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生殖毒性
区分1B
危険
H360
P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501
【分類根拠】
実験動物データも本物質自体の生殖影響に関する情報は限られているが、本物質投与に関連した毒性影響は生体に吸収後のコバルトイオンに起因するものと考えられる。したがって、他の水溶性コバルト化合物の情報も本分類に利用することとした。ヒトへの影響については、(5)のように塩化コバルトの催奇形性は認められないと報告されている。(1)、(3)、(4)より水溶性コバルト化合物は雄に精巣毒性及び精子への有害影響を生じ、雌を受胎させる能力(授精能)を低下させる。(2)から、母動物に顕著な毒性がない用量でラット、マウスに胎児毒性及び催奇形性を生じる報告がある。以上、本物質を含む水溶性コバルト化合物では経口経路で雄生殖器官への有害影響や授精能の低下、並びに母動物毒性のない用量で催奇形性を示すことが報告されているため、本項は区分1Bとした。
【根拠データ】
(1)本物質をマウスに13週間吸入ばく露した試験では、3 mg/m3以上で精子の運動性低下、30 mg/m3で精巣及び精巣上体重量減少、異常精子の比率の増加が認められた(環境省リスク評価第11巻(2013)、NICNAS IMAP(Accessed Oct. 2018))。
(2)硫酸コバルト(II)(CAS:10124-43-3)を妊娠ラットに妊娠期間を通して強制経口投与した結果、母動物に軽微な影響(肝臓、副腎、脾臓の相対重量増加)がみられた100 mg/kg/dayよりも低い用量(25, 50 mg/kg/day)で、胎児の体重低値に加え、骨格・内臓の発達遅延、奇形(主に頭蓋、脊柱、腎盂、尿細管、卵巣、精巣に奇形)の増加がみられた。本物質50 mg/kg/dayを妊娠マウスの器官形成期(妊娠6〜15日)に強制経口投与した場合も、胎児に骨格の発育遅延、奇形(主に眼瞼、腎臓、頭蓋、脊椎)発生率の増加がみられた(環境省リスク評価第11巻(2013))。
(3)塩化コバルト(II)(CAS:7646-79-9)を雄マウスに12週間飲水投与後に無処置雌と交配させた結果、200 ppm(25 mg/kg/day)以上で吸収胚数及び生存胎児数減少、400 ppm(47 mg/kg/day)以上で妊娠雌数及び着床部位数の減少が認められた。雄には精巣・精巣上体等の重量減少、精巣及び精巣上体における精子数の減少、精子形成能の低下が認められており、妊娠雌数の減少は雄の授精能の低下に起因すると考えられている(環境省リスク評価第11巻(2013)、NICNAS IMAP(Accessed Oct. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2009))。
(4)塩化コバルト(II)を雄マウスに72 mg Co/kg/dayで10週間飲水投与後に無処置雌と交配させた結果、投与群では妊娠動物数の減少、1腹当たりの生存胎児数の減少、及び同着床前死亡の増加がみられた。以上の結果は、雄の精子濃度の減少による受精率の低下による影響と考えられた。飲水投与し交配後の雄を6週間休薬させた回復群では、精子濃度は回復しなかったが、精子の運動量及び運動速度は正常レベルまで回復した(厚労省初期リスク評価書(2009))。
【参考データ等】
(5)ヒトにおける催奇形性は認められないとの報告、また出産時に抗貧血剤として塩化コバルトを服用した女性から産まれた新生児に臨床学的な変化は認められなかったとの報告がある(厚労省初期リスク評価書(2009))。
(6)EU CLPではRepr. 1Bに分類されている。