレベルです。(くろまるモノクロ(1))
"バートン報告"のビデオ映像がなければ、ソラリスの海のビデオ映像もありません。

では、やはり、「ビデオ映像の幻が現れたり消えたりするのは、ビデオプレーヤーのスイッチのON/OFFによる」のでしょうか?

もう一度、ソラリスの海のカラーシーンを見てみます。

ソラリスの海は、斜め上から映され、操縦席から撮影したことがわかります。
バートンが撮ったソラリスの海は、短いショットが続いています。
バートンが乗る機体の翼のようなものの一部が映っている映像もあります。
海面は、泡立っている映像もありますが、穏やかです。
ビデオの中で、バートンが言っていた霧も映っています。
しかし、機体の翼のようなものの一部が映っている映像の次に、ほぼ真上から撮られた、うねって泡立った色の濃いソラリスの海のショットが、2〜3秒ほど入ります。
このソラリスの海は、バートンが撮った、テレビモニターに幻が映った、ニセモノのソラリスの海ではなく、ホンモノのソラリスの海です。
このホンモノのソラリスの海のカラーシーン(1)の前と後に、ソラリスの海と"バートン報告"のビデオ映像の幻が、地上の家のテレビモニターに映ります。

また、モノクロの"バートン報告"の前に、バートンが見たという幻が現れて、その後に消える、としました。(くろまるモノクロ(1))
しかし、ビデオの中のビデオには幻は映っていないので、"バートン報告"の前後には、ニセモノは現れたり消えたりしない、に訂正します。
無彩色モノクロは、規則性がありません。(くろまるモノクロ(1))(くろまるモノクロ(3))

だとしたら、"バートン報告"は、無彩色モノクロではなくカラーでもいいはずです。
"バートン報告"を無彩色モノクロにしたのは、無彩色モノクロの規則性のなさを出すためです。

くろまる(2)

クリスがステーションへ到着して、最初のソラリスの海のカラーシーン(2)。

その後に、青い服の女性が生成されます。(くろまるモノクロ(1))

上で、「ステーションにいた"お客"は、ステーションが生成された時からいた」と書きましたが、誤りです。(くろまるモノクロ(1))(くろまるモノクロ(1))
青い服の女性は、ステーションと同時に生成されていません。(くろまるモノクロ(1))

また、ギバリャンの死体がある冷凍室へ行ったのは、ニセモノのスナウトの記憶です。くろまるモノクロ(1)

くろまる(3)

クリスがハリーを、スナウトとサルトリウスに紹介した後の、ソラリスの海のカラーシーン(3)。

その後に、父とクリスが撮ったホームビデオ映像の幻が、ステーションのクリスの部屋のテレビモニターに映ります。(くろまる幻(1))

くろまる(4)

クリスとスナウトがサルトリウスの実験室へ行き、実験室の手前でクリスが部屋へ引き返すと、ハリーがベッドの上で気を失っていた後の、ソラリスの海のカラーシーン(4)。

その前後で、ハリーが再々生成されたと考えます。

つまり、ハリー3号が現れた、ということです。

ハリーは、クリスとスナウトの話を聞いて、大きなショックで自殺します。
自殺の方法はわかりません。
もしかすると、「床のハッチ」を開けてみたら開いて、下に飛び降りたのかもしれません。(くろまる床のハッチと収納ボックス)
ハリーは、地上かソラリスの海へ落ちて消滅し、クリスの部屋のベッドの上に再生成された、ということです。

ソラリスの海のカラーシーン(4)の前では、クリスが部屋へ戻ってくるまでに、自殺して消滅し再生成されるには、時間が短すぎるような気もします。
しかし、クリスの部屋からサルトリウスの実験室までが離れていて、自殺して消滅し再生成されるまでの時間は、あったのかもしれません。
髪を結んでいた紐がとれて、ベッドの青いシーツも乱れているので、かなりのショックでのたうちまわっています。
しかし、そうだとしても、気を失ってしまうのも不自然です。
クリスがハリーを抱き起こした時、ハリーが朦朧としていたのは、生成されたばかりだからかもしれません。

ソラリスの海のカラーシーン(4)の後は、クリスがベッドで寝ていて、その横でハリーが上体を起こし、クリスを見つめています。
ここでのハリーは、どこか茫然としているように見えます。
ハリー2号が現れた時の表情に似ています。
ハリーは何度自殺しても生き返って、死ぬことはできません。
このハリーも、自殺して消滅し再生成されたハリーかもしれません。

つまり、ハリー4号かもしれません。

あるいは、ソラリスの海のカラーシーン(4)の間に、何度も自殺を繰り返し、それ以上の、ハリー5号、6号、7号、8号、9号・・・

くろまる圧縮(5)

ハリーが液体酸素を飲んで自殺する前の、ソラリスの海のカラーシーン(5)。

その前に、『惑星ソラリス』のニセモノが現れます。
その前の、冬の焚火が映ったホームビデオだけではありません。

図書室で、スナウトの誕生日のお祝いが終わり、サルトリウスは先に図書室を出ます。
次いでスナウトが図書室を出て、クリスはスナウトを追いかけます。
スナウトは、お喋りをして、歌を唄いますが、クリスは途中でハリーのことが心配になって、図書室へ戻ります。
ハリーは、図書室でタバコを喫いながら、『雪中の狩人』を、じっと見入っています。
そのシーンの後の、ブランコが映ったホームビデオから、冬の焚火が映ったホームビデオまでが、『惑星ソラリス』のニセモノです。
ブランコが映ったホームビデオは、幻のニセモノです。
その前後にモノクロシーンか、ソラリスの海のカラーシーンがあるはずですが、ここでのソラリスの海のカラーシーン(5)に包含されています。

『惑星ソラリス』のニセモノとは、『惑星ソラリス』の圧縮です。

『惑星ソラリス』の圧縮は、ソラリスの海から、ニセモノが生成される途中の状態、と考えることもできます。
"『惑星ソラリス』のニセモノ"は、"『惑星ソラリス』の圧縮"とします。

『惑星ソラリス』の圧縮は、三つあります。
それぞれを、圧縮(5)(6)(7)とします。

『惑星ソラリス』の中に『惑星ソラリス』がある、劇中劇です。

圧縮(5)は、ブランコが映ったホームビデオから、ソラリスの海のカラーシーン(5)の前までです。

ブランコが映ったホームビデオの短いシーンが、Aの出発前日の地上です。
ホームビデオに映るブランコは、Aの地上にあったブランコと同じです。(くろまる伯母)

図書室で無重力状態になる前までのシーンが、Bの出発当日の朝の地上です。

部重力状態で、浮遊する燭台は、Bのカプセル(宇宙船)です。
揺れるガラスのシャンデリアは、ステーションです。
ガラスのシャンデリアは、燭台が触れて揺れます。
カプセル(宇宙船)の、ステーションへの到着です。

浮遊するハリーは、ハリー1号です。

浮遊する『ドン・キホーテ』の本は、ハリー1号を乗せて打ち上げた(ように見せて浮かせた)ロケットです。(くろまるニセモノ)
浮遊する『ドン・キホーテ』の本が、クリスとハリー1号の前を横切り、ハリー1号が一瞬、『ドン・キホーテ』の本で隠れます。

浮遊するハリーは、ハリー2号(以降)です。

一つ目の『雪中の狩人』は、父とクリスが撮ったホームビデオです。(くろまる伯母)

二つ目の『雪中の狩人』までの無重力状態が、クリスがステーションへ到着してから、ハリーが図書室で、『雪中の狩人』を、じっと見入っているシーンまでです。

二つ目の『雪中の狩人』は、この『惑星ソラリス』の圧縮、劇中劇です。
圧縮の中の圧縮、劇中劇の中の劇中劇です。
二つ目の『雪中の狩人』は、合わせ鏡の中のように、劇中劇が繰り返されます。

『雪中の狩人』の後から、図書室での無重力状態が終わって、冬の焚火が映ったホームビデオのシーンの前までが、クリスが見る夢、Bの終わりまでです。

クリスが見る夢は、四つの夢と、同じ下着を着た母とハリーの夢です。(くろまるモノクロ(2))(くろまるモノクロ(2))

浮遊していた燭台が、クリスとハリーの足元に、落ちています。
椅子が並んだ半円形になった場所が、地上だとすると、浮遊して落ちた燭台は、ソラリスが浮かせて地上に落ちてきた、ハリーを乗せたロケットです。(くろまるニセモノ)(くろまる機械の部品)
テーブルの上の燭台は、家の前の焚火です。
そして、ブリューゲルの絵は、島の周りの広々とした地上の幻です。(くろまる幻(1))
神の怒りに触れて崩壊した巨大建造物、『バベルの塔』は、ソラリスの海のどこかに現れた幻、未来都市東京首都高でしょうか?(くろまる神と鏡)(くろまる幻(1))(くろまるモノクロ(1))
このシーンは、Cの地上で、ハリーは父の置換のようにも見えますが、違います。
同じ下着を着た母とハリーの夢の中で、関係づけられた地上です。(くろまる夢(1)(4))
また、薄いブルーのモノクロの夢の、C1かC2の地上です。
ハリーは、クリスが見る夢の中の、母です。

冬の焚火が映ったホームビデオのシーンは、Cの地上です。
この焚火は、Cの家の前の焚火です。

クリスとハリーが無重力状態の図書室で、浮遊するシーンで、ハリーの背中が映ります。
ハリーの服をハサミで切った跡があります。
紐の右に切った跡があります。
最初にハリーが現れた時、クリスは紐の左をハサミで切っています。
2回目に現れたハリーは、自分で服をハサミで切りますが、紐の右か左か、どちらを切ったのかわかりません。
ハリーはこの時、紐の横だけではなく、腰のあたりも切っています。
シナリオを読むと、クリスは、ハリー2号の服を廊下の壁際の箱の後ろに隠しています。
図書室で浮遊するハリーの服の、ハサミで切った跡は、綺麗に繋ぎ合わせてあります。
最初から服が、このように生成されたようにも見えます。
上で書いた、ハリー3号または4号は、紐のある服ではなく、シャツを着ていました。
もし、ハリー3号、4号、が生成されたとしたら、服も別に生成されたのでしょうか?
服はハサミで切らなくても、頭から被って着たり脱いだりすればいいのです。
あるいは、別のところで紐の服を着たハリー5号、6号、7号、8号、9号・・・が生成されたのでしょうか?

図書室での、スナウトの誕生日のお祝いに、スナウトは遅れてきます。
サルトリウスは言います。
「1時間半も遅刻だ」
この「1時間半の遅刻」は、Bの最後でクリスが見る、薄いブルーのモノクロの夢の中で母に言う、「2時間遅れた」と同じ意味です。(くろまる2時間)
本来の物語のAの最後の焚火から、冬の焚火が映ったホームビデオは、物理的な上映時間で、1時間半遅れます。
図書室での、スナウトの誕生日のお祝いのシーンは、冬の焚火が映ったホームビデオの、7分半〜17分ほど前にあります。(くろまる2時間)

いくら映画の常識を壊すとは言え、こんなことをするのは、タルコフスキーしかいません。(くろまる2時間)

くろまる圧縮(6)

スナウトが廊下を走るシーンの後の、ソラリスの海のカラーシーン(6)。

その前に、『惑星ソラリス』の圧縮(6)が現れます。

圧縮(6)は、ソラリスの海のカラーシーン(5)から、ソラリスの海のカラーシーン(6)までの間です。
ソラリスの海のカラーシーン(5)と(6)も、この圧縮(6)に含みます。

ソラリスの海のカラーシーン(5)は、この『惑星ソラリス』の圧縮、劇中劇です。(くろまる圧縮(5))
圧縮の中の圧縮、劇中劇の中の劇中劇です。
ソラリスの海のカラーシーン(5)は、合わせ鏡の中のように、劇中劇が繰り返されます。

液体酸素を飲んで自殺して蘇生したハリーのシーンは、クリスが見る四つの夢です。(くろまるモノクロ(2))

廊下を走るスナウトのシーンは、クリスのB1のステーションからC2の地上への移動の、消滅と生成の置換です。(くろまる生成と復旧)

廊下を走るスナウトのシーンから後は、C2の地上です。(くろまる圧縮(5))

ソラリスの海のカラーシーン(6)は、Cの家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水です。(くろまる復旧)

しかし、なぜハリーは、液体酸素を飲むなどということを思いついたのでしょうか?
それは、自分は水でできているということが、わかったからかもしれません。
それには、何度も自殺して消滅し再生成されるのを繰り返していなければ、わかりません。
生成されて、記憶がリセットされ、前の記憶は残っていなはずですが、少しだけ残り始めたのかもしれません。
水だから凍らせてしまえばいい、という発想です。
何度も自殺して消滅し再生成を繰り返して、最後に行きついたのがこの方法です。
そうだとしたら、それには、サルトリウスの入れ知恵もあったと思います。


くろまる圧縮(7)

ハリーとスナウトに両脇を支えられ、クリスが朦朧として歩く廊下の前の、ソラリスの海のカラーシーン(7)。

その前に、『惑星ソラリス』の圧縮(7)が現れます。

圧縮(7)は、ソラリスの海のカラーシーン(6)の後から、ソラリスの海のカラーシーン(7)までの間です。
ソラリスの海のカラーシーン(6)は、この圧縮に含みません。

底にものが沈んだ水の入ったガラスの水差しは、この『惑星ソラリス』の圧縮、劇中劇です。(くろまる圧縮(5))(くろまる圧縮(6))
圧縮の中の圧縮、劇中劇の中の劇中劇です。
底にものが沈んだ水の入ったガラスの水差しは、合わせ鏡の中のように、劇中劇が繰り返されます。

底にものが沈んだ水の入ったガラスの水差しの横に、『サイバーネット』というタイトルの本があります。
『惑星ソラリス』は、コンピュータ内のサイバー空間、プログラムの空間、ロジックの空間でもあります。

ハリーがベッドに身を投げてクリスも横たわるシーンは、同じ下着をつけた母とハリーの夢です。(くろまる圧縮(5))(くろまる圧縮(6))

ソラリスの海のカラーシーン(7)は、Cの家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水です。(くろまる復旧)(くろまる圧縮(6))

クリスがベッドから起き上がります。

クリスが、廊下でこちらを向いて立っているシーンは、Bの最後です。(くろまる生成と復旧)
クリスが、廊下であちらを向いて立っているシーンは、C1の最初です。
こちらを向いたBのクリスと、あちらを向いたC1のクリスが、オーバーラップします。

クリスが、廊下であちらを向いて立っているシーンから後は、C1の地上です。(くろまる圧縮(5))(くろまる圧縮(6))

こちらを向いたクリスが、フェードアウトするシーンは、Bからの消滅です。
クリスの、地上とステーションとの移動は、消滅と生成で行われます。(くろまる記憶)
しかし、このBのクリスは、C1に再生成されません。

Bで消滅したままです。

Bのクリスは、C1に帰還しません。(くろまる帰還)

あちらを向いて立っているクリスが、フェードインするシーンは、Cの最初で、地上の池を向いて立っているクリスです。
このCのクリスは、本来の物語で、Aの続きのクリス、つまり、ステーションへ出発する前日のクリスです。(くろまる帰還)

こちらを向いたBのクリスと、あちらを向いたC1のクリスは、別のクリスです。(くろまる生成と復旧)

ステーションの廊下を歩くクリスは、Cの地上の家へ向かって歩くクリスです。

廊下のクリスは、犬が描かれた紙片を拾います。
紙片に描かれた犬は、Cの地上で、クリスに走り寄る犬(母)です。
紙片を見てすぐに捨てる廊下のクリスは、犬(母)を見て首筋を軽く撫でる地上のクリスです。(くろまる)

窓際にスナウトが立っています。

ステーションの窓から外を見るクリスは、Cの地上の家の窓から家の中を見るクリスです。

スナウトとクリスは、お喋りをします。

スナウトとクリスは、ギバリャンです。

二人のお喋りは、Cの復旧作業のギバリャンの記憶です。(くろまる復旧)(くろまる母と父)

二人のお喋りは、コピー機が表面だけを読み取って真似をした、浅薄な内容です。(くろまるバックアップ)

スナウトのお喋りは、ニセ科学です。
クリスのお喋りは、理系の文学論です。

意味するものは、ソラリスの海のカラーシーン(6)と(7)で、家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水です。(くろまる復旧)(くろまる圧縮(6))
意味されるものは、深い意味はありません。

タルコフスキーに、騙されてはいけません。


くろまるソラリスの海(2)

この音を聴いてください。

ミュート設定していないので、音が出ます。


[フレーム]


電子音、人の囁きや騒めき、祈りの声、犬や鳥の鳴き声、鐘の音、水が流れる音、夢の中で母がクリスにキスをした時の性的な音も聴こえてきます。(くろまる金属製の箱)
そうした音が混然となって蠢き、宇宙的で地下深く、ブリューゲルの絵の中、異世界へ連れて行ってくれるような、神秘的で心地よい音楽に聴こえます。

圧縮(6)は、B1→C2、です。
圧縮(7)は、B→C1、です。

圧縮(6)を圧縮(7)の上に重ねます。
『惑星ソラリス』の圧縮、クリスが見る夢、ステーション、地上、ソラリスの海、の位置をそれぞれ合わせます。

これらの作業は、全てメタレベルの手作業です。

重ねた圧縮(6)と圧縮(7)を、圧縮(5)に重ねます。
『惑星ソラリス』の圧縮、クリスが見る夢、ステーション、地上、が重なります。

『惑星ソラリス』の圧縮の中の圧縮、劇中劇の中の劇中劇は、
上から、(6)ソラリスの海、(7)水の入ったガラスの水差し、(5)ブリューゲルの『雪中の狩人』、の三つの層になります。(くろまる圧縮(6))(くろまる圧縮(7))(くろまる圧縮(5))

誕生日のお祝いが終わって、スナウトが図書室を出る時に、時計が時を告げます。
いくつ時を告げたかは、聴き取りにくくてよくわからないので、時間は関係ないと思います。
また、この後に、無重力状態になる17時に近い時間でもないようです。
時計は、クリスの夢の中で母がシナリオを読む時と、クリスとスナウトが会話する図書室の最初でも、時を告げます。(くろまるメタ映画)(くろまるメタ映画)
時計が時を告げる音は、時間を音に置き換えて可聴化したものです。
『惑星ソラリス』の、時計が時を告げる音は、メタレベルの意味があります。

スナウトが図書室を出る時の、時計が時を告げる音は、図書室の前の廊下まで続きます。
時を告げる音は、スナウトが廊下へ出ようとして、部屋へ引き返しかけて、また出ようとしてからは、2回("時を告げる音(1)"とします)聴こえます。
スナウトはドイツ語で『おおスザンナ』を歌います。
『おおスザンナ』は、サルトリウスの実験室の前の廊下へ、歌が続いて繋がっています。
クリスは、ハリーが心配になって図書室へ引き返します。
サルトリウスの実験室の前の廊下から、図書室の前の廊下、そして図書室へは、低い音量の電子音で繋がっています。

クリスとスナウトが対話する図書室の最初の、時を告げる音は、サルトリウスの実験室の前の廊下で2回("時を告げる音(2)"とします)、図書室で2回します。(くろまるメタ映画)
時を告げる音(1)を、時を告げる音(2)に移動して重ねます。
音を移動させると、音と言葉で繋がっていたシーンが、一緒に付いてきます。

時を告げる音(1)は、スナウトの誕生日のお祝いが終わって、スナウトが図書室を出る前からします。
スナウトの誕生日のお祝いが終わって、サルトリウスが図書室を出てから、スナウトが図書室を出るまでを、クリスが夢から覚めた部屋へ重ねます。

スナウトが図書室から廊下へ出てから、クリスが図書室へ戻るまでを、図書室の前から、サルトリウスがディゾルブで消えた後の実験室の前の廊下までへ重ねます。
だから、廊下でスナウトは、「ファウスト(サルトリウス)の所へ行く」と言います。
しかし、スナウト(メフィスト)が案内をする相手はクリスです。
クリスは、時間を遡ります。

ハリーが、『雪中の狩人』をじっと見入っている図書室("図書室(1)"とします)を、クリスとスナウトが対話する図書室("図書室(2)"とします)へ重ねます。

ハリーがじっと見入る『雪中の狩人』のシーンでは、先ほど聴いた音が流れています。
図書室(2)の最後は、クリスの耳のアップです。

クリスの耳は、この音を聴いていたのです。(くろまる音(1))

ブリューゲルの『雪中の狩人』と、クリスの耳が重なります。

美術と音楽が、重なります。

この音は、次の圧縮(5)の、Aの出発前日の地上と、Bの出発当日の朝の地上まで続きます。(くろまる圧縮(5))

圧縮(5)のAとBのシーンも音で繋がっているので、一緒に付いてきます。
圧縮(6)と圧縮(7)は重ねて、圧縮(5)に重ねました。
圧縮(5)(6)(7)は、『惑星ソラリス』の圧縮、クリスが見る夢、ステーション、地上、が重なります。
圧縮(6)と圧縮(7)のシーンも、一緒に付いてきます。

圧縮(5)(6)(7)の『惑星ソラリス』の圧縮の全てのシーンが、図書室(2)の次のシーンに重なります。

図書室(2)の次のシーンは、雲が広がるソラリスの海のモノクロシーンです。

雲が広がるソラリスの海のモノクロは、『惑星ソラリス』の圧縮、劇中劇です。


くろまる三つの金属製の箱

本来の物語と映画の物語を繋いだ、時間の並びは、・・・→A→C→B(-2)→A→C→B(-1)→(A→B→C1)→B1→C2、になります。
映画の物語の()内は、本来の物語の順番を入れ替えただけで、内容は本来の物語と同じです。(くろまる時間)

スナウトの誕生日のお祝いが終わった図書室を、B(-2)とします。
スナウトの誕生日のお祝いが終わって、図書室から出るスナウトを追って、図書室を出るクリスは、B(-2)からAへ移動するクリスです。
クリスは、図書室(1)へ行きます。

図書室(1)のハリーがじっと見入る『雪中の狩人』は、Aの水草が揺らめく流れる水です。

B(-2)→Aです。

図書室(1)の後の『惑星ソラリス』の圧縮の、圧縮(5)の、Aの地上のブランコが映ったホームビデオの後へ、Cの地上の冬の焚火が映ったホームビデオを、移動させます。

AとCの地上が離れていた、ホームビデオのシーンが、連続することになります。

『惑星ソラリス』の圧縮は、本来の物語の、A→C→B、になります。

クリスは、図書室(1)の後の『惑星ソラリス』の圧縮の、圧縮(5)のAのブランコが映ったホームビデオへ行き、Cの地上の冬の焚火が映ったホームビデオへ行きます。

A→Cです。

そして、Bの出発当日の朝の地上の図書室へ行きます。

C→B(-1)です。

クリスは、Bの終わりのクリスが見る夢から、圧縮(5)を出ます。(くろまる圧縮(5))
クリスが見る夢は、同じ下着を着た母とハリーの夢です。
本来の物語では、四つの夢は見ていません。(くろまる圧縮(5))(くろまるモノクロ(2))

圧縮(5)を出たクリスは、夢から覚めた部屋へ行きます。

スナウトの誕生日のお祝いが終わって、サルトリウスが図書室を出てから、図書室(1)までは、クリスが夢から覚めた部屋から、図書室(2)までへ重ねました。(くろまるソラリスの海(2))

クリスが夢から覚めた部屋を、B(-1)とします。
窓際に、茎が出た土の入った金属製の箱("金属製の箱(B(-1))"とします)があります。

夢から覚めたクリスが見ていた夢は、同じ下着を着た母とハリーの夢です。
同じ下着を着た母とハリーの夢は、B→C1(本来の物語では、B→A)で見る夢です。(くろまる夢(1)(4))(くろまる夢(2))
スナウトの誕生日のお祝いが終わった図書室と、クリスが夢から覚めた部屋は、違うループの同じ時間です。
スナウトの誕生日のお祝いが終わった図書室と、クリスが夢から覚めた部屋は、重ねることができます。

クリスは、夢から覚めた部屋と重ねた、スナウトの誕生日のお祝いが終わって、サルトリウスが図書室を出てから、図書室(1)へ行きます。

図書室(1)のハリーがじっと見入る『雪中の狩人』は、Aの水草が揺らめく流れる水です。

B(-1)→Aです。

『惑星ソラリス』の圧縮は、映画の物語の、A→B→C1、です。

クリスは、図書室(1)の後の『惑星ソラリス』の圧縮の、圧縮(5)のAのブランコが映ったホームビデオへ行き、そして、Bの出発当日の朝の地上の図書室へ行きます。

A→Bです。

圧縮(5)のBから、圧縮(7)のBへ行きます。
圧縮(7)で、Bのベッドから起き上がったクリスは廊下を歩きます。
ケープが枕に掛かっていて、ハリーは消滅したかと思わせますが、ベッドに眠ったままです。
ハリーがベッドに身を投げてクリスも横たわるシーンは、同じ下着をつけた母とハリーの夢です。(くろまる圧縮(7))
ハリー2号(以降)が消滅したのは、ハリーとスナウトに両脇を支えられ、クリスが朦朧として歩く廊下の後の、薄いセピアの暖色系モノクロの前です。(くろまるモノクロ(1))
同じ下着を着た母とハリーの夢は、薄いセピアのモノクロの夢より後です。
従って、ハリー2号(以降)は、夢の外では、すでに消滅しています。

クリスは、圧縮(7)のBからC1へ行きます。(くろまる圧縮(7))(くろまるソラリスの海(2))

B→C1です。

廊下に、スナウトがいて、二人でお喋りをします。
『惑星ソラリス』の圧縮の最後の、ソラリスの海のカラーシーン(7)は、Cの家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水です。(くろまる圧縮(7))

雲が広がるソラリスの海の『惑星ソラリス』の圧縮の後の、スナウトと対話するクリスの部屋の窓際に、茎が出た土の入った金属製の箱("金属製の箱(B)"とします)があります。
クリスが夢から覚めた部屋は、スナウトと対話するクリスの部屋になり、水差しと青い布と金属製の箱の蓋が物質化されます。
水差しと青い布と金属製の箱の蓋が物質化されたのは、クリスが夢から覚めた部屋ではなく、スナウトと対話するクリスの部屋です。
水差しと青い布と金属製の箱の蓋が物質化されたのは、BとC1の間です。

クリスは、B(-1)のクリスが夢から覚めた部屋から、次のループのBのスナウトと対話するクリスの部屋にいます。
スナウトと対話するクリスの部屋は、圧縮(7)のB、クリスとハリーがベッドで寝ている部屋と同じです。
このクリスは、薄いブルーのモノクロの夢の、ベッドから起き上がるクリスです。(くろまる生成と復旧)

図書室(2)の、クリスとスナウトの対話は、BとC1の間の、水差しと青い布と金属製の箱の蓋が物質化されてから、始まります。
図書室(2)は、C1です。
図書室(2)のクリスとスナウトの対話は、圧縮(7)のC1の、クリスとスナウトのお喋りと重なります。
図書室(2)のクリスの耳は、ソラリスの海のカラーシーン(7)と重なります。
このクリスは、Aの地上にいたクリスです。(くろまる帰還)(くろまる生成と復旧)

ソラリスの海のカラーシーン(7)は、C1の家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水です。(くろまる圧縮(7))
上で、図書室(1)のハリーがじっと見入る「ブリューゲルの『雪中の狩人』と、クリスの耳が重なります。」と書きましたが、誤りです。(くろまるソラリスの海(2))
図書室(2)の、クリスの耳は、C1の家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水の音を聴いています。
C1の家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水は、C1の水草が揺らめく流れる水です。(くろまる復旧)
クリスの耳は、ホンモノが出すホンモノの音を聴いています。(くろまる音(1))

クリスは、雲が広がるソラリスの海の『惑星ソラリス』の圧縮へ行きます。

C1→B1です。

雲が広がるソラリスの海の『惑星ソラリス』の圧縮は、圧縮(5)の、ブランコが映ったホームビデオのAが切り離されています。(くろまる圧縮(5))(くろまる生成と復旧)
クリスは、ハリーがいる圧縮(5)の図書室のB1へ行きます。

クリスは、圧縮(5)の図書室のB1から、圧縮(6)のハリーが液体酸素を飲んで自殺した廊下のB1へ行きます。
圧縮(6)のハリーが液体酸素を飲んで自殺した廊下は、Bの終わりの、茎が出た土の入った金属製の箱が置かれた窓際と同じです。
窓際には、茎が出た土の入った金属製の箱("金属製の箱(B1)"とします)があります。
クリスは、Bの終わりの、茎が出た土の入った金属製の箱(B1)が置かれた窓際の部屋にいます。
しかし、クリスは、部屋にいるかどうかわかりません。

クリスが部屋にいないとしたら、B1のステーションから消滅して、C2の地上に再生成されたからです。(くろまる生成と復旧)

B1→C2です。

圧縮(6)の廊下にも、クリスはいません。
クリスは、C2の地上からも消滅したのかもしれません。
ハリーが、キツネにつままれたような顔をしています。

金属製の箱(B(-1))、金属製の箱(B)、金属製の箱(B1)、は違います。
(B(-1))(B)は、茎の形が似ていますが、(B1)は違います。
(B(-1))(B)は、蓋の位置がそれほどちがいませんが、(B1)は違います。
(B(-1))と(B)は、古い本来の物語です。(くろまる夢(2))
(B1)は、新しくできた本来の物語と映画の物語です。(くろまる夢(2))
(B(-1))は、金属製の箱の下には何もありませんが、(B)(B1)は布が敷いてあり、(B)と(B1)では、布の置き方が違います。
時間の経過は、(B(-1))→(B)→(B1)、です。

薄いブルーのモノクロの夢は、B1→C2で見る夢なので、夢の中の金属製の箱の中の茎の形は、(B1)の茎の形と同じです。(くろまる2時間)
水差しと青い布と一緒に物質化された、金属製の箱の蓋が濡れていたのは、この金属製の箱(B1)の蓋をコピーしたからです。
しかし、水差しと青い布と金属製の箱の蓋が物質化された、スナウトと対話するクリスの部屋は、前のループのBです。
また、薄いブルーのモノクロの夢の中で、金属製の箱(B1)があるのは、BとC1の間です。(くろまる生成と復旧)
四つの夢のシーンがBの終わりより、映画の物理的な上映時間で、7分半〜14分ほど前にあるのは、
映画の物語のB→Cが、本来の物語のA→Cに合わせようとして、夢のシーンが本来の物語のCの場所へ、映画の物理的な上映時間を遡ったからです。(くろまる2時間)
金属製の箱(B1)も、四つの夢と一緒についてきて、映画の物理的な上映時間を遡ったことになります。

B1→C2から、四つの夢が遡ったのは、B→C1(本来の物語では、B→A)です。

四つの夢と金属製の箱(B1)は、前のループまで遡った、ということです。


くろまる消えるサルトリウス

水差しと青い布と金属製の箱の蓋が物質化された後に、図書室の前の廊下から、サルトリウスがディゾルブで消えていきます。

廊下を歩くサルトリウスは、クリスの置換です。
だから、サルトリウスは、ハリーが突き破ったドア越しに、クリスの部屋を覗いていたのです。(くろまるスナウトとサルトリウス)
しかし、廊下を歩くサルトリウスは、Bから消滅するクリスではありません。
廊下を歩くサルトリウスが、Bから消滅するクリスだとすると、その前にある、水差しと青い布と金属製の箱の蓋が物質化されるのが、BとC1の間ではないことになります。
廊下を歩くサルトリウスは、C1の地上の家へ向かって歩くクリスです。(くろまる圧縮(7))
廊下を歩くサルトリウスは、あちらを向いています。
Bから消滅するクリスは、こちらを向いています。(くろまる生成と復旧)(くろまる圧縮(7))
C1の地上のクリスは、あちらを向いています。

では、なぜサルトリウスは、ディゾルブで消えるのでしょうか?
ディゾルブで消えるサルトリウスは、クリスの置換のサルトリウスではなく、ステーションから消滅するサルトリウスです。(くろまるモノクロ(1))

サルトリウスが拾うボールは、圧縮(7)で、クリスが拾う犬が描かれた紙片で、C1の地上で、クリスが首筋を軽く撫でる犬(母)です。(くろまる圧縮(7))
薄いブルーのモノクロの夢の中に、母は、BのステーションにもC1の地上にもB1のステーションにもC2の地上にもいました。(くろまる生成と復旧)
母は、クリスと同じタイミングで、地上からステーションへ、ステーションから地上へ、消滅して再生成されていたのです。

地上の母は、犬です。
ステーションの母は、ボールです。

薄いブルーのモノクロの夢の中で、母と抱擁する、C1の地上のクリスは、犬(母)の首筋を軽く撫でるクリスです。
クリスがステーションへ到着して、スナウトの部屋の前へ来ると、ボールがクリスの足元に転がってきました。
薄いブルーのモノクロの夢の中で、母と抱擁する、Bのステーションのクリスは、足元に転がってきたボール(犬)を拾うクリスです。

一体全体、タルコフスキーは母のことを何と思っていたのか?聞いてみたいものです。


くろまる1時間半の遅刻

図書室での、スナウトの誕生日のお祝いに、スナウトは「1時間半の遅刻」をします。
これは、薄いブルーのモノクロの夢の中で、クリスが母に言う、「2時間遅れた」と同じ意味です。(くろまる圧縮(5))

映画の物語のCの始まりは、本来の物語のAの終わりの焚火から、物理的な上映時間で、2時間遅れます。(くろまる2時間)
図書室(1)の後の『惑星ソラリス』の圧縮の、Cの地上の冬の焚火が映ったホームビデオは、本来の物語のAの終わりの焚火から、物理的な上映時間で、(くろまる圧縮(5))
1時間半(正確には1時間32分)遅れます。(くろまる圧縮(5))

スナウトの誕生日のお祝いが終わった図書室と、クリスが夢から覚めた部屋は、重ねることができました。(くろまる三つの金属製の箱)
スナウトの誕生日のお祝いと、クリスが見る四つの夢は、重ねることができます。

ハリーの手に接吻するスナウトは、薄いブルーのモノクロの夢の中で、母と抱擁するクリスです。
スナウトは、薄いブルーのモノクロの夢の中の、クリスです。
また、スナウトは、圧縮(5)の冬の焚火が映ったホームビデオの中の、少年クリスです。(くろまる圧縮(5))

四つの夢は、映画の物語で、BからCへ移動する時に見る夢です。(くろまるメタ映画)
しかし、スナウトの誕生日のお祝いが終わって、図書室から出るスナウトを追って、図書室を出るクリスは、BからAへ移動するクリスです。(くろまる三つの金属製の箱)
だから、サルトリウスは、スナウトは「もう来ないと思うよ」とも言います。
スナウトの誕生日のお祝いは、薄いブルーのモノクロの夢の中の、クリスのスナウトが、来るべき場所ではないからです。

スナウトが、「読みたまえ」と言って、クリスに渡した『ドン・キホーテ』の本は、薄いブルーのモノクロの夢の中の、母が読む本です。(くろまるメタ映画)
「眠ってるときは、恐れも不幸もなく、ただ夢心地」
本を読むクリスは、眠って夢を見ているクリスです。
「深い眠りはイヤですね、こいつは死に似ている」
夢を見ない深い眠りは、死に似ています。

無重力状態で浮遊する『ドン・キホーテ』の本は、ハリー1号を乗せて打ち上げた(ように見せて浮かせた)ロケットです。(くろまる圧縮(5))
薄いブルーのモノクロの夢の中の、母が読む本がある、テーブルの上に果物があります。
Bの出発当日の朝、テーブルの上にある、金属製の箱と『ドン・キホーテ』の本の横にも、果物があります。(くろまる金属製の箱)
母が食べていた果物は、地上に落ちてきた、ハリー1号を乗せたロケットです。(くろまる機械の部品)
食べかけの果物は、ロケットの残骸です。
母がクリスの腕を洗う水は、復旧作業の水です。(くろまる生成と復旧)
復旧作業で、地上に落ちてきた、ハリー1号を乗せたロケットは消滅します。(くろまる機械の部品)(くろまる夢(2))
母に食べられた果物も、消滅します。

ハリーの元に跪くクリスは、夢の外で眠っているクリスです。
ハリーは、薄いブルーのモノクロの夢の中の、母です。
サルトリウスに「立つんだ」と言われて、立つクリスは、夢から覚めるクリスです。
クリスが立ってから、図書室を出るサルトリウスは、クリスが夢から覚めて消える、同じ下着を着た母とハリーの夢です。(くろまるモノクロ(2))
サルトリウスが出ていった後の図書室のスナウトは、クリスが夢から覚めた部屋のスナウトです。

ハリーの元に跪くクリスと、圧縮(5)の無重力状態が終わって、ハリーの膝に頭を埋めるクリスは、関係づけられています。(くろまる圧縮(5))
ハリーは、クリスが見る夢の中の、母です。(くろまる圧縮(5))
クリスは、夢を見ているクリスです。

鏡の部屋は、タルコフスキー的な水で、水草が揺らめく流れる水でした。(くろまる夢(1)(2))
B1→C2でクリスが見る四つの夢は、Cの水草が揺らめく流れる水の中で、生成される時に見ている夢、と考えることができます。
だとすると、クリスが見る四つの夢は、B1→C2の水草が揺らめく流れる水から飛び出してきて、B→C1のBの終わりから、(くろまる三つの金属製の箱)
映画の物理的な上映時間を7分半〜14分ほど遡ったことになります。(くろまる2時間)

スナウトの誕生日のお祝いは、図書室(1)の後の『惑星ソラリス』の圧縮の冬の焚火が映ったホームビデオの、7分半〜17分ほど前にあります。(くろまる圧縮(5))
スナウトの誕生日のお祝いと、B1→C2でクリスが見る四つの夢は、重なります。
スナウトの誕生日のお祝いは、雲が広がるソラリスの海の『惑星ソラリス』の圧縮の冬の焚火が映ったホームビデオから、飛び出してきて、(くろまるソラリスの海(2))
図書室(1)の後の『惑星ソラリス』の圧縮の冬の焚火が映ったホームビデオから、映画の物理的な上映時間を7分半〜17分ほど遡ったことになります。

『惑星ソラリス』の圧縮は、水草が揺らめく流れる水と同じです。

だから、圧縮の中の圧縮、劇中劇の中の劇中劇の、三つの層に重なった一番上は、ソラリスの海のカラーシーン(5)になります。(くろまる生成)(くろまる圧縮(6))(くろまるソラリスの海(2))


くろまるコラール前奏曲

バッハの『コラール前奏曲』は、
タイトルクレジット、父とクリスが撮ったホームビデオ、『惑星ソラリス』の圧縮の中の、Bのステーションの図書室の無重力状態からソラリスの海のカラーシーン(5)まで、
Bの最後のスナウトと対話するクリスの部屋からCの地上の最初、で流れます。

タイトルクレジットの『コラール前奏曲』は、『惑星ソラリス』の始まりで、『惑星ソラリス』の前奏曲になります。
『惑星ソラリス』の前奏曲というと、『惑星ソラリス』が、讃美歌(コラール)のようでもありますが、どうでしょうか?
『惑星ソラリス』の圧縮の中の、二つ目の『雪中の狩人』と、ソラリスの海のカラーシーン(5)は、『惑星ソラリス』の圧縮の中の圧縮です。(くろまる圧縮(5)(くろまる圧縮(6))
タイトルクレジットは、この二つの『惑星ソラリス』の圧縮の中の圧縮と関係づけられています。

父とクリスが撮ったホームビデオは、『惑星ソラリス』の圧縮の中の、Cの地上の冬の焚火が映ったホームビデオと関係づけられています。
また、『惑星ソラリス』の圧縮の中の、父とクリスが撮ったホームビデオの、一つ目の『雪中の狩人』と関係づけられています。(くろまる圧縮(5))

『惑星ソラリス』の圧縮の中の、Bのステーションの図書室の無重力状態から、Cの地上の冬の焚火が映ったホームビデオは、(くろまる圧縮(5))
金属製の箱(B)がある、スナウトと対話するクリスの部屋と、(くろまる三つの金属製の箱)
金属製の箱(B1)がある窓際から、Cの地上の最初と関係づけられています。(くろまる三つの金属製の箱)


くろまるホームビデオ

クリスとハリーが見るホームビデオでは、最初に映るブランコの板の上に帽子が置かれて、少年クリスは帽子を被っていません。
このシーンの次は、冬の焚火が映ったシーンです。
クリスとハリーが見るホームビデオは、ブランコと冬の焚火のシーンが連続しています。

圧縮(5)の始まりの、ブランコが映ったホームビデオの、少年クリスは帽子を被っています。
帽子を被った少年クリスがいるブランコのシーンは、クリスとハリーが見るホームビデオの、始まりと考えられます。
クリスとハリーが見るホームビデオのシーンは、『コラール前奏曲』が流れています。(くろまるコラール前奏曲)
この『コラール前奏曲』は、ソラリスの海のカラーシーン(3)から始まります。(くろまるソラリスの海(1)(3))
ソラリスの海のカラーシーン(3)と、帽子を被った少年クリスがいるブランコのシーンが重なります。
図書室(1)のハリーがじっと見入る『雪中の狩人』は、帽子を被った少年クリスがいるブランコのシーンへ続きます。
図書室(1)のハリーがじっと見入る『雪中の狩人』と、帽子を被った少年クリスがいるブランコのシーンは、電子音で繋がります。(くろまるソラリスの海(2))
圧縮(5)の、一つ目の『雪中の狩人』は、父とクリスが撮ったホームビデオです。(くろまる圧縮(5))
図書室(1)のハリーがじっと見入る『雪中の狩人』は、Aの水草が揺らめく流れる水です。(くろまる三つの金属製の箱)
水草が揺らめく流れる水は、ソラリスの海の水です。(くろまる生成)
図書室(1)のハリーがじっと見入る『雪中の狩人』は、ソラリスの海です。
図書室(1)のハリーがじっと見入る『雪中の狩人』は、地上の幻です。(くろまる圧縮(5))

地上の幻は、ソラリスの海です。

図書室(1)のハリーがじっと見入る『雪中の狩人』から聴こえる電子音は、Aの地上のブランコが映ったホームビデオと、次の図書室まで続きます。(くろまるソラリスの海(2))
圧縮(5)の、Aの地上のブランコが映ったホームビデオの後へ、Cの地上の冬の焚火が映ったホームビデオを、移動させました。(くろまる三つの金属製の箱)
クリスとハリーが見るホームビデオのように、ブランコと冬の焚火のシーンが連続することになります。
そして、電子音が、Cの地上の冬の焚火が映ったホームビデオへ続くことになります。
図書室(2)のクリスの耳は、C1の家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水の音を聴いています。(くろまる三つの金属製の箱)
電子音は、C1の家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水の音と重なります。

図書室(2)のクリスの耳は、この電子音を聴いていたことになります。(くろまるソラリスの海(2))

圧縮(5)の始まりのホームビデオの、帽子を被った少年クリスとブランコは、Aの地上です。
ブランコは、地上のブランコです。
クリスとハリーが見るホームビデオの、帽子を被っていない少年クリスとブランコは、Bです。
ブランコは、ステーションで、ブランコの板の上に置かれた帽子は、カプセル(宇宙船)です。
クリスとハリーが見るホームビデオと圧縮(5)の、冬の焚火は、C1の地上です。
クリスとハリーが見るホームビデオの、冬の焚火の後から、コートを着て歩く母の前までが、B1です。
コートを着て歩く母から、クリスとハリーが見るホームビデオの終わりまでが、C2です。

クリスとハリーが見るホームビデオは、B→C1→B1→C2です。

クリスが見る、薄いブルーのモノクロの夢と同じです。(くろまる生成と復旧)

B1とC2の、池の傍に立つ母は、薄いブルーのモノクロの夢の中の母と、同じ服を着ています。

B1の父の足元でころぶ少年クリスは、ステーションへ到着してすぐに、ほどけていたブーツの紐を踏んで、床に手をついてころぶクリスです。(くろまるブーツの紐)
B1の母に抱かれた小犬は、地上の犬(母)です。(くろまる)
小犬を抱いた母に駆け寄る、枯枝を抱えた少年クリスは、B1のステーションから、C2の地上へ移動するクリスです。(くろまる生成と復旧)
枯枝は、金属製の箱(B1)です。(くろまる三つの金属製の箱)
少年クリスは、圧縮(6)の、金属製の箱を持って、クリスとハリーの横を走り去るスナウトと重なります。(くろまる圧縮(6))

父は、ステーションです。
小犬を抱く母は、地上です。

小犬を抱く母がくわえるタバコは、C2の家の前の焚火です。

コートを着て歩く母と青年クリスは、青いマフラーをしています。
母が着ているコートは彩度が低く、明度はクリスが着ているグレーのセーターと同じくらいです。
青年クリスの青いマフラーとグレーのセーターは、Cの地上の、クリスの上着とトレーナーと同系色です。
コートを着て歩く母は、C2の水草が揺らめく流れる水から生成される、クリスです。(くろまる生成と復旧)
青年クリスは、C2の地上に生成されたクリスです。(くろまる生成と復旧)

Aの地上に生成されたクリスは、左手に金属製の箱を持っていました。
コートを着て歩く母の左手は、コートの下に隠されていて見えません。
青年クリスの手は、映っていなくて見えません。
C2のクリスは、Aの最初と同じように、水草が揺らめく流れる水から、金属製の箱を持って地上に生成されます。(くろまる生成と復旧)

コートを着て歩く母と、青年クリスの間にある、池の傍の焚火は、C2の家の前の焚火です。

手を振るハリーは、尻尾を振ってクリスに走り寄る犬(母)です。
ここでも、母とハリーが交錯します。(くろまる夢(1)(4))(くろまる生成と復旧)

タイトルクレジットが終わって、Aの始まり(3:09)から約30分後(33:21)に約5分間(38:13)、未来都市東京首都高のシーンがあります。
Bの始まり(41:39)から約30分後(1:11:55)に、ハリー1号が現れます。
その約30分後(1:39:32)は、クリスとハリーが見るホームビデオです。
その約30分後(2:13:25)は、圧縮(5)の終わりです。
その前後には、無重力状態と、液体酸素を飲んだハリーの自殺と蘇生があります。
その約30分後(2:40:47)は、B→Cです。
タイトルクレジット、ホームビデオ、圧縮(5)の終わり、B→Cで、『コラール前奏曲』が流れます。


くろまる幻(2)

ソラリスは表面だけを見て真似をする、ただのコピー機です。(くろまる幻(1))

ソラリスが、機械をコピーするのは表面だけです。

テレビモニターとビデオプレーヤー、テレビ電話、バートンの車、ハリーを乗せたロケット、ステーションの電話、がそうです。(くろまる幻(1))(くろまる生成)(くろまるニセモノ)(くろまる伯母)
サルトリウスの実験室に、スナウトの"お客"の写真がありましたが、それは物質化したカメラで撮影したのではなく、記憶から読み取った写真を物質化したものです。

ソラリスは、機械どころか、ハリーの服さえまともに作れません。

ハリーの服さえまともに作れないコピー機が、複雑な人間の身体を作ることなどできるのでしょうか?
見る目、聴く耳、信号を伝達する神経、判断や思考や記憶する脳、そういった人間の器官を作れるとは、とうてい思えません。

ニセモノには自我も主体もないソラリスの操り人形で、全てはソラリスの自作自演ではないだろうか?と思えてきます。(くろまるバックアップ)

あるいは、全ては幻と幻聴ではないだろうか?

クリスがハリーとスナウトに両脇を支えられて、朦朧として歩く廊下の前には、ソラリスの海のカラーシーンがあります。
また、最後は、カメラに向けられた廊下のライトで、画面が無彩色モノクロの白になります。
モノクロシーンとソラリスの海のカラーシーンは、その前または後に、ニセモノが現れたり消えたりします。(くろまるモノクロ(1))(くろまるソラリスの海(1))
クリスがハリーとスナウトに両脇を支えられて、朦朧として歩く廊下を、クリスの夢に含めることにします。("廊下の夢"とします)

廊下の夢は、同じ下着を着た母とハリーの夢に繋がります。
同じ下着を着た母とハリーの夢の前の、白の無彩色モノクロは、よく見ると画面全体がモノクロにはなりません。(くろまるモノクロ(2))
廊下の夢がなければ、同じ下着を着た母とハリーの夢もありません。

図書室(1)の後の『惑星ソラリス』の圧縮の後から、クリスが夢から覚めるまでは、夢、ということになります。

クリスの夢は、シナリオでは"幻覚"と書かれています。
つまり幻です。

図書室(1)の後の『惑星ソラリス』の圧縮の後から、クリスが夢から覚めるまでは、夢か幻です。


くろまる夢の物質化

クリスが夢から覚めた後、夢の中から、水差しと青い布と金属製の箱の蓋が物質化されました。

本来の物語では、Cの地上も夢か幻だったのが、無限ループを終わらせるために、映画の物語にして、C1の地上が物質化されてしまったのではないか?と考えます。

また、B1→C2でクリスが見る四つの夢が、B→C1のBの終わりから映画の物理的な上映時間で7分半〜14分ほど前に遡ったのは、
夢が物質化されないため、とも考えられます。

水差しと青い布と金属製の箱の蓋が物質化されたのは、B1ではなくBです。(くろまる三つの金属製の箱)
薄いブルーのモノクロの夢の中で、金属製の箱(B1)があるのは、BとC1の間です。(くろまる三つの金属製の箱)
水差しと青い布と金属製の箱の蓋の横には、白い布もありました。
白い布は、同じ下着を着た母とハリーの夢の中の、クリスの部屋の窓際にあった白い布です。(くろまる夢(1)(4))
同じ下着を着た母とハリーの夢は、B→C1(本来の物語では、B→A)で見る夢です。(くろまる夢(1)(4))(くろまる夢(2))

従って、夢か幻が物質化されるのは、C1からです。

金属製の箱(B(-1))がある、クリスが夢から覚めた部屋は、夢か幻です。
クリスが見る夢は、夢の中の夢、幻の中の幻になります。

金属製の箱(B)がある、スナウトと対話するクリスの部屋は、夢か幻です。

Aのステーションへの出発前日の地上、Bの出発当日の朝の地上、カプセル(宇宙船)、Bのステーションは、全てが夢か幻です。

金属製の箱(B1)がある窓際は、物質化です。

しかし、B1のステーションで何があったのか?わかりません。
地上も、1回目の雲に隠れています。(くろまる夢(2))

『惑星ソラリス』のラストは、島が(物質化されて)現れました。

しかし、その島は消えていきます。

島が現れて消えていく。

それが、『惑星ソラリス』のラスト、ということです。


くろまるホームビデオの後

クリスとハリーが見るホームビデオの、B→C1→B1→C2は、バッハの『コラール前奏曲』で、Bの最後の、金属製の箱(B)があるスナウトと対話するクリスの部屋、
金属製の箱(B1)がある窓際、Cの地上、と関係づけられています。(くろまるコラール前奏曲)

クリスとハリーが見るホームビデオを、クリスが見る薄いブルーのモノクロの夢に重ねます。
薄いブルーのモノクロの夢は、B1→C2から、B→C1(本来の物語では、B→A)に遡りました。(くろまる三つの金属製の箱)
クリスとハリーが見るホームビデオは、Bになります。
ホームビデオを見た後のクリスの部屋は、金属製の箱(B)があるスナウトと対話するクリスの部屋です。
浴室は、C1の地上です。
浴室の鏡の前のクリスとハリーの対話は、復旧作業のギバリャン(クリス)の記憶です。
浴室の鏡の前のクリスとハリーの対話は、圧縮(7)のクリスとスナウトのお喋り、図書室(2)の対話、と重なります。(くろまる圧縮(7))(くろまる三つの金属製の箱)
鏡の前のクリスとハリーは、家へ向かうクリスと犬(母)です。
浴室から出るクリスは、窓から見える家に近づくクリスです。
水滴がついた鏡に、ハリーの顔が映っています。
鏡の水滴は、ソラリスの海の水です。
ハリーは、ソラリスの海の水です。

流れ落ちるシャワーの水は、C1の家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水です。(くろまる復旧)
図書室(2)のクリスの耳は、ここで流れる音楽を聴いています。(くろまる三つの金属製の箱)
この音楽の最後は、電子音です。
この電子音は、ラストの電子音と重なります。
図書室(2)のクリスの耳は、ラストの電子音を聴いています。(くろまるホームビデオ)

ハリーがベッドで眠っています。
音楽が浴室から続いています。
C1の続きのB1です。
流れ落ちるシャワーの水は、時間経過も表しています。(くろまる物質と記憶と時間)
クリスの部屋は、金属製の箱(B1)がある窓際の部屋です。

クリスが、テレビモニターの前にもたれかかっています。
薄いブルーのモノクロの夢の、B1のテレビモニターの『雪中の狩人』は、クリスとハリーが見るホームビデオの、テレビモニターに映った幻です。(くろまる生成と復旧)
クリスの部屋のテレビモニターには、アンドレイ・ルブリョフの絵(プリント)が立てかけてあります。
クリスが見る夢の中から、水差しと青い布と金属製の箱の蓋と白い布が物質化されました。
アンドレイ・ルブリョフの絵は、クリスとハリーが見るホームビデオの、テレビモニターに映った幻の中からの物質化の、置換です。
薄いブルーのモノクロの夢では、B1のテレビモニターの右下には、ハリーのケープらしきものがあります。
テレビモニターに映った幻の、ホームビデオの中から、ハリーのケープが物質化されたのかもしれません。

スナウトが、クリスの部屋へ訪ねてきます。
スナウトは、実験の途中のようです。
実験は、ニセモノを消す実験です。
ここでスナウトが喋っていることは、ニセ科学です。(くろまる圧縮(7))
ニセ科学でニセモノを消す、ということです。

スナウトの実験は、クリスとハリーがホームビデオを見ていた時間と重なります。
スナウトの実験とホームビデオが、関係づけられています。
B→C1→B1→C2の後、島は消えます。(くろまる消滅)

クリスの部屋へ訪ねてきたスナウトは言います。
「再生が遅れていてね、2、3時間は暇になりそうだ」(シナリオ)
「再生」とは、B1からC2へ移動するクリスの、B1からの消滅の後の、C2での再生成です。(くろまるホームビデオ)
「再生が遅れて」、クリスとハリーが見るホームビデオは、B1→C2でクリスが見る、薄いブルーのモノクロの夢と重なります。

『惑星ソラリス』の上映時間は約2時間45分(2:46:49)です。
Bの始まりは、『惑星ソラリス』の始まりから、約40分後(41:39)です。(くろまるホームビデオ)
ホームビデオの始まりは、『惑星ソラリス』の始まりから、約1時間40分後(1:39:32)です。(くろまるホームビデオ)
Bの終わり(Cの始まり)は、『惑星ソラリス』の始まりから、約2時間40分後(2:40:47)です。(くろまるホームビデオ)
Aが切り離されているので、B1の上映時間は約2時間(2:40:47-41:39=1:59:08)です。(くろまる生成と復旧)
B1のホームビデオの始まりは、B1の始まりから、約1時間後(1:39:32-41:39=57:53)です。

Bのホームビデオから、次のループのB1のホームビデオまでは、約2時間(2:46:49-1:39:32+57:53=2:05:10)です。
Bのホームビデオから、次のループのB1の終わり(C2の始まり)までは、約3時間(2:46:49-1:39:32+1:59:08=3:06:25)です。

スナウトと一緒にサルトリウスの実験室へ行き、ハリーが心配になって部屋へ引き返すクリスは、B1からC2へ移動するクリスです。(くろまる圧縮(6))(くろまるホームビデオ)
部屋を出る時と、引き返して部屋へ入る時の、ドアを開閉する時の電子音が同じです。
電子音は、金属製の箱(B1)です。(くろまる三つの金属製の箱)(くろまるホームビデオ)
BとC1のクリスは別のクリスです。(くろまる帰還)(くろまる生成と復旧)(くろまる圧縮(7))
しかし、B1とC2のクリスは移動して連続したクリスです。

クリスとハリーが見るホームビデオの後の、クリスの部屋→浴室→クリスの部屋→(廊下)→クリスの部屋のドアは、ホームビデオと同じで、B→C1→B1→C2です。

Aの水草が揺らめく流れる水から、スナウトとサルトリウスへのハリーの紹介の前までは、廊下の夢と重なります。(くろまる幻(2))
スナウトとサルトリウスへのハリーの紹介は、スナウトの誕生日のお祝いと重なります。
ハリーの紹介が終わって、クリスとハリーが去った後から、ソラリスの海のカラーシーン(3)の前までは、
スナウトの誕生日が終わって、サルトリウスが図書室を出てから、スナウトが図書室を出るまでと、クリスが夢から覚めた部屋と重なります。(くろまるソラリスの海(2))
ソラリスの海のカラーシーン(3)は、『惑星ソラリス』の圧縮と重なります。

廊下の夢の始まりは、Aの地上です。
クリスを支えるハリーは、犬(母)です。
スナウトに支えられてから、廊下の夢は、Bのステーションになります。
ハリーは、ボール(母)になります。(くろまる消えるサルトリウス)

クリスが部屋へ引き返してから、スナウトの誕生日のお祝いの前までは、廊下の夢と重なります。
クリスが部屋へ入ってから、Aの地上です。
ベッドは、Bのステーションです。
気を失ったハリーは、Bのハリー1号です。
ソラリスの海のカラーシーン(4)は、ハリー1号をロケットに乗せて打ち上げた後の、薄いセピアのようなピンクのような暖色系モノクロです。(くろまるモノクロ(1))
ソラリスの海のカラーシーン(4)の後のハリーは、Bのハリー2号(以降)です。(くろまるソラリスの海(1)(4))
ガウンを持ってベッドから離れるクリスは、ハリー2号が現れた後に、ハリー2号の服とケープを持って廊下へ出るクリスです。

クリスが部屋へ引き返してから、スナウトの誕生日のお祝いの前までと、廊下の夢とは、物理的な上映時間が違います。
その時間の違いが、クリスが見る四つの夢の7分半〜14分と、スナウトの誕生日のお祝いの7分半〜17分の、3分の違いではないか?と考えます。(くろまる2時間)(くろまる圧縮(5))

廊下の夢の最後は、カメラに向けられた廊下のライトで、画面が無彩色モノクロの白になります。
その前にも、2回、カメラに向けられた廊下のライトで、画面が無彩色モノクロの白になります。(くろまるモノクロ(2))
1回目の白の無彩色モノクロは、ギバリャンの自撮りビデオと、クリスの部屋のブルーの寒色系モノクロです。(くろまるモノクロ(1))
ハリーは、ハリー1号になります。
2回目の白の無彩色モノクロは、ハリー1号をロケットに乗せて打ち上げた後の、薄いセピアのようなピンクのような暖色系モノクロです。(くろまるモノクロ(1))
ハリーは、ハリー2号(以降)になります。


くろまるCのステーション

ラストの上空から見た島は、本来の物語のC→Bの間、ステーションのある場所から見た島です。(くろまる時間)

CをAの後から、Bの後へ移動したことにより、ステーションも一緒に付いてきたのではないだろうか?と考えます。

つまり、本来の物語で、ステーションが生成されるのは、クリスが地上から消滅して、カプセル(宇宙船)に入ったクリスが宇宙空間に生成されると同時にではなく、(くろまるモノクロ(1))
Aの最後の焚火のシーンのブルーの寒色系モノクロの後、ということです。(くろまるモノクロ(1))
また、ステーションの窓に映る幻も、そうです。(くろまる機械の部品)
本来の物語の、Cのステーションは幻なので、ステーションの窓に映る幻は、クリスが見る夢と同じで、幻の中の幻です。(くろまる夢の物質化)

Cのステーションが生成されると同時に、スナウトが生成され、クリスが宇宙空間に生成されると同時に、サルトリウスと、二人の"お客"の子供と、ボール(母)が生成されます。
そうでなければ、サルトリウスと、二人の"お客"の子供が、先に消滅するはっきりした理由がありません。
ボール(母)が消滅するのは、サルトリウスの消滅と同時です。
サルトリウスはボール(母)を手に持って、ディゾルブで消えていきます。

スナウトがクリスに、「"お客"はだれも来なくなった」と言うのは、サルトリウスがディゾルブで消えるシーンです。
"お客"の消滅とサルトリウスの消滅が、関係づけられています。(くろまるモノクロ(1))
サルトリウスとボール(母)は、二人の"お客"の子供の消滅と同時に、消滅していたかもしれません。(くろまるモノクロ(1))

青い服の女性が消滅するのは、ハリー2号(以降)が消滅したのと同じタイミングとします。(くろまるモノクロ(1))
また、本来の物語の、Bのステーションのクリスが消滅するのは、エンドクレジットの無彩色モノクロの前です。(くろまるモノクロ(3))
本来の物語の、Bのステーションとスナウトが消滅するのは、Aの地上にクリスが生成されるタイミングと同じで、タイトルクレジットの無彩色モノクロの後、とします。(くろまるモノクロ(3))

C2のステーションが生成されるのは、C2のクリスが生成されると同時です。(くろまる消滅)

島が物質化され、ステーションも物質化されます。

そして、島が消え、ステーションも消えていきます。(くろまる消滅)


くろまる三つの層

『惑星ソラリス』は、『惑星ソラリス』の圧縮の中の圧縮、劇中劇の中の劇中劇、と同じ、三つの層になります。(くろまるソラリスの海(2))

左端の、01.〜20.の番号は、映画の物語の時間の並び順です。
[5.]と[6.]は、四つの層になります。

[1.]
01.Aの水草が揺らめく流れる水から、スナウトとサルトリウスへのハリーの紹介の前まで。(くろまるホームビデオの後)
07.ハリーがベッドで失神しているクリスの部屋から、スナウトの誕生日のお祝いの図書室の前まで。(くろまるホームビデオの後)
15.廊下の夢。(くろまる幻(2))

A→B

[2.]
02.スナウトとサルトリウスへのハリーの紹介。(くろまるホームビデオの後)
08.スナウトの誕生日のお祝いの図書室、サルトリウスが図書室を出る前まで。(くろまる1時間半の遅刻)(くろまる1時間半の遅刻)
16.廊下の夢の後の、薄いセピアのモノクロの夢から、薄いブルーのモノクロの夢まで。

同じ下着を着た母とハリーの夢、四つの夢

[3.]
03.ハリーの紹介が終わって、クリスとハリーが帰り始めてから、ソラリスの海のカラーシーン(3)の前まで。
09.スナウトの誕生日のお祝いが終わって、サルトリウスが図書室を出てから、図書室(1)まで。(くろまるソラリスの海(2))
17.クリスが夢から覚めてから、図書室(2)まで。(くろまる三つの金属製の箱)(くろまる三つの金属製の箱)(くろまる消えるサルトリウス)

B→C1

[4.]
04.ソラリスの海のカラーシーン(3)。(くろまるホームビデオの後)
10.圧縮(5)。(くろまる圧縮(5))
18.雲が広がるソラリスの海のモノクロ。(くろまるソラリスの海(2))

圧縮

[5.]
05.クリスの部屋、クリスとハリーが見るホームビデオ。(くろまるホームビデオ)
11.圧縮(6)。(くろまる圧縮(6))
13.圧縮(7)。(くろまる圧縮(7))
19.スナウトと対話するクリスの部屋、金属製の箱が置かれた窓際。

Aが切り離された圧縮

[6.]
06.浴室から、スナウトと一緒にサルトリウスの実験室へ行き、ハリーが心配になって引き返したクリスが部屋のドアを開けるまで。(くろまるホームビデオの後)
14.ソラリスの海のカラーシーン(7)。(くろまる圧縮(7))
12.ソラリスの海のカラーシーン(6)。(くろまる圧縮(6))
20.Cの水草が揺らめく流れる水から、ラストまで。(くろまる夢(2))

C1→B1→C2


主な誤りの修正です。

クリスとハリーが見るホームビデオは、B→C1→B1→C2ではなく、圧縮(6)のB1→C2、圧縮(7)のB→C1、です。(くろまるホームビデオ)
スナウトの誕生日のお祝いが終わって、図書室から出るスナウトを追って、図書室を出るクリスは、BからAへ移動するクリスではなく、B→C1のクリスです。(くろまる三つの金属製の箱)
図書室(1)のハリーがじっと見入る『雪中の狩人』は、Aの水草が揺らめく流れる水ではなく、C1の家の中を流れ落ちる水で、復旧作業の水です。(くろまる三つの金属製の箱)
圧縮(5)の一つ目の『雪中の狩人』は、父とクリスが撮ったホームビデオではなく、同じ下着を着た母とハリーの夢、四つの夢です。(くろまる圧縮(5))
圧縮(5)の二つ目の『雪中の狩人』、圧縮の中の圧縮は、圧縮(5)です。(くろまる圧縮(5))
圧縮(5)の圧縮の中の圧縮は、三つの層ではありません。(くろまるソラリスの海(2))
圧縮(5)の二つ目の『雪中の狩人』の後の図書室は、クリスが見る夢、Bの終わりまで、ではなく、圧縮(6)(7)です。(くろまる圧縮(5))
圧縮(5)の焚火が映ったホームビデオは、Cの地上ではなく、C1→B1→C2、です。(くろまる圧縮(5))
圧縮(5)は、[1.A→B]→[2.夢]→[3.B→C1]→[4.圧縮]→[5.Aが切り離された圧縮]→[6.C1→B1→C2]、です。(くろまる圧縮(5))
ソラリスの海のカラーシーン(5)と、圧縮(7)の水の入ったガラスの水差しは、重ねて二つの層になった、Aが切り離された圧縮の中の圧縮です。
雲が広がるソラリスの海のモノクロは、圧縮(5)(6)(7)ではなく、圧縮(5)です。(くろまるソラリスの海(2))
クリスが夢から覚めた部屋は、Bで、金属製の箱(B(-1))は、金属製の箱(B)です。(くろまる三つの金属製の箱)
スナウトと対話するクリスの部屋は、圧縮(6)のB1で、金属製の箱(B)は、金属製の箱(B1(圧縮))です。(くろまる三つの金属製の箱)
金属製の箱が置かれた窓際は、圧縮(7)のBで、金属製の箱(B1)は、金属製の箱(B(圧縮))です。(くろまる三つの金属製の箱)

圧縮(6)のB1→C2、圧縮(7)のB→C1の、時間の並びが逆になっているのは、金属製の箱が置かれた窓際の圧縮(7)のBから、次のC1へ繋げるためではないか?と考えます。

また、図書室にある『雪中の狩人』は、[2.夢]の図書室、[3.B→C1]の図書室(1)(2)、圧縮(5)の[1.A→B]、圧縮(5)の[3.B→C1]、で映ります。
『雪中の狩人』は、[2.夢]の図書室、[3.B→C1]の図書室(1)(2)、圧縮(5)の[1.A→B]では、左から二枚目、圧縮(5)の[3.B→C1]では、左から一枚目にあります。
圧縮(5)の[5.Aが切り離された圧縮]では、『雪中の狩人』は映りませんが、左から二枚目の下部が少し映り、『雪中の狩人』が、左から二枚目ではないことがわかります。
これは、金属製の箱(B)と金属製の箱(B(圧縮))の違い、と関係づけられているのではないか?と考えます。

図書室にあるブリューゲルの絵は、全部で5枚で、『バベルの塔』以外の4枚は、地上の島から見た周りの幻で、東西南北の方角、と考えます。(くろまる圧縮(5))


くろまる映画

映画フィルムの現像はしたことがないのですが、アナログ写真の現像は、現像液に浸けた印画紙から、幻が浮かび上がってくるようです。(くろまる物質と記憶と時間)

バートンは、ビデオの中で言っています。

「海の底には黄色い泥が集まっていて、それは細く帯状に浮き上がり、浮き上がるとガラスのように輝き始めました。やがてそれはたぎりだし、泡立ち、擬古しました」
そして、「だんだんと形を作っていきました」(シナリオ)

しかし、それは、ビデオには映っていなくて、幻でした。
どうして、このような物質化の過程を幻で見せる必要があるのでしょうか?
幻で見せるのなら、最終的な形だけを見せればいいはずです。

考えられるのは、ソラリスが読み取った、人間の記憶の"映画"です。
ソラリスにとって、人間の喜怒哀楽は、信号の強弱でしかありません。(くろまる男性中心主義)
人間が発する強い信号には、常に"映画"の記憶があった。
ステーションには、かつて大勢の人間がいました。(くろまるバックアップ)
休日は、テレビモニターに"映画"を映して、楽しんでいたのかもしれません。

その"映画"の記憶を読み取ってみると、俳優が自分以外のニセモノを演じている。
大道具が、セットをホンモノらしく組み立てて作っている。
小道具が用意した、弾丸の出ないニセモノのピストルを、俳優が演じるニセモノが撃っている。
撃たれてもいないのに、血が出て死んだふりをしている。
走ってもいない車を、特撮で走っているように見せている。
ピアノ線で人や物を吊って、浮いているように見せている。

"映画"は、映像という幻をスクリーンに映します。(くろまる物質と記憶と時間)

ソラリスは、それを真似して、"映画"を作っていた、ということです。

バートンが見たという、4メートルもある赤ん坊は、人間が巨大化して暴れまわるような映画でしょうか?
クリスとハリーの別れは、悲しい恋の映画でしょうか?


〇おわりに

私は、以前から、タルコフスキーにはプログラミングの知識があったのではないか?と思っています。
映画がループしたり、初期設定があったり、『惑星ソラリス』にはありませんでしたが、条件で分岐したり、と。
また、圧縮された自分自身の劇中劇はメインルーチンで、そこからサブルーチンが呼び出される構造とも取れます。
タルコフスキーの作るプログラムに似た映画は、わかりにくく複雑です。
わかりにくいプログラムは、引継ぎで嫌がられます。
プログラムの誤作動で障害があった場合、プログラムを解析してデバッグして、リセットリランしますが、わかりにくいプログラムは、デバッグが容易ではないからです。
デバッグしたら、それが新たなバグになったりとか、プログラムを修正するのが怖くてたまりません。
しかし、タルコフスキーが作るプログラムに似た映画は、誤作動がありません。
よくこんな複雑なものを、寸分の狂いもなく整合性を取り、作り上げることができるな、と驚くしかあります。
人間離れした記憶力の持ち主だったのかもしれません。
しかし、記憶力だけではないと思います。
詳しくは知りませんが、モーツァルトは楽曲を一瞬で作ることができたそうです。
映画も音楽と同じ時間芸術です。
タルコフスキーには、モーツァルトに似た能力があったのかもしれません。
時間芸術を空間芸術に置き換えて、無限に絡み合う細部まで緻密に整合性を取って作り上げ、その細部の関係と全ての組み合わせから全体までを記憶していた。
空間芸術は、一瞬に視覚に飛び込んできます。
一瞬は永遠になります。

読んでいただいて、ありがとうございます。

今後のタルコフスキー研究に、役立ていただければ、嬉しい限りです。


くろまる追記

最後になって、多くの誤りが出てしまいました。(くろまる三つの層)

その他の誤りも含めて、これらの誤りの具体的な修正は、ここでは行わずに、次回の解析で行うことにします。


しろさんかく

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