日本エレクトロヒートセンター

技術文献

学会誌・専門誌 等
月刊「省エネルギー」[発行:一般財団法人省エネルギーセンター](2021年7月号)

連載 現場で役立つ省エネの基礎

・産業用電気加熱 遠赤外加熱の省エネ

技術委員会 遠赤外線加熱技術部会長 樫本 尊久 氏

【機関誌「エレクトロヒート」記事】

機関誌のご案内

渡 邉 規 寛(わたなべ のりひろ)一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター 企画部 部長
要約 カーボンニュートラルの切り札とされている電化。しなしながら産業分野の電化に向けたプロセ スは、長く険しい山登りとなっているのが実情。そこで改めて産業電化とカーボンニュートラルとの関 係性・役割、産業電化における課題整理(昨年度の調査結果)、更なる取り組みなどについて紹介し、工 業炉(熱処理含む)における、電化普及の一助として活用頂けるよう、本特集を企画しました。
清 水 耕 平(しみず こうへい) 株式会社富士経済 エネルギーシステム事業部 課長
八 浪 佑 亮(やつなみ ゆうすけ)株式会社富士経済 エネルギーシステム事業部 AD
要約 カーボンニュートラルに向けた工業炉の電化について、電化事例および、関係者ヒアリングによ る工業炉種別の現状と電化の方向性を整理した。電化事例調査では、鋳造向けの誘導溶解炉やアルミ溶 解炉の保持炉や溶解保持炉、表面熱処理炉の真空浸炭炉や光輝焼鈍誘導加熱の電化事例が主に公表され ていた。関係者ヒアリングを元にした電化の方向性では、鉄鋼溶解炉、アルミ溶解炉、鉄鋼加熱炉、一 般熱処理炉、表面熱処理炉を対象に調査し、アルミ溶解炉、アルミ熱処理炉、浸炭炉にて電化の進展が 有望視されるとの結論を得た。また水素転換の可能性について、コストおよび品質の課題が明確となった。
加 納 利 行 (かのう としゆき)  富士電機株式会社
高 橋 良 治 (たかはし りょうじ)一般社団法人日本工業炉協会
加 藤 健 次 (かとう けんじ)  一般社団法人日本工業炉協会
要約 工業炉は、鉄鋼、自動車、電気、電子、窯業、化学 工業等の多くの産業分野において、各種の原材料を加 熱、熱処理するために必須な設備である 1)。わが国の 工業炉の消費エネルギーは、国内全体の約 15%を占 めており、2050 年のカーボンニュートラル社会構築 を目指す上で、工業炉の取り組みは極めて重要である。本報では、工業炉のカーボンニュート ラルに向けた電化のポテンシャル及び今後の課題につ いて述べる
山 口 剛 (やまぐち たけし)三建産業株式会社 営業本部 本社営業部 部長
要約 工業炉が消費するエネルギーは、日本全体のエネルギー消費量の 15%に相当し、その温室効果ガ ス排出量は、日本全体の 12%を占めていると見積られている。三建産業株式会社は、2022 年度中期経 営計画に「競争力ある脱炭素工業炉メーカーになる」という柱を掲げ、2030 年までに当社の工業炉か ら排出される二酸化炭素を 50%削減するという目標とし、工業炉のエネルギー削減・電化推進・燃料転 換・老朽化更新に積極的に取り組んでいる。当社が設計、製造した抵抗加熱式工業炉には、台車移動式、 炉体移動式、回転炉床式などがあり、主に素形材の加熱および熱処理に使用されている。本稿では、当 社が現在まで納入してきた抵抗加熱式工業炉の概要、採用実績など紹介する。
倉 田 征 治 (くらた せいじ)メトロ電気工業株式会社 技術開発課 課長
要約 経済産業省では工業炉のカーボンニュートラル化推進のため、アンモニアや水素による燃焼や、 電磁誘導などを活用した電化を推進している。しかしながら赤外線加熱活用は検討されていない。クリー ンで、取り扱いも容易、高効率、低温温度帯では活用されている赤外線加熱技術が検討されていない理 由は、現行電化できていない工業炉はより高エネルギーが必要であり、従来の赤外線加熱技術では出力 が不足していたためである。また電気を使って発熱し、そこからの熱放射を利用する赤外線加熱技術は、 たとえ実現できても効率が悪いとも考えられていたことも理由にあげられる。しかしながら、昨今の赤 外線技術はより高出力となっており、また放射加熱を工夫することによって高効率化させ、省エネ性も 実現させることが出来る。本研究では、あらたな赤外線技術によって従来加熱できなかった温度領域に ついて試験し、そこから得られた知見を概説する。

倉 田 征 治 (くらた  せいじ)

メトロ電気工業株式会社 技術本部 第一技術課 課長

森 本 敦 士 (もりもと あつし)

メトロ電気工業株式会社 特販課 副課長

要約 自動車の外装部品(バンパー、オーバーフェンダー、ロッカモール)は塗装前工程として成形後 の糸バリをガスバーナで除去するバリ処理工程が必須である。しかしながらガスバーナを充てる時間が 短ければ糸バリが残り、また、焼き過ぎると製品に含まれるゴム成分が蒸発し、いずれも塗装不良の原 因となる。この工程は手作業のため品質は熟練度に左右されるだけでなく、火災リスクなどの課題があ る。これらの解決の他、カーボンニュートラル実現に電化が切望されていた。電化における条件として、 糸バリを短時間で蒸発させる能力と、塗装品質に影響を及ぼさないことが必須である。本稿では熱源の 開発経緯の紹介と、課題解決及び様々な付帯効果を実現したシステムについて概説する。
EH_No.236 (特集: 第15回エレクトロヒートシンポジウム)

塚林 幸作

株式会社 小松電業所 代表取締役 社長

要約 本取り組みは、建設機械部品の粉体塗装後の「焼付乾燥工程」において、従来の熱風乾燥方式に 新たに「赤外線加熱」を追加した「ハイブリッド方式」とすることで、大きな省エネと生産性の向上を 実現した事例である。国内では、どんな形状でも昇温・温度キープが可能な「熱風乾燥炉」が標準的に 採用されており、どの塗料メーカも熱風仕様での乾燥条件を推奨している。しかし、熱風は製品の昇温 に多くの時間を要するため、必然的に炉長が長くなりガスの消費が多くなることが課題だった。そこで、 当社では“塗装乾燥=熱風乾燥”といった半世紀以上にもわたる既成概念を払拭し、また、塗料メーカ の推奨する乾燥条件に捉われることなく、乾燥時間の短縮による省エネと品質保証の両立を実現した。 さらに設備導入後には、運用改善を通じた省エネ等も追求した。その結果、生産性が向上するとともに エネルギー消費を従来の単一熱風乾燥方式よりも 58%(426 kl/ 年)の削減に成功した。

赤 司 登

日本ルツボ株式会社 築炉事業部 課長

要約 自動車部品などの鋳造工程ではアルミダイカスト法がよく用いられるが、溶かしたアルミニウム 合金は金型に注入される際に空気などを巻き込むことがあり成形時にそのまま空気などが残ってしまう と、製品の内部に空洞(ブローホール)が発生し、強度低下等の不良が出ることがある。その空洞がど のくらい含まれているか確認する為の装置として、著書は赤外線加熱を熱源とし急速加熱で短時間かつ 省エネの検査が可能である「ブローホールチェッカー BC-1」について開発した。以下にてこれを紹介 する。

奥 山 岑 長

株式会社エスジー 代表取締役

塗装ラインの計画に当っての要求項目は次のような 項目が多い。

1コンパクト化 2省エネ 3生産性向上 4省力化、自動化 5ランニングコストの低減

6環境改善 等

であるが、その中でも乾燥は今迄重要性が見落と されがちであった上記項目内容を満たしていくために は、乾燥炉がポイントであることが理解されてきている。

倉 田 征 治

メトロ電気工業株式会社 技術本部 第一技術課 課長

吉 原 寛 美

メトロ電気工業株式会社 技術本部 第二技術課 課長

水性塗料は一般的に水と塗膜を形成させるための樹脂と顔料からできており、水性塗料の場合は 有機溶剤が水の代わりとなり、水や溶剤を蒸発させることにより塗膜が乾燥硬化していく。塗料メーカー によって水や溶剤を混ぜる希釈率の割合が異なるため、塗料の条件に合わせて乾燥条件を調整すること が重要になる。溶剤塗料の場合は有機溶剤が蒸発しやすいため、塗膜の表面に作用しやすい熱風乾燥は 適している。それに対して水性塗料の場合、有機溶剤に比べて水が蒸発しにくいため、内部から乾燥す ることが乾燥時間の短縮には大きく影響する。また、季節や天候、湿度などによって乾燥条件が変わる ことも考慮する必要があるため、熱風加熱では使用条件に合わせて調整するには限界がある。赤外線加 熱の場合は熱風と異なり塗膜の表面から赤外線の光が吸収されて塗膜内の分子振動による摩擦熱で加熱 されるため、塗膜の内部から乾燥することができ、乾燥時間の短縮効果が高い。本稿ではこの赤外線放 射に特化したランプヒータについて、熱風との比較、赤外線加熱の原理、諸法則、ならびに各種ヒータ の紹介と実際の採用事例について概説する。

ヘレウス株式会社 ノーブルライト事業部 IP ソリューション

乾燥全般での赤外線の役割から話を始めたい。赤外 線ヒーターは乾燥に必要な熱エネルギーを対象物に与 えるのが役割である。この熱を伝える「伝熱」あるい は「加熱」と呼ばれている種類の比較から考えてみる。 加熱原理には、大きく分けて直接加熱と間接加熱があ る。「直接加熱」は対象物に電気などのエネルギーを 与える事により直接加熱する方法で、金属を対象とし た抵抗加熱・誘導加熱であるが、乾燥プロセスでの使 用は極めて稀であろう。一般的には「間接加熱」が多 く利用される。「間接加熱」とは対象物とは違うとこ ろで作った熱エネルギーを対象物へと移動させる方法 である。熱が高温側から低温側へ移動するという現象 を利用したもので、その移動方法には「伝導」「対流」 「輻射」がある。この 3 種類の違いを理解することは 有益である。

坂 口 勝 俊

一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター 業務部 課長

(株)小松電業所本社工場では、屋外で使用される建機部品に耐候性および防錆機能を付与するため、 粉体塗装を行っている。同塗装の乾燥工程では、従来、熱風炉を採用していた。しかし、熱風炉は乾燥 効率が悪いことから、52 m 程度と長い炉長を確保する必要があった。加えて、乾燥ラインの形状が山形 のため、コンベアーにアップダウンが発生し、ワークの落下リスクや駆動モータ類のトラブル増加に悩 まされていた。さらに、完全な山形炉ではないため、熱流出によるエネルギー損失、さらには外部から の異物付着等の課題もあった。限られた工場内で塗装ラインを更新するには、炉長の短縮および直線化 が必要であったことから、熱風循環に加え、エネルギー密度が大幅に優れる「赤外加熱」を新たに導入。 炉長の短縮や直線化、品質向上に加え、大幅なエネルギー効率向上を実現した。

EH_No.222 (連載講座:調理加熱 第4回目)

渋川 祥子

横浜国立大学名誉教授

料理作りの技術は昔から伝承されているものが多いのだが、それぞれの操作には「なぜ」そのような操作をするのか、それなりの理由がある。この“なぜ”を解決するために「調理科学」という学問分野がある。調理の中で加熱は重要な操作であるにもかかわらず、設定温度を同じにしても厨房機種によって、でき上がりが違うことから、筆者は食品への熱の伝わり方(伝熱)・加熱調理の研究を始めるきっかけとなった。しかしながら、これまでに得られた食材の加熱についての知見は、必ずしも一般の方々には知られていない。そこで、食材の加熱に関する様々なテーマについて解説していく。

日本料理の焼きもの料理(ウナギのかば焼き、サンマの塩焼きなど)では、昔から炭火が使われていて、いまだにおいしい焼き物は炭火焼に限るという板前さんたちが多い。おいしい焼き物を提供するお店の看板にも、加工食品の名前にもイメージアップとして「炭火焼き」という言葉が使われる。

EH_No.221 (連載講座:調理加熱 第3回目)

渋川 祥子

横浜国立大学名誉教授

料理作りの技術は昔から伝承されているものが多いのだが、それぞれの操作には「なぜ」そのような操作をするのか、それなりの理由がある。この“なぜ”を解決するために「調理科学」という学問分野がある。調理の中で加熱は重要な操作であるにもかかわらず、設定温度を同じにしても厨房機種によって、でき上がりが違うことから、筆者は食品への熱の伝わり方(伝熱)・加熱調理の研究を始めるきっかけとなった。しかしながら、これまでに得られた食材の加熱についての知見は、必ずしも一般の方々には知られていない。そこで、食材の加熱に関する様々なテーマについて解説していく。

1980 年代の半ばに、遠赤外線が食品の中まで浸透して食品の加熱に非常に有効であるとの話が持ち上がった。石焼き芋がおいしいのは、石から放射される遠赤外線が食品の中まで浸透して食品の味を良くするとか、早く加熱されるという話がマスコミでも報じられるようになって、遠赤外線を放射するといういろいろな加熱調理グッズが作られた。

EH_No.216 (特集:工場空調)

河村 和彦

中部電力株式会社

エネルギー応用研究所 研究副主査

吉原 寛美

メトロ電気工業株式会社

本社 技術部 第二技術課 課長

天井が高く広いスペースが必要な組立工場や設備が大型で天井が高い金属加工工場では、効率的な空調システムの設置が事実上困難であり、しかも面積比で作業員が少人数の場合が多い。やむを得ず電気、石油、スチームなどを熱源とした据え置き形の暖房器が使われているが、安全性や作業性に対する課題も多い。そこで我々は、上層の広い空間を利用した天吊り式暖房器を開発した。赤外線を一定方向に集光することで、スポット的で効率の良い暖房とするため反射板を工夫し、より高効率で安全性と省エネ性に優れた赤外線ランプヒータ式工場用暖房器を紹介する。
EH_No.214 (特集:乾燥工程のエレクトロヒート技術)

倉田 征治

メトロ電気工業株式会社

技術部 第一技術課 課長

様々な分野における乾燥工程において、生産性向上達成のため急速乾燥や品質向上が求められている。高速乾燥には『高効率』であることが絶対条件である。すなわち加熱ロスの発生とは、イニシャル、ランニングコストの加算ばかりか、外部に放出された熱エネルギーは作業環境温度の上昇や熱ダメージによる設備の劣化原因となる。乾燥の高速かつ高品質を実現するには、赤外線の熱流伝達が効果的であり、塗料などの色毎の吸収波長の違いによる加熱ムラも、ヒータからの放射波長の工夫によって対応可能となるケースも多い。本稿ではこの赤外線放射に特化したランプヒータについて、熱風との比較、赤外線加熱の原理、諸法則、ならびに各種ヒータの紹介と実際の採用事例について概説する。
EH_No.212 生産工程革新「アクアテック塗装」(第11回EHシンポジウム)

篠田 雅史

マツダ株式会社

技術本部 車両技術部 塗装技術グループマネージャー

アクアテック塗装は、相反する揮発性有機化合物(VOC)排出量とCO2 排出量の同時削減を実現し、世界トップレベルの環境性能と優れた経済性を両立した工程革新技術である。工程革新の柱は塗膜機能集約と高効率塗装技術である。塗膜機能集約では、積層塗膜の光学特性や物理特性を解析することで、VOC 含有量の多いベース塗料の水性化にとどまらず、各層の機能分担を見直した塗膜設計と高機能塗料を開発した。高効率塗装技術では、エネルギー/資源効率から求められる工程の機能を追求し、水の蒸発や熱伝達の原理に基づいた省エネルギーブース空調や高効率フラッシュオフ工程等の開発・導入により超短縮/省資源化を実現した。また、アクアテック塗装の塗膜設計技術と工程技術を高意匠カラーにも応用し、塗膜積層数を増やすこと無く量産化を実現した。アクアテック塗装は、お客様への提供価値と地球にやさしいものづくりを両立させた革新技術であり、自動車塗装に限らず塗装業界全体へ広く普及する事を期待している。
EH_No.208(特集:赤外線加熱技術)〜一部抜粋〜

中野 幸夫

関東学院大学 理工学部 理工学科 電気学系 教授

一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター 特別会員

赤外加熱は赤外放射(赤外線)による熱伝達を主体にした加熱方式である。赤外放射は電磁波の 一波長領域における総称であり、多くの物質に吸収されやすい。赤外放射を吸収した物質は、物質自身 が発熱し、結果として加熱される。赤外加熱では、伝導加熱や対流加熱のように外部から物質に直接的 に熱エネルギーが与えられるわけではない。与えられるのはあくまでも赤外放射という電磁波のエネル ギーである。本稿ではこの赤外加熱について、原理、赤外放射に関する諸法則、使用されている赤外放射体、 ならびに応用事例について概説している。また、いくつかの最新のトピックスについても触れている。

千葉 智滋

株式会社富士経済 東京マーケティング本部

清水 耕平

株式会社富士経済 東京マーケティング本部

赤外線加熱は遠赤外線・近赤外線に大別され、短時間・高品質を必要とするプロセスにおいて、 主に熱風加熱代替として導入されている。本稿では、赤外線加熱業界の調査結果を元に、赤外線加熱業 界の業界構造・主要な用途と今後注目される用途について報告する。業界構造として、ヒーターメーカー・ 装置メーカーに大別することが可能であり、導入用途による棲み分けやヒーターメーカー毎の得意領域 等も見られる。また、フレキシブルデバイスや炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)向け等の先端産 業向けの導入拡大が期待される。

千葉 貴史

坂口電熱株式会社

技術部 MKT 製・商品開発課 課長

レーザ加熱は、非接触でピンポイントにレーザ照射して、被加熱物だけを直接加熱するので、昇 温スピードと省エネに優れた加熱方法である。弊社は、レーザ加熱の特性を応用し、2インチサイズに 拡大したレーザ光を1ショット照射して被加熱物を均一に加熱し、細かく温度制御することが可能なレー ザ平面瞬間加熱装置ExLASERTMを開発した。そして、主にシリコンウェハのような平面状の材料を、レー ザ加熱で高温かつ急速に昇降温する用途開発を行ってきた。本稿では、ExLASERTM によるシリコンウェ ハへのレーザ加熱の実施事例と、ミニマルファブ(極小規模の半導体製造工場)においてアニール工程 を担うミニマルレーザ加熱炉の開発経緯を紹介する。

青井 一将

株式会社ノリタケカンパニーリミテド

エンジニアリング事業部 ヒートテクノ部

機能性フィルムには、光学特性、導電性、ガスバリア性、耐熱性など様々な機能を有したフィル ムが存在し、エレクトロニクス、エネルギー、自動車、包装、メディカル等の多方面において商品の高 付加価値化に重要な役割を果たしている。今後もより一層製品の高機能化が望まれていく一方で、機能 性フィルムの生産性の向上は重要なテーマである。当社は機能性フィルムの熱処理プロセスに注目し、 各種ロールto ロール(以下、R to R)式遠赤外線加熱装置を開発した。その結果、従来の熱風加熱方 式と比較して処理時間の大幅短縮(2/3〜1/2)が可能となり生産性の向上に大きく貢献した。また、フィ ルムの熱処理プロセスで度々問題となる外観上の諸問題(皺、カール、傷、伸縮等)の解決にも取り組み、 これらを解消する独自の搬送技術を確立した。今回は、それらR to R式遠赤外線加熱装置の適応事例 を紹介する。

倉田 征治

メトロ電気工業株式会社 技術部 第一技術課 課長

吉原 寛美

メトロ電気工業株式会社 技術部 第二技術課 課長

自動車産業の低圧鋳造工程での金型予熱はガスバーナによる燃焼加熱方式が一般的である。これ を安全性や温度管理のし易い電気加熱方式で可能とした。熱源にはIHなどと比べ安価で設計自由度の高 いジュール熱を利用したカーボンヒータを選定し、フィラメントや配置の改善で高出力、高効率のヒー タ管を開発、加熱器の構造なども工夫し電熱では無理とされていた480°Cの温度上昇と加熱時間短縮を 実現した。さらに、均一加熱の効果で金型メンテナンスの低減や歩留向上など多くの効果が実証された。
EH_N0.204(特集:ホットスタンピング技術)

森 謙一郎

豊橋技術科学大学 機械工学系 教授

ホットスタンピングは自動車用骨格部材に用いる超高強度鋼部材を生産する加工法である。焼入 れ鋼板を高温炉でオーステナイト温度である900°C程度に加熱し、プレス成形を行って金型の下死点で 10秒程度保持して急冷する。金型保持によって成形品が焼入れされて、1500 MPa程度の超高強度鋼部 材が生産される。自動車の軽量化と衝突安全性向上のために、高強度部材が必要になってきており、ホッ トスタンピングの適用が世界的に急増している。鋼板の加熱にはローラー移送式加熱炉が一般的に用い られているが、赤外線加熱、通電加熱が適用されつつある。本稿では、超高強度鋼部材のホットスタン ピングに関して解説を行う。

青木 康浩

株式会社ワイエイシイデンコー 生産技術部

当社の技術コアの一つである遠赤外線による熱処理技術は、高精度かつ高効率として様々な業界で用いられ、高い評価を得てきた。ホットスタンピングにおいても同様で、海外メーカを中心に先行する横型搬送加熱炉に対し、省設置スペース・省エネルギー性能に優れる当社の多段式枚葉搬送遠赤外線 加熱炉は業界で注目されている。本稿では、遠赤外線加熱の基礎、加熱方式や装置形態の違いによる課 題及び当社の加熱装置について紹介する。
EH_No.200(特集:エレクトロヒートの未来を展望する)

中 野 幸 夫

関東学院大学 理工学部 理工学科電気学系 教授
一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター 特別会員

EH_188(特集:最新の電気加熱技術)

菅野 雄太

岩崎電気株式会社

光応用営業部 セミコン・オプトデバイス営業課

工業用加熱方式としてハロゲンランプが利用されており、今後においてもその特徴を生かし幅広い分野において活用されると思われる。今回、赤外線の概要及び赤外線加熱の原理、ハロゲンランプの特徴・技術とその応用例について紹介する。
EH_No.175(特集:電気加熱特集II)

木村 嘉孝

木村技術事務所
所長

遠赤外加熱には普通の加熱方法では見られないような優れた効果がありながら、その根拠がきちんと説明されていないまま、誤った解釈が流布し、それが一層学識者の反論を招いて、未だに完全な信頼を勝ち得ていないのは、真に残念なことである。これら識者の反論には、実はこれまた誤解に基づくものが少なくないのである。本論では、これらの誤った解釈とその背景を詳しく考察し、正しい解釈とその根拠を提言したい。あわせて実際のいろいろな応用面ごとに、その効果を可能にした遠赤外加熱の特徴や理由を明らかにしようと思う。

樫本 尊久

テーピ熱学株式会社
技術課 課長

各種製造ラインには、多くの加熱・乾燥工程が存在し、ワークの搬送方法もさまざまであり、また加熱・乾燥工程に使用される熱源・手法も加熱条件にあったものが使用され、その数は計り知れない。その中でも遠赤外線ヒータを利用した加熱・乾燥方法は、従来の方法からの転換により、効果が顕著に顕れることに特筆すべきものがあり、今後もこの遠赤外線ヒータを利用した加熱・乾燥方法が見直されていくことを期待するものである。弊社が納入した設備においても、各種の加熱・乾燥工程での改善に役立ち、評価を得ている。今回は、その中から印刷・塗装乾燥工程への設備導入事例および特徴・効果について紹介する。

瀧本 浩之

ダイキン工業株式会社
堺製作所金岡工場
空調生産本部商品開発グループ

人を暖めるための暖房器具には空気の対流によって部屋全体を暖める対流形、ふく射熱により暖めるふく射形と発熱体に直接触る伝導形がある。今回紹介させていただく遠赤外線暖房機セラムヒートは、ふく射形の暖房器具に分類されるものである。ふく射形の暖房器具は、ふく射熱で直接対象物を暖めるため、部屋全体を暖めるのには適さないが、部屋で働く人だけを暖めたい場合などに効率よく暖房が可能である。セラムヒートはこの特徴を生かし、大空間や半開放の工場などで働く作業者のみを暖められる、衝撃に強く、どこでも手軽に使えるコンパクトさと離れたところからでも暖めることができるふく射性能を備えた暖房機として開発された。

長 伸朗

中部電力株式会社
技術開発本部 エネルギー応用研究所
都市・産業技術グループ 研究副主査

過熱蒸気とは、沸点(大気圧下では100°C)より高い温度の乾いた水蒸気である。高速・均一な加熱が可能なことから、熱風に替わる新たな加熱媒体として近年注目を集めており、200〜400°Cの過熱蒸気は食品調理や機械部品の洗浄等に活用されている。今回、350°Cの過熱蒸気を発生できる電気式の過熱蒸気発生器を開発した。ハロゲンランプの採用により、従来より高効率・低コストで、高精度の温度制御性能および高い設置性を実現した。ここでは、開発したハロゲンランプ式高効率過熱蒸気発生器の概要を、適用例をまじえて紹介する。

米川 英樹

株式会社ノリタケカンパニーリミテド
エンジニアリング事業部 ヒートテクノ部

「リチウムイオン電池」は、1990年から携帯電話やパソコン等に使用されている二次電池である。近年では自動車用の二次電池として注目を浴びている。ハイブリッド車や電気自動車用途では生産性・品質がより重要視されるため、高性能で効率の良い量産設備が必須である。当社は、電極を製造する工程の一部となる塗工乾燥プロセスに注目し、熱媒式(防爆型)遠赤外線ヒーターを組み込んだ高効率乾燥炉を開発した。その結果、従来の熱風乾燥方式に比べて乾燥処理時間を大幅に短縮(2/3〜1/2に短縮)することに成功し、処理速度(ラインスピード)を1.5〜2倍にすることができた。また、遠赤外線加熱の効果が塗工膜乾燥後の仕上がりに寄与し、品質向上にもつながった。今回はその具体的な技術の概要を紹介する。

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