ドクダミ
梅雨の季節になると、我が家の裏庭には可愛らしい草が繁茂する。スペード形の濃い緑の葉を持ち、真白で可愛らしい花を咲かせる「ドクダミ(蕺)」である。
「ドクダミ」は多年草で、湿った半日陰地に群生し、特有の臭気がある。白い花びらに見えるものは、「総苞片(そうほうへん)」で、花の集まりである「花序(かじょ)」の基部を包む「苞葉(ほうよう)」である。「花序」は中央の突起部の黄色の部分である。植物学上の定義はともかく、一般人である私は「総苞片」と「花序」を合わせて花として愛でている。
「ドクダミ」は葉だけではなく、茎にも花にも特有の臭いがあり、苦手とする人が多いと思う。幼少のころ、病気や怪我をすると、診療機関も十分に無い田舎で育った私は、越中富山の置き薬か、祖母が作ったドクダミ茶を飲まされたものである。「良薬は口に苦し」と言われても、あまり好きにはなれなかった記憶がある。
「ドクダミ」の語源は分かっていないが、古くから民間薬として毒下しの薬効があり、毒を抑える、直すことを意味する「毒を矯める(ためる)」から、「毒矯め(どくだめ)」が転訛して「毒矯み(どくだみ)」と呼ばれるようになったのが通説とされている。または、群生地に漂う特有の臭気から毒気が溜まった場所を意味する「毒溜め(どくだめ)」が転じて「ドクダミ」とよばれるようになったとする説もある。いずれにしても、名前に「ドク」とあるが、ドクダミ自体に毒はなく、生薬(しょうやく:加工せずそのまま使う薬)としては10種類以上の薬効があることから十薬(じゅうやく)と呼ばれている。
また、「ドクダミ」は薬用だけではなく食用にもなる。臭いが強く嫌われているが、干すか加熱すると臭気が和らぎ、葉はおひたし、酢の物、天ぷらなどにして食べられ、地下茎も細かく切って茹でて、一晩水にさらしてから、炒め物や炊き込みご飯にして食べることができる。
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「ドクダミ」は湿り気のある半日陰地を好み、繁殖力が強く、ちぎれた地下茎からでも繁殖するため、放置すると一面「ドクダミ」だらけになり、他の雑草が生えなくなる。我が家の裏庭もご多分に漏れず写真のように繁茂している。抜いても抜いても、千切れて残った地下茎から芽を出し、根絶排除は難しい。
毎年、繁茂する「ドクダミ」は迷惑な雑草とばかり思っていたが、調べると極めて有用な植物であり、見直すことにする。「ドクダミ」の可愛い花は一輪挿しにして飾り、ドクダミ茶は「ドクダミ」の英名である「フィッシュミント」(fish mint)のハーブティーと呼んで飲み、繁茂した裏庭は日陰でも花をたくさん咲かせる「薬草園」とする。
「ドクダミ」を雑草と言うのは失礼である。