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裁量労働制の拡大が働き方改革法案から削除されることになり、日経新聞や財界は「これで生産性向上が遠のいた」等と言って嘆いている。
つまり日経新聞や財界は、労働基準法の労働時間に関する規制を緩和して裁量労働制等の拡大をすれば日本の労働生産性が上がると考えているわけである。
だが本当にそう言えるのだろうか。
労働生産性の定義を考えてみると、どうも逆ではないかと思えてくる。むしろ労働基準法の規制を強化することによってこそ、労働生産性が上がるのではないだろうか。
わかりやすく説明しよう。
まずここでは国レベルの1時間あたり労働生産性を考えてみる。
このブログでもこれまで触れたことがあるが、一般にはGDP÷総労働時間=1時間あたり労働生産性である。
さて、労働時間に関する規制を緩和どころか逆に強化して、例えば日本全体の労働時間を、平均で20%、強制的に削減したと仮定する。
これはよく言われるように「無駄を省いて残業を減らす」とか「効率化して時間を短縮する」とかいうのではなく(そういうのが出来ればもちろん良いが)、とにかく遮二無二、強制的に20%減らすのである。
もちろん日本の労働者1人1人の仕事の中身は違う。中には公共サービスなどで時短できない仕事もあるだろうから、ケースバイケースで考えるとして、とにかく全体で見て20%削減する。仕事に遅れや中断が出来ても構わないものとしよう。「成果はしっかり出して早く帰る」ではなく、とにかく「早く帰る」のである。
そうすると、どうなるか。
GDPは減少するかも知れない。具体的にどれくらい減少するだろうか。
細かい理論的検討など私にはできないが、戦後の日本の経済成長率を見ると、高度成長以降で最も落ち込んだのがリーマンショックの頃の2009年の▲さんかく5.4%である。
素人考えだが、日本トータルで労働時間を20%減らしたとしても、GDPの方はそのまま▲さんかく20%になるということは、流石になさそうに思える。
ここでは一応、GDPが▲さんかく15%になると仮定してみよう。
そうなると1時間あたり労働生産性は、分子のGDPが0.85倍、分母の総労働時間が0.8倍になるので、0.85%÷0.8=106.25%だから、6.25%増えることになる。
そう、労働基準法による労働時間規制を強化し、無理矢理に日本全体の労働時間を20%減らしたとして、その結果GDPが15%落ち込んだとすれば、1時間あたりの労働生産性は何と6.25%も"上昇"するのだ。
断言はできないが、規制緩和ではなく規制強化こそが労働生産性を向上させる可能性があるわけである。
(注:失業率がどうなるかは知りません。)
もっとも、ここで労働生産性が向上するというのは、計算上、当然の結果にすぎない。問題は、それで具体的に何がプラスになるのかということである。
投稿者 ほり 時刻 21時25分 経済・政治・国際 | 固定リンク | コメント (1) | トラックバック (0)
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