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学習指導要領「生きる力」

中教審委員メッセージ

無藤 隆(白梅学園大学)

無藤 隆

専門は、発達心理学・教育心理学。
聖心女子大学、お茶の水女子大学などを経て、現在、白梅学園大学教授。
主な著書に、「現場と学問のふれあうところ」(新曜社)などがある。

学習指導要領の改訂のたびに、極論が出てきて、子どもや学校の自由をひたすら大きくせよとか、逆に、教師がすべて指示し教えてこそ教育だと対立が生まれています。確かにその両面が教育にはあり、実践の場での折り合いの付け方こそが優れた教師の特徴なのでしょう。大切なことはその両方ともが大事だと認識し、教育課程に双方をきちんと位置づけ、関係づけることです。
今回、そのことを「習得、活用、探究」のバランスを取ることとして明記し、それぞれを主に受け持つ授業の時間を明確なものとして置くようにしました。その具体的なあり方は今後、各現場での工夫が期待されるわけですが、同時に、解説書や教科書また各種の支援により、確かな学力を現実のものにすることが国や自治体の行政に求められることでもあります。教員養成校もまたその支援に加わることが必要だと思います。私などもその一端に加われればと願っています。

安彦 忠彦(早稲田大学)

安彦 忠彦

専門は、カリキュラム学・教育課程論(主に中等)を中心に、教育方法、教育評価。
大阪大学、愛知教育大学、名古屋大学を経て、現在、早稲田大学教育学部教授(特任)、名古屋大学名誉教授。
主な著書に「教育課程編成論」(放送大学教育振興会)などがある。

新学習指導要領は、国の「最低基準」を示したものであることを従来以上に明確にした。各学校で教育課程を編成する場合は、内容、水準、時数など、すべての面で自校の実情に合わせて、必要ならばこの基準以上のものにすることができるのである。「現場主義」という学校での創意工夫に委ねた方向を、ぜひ生かしていただきたい。
また、今回の改訂では、義務教育において、個々人の個性に応じる教育や丁寧な教育への配慮の観点だけではなく、共通教育の発想を重視する方向にある。この点は、義務教育であっても個性を伸ばす教育は各国で行われているので、各学校では共通性と個性の伸長とのバランスをどう図るのか、これまでの実践を踏まえた御意見を是非お寄せいただきたい。また、個性の伸長を重視することによって、教育への国の財政補助を一層求める理由とすることもできる。ぜひ、そのためにも実践の事実を積み上げてほしい。

角田 元良(聖徳大学)

角田 元良

東京都教育委員会指導主事、東京都千代田区立麹町小学校長、聖徳大学附属小学校長などを経て、現在、聖徳大学人文学部教授。2003年から2年間、全国連合小学校長会長を務める。

長く真摯な審議の末に、やっと「審議のまとめ」にたどり着けたというのが実感です。
私は、小学校での40年間にわたる教職経験を元に、今の子どもたちに何が必要か、将来の日本を支えリードする人間となるためには何をどうすればよいか、現場の視点で考え、参画し、発言して参りました。この「審議まとめ」では、現行学習指導要領の理念である、「生きる力」を正しく共有するということが大きな課題となっています。
しかし、今回の「生きる力」は深化している、と私は思っています。深化は進化でもあります。と言うのは、今回の審議まとめでは、「生きる力」を子どもに身に付けさせるには、どんな能力をどのように付けるか、その方策が明らかになってきているからです。OECDなどの国際的な研究成果からも、習得した知識を活用して主要な能力(キー・コンピテンシー)である思考力・判断力・表現力を身に付け探究させることが「生きる力」の育成につながる、と理論的に裏付けられました。活用する力は、体験に基づいた言葉や非言語で表出されます。このような表現力・コミュニケーション能力は、国語科を中核としながらも、全ての教科で養うべき能力であることが明示されました。
これから実践していく中で、多くの課題が出てくるとは思いますが、その道筋が明かになってきたことに、現場人の感覚として、「生きる力」は深化した、と思うわけです。
この深化した「生きる力」の理念は、教師・保護者・全ての人々に共有されなければなりません。そのことが、日本の教育を考え直し、「子どものためによりよい教育環境を作る」ということを、全国民が共有することになるのだと思います。
今回の「審議のまとめ」で、もう一つ注目すべき点は、条件整備をきちんと求めている点です。このことは、教師が子どもと向き合う時間を確保し、どの子にも、きめ細かな指導をするための必要条件であり、「生きる力の共有」を担保するものでもあります。
国と、設置者である地方自治体の首長や人事権を持つ教育委員会等は、これを重く受け止め反映するとともに、税金を納めている我々国民も、その成り行きを厳しく監視し、その結果を検証していかなければいけないと思っています。
未来からの使者である子どもたちを健やかに育てることは、現在を生きる我々大人の重大な責務なのだと、今改めて強く思っているところです。

土井 真一(京都大学)

土井 真一

専門は、憲法学。
京都大学法学部助手、助教授を経て、現在、京都大学大学院法学研究科教授。
法務省法教育研究会において、「はじめての法教育」(ぎょうせい)などの取りまとめに関わった。

人を育てるということは、とても難しい。ものづくりであれば、設計通りに、いかに正確にそして無駄なく作るかが重要なのであろう。しかし、教育はそうはいかない。教育を受けた者が教育を行った者を超えていく教育、それが真の意味で優れた教育なのだから。
とりわけ「知識基盤型社会」においては、そのことが鮮明になる。課題を見いだし解決する力、新しい知識、情報、技術を生み出していく力。これらの力は、こどもたちだけではなく、われわれ大人にも要求されている。「知識基盤型社会」を迎えて、まず変わらなければならないのは、われわれ大人なのである。
新しい時代の要請に応えるべく「生きる力」の教育を目指す限り、試行錯誤は避けられないであろう。なぜなら、そもそも「生きる力」自体が、試行錯誤しながら、何かを生み出していく力に他ならないからである。それゆえ試行錯誤を混乱と切り捨ててはならない。もはや、既存の知識等を効率的に次世代に伝達するだけではすまされないのである。
その意味で、「生きる力」の教育において問われているのは、こどもたちの能力だけではない。むしろ、教育する者の力量が、そしてそれを支えるわれわれの社会の底力が、こどもたちの目を通して問われることになるのである。それだけに、「生きる力」の教育がいかに大変なことであっても、それを引き受けることが、大切なこどもたちにために、われわれがなす覚悟を示すことになるのである。
「生きる力」。このことばの重みを、しっかりと受け止めたい。

宇佐美 聰(三菱電機株式会社)

三菱電機株式会社副社長を経て、現在、同社顧問。
社団法人日本経済団体連合会において教育問題に携わり、現在、日本経団連教育問題委員会企画部会長。

日本経団連の教育関連の委員会に携わったことで、2年半ほど前から教育課程部会のメンバーとして審議に参加致しております。企業の教育担当の経験は有るものの、日本の将来を担う少年少女の教育というのは未知の分野であり、その使命の重要性に緊張感をもって議論に加えさせて頂きました。
現状の教育課程は、質・量ともに改善の必要性があるとの認識のもと、日本経団連では教育に関するいくつかの提言をさせて頂いておりますが、その基本は実社会に出るにあたって「志と心」「知力」「行動力」という3つの力を身につけていただきたいということです。
このような観点からすると、今回のまとめは、今後の初等中等教育についてバランスよく検討され提言されたのではないかと思います。勿論、現場の効率化やその支援、校長をはじめとする管理職の役割の明確化ならびに育成、現場とそれを支援する教育委員会等の役割分担、小中一貫校・中高一貫校の方向付けなど、今後に残された課題もあるかと思いますが、教育課程の改善に向けての第一歩を踏み出したと言えると思います。
今後とも教育界、産業界、地域などが連携を深め、社会総がかりで教育課程の改善の一翼を担いたいものです。
最後に、新しい指導要領のもと、現場で奮闘されている先生や関係者の方々が、真に必要な教育活動に一致団結して、その力を存分に発揮されることを願ってやみません。

黒須 隆一(八王子市長)

八王子市議会議員、東京都議会議員を経て、平成12年より現職。
平成16年4月、内閣府より構造改革特別区域の認定を受け、全国初の不登校児童・生徒専門の小・中一貫校「高尾山学園」を開校。
都議時代から「教育の黒須」として、教育改革に対して深い関心を寄せる。

次代の日本を支える子供たちのための教育の枠組みと内容が、精力的で建設的な審議の末「審議のまとめ」として示されました。私は、市長という選挙で選出された唯一の委員として、国民の目線で様々な観点から意見を直裁に述べさせていただきました。
今回の「審議のまとめ」においては、すべての教育活動における言語活動の重視や道徳教育の一層の充実と改善、中学校保健体育科の「武道」の必修化が示され、日本の子供たちが、日本の風土、歴史に即したふさわしい教育を受けることができる枠組みと内容が示されたことは大変評価できると考えております。また一方、学習指導要領改訂に向けての主な改善事項に、言語活動の重視が示されておりますが、中学校国語をいかに充実させるかは、学習指導要領告示までにさらに検討が必要であろうと考えます。
どんなにすばらしい枠組みと内容ができても、それに魂を入れる学校の教育が改善、充実しなければ意味がありません。今後は、まもなく告示される学習指導要領の趣旨、ねらいの各学校への丁寧な周知をはじめ、新しい教育内容の円滑な実施に向けて、管理職を含めたの教員研修の一層の充実が喫緊の課題となってくるでしょう。

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課

-- 登録:平成21年以前 --

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