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トップ > 新着情報 > 令和6年度の新着情報 > 令和6年9月県議会知事説明要旨
ページID:117592更新日:2024年9月26日
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令和6年9月定例県議会の開会に当たり、提出いたしました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。
冒頭、パリオリンピック・パラリンピックについて、所感を申し上げたいと存じます。
「広く開かれた大会」をスローガンに開催されたパリオリンピックには、本県ゆかりの選手が出場し、その素晴らしい活躍は、多くの県民に感動と活力を与えてくれました。
見事、メダリストとなられた、レスリングの文田健一郎選手、柔道の舟久保遥香選手、卓球の平野美宇選手には、その栄誉を称え県民栄誉賞を贈呈いたしました。
また、パラリンピックについても、各競技で躍動する選手の姿を目の当たりにし、多くの方にとって、パラスポーツの素晴らしさや、多様性の価値を再認識する機会となりました。
私としても、最重要施策の一つである共生社会の実現に向けた取り組みを更に推進するべく、その思いを新たにしたところです。
改めて、各選手の更なる活躍を祈念するとともに、これに負けぬ本県の飛躍を心に誓う次第であります。
次に、富士山の登山規制の成果等について御報告いたします。
本年度から開始した登山規制及び通行料の徴収は、関係者の皆様の御尽力により、閉山まで円滑に実施することができました。
本年の富士山吉田ルートの登山者数は、12万5287人、昨年に比べ、18パーセントの減となり、特に、弾丸登山が疑われる夜間の登山者数は、708人、昨年に比べ、95パーセントの減となるなど、その抑制に極めて大きな効果があったものと考えております。
例年に比べ、夜間の山頂付近における混雑の発生も局所的で、弾丸登山者による登山道での仮眠といった迷惑行為もほとんど見られず、今回の規制で富士山の登山環境が大きく改善されました。
今シーズンが始まる前には、規制の効果自体を疑問視する声もありましたが、登山者や地元関係者にとどまらず、国内外から高い評価を頂いております。
その一方で、登山道の閉鎖時刻間際から登山を開始し、山小屋に宿泊せず山頂を目指す「駆け込み登山」や軽装登山などの課題も指摘されております。
こうした課題への対応も含め、先ずは、登山者へのアンケート調査の結果や、携帯電話の位置情報を利用した人流データに基づき、この夏の規制について定量的に検証し、必要な見直しを行って参ります。
加えて、富士北麓地域全体では、夏山シーズンに来訪者が集中しており、オーバーツーリズム解消に向けては、富士山観光の通年化による季節的な平準化が重要な鍵となります。
県では富士山登山鉄道構想において、通年観光の実現に向けた可能性を提案しているところですが、今月のはじめには、五合目の観光事業者の皆様からも、通年観光の推進についての御要望を頂いたところです。
その一方で、冬季観光については、地元関係者の一部から、安全性や信仰を理由に反対する声もありますが、こうした意見の相違については、積極的に対話の機会を設け、富士山登山鉄道構想に反対される方々とも真摯に向き合いながら議論を交わし、集合知の形成を図って参ります。
次に、補正予算案に計上した主な案件を中心に御説明いたします。
はじめに、県民生活強靱化に向けた取り組みについて申し述べます。
県政運営の基本目標である「県民一人ひとりが豊かさを実感できる山梨」を実現するための施策の柱の一つとして、外部環境の変動があっても、県民それぞれが豊かさを追求する歩みを妨げられないようにしていくための「ふるさと強靱化」を掲げているところです。
特に本年においては、元日に発生した能登半島地震を皮切りとした自然災害の脅威の一層の顕在化、賃金上昇を上回る物価高騰、そして、団塊の世代の全ての方々が後期高齢者になる2025年問題を目前に控え、「県民生活強靱化元年」として、これらへの対応を重点的に行うこととしているところであります。
このうち、先ず、県民の生命・安全に対する直接の脅威となる、自然災害への対応についてです。
先月8日、「南海トラフ地震臨時情報」が初めて発表され、国全体が緊張に包まれました。
これを受け、県では、直ちに庁内の防災体制や関係機関との連携体制を再点検し、取り急ぎ、職員の安否確認システムを導入するとともに、衛星携帯電話を増設するなど、連絡体制の強化を図っております。
また、外国人観光客の超広域避難に係る研究会を、本県の主導のもとに立ち上げることと致しました。
これは、外国人の安全・安心かつ円滑な帰国を実現するべく、支援を行うとともに、反射的な効果として、被災県が復旧復興に専念する状況をつくり出していくことを目的とするものです。
中央日本四県として深い交流を有する静岡県・長野県・新潟県に加え、観光庁や内閣府防災担当など国の関係省庁にも参画いただきながら、帰国支援等に関する課題について研究して参ります。
次に、子育て世帯に対する物価高騰対策についてです。
いかなる経済状況にあっても、子どもを安心して産み育てていくことができるよう、県全体でその環境を整備し、支援を充実させていくことは、人口減少危機対策の基本であると考えております。
今般、県として、市町村からの強い要請に応じ、各市町村が子育て世帯を対象とした物価高騰対策等を拡充できるよう、独自の支援を行うことと致しました。
具体的には、市町村に対する交付金を臨時的に創設し、県が推奨メニューを示しつつも、趣旨に沿えば、幅広い事業に充当可能と致します。
経済情勢に目を向けると、実質賃金が今月からプラスに転ずるとの予想もあるものの、逆に言えば、今が「底」とも言え、先行きは未だ不透明であります。
国においても、今月3日に、ガソリン、電気・ガス料金に係る補助等に1兆円程度を支出することが閣議決定されましたが、住民生活を支えるには、地域の実情に応じた施策の充実が不可欠であります。
県としても、引き続き、現実を直視しながら、市町村と連携して県民生活の強靱化に取り組んで参ります。
次に、ケアラー支援についてです。
前議会でも申し上げたように、2025年に、団塊の世代の全ての方々が後期高齢者となるため、介護を必要とする人の割合は、今後急速に大きくなると見込まれております。
一方で、家族介護の担い手は、人口増を前提とした時代に比べて、より少ない人数で、仕事と介護、場合によっては子育ても同時にこなしていかなければならない状況です。
こうした家族ケアの負担によって、介護離職が生じてしまうことがあってはなりません。
県民一人ひとりの活躍が阻害される社会とならないよう、県民の自由な選択を妨げる要因をできる限り取り除いていく必要があります。
そこで、県民誰もがケアラーとなり得るという前提に立ち、最終的には「介護離職ゼロ社会」を目指して参ります。
7月には、「ケアラー支援推進本部」を創設し、部局横断的に「介護離職ゼロ社会」の実現に向けた施策の推進を行う体制を構築いたしました。
また、先月20日には、県内民間事業者の皆様にも御参加いただき、「仕事と介護の両立」をテーマにビジネスケアラーセミナーを開催いたしました。
その講演の中では、ケアラーの多くが十分な知見を有していない状況にあり、信頼性の高い情報へのアクセス向上が課題に挙げられておりました。
これを踏まえ、県としても検討を重ねた結果、今般、各種支援制度や相談窓口など、支援情報を一元的に掲載したポータルサイトを新たに構築することと致しました。
最終的には生成AIを活用し、個々の状況に応じたきめ細やかな情報提供が実施できるよう実証を進めて参ります。
加えて、前議会でも申し上げたとおり、ケアラーの負担や課題把握に向けた本格的な実態調査を行うべく、所要の経費を計上しております。
実態調査の結果を踏まえ、エビデンスに基づいた的確な対策を確立し、効果的に推進して参ります。
次に、認知症予防についてです。
認知症は、本人にとっては、自立的な生活を困難にするだけでなく、自殺企図に結び付くことも少なくありません。
また、家族にとっても、介護が始まるきっかけとなり、認知症の進行に伴い、家族の負担が増加し、介護離職の要因にもなり得ることから、その予防は極めて重要であります。
このため、今般、最新の研究を行う東京大学等と連携し、上野原市をフィールドとした認知症予防の実証事業を行うことと致しました。
本県の地域資源を活用しつつ、ストレス管理と認知症予防の関係などについて検証し、認知症予防の新しい標準モデルを「やまなしモデル」として構築して参ります。
次に、在宅医療の体制強化についてです。
県民誰もが、身近な地域で、必要な医療・福祉サービスを受けることができる体制を整備し、維持していくことは、「ふるさと強靱化」の重要なテーマであります。
在宅医療については、入院することなく、自分らしい生活を送りながら治療を受けたいと希望する方がいる一方で、諸般の事情により、在宅で治療を受けざるを得ない方もいらっしゃいます。
いずれの場合であっても、在宅医療を受ける患者にとっては、24時間安心して医療を受けることができる環境の整備が必要であります。
現状、本県では、在宅医療に取り組む医療機関が少ないことに加え、各医療圏で連携した、効率的な体制が構築できていない状況にあります。
そこで、地域ごとに医療機関同士の連携体制を構築し、患者情報を共有しながら、県民が夜間・休日も含めて在宅医療を受けられる環境を整備して参ります。
次に、「ふるさと強靱化」の土台の上に、できる限り豊かな選択肢を県民生活に提供することを目指す「『開の国』づくり」に関する取り組みについて申し述べます。
はじめに、自然首都圏構想の推進についてです。
自然首都圏構想は、単なる富士五湖地域の地域創生ではなく、この地域が、グリーンエネルギーやアートといったテーマにおいて、日本の中心地となり、ひいては世界的な知の交流拠点となることを目指すものであります。
この構想を推進する富士五湖自然首都圏フォーラムにおいては、前議会において御議決いただいた補正予算により、各コンソーシアムのテーマに応じ、専門家から助言、提案を受ける体制を整備いたしました。
早速先月には、今後取り組むべき具体的なプロジェクトの提案を私が直接頂きました。
これを踏まえ、先ずは、「脱炭素社会の実現」と「多様化する地域課題への対応」という2つの社会課題に対応する先進的地域を目指す取り組みを実施することとしております。
「脱炭素社会の実現」に向けては、「富士グリーン水素コミュニティ」コンソーシアムにおいて、グリーン水素技術に関する社会実験を行うコミュニティの形成や、民間企業などとのネットワークを生かした実験プロジェクトを創出するための組織づくりに着手いたします。
次に、「多様化する地域課題への対応」に向けては、新たに立ち上げた「WISE GOVERNMENT」コンソーシアムにおいて、社会起業家などの多様な主体と連携し、地域の課題解決につながる新たな公的サービスを創出するべく、コミュニティの形成を図って参ります。
これらの取り組みの推進に当たっては、先ほど申し上げたとおり、世界的な知の交流拠点を目指すものであることから、世界各地域と密接につながり、国際的な集合知を形成していくプロセスが、必然的に付随して参ります。
この点、米国カリフォルニア州には、州内全域の水素利用の取り組みを主導する官民合同組織「ARCHES」(The Alliance for Renewable Clean Hydrogen Energy Systems)や、イノベーションと起業家精神を掛け合わせ、社会課題の解決を図る非営利団体「ラルタ研究所」など、本県の取り組みと相通ずる先進的な団体が集積しております。
そこで、私は、来る11月、同州を訪問し、これらの団体と連携協定の締結や意見交換を行うこととしており、フォーラムへの参画・協働を促して参ります。
同州の多様な組織とのつながりを形成することにより、富士五湖地域の新たな価値の創出を推進して参ります。
また、国際的な友好関係の構築は、他の地域との間においても着実に進展しております。
ベトナムについては、昨年9月に姉妹友好県省を締結したクアンビン省に加え、今月5日には、新たにイェンバイ省との間に国際交流・協力に関する覚書を締結いたしました。
これは、ヒエウ駐日大使の御尽力のもと、5月に同省の訪問団をお迎えし、その後、協議を重ね、環境・エネルギーや農業などの技術交流や人材・観光交流などを推進していくことに合意したものであり、今後は実質的な交流をより深めて参ります。
また、インドについては、世界最大の人口と豊かな天然資源を有しており、同国との交流は、本県の持続可能な発展に非常に有益であると考え、新たな関係構築を図ってきたところです。
1月には、駐日インド大使館で、本県産業や特産品をPRするイベント「山梨デイ」を開催いたしましたが、これを皮切りに、駐日インド大使館との関係は今まで以上に親密なものとなっております。
同大使館と協議を行う中で、具体的な連携先として、ウッタル・プラデーシュ州を御提案いただいたところです。
本年末には、同州を訪問し、新たな友好関係の構築に向け、州政府との会談や視察を行うこととしております。
同州の人口は、インド最大の約2.4億人で、豊富な労働力を有するとともに、多くの大学が立地し、優秀な人材が集まっております。
また、同州は、映画産業の振興にも力を入れており、世界最大規模を誇るそのマーケットとつながることができれば、ロケ誘致などを通じた、観光客の誘客促進も期待できます。
加えて、本県のP2Gシステムにも高い関心を示しており、同州との新たな互恵関係を構築することで、県内企業のマーケット拡大、観光客誘致、高度人材の交流など、両地域の持続的な発展につなげて参ります。
次に、県内各地域の高付加価値化に向けた取り組みについてです。
地域にヒト・モノ・カネを呼び込んでいくためには、地域が持つ独自の歴史や文化、景観などの潜在力を最大限顕在化させ、そして活用し、地域をより「上質な空間」に変えていく必要があります。
この観点から、先ず、峡南地域においては、道の駅富士川を地域の魅力や価値を体感できるショーウィンドウとし、この特別なフラッグシップ「道の駅」を拠点として、峡南各エリアへと向かう人の流れを生み出して参ります。
事前の調査を委託したビームスクリエイティブからは、「朝」をテーマに、都心部の日常では出会えない自然や歴史ある寺院、特色ある食材などを掛け合わせるブランディングについて提案を頂いているところです。
これを踏まえ、今般は、主に2つの取り組みを実施して参ります。
先ず、その拠点となる、道の駅富士川のリニューアルに向け、トライアル事業を通じて効果検証を行いながら、具体的な事業計画を策定することとしております。
2点目に、道の駅富士川を起点に、峡南地域全体に効果が波及するよう、特集記事の制作やメディアツアーの実施など、地域全体の情報発信の強化を行うとともに、その情報の受け手の反応を踏まえた地域資源のブラッシュアップにつなげて参ります。
次に、甲府地域については、武田の杜の価値向上に取り組んでおります。
武田の杜は、昇仙峡と湯村温泉の中間に位置し、近隣の観光資源との相乗効果を生み出すポテンシャルを秘めております。
また、将来的には北部環状道路によりアクセスも容易となります。
現在、地元関係者や有識者からなる検討会議を設置し、取り組みの方向性について鋭意議論を重ねておりますが、この議論を踏まえ、今後の整備に関する全体構想を策定して参ります。
このほか、北部観光の拠点となる小淵沢エリアについても、豊かな自然と魅力的な宿泊施設、多数のアクティビティを掛け合わせた上質なリゾート空間とするべく、検討委員会において活発に議論がなされており、これを踏まえながらビジョン策定に取り組んで参ります。
これらに加え、現在、リニア駅周辺についても周辺自治体と議論を進めており、今後、この件も含め、順次、対象を県内各地域に拡大していくことにより、県内全域にバラエティに富んだ「上質な空間」を拡げて参ります。
次に、YHC、やまなしハイドロジェンカンパニーへの増資についてです。
5月に、水素社会推進法が成立し、本県が先頭に立って国へ要望してきたグリーン水素と既存燃料との価格差を埋める支援制度が創設されました。
現在、YHCを中核とする4件のプロジェクトを対象に、共同でサプライチェーンの構築を目指すパートナー企業と連携し、国への申請に向けた詳細な事業計画の策定を進めております。
この支援制度の要件として、25年以上の長期にわたる事業遂行に必要な経営基盤が求められております。
国の採択を受けた場合に、この要件を充足させるため、共同出資者などとともに増資を行うことができるよう、県分として、最大30億円の債務負担行為を設定することと致します。
今後の事業規模の拡大も見据え、人的体制も含め、経営基盤の強化を図って参ります。
以上の内容をもって編成いたしました結果、一般会計の補正額は、22億円余、既定予算と合わせますと5361億円余となります。
次に、提出案件の内容につきまして御説明申し上げます。
県有地に関する民事調停の申立てについてです。
富士急行株式会社とは、同社と土地賃貸借契約を締結している6件の案件について、賃料を適正なものに見直すべく、これまで弁護士を通じて約1年にわたり協議を行って参りました。
しかし、山中湖畔県有地については、不動産鑑定評価基準に準拠した現況での評価を求める県に対し、同社は造成前の素地を基礎とするこれまでの評価が適正であると主張しております。
その他の土地についても、賃料改定を拒む正当な事由を説明するよう再三求めたのに対し、同社からは未だ回答がありません。
のみならず、商慣習として一般的に認められている転貸や建物の増改築等に係る承諾料の支払義務も完全に否定しております。
このように意見の隔たりは大きく、これまでのような任意での交渉により合意形成を図ることは、著しく困難となっていると言わざるを得ません。
県有地という県民全体の財産を預かり、適正に管理する責務を有する知事としては、そこから得られる賃料をできるだけ早期に適正化した上で県民に還元する使命があると考えております。
また、他の全ての賃借人との間で、賃料改定の合意が得られている中、同社のみ改定をしない状態を放置することは行政の公平性の観点からも許されず、これ以上協議を引き延ばすことはできません。
そのため、公平な第三者たる裁判所を介して交渉の加速化を図るべく、民事調停の申立てに係る議案を提出するとともに、それに要する手数料等に係る予算を計上いたしました。
今後は裁判所の手も借りながら、山中湖畔県有地をはじめとした6件の土地に係る賃貸借契約の適正化を図って参ります。
以上、今回の提出案件は、条例案2件、予算案4件、その他の案件9件となっております。
なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。
さて、繰り返しとはなりますが、今議会に上程いたします子育て世帯への支援、ケアラー支援、認知症予防、更に防災体制の強化に向けた取り組みは、いずれも現下の県民生活を取り巻く環境を踏まえ「県民生活強靱化」を具体化していくものにほかなりません。
そして、これらの施策は、全県における高付加価値化という流れの中で、県民一人ひとりの生活局面に上昇機運を創出していくために欠くことができない土台となるものです。
顧みますと、これまで山梨県においては、あらゆる局面において、常に次をにらんで今を動き、先をにらんで明日を動くことを旨として参りました。
コロナ禍ではそれを「事前主義」との掛け声のもと、県庁や議会の同志とともに歩んできました。
また「県有地」という県民全体の財産の取り扱いの適正化や、来るべき水素社会を見据えた米倉山での挑戦は、現在そして将来における山梨県全体を発展させる財政的基礎を提供するものであります。
更に現在、自然首都圏構想や富士山登山鉄道構想を含めた富士北麓地域の高付加価値化をはじめ、県内各地において取り組みを進めている地域の高付加価値化は、人口減少下においても山梨県と山梨県民が将来にわたって末長く生活の上昇機運を掴み取るためのものであります。
そして、県民一人ひとりがこれらの果実を確実に手にするべく、その生活の足元をしっかりと踏み固めるため、生活基盤強靱化に着手しているところです。
これら施策を進めていく上で、幾重にも心にとどめておかなければならないことは、「人があっての社会の営み」であり、県政施策の基本は「県民生活の現実」を出発点とするべきものでなければならない、ということであります。
生活に共鳴できる県政施策を、決して上滑ったものではなく、県民一人ひとりの「現実の生活」に着実に浸透させ、定着させ、そして豊かさと希望が積み上がる「きっかけ」となるようにしていかなければなりません。
他方において、この「現実」は、外部環境の変動とも相まって、変幻が絶えないものであることもまた「現実」であります。
新聞の言葉を借りれば「現実、実態は常に見通しを超えて発生してくるもの」ということこそ常態と心得るべきです。
それゆえに、施策展開に当たっては、常にこの「現実」に立脚し、「現実の変化」を踏まえたアップトゥーデートを重ねていかなければなりません。
言葉を換えれば、エビデンスのもとに施策を立案し、事後の検証により得た新たなエビデンスにより軌道修正や高度化に努めていかなければならないのです。
本県にあってはこれまでも、施策の起案や転換の節目にあっては、本県内外の知見を集め、調査や検証を多くのレベルで繰り返し、現場をみること、現状を知ること、現実を多角的に分析することを前提とし、起案や施策調整の踏みどころを固めて参りました。
私はそれらをこれまでも「集合知」と呼び、お示ししてきた次第です。
ケアラー対策も然り、更に、新たに着手いたします認知症予防につきましても、それゆえに、調査を踏まえたエビデンスを議論の前提として、集合知を形作るための土台として、しっかりと組み込んだ上での施政につなげて参りたいと考えております。
本県における県民生活を強靱なものとするために、変幻転移する県民生活の現実を出発点として施策を講じること、そして、その施策の効果を現実の県民生活に着実に届けていくために、常に現実に立ち返ること。
この倦むことなき反復こそが、県民一人ひとりが豊かさを実感できる山梨の実現につながる道であるものと信ずるところです。
そして最も大切なことは、そのプロセスにおいては、県議会議員の皆様との協働、更には県民の皆様との協働、すなわち集合知の「実践」があってはじめて前進は為し得るものであるということです。
今議会にお諮りいたします新たな事業案、予算案の数々は、まさに「集合知」の持ち寄りどころとなるものであり、ここに御議論をいただくことこそが「集合知の実践」の始まりの一歩であります。
集合知を生活力へ。
そのスタートを切る議会とすべく、御議論のほどをどうぞよろしくお願い申し上げます。
令和6年9月26日
山梨県知事 長崎 幸太郎