睡眠障害解説
睡眠障害とは?
24時間眠らない日本では勤務時間による障害や、精神的要因の障害、身体的要因の障害など様々な種類の睡眠障害があります。
自分に当てはまると思う項目をクリックして確かめてみてください。
また今お子さんのいる方で自分の子供の睡眠に不安をもっているかたもいるのではないでしょうか?ここでしっかりお子さんの睡眠状態を確かめ、思い当たるふしがあれば、紹介されている治療方法を実践してみてください。
インデックス
- 慢性不眠症
- 睡眠時無呼吸症候群
- 周期性四肢運動異常症PLMD・レストレス レッグス症候群RLS
- なかなか寝付かない子どもを寝かすには?
- 概日リズム睡眠覚醒障害 位相後退型(睡眠相後退症候群)
- 概日リズム睡眠覚醒障害 交代勤務型(交代勤務性不眠症)
- 身体疾患、精神疾患による二次的不眠症
- アルコール性不眠症
- ナルコレプシー
- レム睡眠行動障害・夜尿症・寝言・悪夢症・歯軋り・夜驚症・夢中遊行症
慢性不眠症
入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒などの不眠症状に加えて日中の集中力散漫、疲労感や倦怠感、気分の低下、日中の眠気、気力低下などの機能低下の症状が少なくとも週3回3ヶ月間続いた場合に慢性不眠症と診断されます。症状が3ヶ月未満のときは短期不眠症になります。
不安感やうつ気分が原因で不眠になっていないか、夜型など睡眠リズムの異常がないか、過剰な昼寝がないかも考慮します。治療の必要性がある場合には次のような手順で診療が進みます。
【治療法1】 睡眠衛生指導
睡眠環境の見直しが必要です。寝室の適温は23°C、湿度は50%と言われています。北海道の夏季は日の出が特に早いので朝日に遮光カーテンが有効です。遮音も必要です。そして朝の起床時刻を固定することです。朝食を必ず摂ること、そして朝日を必ず浴びることで体内時計の1日がスタートします。
そして16時間後に眠くなる脳の仕組みがあるので、夜にきちんと眠るために朝の起床時刻の固定が重要となります。三食の時刻も固定するようにしましょう。
こうして生活サイクルのルーチン化を図り、起床・就寝・三食の時刻を毎日5分以内に固定します。カフェイン摂取は15時までにとどめ、夜間に過ごす部屋の照明照度を落としてください。入浴、夕食、運動、スマホ、テレビを就寝2時間前に終了させます。その2時間後あたりに深部体温が下がるので自然に眠くなります。寝る間際に入浴したい時は湯船に入らずシャワーのみで済ませましょう。こうして夜間の睡眠8-9時間を確保する生活スケジュールを立てましょう。
また帰宅後や入浴後には部屋着に着替え、就寝時には長袖のパジャマに着替えてから寝床に入りましょう。このように毎日同じ入眠ルーチン(入眠儀式)を守ることが大切です。なお、Tシャツやジャージなどは汗を吸いにくく体温調節が十分にできないため、眠りには適していません。
【治療法2】 睡眠薬の選択
<特徴>
◎にじゅうまる脳の興奮を抑え気分をリラックスさせて入眠を促す
◎にじゅうまる即効性が高く服用後すぐに効果を実感できる
◎にじゅうまる不安や筋肉の緊張を和らげる作用もある
<注意点>
△しろさんかく長期間(数ヶ月〜数年)連用すると依存性が生じる。特に5年以上の連用で依存リスクが高まる
△しろさんかく依存を防ぐためには数ヶ月かけて徐々に減量・中止する必要がある。急な中止は離脱症状や反跳性不眠を引き起こすため避ける
△しろさんかく筋弛緩作用があるため、ふらつきや転倒のリスクが高まる
△しろさんかく翌朝への眠気の持ち越しや健忘(服用後の記憶が曖昧になる)などの副作用に注意
<特徴>
◎にじゅうまる素早い入眠効果と6時間ほど持続する効果
◎にじゅうまる朝に残眠感が無くふらつきも現れないので、朝に自動車運転が可能との治験データあり
◎にじゅうまる薬剤依存性が無いため、突然に休薬しても反跳性の不眠に陥ることがない
<注意点>
△しろさんかく夜間に悪夢が多くなる
△しろさんかく服薬2時間以上前に夕食を摂る(空腹時に服用する必要があるため)
<特徴>
◎にじゅうまるメラトニン作動薬は服用後1〜2時間で深部体温を低下させることにより、自然な眠気を促します。深部体温が下がることで入眠しやすくなるためです。
◎にじゅうまるこの作用を利用して希望する時刻に眠るタイミングを調整できるため、海外旅行時の時差調整や交代勤務後の睡眠、不登校などによる睡眠リズムの乱れの再調整に用いられます。
△しろさんかく入眠効果自体は比較的弱いため、他の睡眠薬と併用されることが多い
睡眠薬は漫然と使わないで不眠が改善したら、睡眠薬を少しずつ減薬して心理療法も併用しながら中止するゴールを見据えた戦略が必要です。
【治療法3】 睡眠心理療法
睡眠認知行動療法が望ましいです。これには刺激制御法、睡眠制限法、漸進的筋弛緩法、認知療法などがあります。
睡眠に対する 非機能的な信念と態度を変える治療で、1入眠時のネガティブで持続的な思考、2日中の占有的な思考の2つの自動思考を認知させる心理カウンセリングです。
眠くなったときだけ床に就く。寝室を睡眠以外に使わない。読書やテレビを見るのは別の部屋にする。寝室に物を置かない。
本当に眠くなるまで寝室に入らない。夜中に目覚めてしまったら寝室を出て別の部屋で過ごし、 眠くなったら寝室へ行く。
12週間の平均睡眠時間を算出し、その時間プラス15分だけ寝床にいる。
実際の睡眠時間が5時間以下の場合は、5時間寝床にいること
2いつもの起床時間から寝床にいる時間を逆算して、床に就く時間を決める。
3寝床にいる時間の90%(5時間なら、4時間30分)以上眠れる日が5日以上続いたら、床に就く時間を15分早くする。
自分に必要なだけ眠れるようになるまで、それを繰り返す。
【治療法4】 原因・要因の再評価
身体的原因や環境要因、心理的要因の再評価が必要です。そして慢性不眠症以外の睡眠障害が存在しないのか検討する段階に入ります。睡眠誤認、レストレスレッグス症候群、睡眠時無呼吸症候群、など次の段階の診断に移ります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群というのは眠っている間に限り10秒から1-2分間にわたる呼吸停止が一晩に100-200回もある病気です。
その度に身体の酸素濃度が低下するので息苦しくなり途中で目が覚めることが繰り返されるので慢性の不眠症になってしまいます。
症状
いびきは眠りにとっては危険信号であり、さほど良いことではありません。咽の空気の通過が悪くなり笛の様にブーブーと咽が震える音がいびきです。 スヤスヤと眠っているのとは違い呼吸状態が良くないことを示す警告音というわけです。
寝付きはとてもよくバッタンキューですが、やがて大いびきが始まり段々大きな音になった頃に「咽が詰まった」ようになり突然に呼吸が止まる(呼吸停止)の状態です。 そして 「アッブー」とイキを吹き返し、4-5分すると、またいびきが始まり、その後に呼吸停止することを一晩中繰り返します。 この傾向の人は、日中、冷汗が出たり心臓がドキドキしたり活力がなく居眠りが多いようです。
こんなことが毎夜続いていると 日中は眠気のため一日中ぼんやりし、「集中力散漫」「頭痛や肩凝り」が朝から続き、不安症やうつ状態の原因になりますので不登校や出社できない人も出てきます。妊産婦では尿毒症の引き金なることも分かってきました。
原因
まず、肥満が考えられます。お酒を呑んだ夜も咽の筋肉が緩むので無呼吸が悪化します。
慢性の鼻の病気も咽の閉塞の原因になります。下顎が未発達で小さな人は肥満でなくても原因になります。
男女差
女性よりも男性に多く発生します。
治療
閉塞型を解消するにはまず肥満を解消する必要があります。また慢性の鼻の病気がある人は耳鼻科にて治療を行なって下さい。 いびきを防止し咽の空気の通りをよくするには、いびき防止用枕を使用したり、横に寝る習慣をつけることで改善することもあります。
重症例では、健康保険を利用して在宅CPAP療法(シーパップ)器具を病院から借りて呼吸の停止を防ぐ方法があります。
また耳鼻科で咽の形成手術をしてもらい空気の通りをよくする方法もあります。
最近では舌下神経刺激装置の埋込術が日本でも開始されました。
軽症の場合は、歯科で施行されるSleepSplint法による口腔内装置(マウスピース)を睡眠中に歯に装着する方法、あるいはステントチューブ(ナステント)を鼻腔内に挿入して眠る方法もあります。
根本治療は体重を正常範囲内(BMI=25以下)に減量することです。
断続的いびきは有りませんか?
肥満指数BMI25以上の患者さんには閉塞型睡眠時無呼吸症候群OSAS(オーサス)が合併しているかも知れません。日本ではOSAS患者が200〜400万人発症しています。
5年間で交通事故を7倍も起こしています。
睡眠中の無呼吸発作回数が20回/時以上の重症OSAS患者が未治療で放置された場合、10年生存率は6割ほどです。
肥満症、高脂血症、高血圧、糖尿病や心房細動、狭心症などの心臓疾患、逆流性食道炎、喘息、脳卒中、夜間頻尿、緑内障、妊娠中毒、周術期不良、うつ病などの合併症を抱え、火災や交通事故など不慮の事故でも命を落としています。
終夜睡眠ポリグラフ検査PSGにてOSASの他にレストレスレッグス症候群やレム睡眠行動障害など他の睡眠障害の合併が見つかることもあります。
周期性四肢運動異常症PLMD・レストレス レッグス症候群RLS
PLMDは眠っている間に手や足をピクピクと動かすために途中で目が覚めてしまう慢性の不眠症です。
夜間寝る前には手足の違和感がよく出現するRLSとは同じ原因の病気です。
症状
夜寝ようとして布団に入ると「足が火照る感じ」と、「むずむずと虫が這っている感覚」が何時間も持続します。
いても立ってもいられずに布団から起きて青竹を踏んだり足を冷やしたり四苦八苦するのですが、全く効果がなく眠れない夜が続いてしまいます。
睡眠中は、よく赤ん坊がやるように、足の指をピクピクと反り返す運動が確認されます。
この足の動きには本人も家族の方も気付かずにいますので、原因が掴めず不眠症に悩むことが多いようです。
20-30人にひとりは発生する非常に多い睡眠障害ですが、あまり注目されてきませんでした。
小児では成長痛を経験したり夜間の不眠のため日中に落ち着かなくなるので注意欠如多動症ADHDとの鑑別が必要になることもあります。
治療
プラミペキソール錠やガバペンチンエナカルビル錠、ロチゴチン貼布剤が有効です。健康保険外ですが10種類以上の薬剤や漢方薬も有効です。
レストレス レッグス 症候群の不快な異常感
なかなか寝付かない子どもを寝かすには?
【1-3才児】 不眠対策
子どもの不眠対策1-3才新生児は一日に平均16-18時間眠ります。眠る時間帯は決まっていません。 生後数日間は普通は日中より夜間の方が長く眠ります。生後2ケ月までは夜間のうち少なくとも5時間の約半分は眠っているか静かに横になっていますから、より正常な睡眠パターンにもっていくことができます。
1年経った頃には夜は連続して1回で眠れるようになり午前午後に昼寝をして一日の合計睡眠時間が12-14時間になる子どもが多くなります。
時間の感覚を子どもに教えてください。夜は眠る時間、昼は起きている時間という区別をつけさせる。夜に遊びや娯楽は避ける。適切な覚醒時間帯にこうしたことを集中させる。子どもにはベッドは眠る所だと教えること。 眠る時間になったら子どもをベッドに寝かせること。母親の腕の中や居間のソファで眠らせない。夜間は電気を消すか暗くすること。子どもが泣いたら行って子どもをベッドから出さないで、電気は明るくしないこと。物音や話し声は出来るだけ小さくして下さい。
【1-3才児】 してはいけないこと
1-3才は子どもに自立心が芽生えてくる年頃です。歩いたり喋ったり服を着たりトイレを自分でやれるようになります。 一人で寝ることも出来るようになり夜中に目覚めてもすぐに眠りに戻れるのは大きな進歩です。しかし歩くと同じで始めはぎこちないものです。
夜によく泣くとか夜中にびっくりして起きてしまうというのが小児科や睡眠の専門医に持ち込まれる悩みの多くです。 親は問題が深刻になっていると気付いて色々と手は尽くしたと言います。
そして子どもをなだめようとしてやってき事が問題をかえって深刻にしていたことを知らされ愕然とすることが多いのです。 泣く子どもをベッドから出す親もいます。子どもを縛ったり歌ってみたりあるいは物を食べさせたり本を読んであげたり親達のベッドに連れて行ったりさえもします。 時にはテレビの前で子どもを寝かし就けようとする親もいます。そんなことをしては子どもは一人で眠る習慣が身につきません。
【1-3才児】対策
睡眠時間の抗争を打開する方法は暗くして静かな部屋に子どもを起きている状態でベッドに置くこと。 始めは寝付くまでに決まったブランケットやお気に入りのおもちゃが必要だったり夜中に目が覚めてもよいように安心させる必要のある子どももいるでしょう。 おやすみを言ってからベッドを離れて下さい。子どもが泣いたときは5分待ってからベッドに行くようにしましょう。
親が部屋に居ると子どもに分かるように2-3分の間はそこに居てもよいが子どもをかまってはいけません。そして子どもがまだ泣いていても部屋を出て下さい。
もしまだ泣いていたら、10分待って部屋に戻り少しの間居てまた部屋を出て下さい。それでもまだ泣いていたら、15分待ってから部屋に戻って下さい。夜中に目が醒めたときや昼寝のときもこの方法を繰り返し使って下さい。一夜毎に待つ時間を5分間延長させていって下さい。
部屋を出たり入ったりすることで子どもが一人でやっていけると思っていることを伝えることにもなり同時に親が永遠に居なくなるのではないことを再確認させることにもなります。
この訓練の間に子どもを泣かせたとしても心理的に悪影響を及ぼす事はないだろうと専門家は言っています。 ひょっとして実は、これは親の方にとって苦しいことなのかもしれません。
1-2才児に必要な睡眠時間:11〜14時間 厚生労働省の「こども版」睡眠指針案より
【3-5才児】 不眠対策
就寝問題はまだ重要課題です。風呂に入ったり静かな遊びや語りによって覚醒から眠りに移行しやすくなります。 こうした事は子どもと共に過ごせるよい時間ともなります。こうして子どもは直接個人的な関係を育むのです。
テレビを一緒に見るのは少し安易な代用です。 専門家の助言としては 興奮する活動や恐ろしい語りは避けて下さい。 時間になったら子どもに知らせるか語りを終わりにもっていく。もっと話してとか水をもう一杯とかのおねだりを跳ねのけること。夜な夜な同じ対応にすること。
親がこれを頑固に守ったときだけ子どもはこの決まり事を理解するでしょう。
子どもがベッドに居たくないようなら戸を閉める方法を使ってみましょう。
ベッドに居ないと戸をしめるぞと子どもに言ってください。ただ戸を1分くらい一寸閉めてから開けて、この約束をまた言います。
子どもがベッドに居る限り戸は開けたままにしておきます。これは子ども次第です。もしベッドに居たくないようなら戸をもっと長く閉めておいて下さい。戸越しに話しかけ励ましてやりましょう。
3-5才児に必要な睡眠時間:10〜13時間 厚生労働省の「こども版」睡眠指針案より
【6-12才児】 不眠対策
この年頃になると幼少時代の睡眠問題は影を潜めます。すぐに寝付いてぐっすり眠り起床時刻にはすっきりと目覚める子どもが多くなります。
ヒバリのように朝型人間もあればフクロウのように夜型人間もいます。こうした生涯にわたる習慣が早くも現われてきます。
この頃になると睡眠自体よりは就寝時刻が主な問題となることが多いようです。
テレビを見たり本を読んだり宿題をするために就寝時刻が遅くなってしまいます。誰にもちょうどよい決まった睡眠時間数はありません。
大人のように他の子どもより睡眠が少なくて済む子どももいます。子どもに眠る準備が出来ていない内に長く寝かせるのは間違いです。むしろ眠たがる子どもの方に注意を向けましょう。
眠りが不十分だと子どもはいらいらしたりぐにゃぐにゃさせることもあります。あるいは先生から集中力に欠けるとか授業中に寝込んでしまうとさえ注意を受ける場合もあります。
こうした問題を治すにはまず第一に、もっと早く寝かせることです。
眠気がナルコレプシーなどの神経疾患や睡眠時無呼吸のような呼吸障害の初期症状であることもあります。
ナルコレプシーの子どもは喋ったり食事中でも自転車に乗っている最中でさえも眠ってしまうことがあります。
筋肉の力が抜けたり急に笑ったり興奮すると倒れることもあります。
睡眠時無呼吸のある子どもは大きないびきをかきます。
朝に頭が痛いと言う子どももいます。上気道感染を繰り返す場合もあります。こうした症状の一つでもあれば医者に見てもらう必要があります。
キャンプに出かけたり病気になったり引越や新しい子どもが生まれたりとかいう家庭事情の変化したときに睡眠に支障が出ると思っていて下さい。
かなり小さな子どもでも心配事を聞いてあげると効果が出ることすらあります。でも、こうした会話は昼間に限るようにし習慣にならないように就寝時間を守って下さい。
小学生に必要な睡眠時間:9〜12時間
中学生に必要な睡眠時間:8〜12時間 厚生労働省の「こども版」睡眠指針案より
概日リズム睡眠覚醒障害 位相後退型(睡眠相後退症候群)
睡眠時間帯が通常の生活時間より一定の時間だけ後方にずれて(遅くなって)戻れなくなったために、睡眠リズムに障害を起こし眠れない状態を睡眠相後退症候群(すいみんそうこうたいしょうこうぐん)と言います。この症状は思春期に出現する人が多いようです。
症状
希望する時刻には眠られず、深夜から朝方に眠りにつき、朝は希望する時間には起きられず、昼頃に起床することがあります。
これは、睡眠時間帯がずれているだけのことで睡眠中は全く正常なパターンで眠っています。
夜更かしの生活を続けたことが睡眠リズムを崩すきっかけとなりますが、一旦遅れた時間帯から戻れなくなる体質が原因のようです。
目覚めた後も全身がだるい、吐き気、めまい、食欲不振、胸がドキドキするなどの症状がよく出ることがあり、一日中調子がよくありません。
ただし夕方から夜にかけては一日のなかで一番体調も気分もよくなるはずです。
治療
「ビタミンB12製剤の服用」と「朝起きたら30分の日光浴か早朝散歩」が効果があります。そうすると、翌日の朝はいつもより少し早く目覚めることができます。
午前中はなるべく外出して体温や血圧を上げて身体のエンジンを始動するように工夫しましょう。
また、三食を決まった時間にとること、特に朝食は体調が良くないことが多いでしょうが必ず取ることが大切です。
一旦戻った睡眠時間帯を維持するには、夜更かしは自分の体質には合わないことをよく自覚し、生活のリズムを崩さない努力を続けることです。
毎朝10分だけ早起きして徐々に正常な時間帯の生活リズムに戻す漸進的時間療法が有効です。一気に10分以上早く起床しないのがコツです。
起床から1-2時間の間に3000ルクス以上の光を浴びる高照度光療法で朝の覚醒を促します。メラトニン作動薬ラメルテオン錠は入眠時刻を変更するとことができます。
概日リズム睡眠覚醒障害 交代勤務型(交代勤務性不眠症)
勤務の時間帯がときどき夜間に変わり、絶えず眠る時間帯を変えながらの仕事のため、慢性の不眠症と時差ボケ症状が出現します。
症状と背景
時差ボケというのは海外の旅先から帰ったときに生活時間のずれた生活をしたために眠れなくなり、頭がボーとして集中力をなくし動悸や吐気、冷汗まで出て変な時間帯に眠くなるなどの症状が4-5日間続くことです。
海外に行った訳でもないのに、都会での生活において同様の症状が起きる場合があります。 特に、勤務時間帯の不規則な職業の方に多く見られます。例えば、ガードマン、看護師、24時間コンビニエンスストアの店員、長距離トラック・バス・電車・宅急便の運転手、、国際証券ブローカー、消防士、警察官、自衛官、ホテルマンetc...まだまだありそうです。労災対象の可能性もあります。
今や都会は24時間眠らずに、昼夜の境目なく躍動し、工場でも24時間ロボットが働き、監視人が起こされています。最先端の現代ニーズに応え、新しい商売が誕生し時間に関係なくサービスや生産性は向上しましたが、一方では勤労時間がバラバラに分断されてしまいました。
対策
夜勤中、特に午前1時ごろに1時間程度の仮眠(アンカースリープ)を取ることで、疲労回復や眠気の軽減、生体リズムの維持に効果があります。夜勤中の仮眠は、夜勤前に自宅で取る仮眠よりも疲労回復効果が高いと言われます。可能なら2時間程度の仮眠が理想です。
夜勤明けに帰宅中に日光を浴びると体内時計がリセットされ、眠気が減少し入眠しにくくなります。帰宅時はサングラスを着用し、できるだけ日光を遮断することで、メラトニン分泌が維持され、午前中の入眠が容易になります。
夜勤回数は週1回程度を上限とし、勤務間インターバル(勤務終了から次の勤務開始まで)は最低12時間以上確保することが望ましく、夜勤1回あたりの勤務時間は8時間以内、週32時間以内など、夜勤従事時間の上限規制が必要です。
勤務シフトは「正循環」(日勤→準夜勤→深夜勤→休み)の順で組むことで、生体リズムへの負担を少なくします。「逆循環」シフトは避けるべきです。1週間ごとの短いシフト交代よりも、3週間以上のロングシフトや日替わりシフトの方が身体のリズムに優しい勤務編成と言えます。
交代制勤務は40歳を過ぎると継続が難しいと感じる人が多くなります。
身体疾患、精神疾患による二次的不眠症
- 消化器疾患は、十二指腸潰瘍の早朝疼痛、逆流性食道炎による胸痛が原因で途中覚醒するため不眠症になります。
- 心臓疾患は、夜間狭心症がレム期に多く出現します。
- 夜間喘息、夜間無呼吸発作、慢性閉塞性肺疾患、その他肺疾患があると夜間の呼吸困難のためしばしば眠りが中断します。
- 甲状腺機能亢進症になると、なかなか眠られず頻回に寝返りを打つので睡眠時間は短縮してしまいますが、深い睡眠は増加します。
- 甲状腺機能低下症になると深い睡眠は減少し、浅い睡眠がだらだらと続きます。
- 糖尿病や悪性貧血、白血病、溶血性貧血、再生不良性貧血などの血液疾患があると不眠になります。
- 肝硬変、慢性透析患者、腎不全ではアンモニアの増加などが不眠の原因となります。
- 高血圧、脳動脈硬化症、脳梗塞後遺症、脳出血にもよく不眠が伴います。
- 周産期や更年期障害でもプロゲステロンの上昇のために不眠となります。
- 偏頭痛の夜間発作、パーキンソン病、アルツハイマー型痴呆、手術後の疼痛、発熱、体温調整、内分泌調整、環境条件が不調になるとよく不眠になります。
- 皮膚疾患ではかゆみもかなり不眠にさせます。
- 神経症、うつ病、精神分裂病などの精神疾患による不眠もよくあります。加令により不眠は中途覚醒、睡眠相の前進、深い睡眠の減少などが特徴です
色々な身体疾患、精神疾患による二次的な不眠症について
アルコール性不眠症
アルコールには入眠効果がありますが、アルコールが眠っている間に身体から抜けた途端に本来以上に途中覚醒が多くなり、眠らせなくする興奮剤依存性作用もあります。
眠れないために慢性的に酒を呑むと、「始めは1合」で良かったのが、何年か経つうちに「2合飲まないと眠れなくなり」、また、酔いも少ないため余計に飲んで眠る習慣がついてきます。 これがアルコール依存症で、「飲まなければ眠れない」体質に変わってしまいます。
本当は、お酒では眠れないし、長い目で考えると逆効果だとさえ言えます。 また、カフェインも1日摂取量を300mg(コーヒー3杯/日)以下に抑えないとイライラや不眠症の原因となります。 その他の興奮作用のある薬も勿論、不眠症を引き起こします。
ナルコレプシー
ナルコレプシーは、「居眠り病」とも呼ばれる睡眠障害の一つで、日中に耐えがたい強い眠気や突然の睡眠発作が繰り返し起こることが特徴です。日本では約2000〜4000人に1人、あるいは600人に1人とされ、発症年齢は10代が多く、男女差はありません。
症状
主な症状は日中の強い眠気と睡眠発作です。突然に強い眠気に襲われ、数分から10分程度眠るとすっきりするのが特徴です。また、笑ったり驚いたりといった感情の高ぶりで、急に体の力が抜ける情動脱力発作が起こります。意識は保たれています。
さらに、寝入りばなや目覚め際に現実感のある鮮明な夢(幻覚)を見たり、体が動かせなくなる金縛りを経験することがあります。夜間に熟睡できず、何度も目が覚めたり、鮮明な夢で中断されることがあります。
いくつかのタイプに分類されています。
【ナルコレプシー1型】 情動脱力発作を伴うタイプです。多くは脳内のオレキシンという覚醒を維持する神経伝達物質が著しく低下しています。
【ナルコレプシー2型】 情動脱力発作を伴わないタイプです。オレキシン濃度の低下は軽度か認められない場合が多いです。
特発性過眠症、睡眠衛生不良や睡眠不足症候群などの鑑別診断が必要です。終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)や睡眠潜時反復検査(MSLT)などを行います。
治療
日中の眠気にはモダフィニル錠など覚醒促進薬を、情動脱力発作や幻覚などにはクロミプラミン錠やSSRI系抗うつ薬が用いられます。短時間の仮眠や規則正しい生活習慣も重要です。
レム睡眠行動障害・夜尿症・寝言・悪夢症・歯軋り・夜驚症・夢中遊行症
レム睡眠中(熟睡中)には、活発な脳の活動が手足の神経にあまり影響しない仕組みになっています。
この仕組みが外れると寝言、夜驚症、夢遊病などになります。
よくオネショは夢を見ているときに起きると思われがちですが、実際に睡眠検査をしてみると、多くは深い眠りから浅い眠りに変わる頃が危ないよ
うです。
オネショは、ねぼけや寝言と同じような睡眠行動異常のひとつですから、脳の調節機能が発達し時期がくれば治ります。それまでは決して叱らず、温かく子供を見守ってあげましょう。
レム睡眠行動障害は夢の内容が口や手足の運動神経に伝わり異常行動を起こす病気です。
記憶のないまま夜間に部屋の家具と戦ったり玄関から出てしまったり窓から飛び出すので怪我のないように安全対策や戸締まりが必要です。
悪夢症は異常行動はありませんが、夜中に恐ろしい夢を見た後に覚醒しまうと悪夢を記憶してしまうので悪夢症と言います。
悪夢を見ること自体は異常ではないのですが通常は覚醒しないので記憶には残らないで朝を迎えるのが普通です。
睡眠時歯ぎしりの原因は分かっていません。治療法もまだ確立していません。
歯科にて歯にマウスピースをかぶせて歯の摩耗を防ぎます。キリキリと音を立てる歯ぎしりと音がしないで歯を噛み締める場合があります。
治療
これらの睡眠障害にはクロミプラミン錠やクロナゼパム錠が有効なことがあります。