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発がん性
区分1A
危険
H350
P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501
【分類根拠】
(1)及び(2)により、ヒトで発がん性の十分な証拠が認められたことから、区分1Aとした。
旧分類以降に公表された情報を用いて区分を変更した。
【根拠データ】
(1)印刷工場に1年以上勤務した作業者62人のうち、少なくとも11人が肝内・肝外胆管がんを発症し、うち6人が死亡した。本物質の推定ばく露濃度は100〜670 ppmばく露期間は7〜17年であった。うち、10人はジクロロメタンにもばく露されている(推定ばく露濃度:80〜540 ppm、ばく露期間:1〜13年)。また、他の事業場で胆管がんを発症した2例の報告、及び異なる3つの事業場で胆管がんを発症した計6例の報告において、多くが本物質以外にジクロロメタン、塩素系化合物にも共ばく露されているものの、全員が本物質に最も高濃度にばく露されていることから、胆管がん発症に本物質が重要な役割を果たしていると報告されている(産衛学会発がん分類暫定物質の提案理由(2014))
(2)IARCは日本の印刷工場での胆管がん発症例の報告を分析し、本物質はヒトで発がん性の十分な証拠があると結論した(IARC 110(2017))。
(3)国内外の分類機関による既存分類では、IARCがグループ1(IARC 110(2017))、EU CLPがCarc. 1B(EU CLP)、日本産業衛生学会が第1群(産衛学会許容濃度の提案理由(2017):2014年提案)に分類している。EUは、日本の(5)の厚労省委託試験結果は採用しているが、(1)の結果は限定的としている。また、ACGIHはA4に分類している(ACGIH(7th, 2014))が、(5)(1)ともに評価に含んでいない。
【参考データ等】
(4)ラット又はマウスに103週間強制経口投与した試験で、雄マウスの高用量(250 mg/kg)、及び雌マウスの低及び高用量(125, 250 mg/kg)群に肝細胞腺腫と肝細胞がんの合計頻度の有意な増加がみられている(NTP TR263(1986))。
(5)ラット、マウスに6時間/日、5日/週、104週間吸入ばく露した試験において、ラットでは500 ppmで雌雄ともに鼻腔扁平上皮乳頭腫の発生率増加、マウスでは200 ppm で、ハーダー腺の腺腫の発生率増加(雄)及び細気管支肺胞上皮腺腫と細気管支肺胞上皮がんの合計頻度の増加(雌)がみられた(厚労省委託がん原性試験結果(2005))。
(6)本物質は、労働基準法施行規則第35条(別表第1の2)に基づき、本物質にさらされる業務による胆管がんは業務上疾病の対象であり、また、労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき、厚生労働大臣が定める化学物質による労働者の健康障害を防止するための改正指針の対象物質である(平成24年10月10日付け健康障害を防止するための指針公示第23号)。