パーキンソン病の記憶障害への前脳基底部と海馬の関与―パーキンソン病の認知機能障害の病態解明の鍵―

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パーキンソン病において、アセチルコリンという神経伝達物質を放出する神経細胞が多く存在する前脳基底部の変性が、認知機能低下で重要な役割を果たすことが知られています。しかし、前脳基底部がそれ以外の脳領域とどのように相互作用して認知機能低下を引き起こすのかは不明でした。

この度、酒巻春日 医学研究科博士課程学生(現:京都近衛リハビリテーション病院医師)、髙橋良輔 同特定教授、澤本伸克 同教授らの研究グループは、認知機能テストや頭部磁気共鳴画像法(MRI)構造画像を用いて、前脳基底部の灰白質容積減少と関連する認知機能障害や脳変性領域を調べました。その結果、パーキンソン病患者において、前脳基底部の灰白質容積減少と言語性記憶障害が関連すること、前脳基底部の灰白質容積減少と内側側頭葉領域の灰白質容積減少が相関すること、内側側頭葉領域の中でも海馬の灰白質容積減少が前脳基底部の灰白質容積減少と言語性記憶障害の相関を媒介していることが示されました。本研究は、パーキンソン病の認知機能低下において、前脳基底部がそれ以外の脳領域と相互作用しており、病態を考える上で多角的な視点を必要とすることを示唆しており、今後のパーキンソン病の認知症研究に役立つと考えられます。

本研究成果は、2024年9月9日に、国際学術誌「Parkinsonism and Related Disorders」にオンライン掲載されました。

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研究イメージ図:進行期パーキンソン病において、前脳基底部と言語性記憶の関連を海馬が媒介する
研究者のコメント
「パーキンソン病自体が本当に多様な経過を辿る疾患です。一人一人の病状、病態把握の為にも、常に広い視野を持ちながら、研究や診療を行って行くことが重要だと考えております。本研究も、様々な領域が相互作用しながら認知機能低下を引き起こしていることを示すことが出来、多角的な視点を示すことの一助になれれば幸いです。」(酒巻春日)
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