小川フミオのモーターカー

日本の道路に合うコンパクトさと優れたデザイン ヒョンデのBEV「インスター」

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2025年05月26日

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円形のシグネチャーライトがキュートな印象 写真:ヒョンデモビリティジャパン

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ヒョンデの「インスター」が日本で2025年3月に発売された。全長3.8m、全幅1.6mのコンパクトさを売りものにしたBEV(バッテリー駆動EV)。本国で「キャスパー・エレクトリック」の名で登場したときから、私は気になっていたクルマだ。

サイズ感を生かしたデザイン、伸びやかな走り

なぜ気になっていたかというと、まさにこのコンパクトさ。そしてサイズ感をうまく生かしたデザイン。キャスパーって名前は韓国のみの登録だそうだけれど、ちっちゃな時、白黒テレビで「出てこいキャスパー」(1959年から61年にかけての米国製アニメ)を熱心に見ていた私には、かなり響くネーミングなのだ。

日本の道路に合うコンパクトさと優れたデザイン ヒョンデのBEV「インスター」
Bピラーの太さが個性を生んでいる 写真:ヒョンデモビリティジャパン

でもそれはともかく、日本名インスターを名乗るこのクルマ、導入したヒョンデモビリティジャパンでは、日本の道路事情にぴったり合うサイズ、としている。話を聞いた担当者は「日本の道路の規格は、いわゆる5ナンバー車が乗用車の大部分を占めていた1970年代以前をもとに決まったものなので、インスターはたいへん乗りやすいはず」とする。

日本の道路とコンパクトなクルマの相性のよさは、軽自動車に乗ると楽ちんとかんじることでも証明されている。車幅を気にすることなく、すいすいと走れる。そこがインスターのセリングポイントのひとつ。

日本の道路に合うコンパクトさと優れたデザイン ヒョンデのBEV「インスター」
デジタライゼーションが進んでいるが、色づかいや造形は雰囲気がよい 写真:ヒョンデモビリティジャパン

インスターは、モーターを1基フロントに搭載した前輪駆動。今回乗った「ラウンジ」という最上級グレードでも、最高出力は85kW、最大トルクは147Nmとだいぶおとなしめ。ちなみに、メルセデス・マイバッハEQS680なんか、やっぱりBEVで、最大トルクが955Nmもある。

インスターは、しかし、数値で想像するより、よく走る。市街地も高速道路も走ってみたが、非力だなあと思ったことはなかった。加速もいいし、高速での速度の伸びもなかなか。ふだん使いで不都合はないと断言できる。

日本の道路に合うコンパクトさと優れたデザイン ヒョンデのBEV「インスター」
フロントシートも倒すと、2人のおとなが車中泊できる空間がうまれる 写真:ヒョンデモビリティジャパン

ホイールベースは2580mmなので、全長3830mmに対してはけっこう長い。室内は広いうえに、乗り心地にすぐれている。とくに乗り心地は力を入れたところとのこと。日本仕様をつくるとき、路面の状態があんまりよくない道を走ることを考えて、ダンピングなどを再調整した結果だ。

そしてなにより、デザインがいいではないか。冒頭に触れたとおり、私は以前、ソウルの街角でキャスパーを見かけて、小さいのに力強さがあって、うまいデザインだなあと感心した。その印象は日本でも変わらなかった。

ピラーの太さを強調したキャビンは堅牢さを印象づけるし、前後のフェンダーは太いタイヤをおさめるためのブリスタータイプ。1980年のアウディ・クワトロで有名になったブリスターフェンダーだけれど、デザイナーに言わせると、本来はコンパクトカーにもっとも似合うデザイン手法なんだそうだ。インスターを見ると納得する。

BEV市場で再注目される「コンパクトカー」

昨今、自動車が大型化しているのは、衝突安全基準がきびしくなっているため、といわれている。しかし、メーカーじしん、「車体の大型化は市場と乖離(かいり)する危険性をはらんでいます」(BMWのエンジニア)というぐらい。軽自動車より質感が高いクルマには一定数のニーズがある(はず)。

とくにBEVの分野では、コンパクトカーに再注目するトレンドがあるようだ。ルノーは4.1mの「4 E-TECH」と、全長3.9mの「5 E-TECH」(こちらは日本発売計画もあるとか)を、シトロエンは2.4 mと超小型の「アミ」を、市場に送り出している。

日本の道路に合うコンパクトさと優れたデザイン ヒョンデのBEV「インスター」
ルノーが昔の「5」(1972年発売)のイメージで開発した最新のBEV「5 E-TECH」 写真:Renault

中国でいまやナンバーワンの売り上げを誇るBYDも、日本の軽(自動車)規格にのっとった、ということは全長3.4m以下のBEVを、近いうちに日本市場に導入するそうだ。やはり中国のニオ(上海蔚来汽車)も、4mの「ファイアフライ」というコンパクトBEVを欧州をはじめ世界中で販売すると発表している。

日本の道路に合うコンパクトさと優れたデザイン ヒョンデのBEV「インスター」
中国のニオが展開する新ブランド「ファイアフライ」は25年に16の市場(欧州を含む)に導入される 写真:NIO

コンパクトなクルマとしては、25年4月に発売されたスズキの「ジムニーノマド」なども、マーケットのいいところをついている。サイズは、全長3.9m、全幅1.6mとやはり使い勝手がよい。しかも趣味性がある。おかげで「納期2年以内」(スズキの販売店)というすごいことになっている。

日本や欧州で、コンパクトカーが好まれるのは、道路事情によるところが大きい。同時に、マーケットがある意味成熟していることのあらわれともいえる。クルマで見栄を張ることなく、自分の使い勝手でえらぶのはよいことだ。

日本の道路に合うコンパクトさと優れたデザイン ヒョンデのBEV「インスター」
シトロエンが往年のコンパクトモデルの名前を復活させた「アミ」写真:CITROËN

インスターは、意外なことに、韓国では「クルマは大きくなくては、という価値観がいまだにあって売れ行きはいまひとつ」(ヒョンデモビリティジャパン)というし、ジムニーノマドも、生産地であるインドでは、同じ理由で人気がない、と知人のインド人ジャーナリストが苦笑しながら教えてくれた。

元祖コンパクトといえば、英国で1959年に発表され2000年まで生産された英国製のミニ(全長3m)だろう。サイズと質感ゆえ、街中で乗るのにぴったりと思い、ずっと憧れの1台だ。なので、コンパクトカーの仲間が増えるのはなんだかうれしい。ミニ、買うことになったら報告します。

【スペックス】
Hyundai Inster Lounge
×ばつ1615mm
ホイールベース:2580mm
電気モーター1基 前輪駆動
最高出力:85kW
最大トルク:147Nm
駆動用バッテリー容量:49kWh
乗車定員:4名
一充電走行距離:458km(WLTC)
価格:357万5000円
問い合わせ:ヒョンデモビリティジャパン
https://www.hyundai.com/jp/i

フォトギャラリー(写真をクリックすると、「ミニ」の写真もご覧いただけます)

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ベーチャン
2025年8月2日 8:38 AM

サクラでも高いと思っているので、これはK国アレルギーがなくともコスパでは選ばないだろう。

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ベーチャン
2025年8月2日 8:38 AM

サクラでも高いと思っているので、これはK国アレルギーがなくともコスパでは選ばないだろう。

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