チャレンジ25ロゴ
国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第40号「VOCと地球環境−大気中揮発性有機化合物の実態解明を目指して」の刊行について(お知らせ)
(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付 )
独立行政法人国立環境研究所
企画部長 : 齊藤 眞 (029-850-2302)
環境情報部長 : 岸部 和美 (029-850-2340)
環境儀WGリーダー : 西川 雅高 (029-850-2495)
国立環境研究所の研究成果を分かりやすく伝える研究情報誌「環境儀」第40号「VOCと地球環境−大気中揮発性有機化合物の実態解明を目指して」が刊行されました。
大気中に存在する揮発性有機化合物(VOC)は、光化学オキシダント生成、エアロゾル生成、成層圏オゾン破壊、地球温暖化など、多くの環境問題に関与しています。その発生源は多岐にわたりますが、発生量としては自然起源のものが約9割を占め、陸上植物からはテルペン類などが、海洋からは硫黄化合物やヨウ素化合物などが放出されています。今後の気候変動によってこれらの発生量やその分布が大きくかき乱される可能性があり、そのことによって環境/気候に対してどのようなフィードバック効果が引き起こされるかが今、大きな関心を集めています。また、特定フロン類に替わって生産・使用されるようになった代替フロン類は、強力な温室効果気体として温暖化防止のための京都議定書などで規制されていますが、大気中での蓄積は現在も続いています。これらの排出実態を正しく効率的に把握して削減政策に役立てることも差し迫った課題となっています。
今号では、これら2つのテーマについて、大気中VOCの観測研究を長年続けてきた化学環境研究領域動態化学研究室の横内陽子室長が、これまでの成果を研究の背景及び動向とともに紹介しています。
1 第40号の内容
地球を取り巻く大気圏には、様々な揮発性有機化合物(VOC)が存在しています。自動車排ガス中の炭化水素や工業製品として作られたフロンなどが、都市の光化学オキシダントやオゾン層破壊などの問題を引き起こしてきたことはよく知られています。しかし、こうした人為起源VOCの他に自然界からもVOCが放出されており、例えば、地球上の植物が出すVOCの発生量が年間10億トンにも及ぶことなどは、あまり知られていません。植物起源のVOCは人為起源VOCとは違った成分ですが、やはり大気中の反応に関わったり、成層圏オゾンを壊したりしています。また、海洋から放出される硫黄を含むVOCは雲の素になるエアロゾルを作ります。それらの存在は私たち人間や現代の動植物には都合のよいものだったはずです。しかし、そのバランスは大気汚染や気候変動によって乱されるかもしれません。
国立環境研究所では、このような地球環境と深く関わっている自然起源VOCについて、人為起源VOCと同様に、その発生〜変質〜影響を解明するための研究を進めてきました。その中から、(1)植物起源VOC研究の黎明期にα-ピネン(テルペン類の一種)の反応生成物を特定し、森林エアロゾル中に大量に存在することを示した研究、(2)自然の成層圏オゾン破壊物質として知られる塩化メチルが、それまで信じられていた海洋起源ではなく、主に熱帯林から放出されることを明らかにした研究、(3)海洋から放出されるヨウ素や臭素を含むVOCのグローバルな分布や発生量を明らかにした研究について、その成果と意義を分かりやすいコラムや概略図を交えて解説しています。また、人為起源VOCについては強力な温室効果気体として問題になっている代替フロン等ハロカーボン類について、リモート地域における高感度・高精度・高頻度の多成分モニタリングを立ち上げて、各代替フロンの蓄積状況と東アジアにおける排出分布の解析に活用している例を紹介しています。
内容概要は次のとおりです。
(1) 研究担当者へのインタビュー
* 横内 陽子(よこうち ようこ)
化学環境研究領域 動態化学研究室長
(2) 研究成果のサマリー及び国内外の研究の動向の紹介
(3) 『自然起源VOCの観測研究』
(4) 『人為起原ハロカーボン類の観測研究』等
2 閲覧・入手についての問い合わせ先
- 「環境儀」は、研究所のホームページで閲覧することができます。
-
環境儀
- 冊子の入手については、下記へお問い合わせ下さい。
連絡先:国立環境研究所 環境情報部情報企画室出版普及係
(TEL: 029-850-2343、E-mail:pub@nies.go.jp)
関連新着情報
- 2024年10月18日更新情報福江島、中国ルドン、中国泰山における揮発性有機化合物の地上観測データに成分を追加して公開しました。
-
2023年3月28日報道発表大気中温室効果ガス計測の新展開
測定技術の進歩と観測研究の発展
国立環境研究所『環境儀』第87号の刊行について(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付) -
2022年12月27日報道発表ミニチュア大洋「日本海」が発する警告
海洋環境への地球温暖化の影響
国立環境研究所『環境儀』第86号の刊行について(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2022年6月30日報道発表大気汚染と気候の複合問題への挑戦
数値シミュレーションを用いた高解像度予測の最前線
国立環境研究所『環境儀』第85号の刊行について(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2022年3月31日報道発表ユスリカからのメッセージ
顕微鏡下で識別する環境情報
国立環境研究所『環境儀』第84号の刊行について(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2021年12月28日報道発表草原との共生を目指して
モンゴルにおける牧草地の脆弱性評価
国立環境研究所「環境儀」第83号の刊行について(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2021年9月30日報道発表人が去ったそのあとに
人口減少下における里山の生態系変化とその管理に関する研究
国立環境研究所「環境儀」第82号の刊行について(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付) - 2019年9月27日更新情報環境儀73号「アオコの実像-シアノバクテリアの遺伝子解析からわかること」の紹介動画を公開しました。
- 2019年6月27日更新情報環境儀72号「うみの見張り番-植物プランクトンを使った海洋開発現場の水質監視」の紹介動画を公開しました。
- 2019年4月4日更新情報環境儀71号「人口分布と環境-コンパクトなまちづくり」の紹介動画を公開しました。
- 2018年9月13日更新情報環境儀69号「宇宙と地上から温室効果ガスを捉える-太陽光による高精度観測への挑戦-」の紹介動画を公開しました。
- 2018年7月12日更新情報環境儀68号「スモッグの正体を追いかける—VOCからエアロゾルまで—」の紹介動画を公開しました。
-
2018年4月12日報道発表「スモッグの正体を追いかける-VOCからエアロゾルまで-」
国立環境研究所「環境儀」第68号の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付) - 2018年2月15日更新情報環境儀67号「遺伝子から植物のストレスにせまる─オゾンに対する植物の応答機構の解明─」の紹介動画を公開しました
-
2018年1月12日報道発表「遺伝子から植物のストレスにせまる─オゾンに対する植物の応答機構の解明」
国立環境研究所「環境儀」第67号の刊行について(お知らせ)
(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付) - 2017年11月16日更新情報環境儀66号「土壌は温暖化を加速するのか?ーアジアの森林土壌が握る膨大な炭素の将来」の紹介動画を公開しました
- 2017年11月1日更新情報環境展望台・環境GIS「光化学オキシダント」に2015年度のデータを追加しました
- 2017年8月25日更新情報環境儀65号「化学物質の正確なヒト健康への影響評価を目指して─新しい発達神経毒性試験法の開発」の紹介動画を公開しました
- 2017年8月1日更新情報環境GIS「大気汚染予測システム」をリニューアルしました
-
2017年4月7日報道発表大気中の粒子成長の鍵となるプロセスを解明(お知らせ)
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) - 2016年9月16日更新情報環境数値データベース「大気環境データ」に2014年度データを追加しました
-
2016年4月14日報道発表「災害からの復興が未来の環境創造につながるまちづくりを目指して
〜福島発の社会システムイノベーション〜」
国立環境研究所「環境儀」第60号の刊行について
(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2016年1月8日報道発表「未来に続く健康をまもるために
〜環境化学物質の継世代影響とエピジェネティクス〜」
国立環境研究所「環境儀」第59号の刊行について
(お知らせ)
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2015年11月11日報道発表ガソリン自動車から駐車時および給油時に蒸発してくる揮発性有機化合物を成分ごとにリアルタイムに分析
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2015年9月30日報道発表「被災地の環境再生をめざして
〜放射性物質による環境汚染からの回復研究〜」
国立環境研究所「環境儀」第58号の刊行について
(お知らせ)
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2015年8月19日更新情報環境数値データベース「大気環境データ」に
2013年度データを追加しました - 2015年4月30日報道発表光化学オキシダントでコメの収穫量が減る新たな要因を解明—イネの穂の枝分かれが関与—(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付)
- 2015年4月2日更新情報国立環境研究所研究報告「PM2.5と光化学オキシダントの実態解明と発生源寄与評価に関する研究」を掲載しました
- 2015年4月1日更新情報環境GIS「大気汚染予測システム」をリニューアルしました
-
2014年11月27日報道発表太陽紫外線による健康のためのビタミンD生成と皮膚への有害性評価
-国内5地点におけるビタミンD生成・紅斑紫外線量準リアルタイム情報の提供開始-(筑波研究学園都市記者会配付) - 2014年11月6日報道発表オゾン層破壊をもたらす大気中の塩化水素が北半球で近年増加-原因は短期的な大気循環の変動-
-
2014年7月4日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第53号
「サンゴ礁の過去・現在・未来〜環境変化との関わりから保全へ〜」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2014年5月9日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第52号
「アオコの有毒物質を探る〜構造解析と分析法の開発〜」
の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2014年2月14日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第51号
「旅客機を使って大気を測る-国際線で世界をカバー」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2013年11月8日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第50号
「環境多媒体モデル-大気・水・土壌をめぐる有害化学物質の可視化-」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) - 2013年10月23日更新情報オンラインマガジン環環の10月号が公開されました
-
2013年7月19日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第49号
「東日本大震災-環境研究者はいかに取り組むか-」
の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) - 2013年5月10日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第48号 「環境スペシメンバンキング」の刊行について (お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付)
-
2013年2月8日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第47号
「化学物質の形から毒性を予測する−計算化学によるアプローチ」の刊行について
(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) - 2012年11月8日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第46号「ナノ粒子・ナノマテリアルの生体への影響−分子サイズにまで小さくなった超微小粒子と生体との反応」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、 _環境省記者クラブ同時配付)
- 2012年8月9日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第45号「干潟の生き物のはたらきを探る−浅海域の環境変動が生物に及ぼす影響」の刊行について(お知らせ)
- 2012年5月15日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第44号「試験管内生命で環境汚染を視る−環境毒性の in vitro バイオアッセイ」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付 )
- 2012年4月17日報道発表国立環境研究所特別研究成果報告書の公表について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時発表 )
- 2012年2月7日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第43号 「藻類の系統保存−微細藻類と絶滅が危惧される藻類」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付 )
- 2012年1月31日更新情報環境リスクインフォメーションワールド「Meiのひろば」に[トピックス解説・インタビュー]-"VOCsの発達期曝露による脳での炎症関連反応の修飾"ページ追加
- 2011年11月8日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第42号 「環境研究 for Asia/in Asia/with Asia−持続可能なアジアに向けて」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付 )
- 2011年10月3日報道発表2011年春季北極上空で観測史上最大のオゾンが破壊 —北極上空のオゾン破壊が観測史上初めて南極オゾンホールに匹敵する規模に—(筑波研究学園都市記者会配付)
- 2011年8月12日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第41号 「宇宙から地球の息吹を探る−炭素循環の解明を目指して」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付 )
-
2011年4月6日報道発表北極圏上空で史上最大のオゾン破壊が進行中
—ヨーロッパやロシアの一部が影響下に—(筑波研究学園都市記者会配付 )
関連研究報告書
- 表紙 2015年3月31日PM2.5と光化学オキシダントの実態解明と発生源寄与評価に関する研究国立環境研究所研究報告 R-210-2014
-
表紙
2012年9月30日二次生成有機エアロゾルの環境動態と毒性に関する研究(特別研究)
平成21〜23年度国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-101-2012 -
表紙
2011年12月28日九州北部地域における光化学越境大気汚染の実態解明のための前駆体観測とモデル解析(特別研究)
平成20〜22年度国立環境研究所特別研究報告 SR-95-2011 - 表紙 2010年3月31日光化学オキシダントと粒子状物質等の汚染特性解明に関する研究国立環境研究所研究報告 R-203-2010
-
表紙
2009年12月25日都市大気環境中における微小粒子・二次生成物質の影響評価と予測(特別研究)
平成18〜20年度国立環境研究所特別研究報告 SR-91-2009 - 2007年3月30日日本における光化学オキシダント等の挙動解明に関する研究国立環境研究所研究報告 R-195-2007
- 表紙 2006年12月29日ILAS-II プロジェクト最終報告書国立環境研究所研究報告 R-194-2006