会長挨拶

全国小水力利用推進協議会
会長 竹村公太郎
(2025年7月会長就任)

水力発電の復権

養老孟子さんがYou Tubeで私たちにエールを送ってくれていました。エネルギーを経済用語を使って解説されていました。「人類は地球の資本である石油・石炭を喰っている。資本を喰うのではなく利息で生きていく必要がある。利息とは地球の資本がずーっと生み出してくれる減らない水力発電です」

太陽エネルギー

文明を維持していくには、エネルギーが不可欠です。
石油・石炭そして天然ガスは地球が何億年と長い時間をかけて貯めた太陽エネルギーの缶詰です。ワットが蒸気機関を発明して以来、人類はこの缶詰を一気に開けて食べ続けています。
未来社会はIT社会に向かっています。気が遠くなるような膨大な電気が必要となります。未来文明を支えるエネルギーは、蓄積された缶詰ではなく、日々、地球を照らし続けている太陽エネルギーが求められます。
太陽エネルギーの総量は十分すぎるほど膨大です。しかし、太陽エネルギーの決定的な弱点は「単位面積当りのエネルギー量が薄い」ことです。太陽エネルギーには、太陽光・風力・波力があります。どれも単位面積当り薄いエネルギーで、いかに効率よく集めるかが課題となります。
この太陽エネルギーの薄い欠点を克服する太陽エネルギーがあります。それが水力エネルギーです。

日本はエネルギー列島

太陽に温められた海の水は、蒸発して上空に行き、上空で冷やされ雨や雪で再び地上に降りてきます。太陽と海がある限り、水は無限に海と陸の間を循環していきます。
ただし、雨も単位面積当りのエネルギーは薄いのです。しかし、この薄いエネルギーの雨水は、自然の力で集積され濃いエネルギーになっていきます。雨水を集積し、濃くするのは日本列島の地形です。
モンスーン帯に位置し、海に浮かぶ日本列島には、太平洋から日本海から一年中雨が運ばれてきます。日本列島の70%は山地です。雨は山地のひだに集まり、小さなせせらぎとなり、せせらぎは沢となり、沢が集まり渓谷となり、渓谷が集まり川となっていきます。
単位面積当りのエネルギーが薄い雨粒が、日本列島の地形と重力によって次第に集積され、濃い水流エネルギーとなっていくのです。日本列島全体が薄いエネルギーの雨を濃いエネルギーに変換する装置なのです。
さらに、日本列島の中央には脊梁山脈が走っていて、脊梁山脈から無数の川が日本海側と太平洋側の全ての地域に流れ下っていきます。川は日本の全ての地域が平等に保有している地域固有の財産なのです。
無限で、膨大で、クリーンな水力エネルギーの川が、日本列島くまなく公平に配置されている。このような恵まれた国は世界の中でも見当たりません。

集中から分散へ

過去150年間の近代化は、効率性が最優先でした。人と空間と時間の効率性を上げるため、人々は都市に集中しました。エネルギーも化石エネルギーによる大規模供給で成し遂げられました。
実は、地球上の生物の進化は、集中ではなく、分散化でした。生物多様性は「Bio Diversity」です。直訳すると「生物の分岐」です。生物は分岐し、分散する進化によって地球環境の激変に生き延びたのです。
過去150年間の都市集中とエネルギー集中は、20億年の生物進化とは真逆だったのです。この集中は地球環境の悪化を招き、自然災害に弱い社会を生み出してしまいました。
未来の地球には、狂暴な気象変動、世界規模の環境悪化、資源と食糧の逼迫が待ち構えています。
この未来の環境悪化の中で存続していくための戦略は、集中して巨大化することではなく、分散して多様な規模の姿になっていくことです。列島の3500kmの細長い地形と気象を利用して分散化していく。生き残り作戦の原則は、何時の時代もどの生物にとっても同じなのです。
分散して多様な生き方をしていくことなのです。

小水力が担う使命

日本の持続可能な存続のため分散化して多様な社会を目指す。この多様で分散化社会へ先頭を走る羅針盤が水力、特に小水力になるのです。
全国各地に流れる川は画一ではありません。川そのものが分散していて多様性なのです。その川で行う小水力は、地域ごとに技術も事業の在り方も異なっていきます。小水力は一品生産なのです。この多様な小水力発電は、分散した多様な地域社会のシンボルとなります。
市町村単位、村落単位・自治会単位、土地改良区単位等で、人々が力を合わせ、小水力発電を実施していく。発電規模は小さいかもしれませんが、エネルギー自立していく地域、エネルギー自立していく日本の未来にとっての旗となっていくのです。

小水力発電事業は簡単なようで、実は、様々な困難な課題を抱えています。小水力発電が抱える課題も時代によって変化していきます。
本協議会は一貫して各地の小水力事業の応援をしてきました。今後も皆様が直面する課題を共有して、それらに対応するため一緒に考え、悩み、解決に向かって歩んでいきます。

設立の主旨

持続可能な循環型社会を目指して

全国小水力利用推進協議会は、小水力利用推進に関する調査研究を行うとともに、小水力利用事業の普及発展を図り、持続可能な循環型社会の構築と環境保全に寄与することを目的として2005年7月16日に発足した団体(法人格を持たない任意団体)です。

設立趣意書

「自然エネルギーの利用が大切だ」と多くのひとが考えています。太陽光・風力・バイオマスなどの利用は拡大しつつありますが、残念ながら小水力利用はほとんど広がりを見せていません。 水力は他の自然エネルギー源にくらべて、各地で利用された歴史が長く、しかも安定した良質のエネルギーが得られるのに、なぜなのでしょうか。

水力利用というと大規模水力発電しか頭に浮かばない方も多いようです。しかし、つい数十年前までは小川の水車から数十、数百キロワットの小水力発電などにいたる小水力利用が、この国の生活や産業を支え、エネルギー供給に大きな役割を果たしていました。いまでも、自然河川・灌漑水路・山間小渓流から上下水道・工場の余剰水圧利用等にいたるさまざまな小水力利用可能地点・場所がほとんど無数にあり、その総出力は数百万キロワットに達すると見込まれています。 小水力利用が普及するなら、その設備に必要な経費も大幅に安くなり経済性もどんどん向上していきます。なぜなら、小水力利用の場合は、事前調査も簡単であり簡易な土木工事で設置できることも多く、また必要な機械設備は普及に比例して技術的にも改良され、規格化・量産化がすすむと考えられるからです。
小水力は他の自然エネルギーにない経済面・普及面の特長があり、さらに地域の活性化とエネルギー自給を支える核として頼れる力を持っています。

小水力利用を進めるためには、小水力について一般の理解や関心を深め、その技術的進歩をはかり、実施上の障害を取り除き、規制緩和などをすすめ、情報を交換し知恵を出し合うため、関係者が相互に協力する必要があると考えます。こうした問題意識を共有する各方面の方々が力を合わせ、日本中に小水力利用の環を広げるため、本協議会を設立します。

組織概要

団体名 全国小水力利用推進協議会
会長名 竹村 公太郎
代表理事 上坂 博亨
設立年月 2005年7月16日
住所 〒170-0002 東京都豊島区巣鴨2-11-4 第三高橋ビル8階
連絡先 Tel.03-5980-7880
Fax.03-5980-7065
E-mail:info@j-water.org
当サイトからのお問い合わせはこちらからも承ります。

歴代会長肩書きは、就任時のものを掲載しています。

歴代 氏名 所属等 就任期間
初代
大原 一三 (故人) 元衆議院議員 元農林水産大臣 2005年7月〜
2005年11月
二代目
愛知 和男 (故人) 元衆議院議員 元環境庁長官 2006年7月〜
2024年5月
三代目
竹村 公太郎 特定非営利活動法人日本水フォーラム代表理事
元国土交通省河川局長
2025年7月〜

(2025年7月26日現在)

設立呼びかけ人名簿肩書きは、設立時のものを掲載しています。

氏名 所属等
浅岡 美恵
弁護士 気候ネットワーク代表
阿部 嘉弘 全日本自治団体労働組合(自治労)公営企業局長
安藤 満 富山国際大学教授 環境情報ビジネス学科環境系
飯田 哲也
自然エネルギー促進法推進ネットワーク代表
逸見 次郎 崇城大学工学部教授
糸長 浩司
日本大学 生物資源科学部生物環境工学科 教授
岩井 国臣 参議院議員 国土交通副大臣 元建設省河川局長
牛山 泉
足利工業大学教授
大友 詔雄 北海道大学大学院工学研究科/北海道自然エネルギー研究センター
大原 一三 前衆議院議員 元農林水産大臣
氏名 所属等
小野寺 英輝
岩手大学助教授 岩手県地球温暖化防止活動推進員
加藤 修一
参議院議員 前環境副大臣/自然エネルギー促進法議員連盟事務局長
小泉 修吉 グループ現代社長 環境TVトラスト日本委員会理事長
古賀 康正
NPO法人クリーンエネルギー・フォーラム顧問
小林 久 茨城大学助教授
小林 功
(株)光と風の研究所 顧問
酒井 勝弘 埼玉工業大学教授
佐藤 由美
環境ジャーナリスト
塩川 鉄也 衆議院議員 経済産業委員会委員
篠原 孝 衆議院議員 農林水産委員会委員
氏名 所属等
菅沼 康男
財団法人 新エネルギー財団水力本部
須藤 良作
須藤技術士事務所/NPO法人クリーンエネルギー・フォーラム顧問
瀧本 裕士
富山県立大学教授
竹林 征三
富士常葉大学教授・付属風土工学研究所所長
竹村 公太郎
(財)リバーフロント整備センター理事長/元国土交通省河川局長
段本 幸男
参議院議員 元農水省中国四国農政局長
千矢 博道
NPO法人クリーンエネルギー・フォーラム顧問
都築 建
自然エネルギー推進市民フォーラム(REPP)理事長
中島 大
気候ネットワーク運営委員 環境自治体会議専門委員
西田 親文 (株)リポートサービス北海道
氏名 所属等
波多野 和明 (株)府中技研社長
福島 瑞穂 参議院議員
古栃 一夫 早月川沿岸土地改良区副理事長 早月川電力(株)
堀内 道夫 (株)光と風の研究所所長 静岡大学客員教授
前田 典秀 NPO法人クリーンエネルギー・フォーラム専務理事
町田 和美 NPO法人彩の国エコロジーセンター理事長/NPO法人CEF理事
森 武昭 神奈川工科大学教授 日本山岳会評議委員
谷津 義男 衆議院議員 元農林水産大臣

(2005年5月14日現在、五十音順)

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