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日本中でお詫び行脚をし、メンタルは崩壊寸前12月27日の預金残高20万円、社員14名...絶体絶命の起業8年目の年の瀬、6歳娘の言葉に父は涙が止まらなかった

エンジニアvs.営業

エンジニアサイドは、ver.2をいつ頃完成できるかをコミットしていた。ビジネスサイドは、エンジニアサイドが提示した完成の期日に合わせて契約を取っていった。FULL KAITENに対するニーズは相変わらず強かったから、またしても日本を代表する企業との契約が次々と決まっていった。

しかし、完成予定日が来てもver.2は、ローンチされなかった。大量のデータを相手にすると、相変わらず重くて動かないままである。

エンジニアサイドは、このソフトの開発がいかに困難なものかを力説し、開発には遅れがつきものであると主張した。しかし、すでに多くの会社と契約を結んでしまっているビジネスサイドにすれば、それは開発の遅れに対する言い訳にしか聞こえなかった。

いついつまでに完成できると言った以上、完成させてくれなければ困る。それがビジネスの常識だろう。もしも完成が遅れるのであれば、せめて、その情報を早目に共有するべきではないか。完成の期日が迫った段階で出来ませんでしたは、あり得ない......。

エンジニアサイドとビジネスサイドの対立は、日に日に深まっていった。社内の空気はとげとげしくなっていく一方である。瀬川が言う。

「VCからは1億円の資金調達をしたのですが、当時、エンジニア5名を含めて14名の社員がいたので、1億なんてあっという間になくなってしまうんです。問題はコミュニケーションの方法にあったと思います。ものすごく難しい開発だからもう少し待ってくれと言われれば、ビジネスサイドも納得できたと思うんですが、こんなに難しいんだから遅れたって仕方ないだろうと言われると、喧嘩になってしまう。すべてはコミュニケーションの齟齬が生んだ問題でした」

起業9年目にして最大級の危機がやってきた
撮影=向井渉
起業9年目にして最大級の危機がやってきた

年末の預金残高20万円、社員14名...年を越せるのか

2012年に瀬川と宮本が起業して以来、最大級の危機がやってきたのは、2019年の12月27日のことであった。

年末の各種の支払いを済ませたとき、なんと預金残高が20万円しかなかったのだ。瀬川と宮本にはすでに次女が生まれていた。会社の存続どころか、家族で年を越せるのかどうかというギリギリの状態であった。

掲載: PRESIDENT WOMAN Online

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