全項目表
ダム番号:277
胆沢ダム(再) [岩手県](いさわ)
[旧名]新石淵ダム(しんいしぶち)
どんなダム
既設の石淵ダムが水没
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石淵ダムの下流約2kmの地点に新たに胆沢ダムを建設。胆沢ダムが完成すると石淵ダムは水没する。
堤体積国内第3位
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堤体積は1350万立法メートル。建設中のダムを含めて日本のダムで堤体積が丹生ダム、徳山ダムに次いで第3位。既設の石淵ダムと比較すると堤体積は31倍、有効貯水容量は11倍、堤高は2.5倍。
町名に改名
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既設の石淵ダムの下流に建設し、石淵ダムを水没させる形となるの再開発であることから新石淵ダムという名称だったが、昭和63年、町名、河川名などにより胆沢ダムに改名。
CM方式を試行
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マネジメント技術活用方式(CM方式、Construction Management)は、1960年代に米国で始まった建設生産・ 管 理システム。我が国でも取り入れる動きがあり、現場での技術的競争性や透明性を向上させ、品質の保持、適切なコスト管理、 たコスト縮減などが期待される。森吉山ダムに続き、試行的に実施。対象となるのは基礎掘削工事と原石山準備工事、それに2004年度着手予定の堤体盛立工事、原石山材料採取工事、洪水吐 打設工事の5工事。
コスト縮減
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2002年度に約8億円のコスト縮減を実現。基礎掘削工事で、フィルタ材運搬路を1年前倒し施工したことにより基礎掘削残土の仮置きを不要としたなど。
転流工にISO14001を導入
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ダム本体工事に先立ち建設される転流工にISO14001に沿った環境マネジメントシステム(EMS)を導入。モデル事業としての導入で、直轄事業としては初めて。平成10年12月に「環境方針」を定め、平成11年4月からは「胆沢ダム環境管理委員会」を設置し、EMSの運用を開始。その後も、各種の工事がEMSに基づいて実施されている。
建設工事に90トンダンプトラック
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建設工事に90トン積みダンプトラックを使用し、ロック材をこのダンプに積み込む際には12m3バックホウを使用。これらは、国内最大級。90トンダンプは国内ではもう使用先がなさそうだという。
材料山の位置を変更して自然環境を保全
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ロック材の採取地を当初は猿岩(さるいわ)にしていたが、壁面が猿の顔に似ていて国定公園第二種特別地域に指定されていることなどに配慮して、自然環境を積極的に保全する観点から位置を変更、石淵湖北側の地区から取ることにした。
[写真]猿岩(さるいわ)、壁面が猿の顔に似ているといわれる
コア材料の運搬にベルトコンベヤを使用
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コア材は、貯水池下流の慶存地区から採取されるものと堤体基礎掘削ズリをブレンドして使用。コア材運搬には、近辺に温泉保養地等があるため、騒音、振動、粉じん等の影響に配慮し、慶存地区から場内までベルトコンベヤ(延長913m、幅75cm、運搬能力910t/h)で運搬。コア材料の運搬にベルトコンベヤを使用するのは、全国で胆沢ダムが初めてだという。
伐採木のリサイクルに取り組む
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ダム建設伴い発生した伐採木を廃棄物とせず、現場内や地域で有効な資源として活用、リサイクルに取り組む。チップ化して緑を復元するための基盤材や舗装材として利用。また、公園や通学路に敷きつめるなど。伐採木から作られた消臭用木炭と木酢液が、胆沢ダム学習館で来館者に無料配布。
工事中に岩手・宮城内陸地震
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建設工事中の2008年6月、岩手宮城内陸地震が発生し、この地域も震度6強の揺れに襲われた。胆沢ダムは、コンクリート造の洪水吐きが一部損傷を受け、堤体本体の盛立部分に亀裂が見つかるなどの被害があったが、その後の対応によって工期が大幅に遅れるなど事態にはならなかったようである。
高校生が環境巡視隊を組織
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岩手県立胆沢高校では、平成7年から生徒が「胆沢ダム環境巡視隊」を組織し活動を続けている。水質調査などを通して胆沢川の環境を的確に把握、活動の結果については定期的に開催する胆沢ダム工事事務所との意見交換会で報告。文化祭や生活誌でも活動の状況・結果を公表。
縄文時代前期の大集落の遺跡
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ダム建設予定地周辺には、旧石器時代の遺跡をはじめとして、縄文時代を中心にたくさんの遺跡が存在。大清水上遺跡はダムの堤体材料のコア材を採取する工事のため、発掘調査を実施。ここから、縄文時代前期の大集落跡を発見。集落全体で60棟に及ぶ竪穴住居。貴重な資料に。
[写真]大清水上遺跡の発掘調査
ユニークな「胆沢ダム学習館」
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平成13年4月に「胆沢ダム学習館」がオープン。地区の歴史・文化を学んだり、勉強会や企画展などの利用できる。活用方法などは小中学校の先生をメンバーとした懇談会が助言。小中学校の総合学習の一環としての利用が増えている。館長業務は、教職員OBで作るNPO法人のメンバーが日替わりで努めることも。
胆沢ダムゾウ君
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シンボルキャラクターは「胆沢ダムゾウ君」。小中学生に公募して決定。胆沢川の下流で約105万年前のアケボノ象の足跡化石が発見されたことに因む。ぬいぐるみが地域でイベントなどに活用されている。建設中には、コンビニの名前にまで採用され、コンビニ「だむゾウ」ができたが、2009年11月30日で閉店となったのは残念。
[写真]「胆沢ダムゾウ君」とコンビニ「だむゾウ」
ダム湖は「奥州湖」
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一般公募により680件の応募があった。その中から「知名度がある」「親しみやすい」として「奥州湖」に決まり、2012年9月27日に国交省胆沢ダム工事事務所から発表された。
河川
北上川水系胆沢川
目的/型式
FNAWP/ロックフィル
堤高/堤頂長/堤体積
127m/723m/13500千m3
流域面積/湛水面積
185km2
(
全て直接流域
)
/440ha
総貯水容量/有効貯水容量
143000千m3/132000千m3
ダム事業者
東北地方整備局
本体施工者
鹿島建設・清水建設・大本組
着手/竣工
1983/2013
ダム湖名
奥州湖
(おうしゅうこ)
ランダム情報
【水特法関係】胆沢、水没総面積:367ha、水没戸数:42戸、水没農地面積:14ha、ダム等の指定年月日:H2.3.26、水源地域指定年月日:H5.2.19、整備計画の決定年月日:5.3.26、平成13年3月28日一部変更
【ダム工事年表】仮排水路(1999.3〜2004.2) 本体掘削(2003.1〜2005.3) 本体打設/盛土(2005.10〜2010.5)
【ダムカード配布情報】2024年8月2日現在 (国交省資料を基本とし作成、情報が古いなどの場合がありますので、事前に現地管理所などに問い合わせるのが確実です) Ver5.0
○しろまる胆沢ダム管理支所 平日 9:00〜12:00 13:00〜17:00土・日・祝日 10:00〜12:00 14:00〜17:00※(注記)正面玄関の脇にあるインターホンを押してください。※(注記)ダムカードの配布場所はダムに隣接しています。
ダムカード画像コレクション
胆沢ダム Ver.3.0 (2013.11)
[協力:mayuno]
胆沢ダム Ver.4.0 (2015.3)
[協力:安部塁]
胆沢ダム(建設中) Ver.1.0 (2010.10)
胆沢ダム(建設中) Ver.2.0 (2012.10)
参考資料
■しかく胆沢ダム建設に係わる地域活性化と課題−建設省・胆沢ダム(岩手県)の事例− ?樺n域整備総合研究所所長 宮本博光
【第42回水源地問題実務講習会(平成07年03月03日)】
■しかく胆沢ダムのイメージアップとPR活動について / 井山 聡・坂本良三
【ダム日本 No.612(H7.10)】
■しかくみちのく「アテルイの里」を潤す日本一の胆沢ダム−胆沢ダムの水源地域振興方策について− 東北地方建設局胆沢ダム工事事務所長井山聡
【第44回水源地問題実務講習会(平成09年02月27日)】
■しかく胆沢ダム転流工にISO14001導入/渥美雅裕・布宮明道
【ダム日本 No.653(H11.3)】
関連書籍
■しかく建設省胆沢ダム工事事務所 『記憶は沈まない 胆沢川』 建設省胆沢ダム工事事務所 2000
諸元等データの変遷
【05最終→06当初】本体施工者[→鹿島・清水・大本]
【06最終→07当初】左岸所在地[胆沢郡胆沢町若柳→奥州市胆沢区若柳] 河川名[胆沢川→千倉川] 目的[FNAWI→FNAWP]
【07当初→07最終】河川名[千倉川→胆沢川]
【10最終→11当初】流域面積[191.1→185]
【11最終→12当初】湛水面積[310→440]
【12最終→13当初】本体施工者[鹿島・清水・大本→鹿島建設・清水建設・大本組]
【14最終→15当初】堤高[132→127]
東北ダム巡りツアーに参加してみた
今回は(財)日本ダム協会が主催する"東北ダム巡りツアー"(10月22日−23日 ダムマイスター研修会「東北のダムを巡る」)に同行させて頂いたということで、その時の感想などを"一ダムフリークの視点"から紹介
・・・→
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(2011年12月6日、ばっきぃ)
石淵ダム・胆沢ダム見学会
平成24年9月15日(土)、ダムマイスター研修会「石淵ダム・胆沢ダム見学会」が行われました。全国から総勢15名のダムマイスター・ダム愛好家の方が、胆沢ダム学習館に集結します。多くの方が早朝あるいは前夜に自宅を出発
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(2012年9月20日、安部塁)
ダムマイスター研修会 石渕・胆沢ダム見学会レポート
9月15日(土)、北上川水系の石渕ダム 、胆沢ダム において、日本ダム協会主催の「ダムマイスター研修会」が実施された。研修会には、協会から2名と、ダムマイスターと同行者計13名が、京都、愛知、石川、関東の各地
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(2012年10月12日、Damkichi(吉))
「もりみず旬間2015in胆沢」に行ってきました
8月1日、岩手県奥州市にある胆沢ダムでの"もりみず旬間2015in胆沢"へ行ってきました。
「管理支所屋上の展望台解放」
「レアな胆沢ダムマスコットキャラクター・ダムぞうくんぬいぐるみ争奪じゃんけん大会」
「無料金魚すくい&ヨーヨーすくい」
「かき氷などの物販」
「予約制のゲート室見学」
などが行われ、多くの人で賑わいました。
胆沢ダム
洪水吐
洪水吐
私も控えめに!?「ダムぞうくんぬいぐるみ争奪じゃんけん大会」に参加しましたが、最初で負けてしまいました(苦笑)
じゃんけん大会
ゲート室見学予約時間前にダム下流駐車場テントにて受付。受付では暑さ対策として!?冷たい飲み物と子供達にシャボン玉をプレゼントしていてすごく良かったです。
見学開始時間となり、発電所と利水放流設備を見ながら、ゲート室入り口へ...。 入り口からゲート室までの通路はとても広々としていましたが、それなりに角度のある長い傾斜で、行きはよいよい帰りは...でした(苦笑)
ゲート室の温度は17°Cくらい。(ゲートの写真、手前が主ゲートで奥が副ゲート)ゲートが開いていたので、のぞき窓!?から放流の勢いを見ることができ、すごい勢いにみんなびっくりしていました。もちろんものすごい音なので、ダム職員さんは拡声器を使って説明してくれましたが、放流音に負けてよく聞こえない状態でした(苦笑)
今回の特別見学会はゲート室見学のみでしたが、胆沢ダムの取水設備"呑口スクリーン式円形多段式ゲート(地山設置型)"は日本最大級との事で、ぜひ一度見学してみたいものです。
胆沢ダムの監査廊は、一番急なところは傾斜45度、階段450段との事で点検作業時は本当に大変だろうなあと思いました。管理庁舎から監査廊の底までは100m以上あるそうです。
管理庁舎内には石渕堰堤史料室があるので、胆沢ダムと世代交代した!?(笑)石渕ダムのことを勉強してみてはいかがでしょうか?
右岸にある奥州湖眺望台から ダム全体と遠くの景色を見るのもおすすめです!
(2015年8月10日、ダムぅ〜女)
ダムマイスター東北研修会報告
2. 胆沢ダム
胆沢ダムは、わが国最大級の堤体積となるロックフィルダムです。
まず、はじめに胆沢ダム学習館において資料やダムカードなどが配布されました。展示の模型を用いてダムの役割などの説明を受け、その後、現地への移動となります。胆沢ダムは、堤体・洪水吐工事はすでに完成しています。2012年の試験湛水に向けて取水設備・放流管設置など最終的な工事が進められていました。保安帽が貸与されバスは、いよいよ現場に向かいます。場内となりますので、バスの運転手さんも保安帽を着用することになります。
堤体直下には、電源開発さんによる発電所が建設されるそうです。
かつて排水路(転流工)として利用されていたトンネルに吐口から入ります。
トンネル内では放流管の設置工事が進められていました。「放流管」といっても直径4メートルもある大きな管です。当日は、この放流管を上段放流管から下段放流管に分岐させるポイントの工事を見学させていただきました。
トンネルは、NATM工法で掘り進められたらしく、壁面にこのようなものがありました。
さらに監査廊への見学となります。漏水計などの計測機械が設置されています。
建設重機なども直接手に触れて見学することができました。胆沢ダム建設では、それぞれ運搬重機にGPSアンテナが装備されました。これによって、車両の現在位置が正確に把握できるようになったということです。素人の私にとってはあまりピンと来ない話ではありましたが、プロ中のプロである中村先生が、この点に大変感心されていました。
最先端の技術を駆使して盛り立て工事が行われたそうです。
胆沢ダムは、東日本大震災の直接の被害は受けなかったものの、震災直後の一時的なガソリン不足のため資材の輸送に遅れが生じ、工程に影響があったということでした。
(2011年11月作成)
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