中東・中央アジア
下表のヒジュラ(イスラーム)暦の開始日(西暦での対応日)は、暦の上での基準となる予定日を示したもので、実際の日とは1日または2日程度ずれることがあるので注意されたい。本対照表は世界で多く用いられているヒジュラ暦に依拠して作成したものである。ほとんどのイスラーム諸国では公式の暦としては西暦を用いており、そこではヒジュラ暦は宗教関係の年間行事や休日・祝日を決める用途などに用いられている。
ヒジュラ暦の説明と本換算表を用いる上での注意点
イスラーム諸国ではヒジュラ暦に基づき休日・祝日が決められていることが多い。祝日の内容は宗派により少々異なるが、巡礼月のイード・アルアドハー(犠牲祭)と断食月明けのイード・アルフィトルは共通する2大祝日となっており、それぞれ3日前後休暇となる。
休日は、昼に集団礼拝が行われる日である金曜日を官庁・学校などの休日とし、木・金曜日を休日とする国が多いが、土曜日や日曜日を休日とする国もある。ヒジュラ暦は月の運行に基づき定められる太陰暦で、各月は29日または30日で構成され、1年は354日または355日で構成される。閏年との組み合わせなどで、ヒジュラ暦新年1日は、西暦では毎年10日から12日ほど早くなる。11日早くなることが最も多い。
ヒジュラ暦の1日は日没時から始まる。例えば、7月16日がラジャブ月1日だとすると、ラジャブ月1日は厳密には前日、西暦15日の日没時に始まる。現代では、ヒジュラ暦と西暦の1日は重なるものとして扱われており、前述のラジャブ月1日は西暦の16日となり、ヒジュラ暦の金曜の夜とは西暦では木曜ではなく金曜の夜を指す。
ヒジュラ暦はA.H.と略称される。イスラーム暦とも呼ばれる。西暦とヒジュラ暦の双方の日付を記している各国の新聞の日付では、2007年のラジャブ月1日は、サウジアラビア、エジプト、ヨルダン、シリアなどでは西暦の7月15日で、イランやマレーシアでは16日、パキスタンとバングラディシュでは17日と記載されている。国ごとに暦や日付は異なり、全ての国が一斉に同じ日付を用いているわけではない点に注意されたい。
世界では、コンピューター・ソフトでの自動計算形式のものを含めいくつかの種類のヒジュラ暦があるが、それらに記された日付は、暦ごとに1、2日異なることがある。実際の開始日は、ラマダーン月の開始日などは、委員会を作り聖職者などが月の状態を目で見て決めることが多く、気象や視覚の問題もあり判断が異なることがある。また、実際に目で月の状態を見ることを優先する、あるいは、暦上の予定日を優先する、のどちらを採用するかで差が生じることもある。
このため、結果としての実際の日付は、国ごとに、あるいは1国の国内でも宗派やグループまたは地域により日が異なることがある。1つの国の中で宗派・グループや地域により日付が異なる例を、次に、いくつか挙げる。イラク戦争後のイラクではスンニー派とシーア派で断食月の開始日などが異なることが多い。イラクのシーア派の日付はイランと合致している。
また、バングラデシュでは、過去の例では 2000年のイード・アルフィトルは12月28日に始まったが、同国内では26日、27日に始めたグループや地域もあった。インドネシアでは、断食月の開始日などがイスラームの団体ナフダトゥル・ウラマとムハマディヤで異なることがある。欧米のムスリム・コミュニティでは、イードの開始日などを出身の国・グループに合わせることがあり、コミュニティごとに開始日が異なることがある。
以上の例のように、実際の日付は、早いケースと遅いケースでは1日または2日程度の差があるのが普通である。その相違は、暦の上での予定日が国ごとに異なっていることと、実際の開始日は月を目で見て決めることが多いこと、の二重の要因の影響を受けて生じている。その背景には、暦の計算に用いる天文・地理的基準の相違と、イスラーム暦についての考え方の相違があり、また、宗派的、社会的、政治的要因の影響も認められる。
サウジアラビア政府は国家の公式暦としてウンム・アルクラー暦(メッカ暦。ヒジュラ暦の一種)を採用している。参考までに、ウンム・アルクラー暦を次に付す。
ヒジュラ暦の各月の名称
ヒジュラ暦の主要行事