近年ヒトの腸内に生息する一部の細菌が肥満やうつ病などと深い関係にあることがわかってきています※(注記)1,※(注記)2。また、がんの治療薬として注目されている免疫チェックポイント阻害薬の薬効も腸内細菌と関連することが示唆されています※(注記)3。これらのことから、ヒトマイクロバイオーム解析を基にした新たな医薬品や食品等の創出が期待されています。
一方、ヒトマイクロバイオーム解析は、試料の採取・保存、DNA抽出、ライブラリー調製、シーケンス、データ解析と多くの工程からなり、各工程の手法や作業者の違いにより測定結果に偏りが生じてしまいます※(注記)4。そのため、得られたデータの信頼性や比較互換性が乏しいことが課題となっていました。
NBRCでは、ヒトマイクロバイオーム研究をサポートするために、国産初の「NBRCヒト常在微生物カクテル」を開発し、2022年1月13日より提供を開始しました。
リーフレットはこちら
※(注記)1:Ozato N. et al., npj Biofilms Microbiomes, 5:28 (2019)
※(注記)2:Valles-Colomer M. et al., Nat. Microbiol., 4:623–632 (2019)
※(注記)3:Routy B. et al., Science, 359:91-97 (2018)
※(注記)4:Tourlousse D. M. et al., Microbiome, 9:95 (2021)
NBRCヒト常在菌菌体カクテルは、ヒトの腸内、口腔、皮膚などに生息する18種類のNBRC株を純粋培養し、それぞれの細胞数が等量となるよう混合したものです。
DNA抽出効率が異なるグラム陽性/陰性菌を混合しているため、DNA抽出における試薬の検討や一連の実験工程を通したプロトコールの検証などにおすすめです。
NBRCヒト常在菌DNAカクテルは、ヒトの腸内、口腔、皮膚などに生息する20種類のNBRC株の純粋培養物からゲノムDNAを抽出し、それぞれのゲノムDNAのコピー数が等量となるよう混合したものです。
サイズやGC含量、分類群が異なるゲノムを混合しているため、シーケンスライブラリーの調製方法やデータ解析方法の検証などにおすすめです。
学名
|
NBRC
番号 |
グラム染色
|
ゲノム
サイズ(Mbp) |
GC含量(%)
|
16S
rRNA コピー数 |
バイオ
セーフティ レベル |
Anaerostipes caccae
|
陽性 | 3.3 | 44.5 | 4 | 1 | |
Bifidobacterium longum | 114370 | 陽性 | 2.6 | 60.1 | 5 | 1 |
Bifidobacterium longum subsp. longum | 114494 | 陽性 | 2.5 | 60.1 | 4 | 1 |
Blautia parvula | 113351T | 陽性 | 6.2 | 46.7 | 5 | 1* |
Collinsella aerofaciens | 114504 | 陽性 | 2.3 | 60.3 | 5 | 1* |
Enterocloster clostridioformis | 113352 | 陽性 | 5.7 | 48.9 | 5 | 1* |
Flavonifractor plautii | 113805 | 陽性 | 4.3 | 60.3 | 3 | 1 |
Lactobacillus delbrueckii | 3202 ※(注記)8 | 陽性 | 1.9 | 50.1 | 8 | 1 |
Mediterraneibacter gnavus | 114413 | 陽性 | 3.8 | 42.5 | 5 | 1 |
Akkermansia muciniphila | 114322 | 陰性 | 2.8 | 55.7 | 3 | 1 |
Bacteroides uniformis | 113350 | 陰性 | 5.0 | 46.2 | 4 | 1* |
Escherichia coli | 3301 | 陰性 | 4.8 | 50.8 | 7 | 1 |
Megamonas funiformis※(注記)9 | 114415 | 陰性 | 2.5 | 31.4 | 6 | 1 |
Megasphaera massiliensis※(注記)9 | 114414 | 陰性 | 2.6 | 50.6 | 7 | 1 |
Parabacteroides distasonis | 113806 | 陰性 | 5.2 | 45.0 | 7 | 1* |
Streptococcus mutans | 13955T | 陽性 | 2.0 | 36.9 | 5 | 1* |
Cutibacterium acnes subsp. acnes | 113869 | 陽性 | 2.6 | 60.0 | 3 | 1* |
Staphylococcus epidermidis | 113846 | 陽性 | 2.5 | 32.1 | 6 | 1* |
Bacillus subtilis | 13719T | 陽性 | 4.3 | 43.3 | 10 | 1 |
Pseudomonas putida | 14164T | 陰性 | 6.2 | 62.3 | 7 | 1* |
学名 | NBRC 番号 |
ゲノム情報 アクセッション番号 |
分離源
|
Anaerostipes caccae | 114412 | CP084016 | ヒトの糞便 |
Bifidobacterium longum | 114370 | CP084012, CP084013 | ヒトの糞便 |
Bifidobacterium longum subsp. longum | 114494 | CP084020, CP084021, CP084022 | ヒトの糞便 |
Blautia parvula | 113351T | CP084061 | ヒトの糞便 |
Collinsella aerofaciens | 114504 | CP084004, CP084005, CP084006 | ヒトの糞便 |
Enterocloster clostridioformis | 113352 | BJLB00000000 | ヒトの糞便 |
Flavonifractor plautii | 113805 | CP084007 | ヒトの糞便 |
Lactobacillus delbrueckii | 3202※(注記)8 | AP019750 | 不明 |
Mediterraneibacter gnavus | 114413 | CP084014, CP084015 | ヒトの糞便 |
Akkermansia muciniphila | 114322 | CP084201, CP084202 | ヒトの糞便 |
Bacteroides uniformis | 113350 | AP019724, AP019725, AP019726, AP019727, AP019728 | ヒトの糞便 |
Escherichia coli | 3301 | CP048439, CP048440 | ヒトの糞便 |
Megamonas funiformis※(注記)9 | 114415 | CP084018 | ヒトの糞便 |
Megasphaera massiliensis※(注記)9 | 114414 | CP084019 | ヒトの糞便 |
Parabacteroides distasonis | 113806 | AP019729 | ヒトの糞便 |
Streptococcus mutans | 13955T | AP019720 | う蝕歯 |
Cutibacterium acnes subsp. acnes | 113869 | CP084017 | ヒトの皮膚(鼻) |
Staphylococcus epidermidis | 113846 | CP084008, CP084009, CP084010, CP084011 | ヒトの皮膚(鼻) |
Bacillus subtilis | 13719T | AP019714, AP019715 | その他 |
Pseudomonas putida | 14164T | AP013070 | その他 |
製造したNBRCヒト常在微生物カクテルの品質確認は、JMBCから公開されているSOP※(注記)10に準じたDNA抽出・ライブラリー調製・ショットガンシーケンスにより実施し、一定の品質基準を満たすものであることを確認しています。
ショットガンシークエンスによる検証結果
※(注記)10:http://www.jmbc.life/news/images/SOPv1.2.pdf
NBRCヒト常在微生物カクテルは、試料からのDNA 抽出方法、アンプリコンシーケンス解析に用いるプライマーの選定やライブラリー調製試薬等の評価をはじめとしたプロトコールの確認、作業者間の手技の確認や新規作業者のトレーニングなどにお使い頂けます。
NBRCヒト常在菌菌体カクテルの適用範囲
【利用例】
●くろまる菌叢解析におけるコントロール
●くろまる試薬・キットの開発における疑似サンプル
●くろまる事業所・作業者ごとの精度管理用サンプル
●くろまるプロトコール(方法・試薬)の確認
●くろまるSOP(標準手順書)のバリデーション
●くろまる試薬・装置の開発
●くろまる模擬微生物叢
●くろまる作業者の教育訓練
現在、提供しているNBRCヒト常在微生物カクテルは以下の2種類です。
本カクテルは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「NEDO先導研究プログラム/新産業創出新技術先導研究プログラム/ヒトマイクロバイオームの産業利用に向けた、解析技術および革新的制御技術の開発」(2018年度〜2020年度)による支援を受け、国立研究開発法人産業技術総合研究所、一般社団法人日本マイクロバイオームコンソーシアム、および国立研究開発法人理化学研究所と共同で開発されました。
ヒト常在微生物カクテルを論文等で引用する場合は以下の論文を引用してください。
Tourlousse, D.M., Narita, K., Miura, T. et al. Characterization and demonstration of mock communities as control reagents for accurate human microbiome community measurements. Microbiology Spectrum, 10(2): e01915-21.
過去に提供していたデータシートは以下の通りです。
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