申込締切: 2024年(令和6年) 8月19日 (月)
詳細は各項目をクリックしてください。
核物理研究センターでのラジオアイソトープ製造の一例として,99Mo/99mTcのものを示します。
上図のような流れで,サイクロトロンを用いて99Mo/99mTcを生成し,実験で用います。
近年,放射性同位元素(RI)及び放射線を利用したがんの診断・治療技術は著しく発展しています。 Positron Emission Tomography (PET)装置の開発により5 mm程度の初期がんも発見できるほどになっています。 私たちはこのがん診断・治療のためのRI製造を目的とした基礎研究に取り組んでいます。
上図: I-124を用いたマウスのPET画像
上図: AVFサイクロトロン。 加速粒子とエネルギーは, 陽子の場合は5-80 MeV, 4Heの場合は3-130 MeV。
上図: RI生成装置(S実験室Kコース)。 多様なRIを生成するのに用いられる。
上図: RI生成装置(M実験室Fコース)。 主に核医学用RIを生成するのに用いられる。
上図: RI生成装置の構造(Fコース)
短寿命RIプラットフォームで供給するRIは上記手順を経てお届けしております。
(1) 67Cu製造には70Zn濃縮同位体酸化物(70ZnO)を用います。
※(注記)70Zn濃縮同位体とは,天然に存在する亜鉛の中に0.6%含まれる質量数70の亜鉛を濃縮した大変貴重なものです。
(2) 70ZnOは図のプレス機を使い加圧形成し,直径10 mmの70ZnO標的を作成します。
(3) 加圧形成した70ZnOを専用ホルダーに取り付け,ビーム照射を行います。
上図: 理研AVFサイクロトロン
上図: ビーム照射部
上図:ビーム照射部模式図
理研AVFサイクロトロンで生成した重陽子ビームを照射し, 70Znから67Cuを製造します。 ビーム照射の際には標的が発熱しますが, これを十分に冷却することが製造上重要となります。 理研ではビーム軸回転による発熱の分散, 冷却水と冷却ガスを併用した冷却を行っています。
(1) 樹脂とカラム (2) Agilent 7700 ICP-MS
上図: 精製67Cuのガンマ線スペクトル
67Cuの化学精製は異なる2種類の樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーにより行います。
上図: 梱包例
上図: 放射化学実験室内のGe半導体検出器(P型,N型)
ご要望の液性, 液量に調整の上, L型輸送物としてご送付致します (送付可能な最大放射能 70 MBq)。
使用施設の融通が難しい方や, RIの取扱いが不安な方は理化学研究所内施設の利用, 技術的な研究支援の提供が可能です。
CYRICには930型AVFサイクロトロンとHM12型サイクロトロンの2台のサイクロトロンがあり, それぞれ特徴があり, 異なる用途・工程でRI製造を行います。
上図 CYRIC 1F平面図
(マゼンタ: 930型AVFサイクロトロン,青: HM12型サイクロトロン,赤: ホットラボ)
930型AVFサイクロトロンの主な諸元を以下に示します。
このサイクロトロンは軽イオンから重イオンまで, 様々なイオンを加速する能力をもち, これまでに水素からキセノンまでのイオンを加速しています。
主に第一ターゲット室で行います。 HM12型サイクロトロンが稼動していても,930型サイクロトロンからのビームを第一ターゲット室に通してRI製造に利用できる自動ターゲット搬入・搬出装置(シャトル駆動システム)を利用します。
このシステムは, 第一ターゲット室とホットラボ室間にガイド板を敷設して, このガイド板上にターゲットを載せたシャトルが走ります。 ターゲットはホットラボ室のドラフト内でホルダーに装着し, シャトルに載せます。 ボタンを押すだけで, ターゲットを載せたシャトルは自動的にガイド板上を走ってビーム照射位置の上で回転アームに移り, 次にアームの回転・降下等の動作によりビーム照射位置まで運ばれて, シリンダーで圧着・固定されます。 照射後のターゲットの回収はこの逆の動作で自動的に行われます。 また, 大強度ビームによるRI製造のためのターゲット等の効率的な冷却やホイル破損時のターゲットの飛散防止対策など, さまざまな工夫が施され安全にRIの製造を行うことができます。
上図: ターゲットシャトル駆動システム
上図: ターゲット輸送システムコントロールパネル
上図: ターゲット輸送システム
上図: ターゲットホルダー
HM12型サイクロトロンは, PET用放射性薬剤の合成に用いられる小型サイクロトロンです。
加速可能なイオンは水素の負イオンならびに重水素の負イオンです。 C-11,O-15,F-18のポジトロン放出核種を生成可能です。 ポジトロン放出核種は,PET診断用薬剤に合成されます。
以下にHM12型サイクロトロンの主な諸元を示します。
PET用放射性薬剤は一般に使われる薬剤と同様, 厳しい品質管理のもとに製造されています。
薬剤合成はすべてクリーンルーム内で行われ, 分注, 毒性試験を経てPET室に運ばれます。
HM12サイクロトロンで製造されたポジトロン放出核種はチューブを通して迅速に輸送され, 遮蔽容器(ホットセル)に納められた自動合成装置により種々の有用な放射性薬剤へと化学合成(標識合成)されます。 ルーチンな医学診断利用を目的とするため, コンピュータ制御による完全な自動化で再現性の良い合成が行われています。
診断用注射薬として人に投与される放射性薬剤には, 多くの品質基準を満たすことが要求されます。 製造される薬剤は寿命が短いため, 迅速にそのpH, 純度, 無菌性等が検定され, これらの結果が基準を満たしてはじめてPET検査に供されます。
上図: クリーンルーム
上図: クリーンルーム内遮蔽フード(ホットセル)
上図: ホットセルの遮蔽扉を開けたところ。自動合成装置が設置されている。
上図: コンピュータ制御された自動合成装置によりほとんど被ばくすることなくRI製造が可能です。
上図: 製造されたPET薬剤の分注
目的RI製造に必要な加速器パラメータ, ターゲット量などを見積もります。 必要に応じて目的RIの反応断面積等の基礎データを予め取得します。
目的RIの製造に必要なターゲットを作成します。 天然同位体のターゲットは施設側で用意します。
予定されたマシンタイム当日に照射を行います (利用者はマシンタイムに参加する必要はありません)。
要望に応じて, 放射化学的手法によりRIを精製します。 目的RIがターゲット元素と異なる場合は, ほぼキャリアフリーにできます (初めて製造するRIは分離手法の開発に時間が必要です)。
作成した試料の一部を高純度Ge半導体検出器で測定し, RI量と放射性核種純度の概算値を求めます。
RIを梱包して利用予定場所まで輸送します。 通常は民間業者に委託して輸送しますが, 利用者が輸送することも可能です。 必要に応じて輸送容器を貸し出します。
非密RIを利用するためには, 利用施設において核種ごとの許可が必要です。 要望に応じて, 許可申請の相談や各加速器施設においてRI実験環境の提供も行いますので, ご相談ください。
量研・量医研でRI製造に利用している加速器は3台・ビームコースは5ポートあり, ビームコースC1,C2にてイメージング用途の短寿命RI(C-11,F-18等), ビームコースC4にて金属固形ターゲットに由来するRI(Cu-64,Zr-89等), 及びビームコースC9,C3にて非固形・低融点ターゲット等に由来するRIやアルファ線放出RI(Ge-68,I-124,At-211等)の製造が可能です。
本計画では, 大型サイクロトロンAVF-930で加速されるイオンを利用し, C4及びC9コースで製造可能なRIについて供給を行います。 AVF-930のビーム強度は, いずれのコースでも5-20 μA 程度(イオン種による)です。 製造量の目安としてご利用ください。
3台のサイクロトロン及びそれぞれが加速可能なイオン種とエネルギー
AVF-930 (Thomson CGR-MeV,1974年納入)
CYPRIS HM-18 (住友重機械工業,1994年納入)
BC 2010N (日本製鋼所,1999年納入 クリーンルーム内臨床専用機)
C4コース全景(奥から手前に向かってビームが供給される)
C4コース用ターゲット容器とNi-64電着ターゲット(Cu-64製造用)
照射後のターゲット一式は遠隔操作装置にて照射装置から取り外され, 搬送装置によって遠隔自動的にホットセル内部まで輸送されます。
C9コース全景(手前装置: 上から下に向かってビームが供給される)
ビームが鉛直下向きに供給される本コースでは, ターゲット物質を水平に保持することができるため, 非固形の物質(粉,顆粒など)や, 融点が低く変形しやすい物質など, ほとんど全てのターゲット候補物質を効率的に照射することができます。 また, セラミック製ターゲット容器を採用することにより, 腐食性の高い溶融金属の照射も可能となっています。
粉末ターゲットの秤量と照射
低融点物質の変化(Bi)
溶融金属の照射(Ga)
照射によって得られた粗製RIは, それぞれの RI が持つ化学的特性に応じた手法を採用することによりターゲット物質から分離され, 精製 RI として調製されます。 一例として, 金属ターゲットに由来するRIは, ターゲット物質を酸で溶解し, 目的とするRIをイオン交換樹脂などに吸着させた後, 以降の標識に利用しやすい溶媒で溶出します。 ハロゲンなどの高い揮発性を有する RI の場合, ターゲット物質を一定の気流下で加熱することにより, 気化したRIを溶媒中へ選択的に捕集する乾留法で単離しています。 供給するRIの溶媒種や濃縮した高い放射能濃度での供給など, 特別なご要望がありましたらご相談ください。
金属ターゲット溶解装置(Cu-64製造用)
乾留装置(At-211製造用)
分離精製装置(金属RI汎用分離装置)
グローブボックス設置型ホットセル(揮発性RI処理用)
量研・高崎研では, イオン照射研究施設(TIARA)の930型AVFサイクロトロンを利用してRIを製造しています。
サイクロトロンによって加速された各種イオンビームは, RI製造専用ビームコースへと輸送され, 末端の照射装置においてターゲットに入射されます(RIの生成)。
生成RIを含むターゲットは, 搬送装置により遮蔽セル内に遠隔的に運搬され, ターゲットからのRI分離や標識化合物合成へと供されます。
合成した化合物の生物学的評価については, 同じ施設内にin vivo,,in vitro実験が可能な設備, 植物研究に特化した各種イメージング装置を備えており, 生物実験が可能な施設となります。
金属ターゲットと照射ホルダー
照射の様子
RI分離の様子: ビスマス箔からの211At分離
放射能量測定: Ge半導体検出器
汚染検査: α・β・γサーベイメータ―
空気中放射能量: α線ダストモニター
本プラットフォームの利用によって得た研究成果を発表する場合には,本プラットフォームを利用した旨を表示してください。
Acknowledgment(謝辞)の記載例は以下のとおりです。