ツンデレ小説ベスト【まとめ】
はてな「あなたのツンデレ小説ベストは何ですか?」[参照]でいただいた回答のまとめ。はてな住民の皆さま、大変参考にさせていただきました、ありがとうございます。
1.春琴抄(谷崎潤一郎)の、春琴
2.ベルガリアード物語(デイヴィッド・エディングス)の、セ・ネドラ
3.涼宮ハルヒの憂鬱(谷川 流)の、ハルヒ
4.西の善き魔女(荻原規子)のフィリエル(♀)とルーン(♂)
5.きみとぼくの壊れた世界(西尾 維新)の、櫃内夜月
6.白痴(ドストエフスキー)の、ナスターシャ・フィリポヴナ
7.真紅のカーテン(ジュール・バルベー・ドールヴィイ)の、アルベルト
8.椿姫(デュマ・フィス)の、ヴィオレッタ
9.虞美人草(夏目漱石)の、藤尾
10.二進法の犬(花村萬月)の、倫子
わたしの記憶の最深部にいるツンデレは、モンスリー。未来少年コナンの全編とおしてキッツいのが、ラストの結婚式で頬染めて「バカねっ」とつぶやく。"ツンデレ"が発見されるずっと以前、"萌え"がまだ bud しか意味を持たなかった時代だ。
...で、ここで足を踏み外すと、壮大なツンデレ史になってしまう。それは「ツンデレ大全」あたりで研究していただくとして、ここでは小説に出てくるスゴいツンデレをまとめてみよう。ただし、ラノベは不勉強のため、きちんと評価できていない。ご興味ある方は有識者のエントリ「このツンデレなライトノベルがすごい!」[参照]を参考にしていただきたい。
【第1位】日本文学史上最強のツンデレは、春琴
さすが谷崎潤一郎はタダモンじゃない!「陰影礼賛」は高校生まで、オトナは「春琴抄」で萌えよ。こいつをエロスや嗜虐といった枠で語るのは国文科のエラい人に任せて、春琴をツンデレとしてみよう。すると、最近の使い古されたストーリー「ツンデレに振り回される主人公」から、「ツンデレにわが身を捧げる」という新展開を見出すことができる。好いたあの人のために■しかく■しかくを■しかく■しかくなんて、絶対できねぇ...が、気持ちは痛いほど伝わる。「恋は盲目」なんて軽々しく口にできなくなる。
【第2位】ファンタジー最強のツンデレは、セ・ネドラ
王女+金持ち+ニンフェットと、ツンデレ資格を十分に備えている。それだけでない、彼に八つ当たりして後悔したり、久しぶりに会えても「べべべつにアンタのことなんか何とも思っちゃいないわ!」と真っ赤になったり、ツンデレラーの渇きをしっかりと癒してくれる(←表現は脳内補完しているので注意)。本書「ベルガリアード物語」はドラクエとFFを足して2倍にしたようなスゴいファンタジーなのだが、いかんせん長大な物語。ともすると散漫になりがちな話をピリッと締めてくれるのがこのツンデレ。
涼宮ハルヒの憂鬱
【第3位】今が旬のツンデレは、涼宮ハルヒでまちがいない
アニメが始まってからというもの、目が離せない。彼女をDQNっ娘と断ずるのは簡単だが「やべぇこれタイプだよ」と呟いた男の数は星の数。ただし、ハルヒの「デレ」はカケラ程度だから、これをツンデレ小説とするは間違っているかもしれない...しかし、みくるちゃんを見よ、デレはそこにある。長門を見よ、巻が進むにつれ反応動作が大きくなっていくのが分かる。そして圧殺されたデレはついに暴走し時空を歪め、「別人の長門」の話へ...そう、真のツンデレは、有希でまちがいない。
西の善き魔女
【第4位】ツンデレが女の子属性だと誰が決めた? 男子でツンデレだっていいじゃない。
...で白眉は、「西の善き魔女」なり。そもそも「西の善き魔女」は乙女小説のため、ツンデレな男の子が出てくる。ツンデレ男子といえばシャオラン君を思い出すかもしれないが、相手はふんわりしちゃいない。本書では女の子もツンデレなのだ。♂「なんだよ!」、♀「ナニヨ!」、♂♀「ふーんだ!」の会話は、まさに"逆"キックオフ状態。特筆すべきは、女学園編。男子禁制乙女の園といえば、リリアン女学園、聖ミカエル学園、ガルデローベ学園が名高いが、本書のトーラス女学校も覚えておくべきだろう。ここでくりひろげられる乙女の陰謀の丁丁発止も面白いが、ツンデレ男子が女装潜入するトコは男も萌えるゾ。
きみとぼくの壊れた世界
【第5位】「きみとぼくの壊れた世界」はツンデレではなく「ヤンデレ」と呼ぶらしい
ヤンデレとは「病んだツンデレ」、即ち最初は優等生的なキャラが、惚れるあまりおかしな行動をとることを指す。うーむ...マナマナ? qあwせdrftgyふじこlp ...あぶないあぶない、あの記憶が蘇りそうになった。監禁調教までいかないにせよ、本書の妹キャラはスゴい。最初は萌えキャラで登場するので気を許してるうちに一転!鬼気迫るデレを見せつけられるハメに。「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」の場面でトリハダが立てるべし。
【第6位〜第7位】「ツンデレ=男女の駆け引きとしての冷淡な態度」説
ロマンスが語られるのならこの公式が成り立つ。最初は素っ気ないフリをしていたのは、実は想い心を隠すためでした、というやつ。男女というよりも、人と人との駆け引き。「白痴」では、自分を買うために準備してきた札束を暖炉に投げ込むところがスゴい。自尊心と低俗な現実との板ばさみでギリギリと悶え苦しむトコは圧巻なり。短編だが「真紅のカーテン」(悪魔のような女たち所収)も負けてはいない。「これはツンデレが書きたくて書きたくて、このお話を作ったんとちゃう?」と言いたくなるぐらいの冷淡ぶり。しかもデレる一瞬がスゴい。ぎゅーっと手を握ってくるんだけど、読んでるこっちの心臓がドキドキしてきたよ。手つなぎで。さらにオワリは突然やってくる。夜中に窓から放り出されるかのような終わり方。読後は「で?」と呟くだろうが、作者は強烈なツンデレが書けたのでオチなんてどうでもいいのかもしれない。
【第8位〜第10位】「ツンデレ=いじっぱり」説
戦略としてのツンデレではなく、無意識のうちにそういった態度を取る。わがままだとか、気位が高いとか、いじっぱりとも言われたり。「虞美人草」藤尾の場合「我意と虚栄をつらぬくためには全てを犠牲にして悔ゆることを知らぬ女」と評される。要するに素直じゃないんだ。それが物語の進行に伴い、自分の態度を振り返り→気持ちに気づく←この描写を書くか読み手の想像に任せるかは別として、劇中に転換点があるのが共通点。燃料が無いところで萌えるのは上級者なので、萌えを求めて手にしないように念を押しておく...実はもうひとつ、強烈な共通点があるのだが、激しくネタバレ→命がけのツンデレ。意地を張るのも命がけ。
未読リスト
・ゼロの使い魔(ヤマグチノボル)の、ルイズ
・アンの愛情(モンゴメリ)の、アン・シャーリー
・佳人(石川 淳)の、ユラ
・笑傲江湖(金庸)の、儀琳
・白鳥異伝(荻原規子)の、象子
・邪宗門(高橋和巳)の、行徳阿礼
赤毛のアンは3巻目でようやくツンデレが完成されるとのこと。少なくとも「ゼロの使い魔」は激しく期待しながら、「赤毛のアン」は全読を覚悟して、「佳人」は別の意味で楽しみにしながら、読むべ。
参考URL
・ライトノベル以外でツンデレ少女が出てくる小説を教えてください[参照]
・あなたのツンデレ小説ベストは何ですか?[参照]
・ツンデレ小説ベスト[参照]
2006年04月28日 書籍・雑誌 | 固定リンク
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コメント
藤尾はツンデレとは違うような気もします。
何というか、常に相手より上に立ちたい人というか。
そもそも、小野が相手だろうと一歩も引かないので
デレでもないし。
投稿: pnp | 2006年04月29日 19:57
>> pnp さん
女王のごとく振舞う藤尾はツンだけど、デレの具体的描写は記憶に無いけれど、それでも確かに惚れてたんだと勝手に思っています。そして、ラストで大切なものを破壊してしまった情動はそこからキたんじゃないかと。
投稿: Dain | 2006年05月01日 23:37
はじめまして。
邪宗門をツンデレ小説として捉えているという記事に反応をしてのカキコミです。
行徳阿礼はまさしくツンデレでした。
新興宗教の教主の長女で女王様キャラの阿礼が、
主人公に徐々に心を許していき、だけどどうしても素直になれない姿は、
Dainさんの分類でいうと「ツンデレ=いじっぱり」に属するものでした。
また、ツンデレ以外にも妹キャラや幼馴染が登場する萌え小説としても読めますので、
機会がありましたらどうぞです。
では突然失礼しました。
投稿: わいえす | 2006年06月22日 17:02
>> わいえす さん
どちらかというと、団塊世代の教科書(?)「邪宗門」をツンデレ小説ととらえることに抵抗があったのですが、賛同者がいらっしゃるようでひと安心。
> 主人公に徐々に心を許していき、だけどどうしても素直になれない姿
...この一行だけでも充分に惹かれます読みますええもちろん。
投稿: Dain | 2006年06月24日 00:01
初めまして。いつも本選びに使わせていただいています。
今更なのですが、ツンデレ小説で思い出したものがあったのでご紹介します。
・掌の中の小鳥 加納 朋子
ヒロインの紗英には最後の最後でやられました。
投稿: へそはち | 2007年07月23日 04:03
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