屋外照明の調査 − 横浜市
1997年の夏、横浜市緑区霧が丘にある市営自転車置き場の近くを通りがか
った時、まだ夏の日が明るいのに水銀灯が点いていることに気づきました。管
理されている交通局に確認するとタイマーが
「冬時間に設定」 してあ
った、との連絡を受けて大変驚いた事があります。
その年12月にはちょうど地球温暖化対策会議COP3が京都で開催されるこ
とが新聞紙上で報道されている頃です。 「横浜市の照明はどうなって
いるのだろう?」 こんな疑問を持ち、調査してみました。
結果は、 エネルギーの無駄がこんな身近なところで起こっている
のにあらためて驚きました。それだけではありません。照明によっては、
眩しさやギラギラ の原因となり、車を運転する人たちと歩
行者にとっても危険になっていることに気づきました。具体的に見てみましょ
う。
写真−1
無駄になった照明
左の写真−1を見てください。問題のあった自転車置き場の照明具です。よく
見ると器具の中に遮蔽板が入っている事を発見しました。
折角の照明に遮蔽板を取り付け、約半分の光を使っていないわけです。この理
由は、自転車置き場の近くに住宅があり、「眩しい光」が住宅に届かないよう
にしたものです。
最初から自転車置き場だけを照明する 適切な照明器具を選
択するべきでは無かったのではないでしょうか。そうすればもっと小さなラン
プを使うことも出来たはずです。
今では、住宅に面した3本の照明はほとんど点灯されることはありません。照
明を設置するときに充分な検討さえしていればこんな事にならなかったはずで
す。折角の照明が無駄になってしまいました。
私達のな税金がこんな所で無駄になっ
ています。
写真−2
住宅の壁を明るく照らしている街灯
写真−2を見てください。やはり横浜市緑区霧が丘に設置された街路灯です。
一番明るく照明されている場所がどこかお分かりでしょうか?
手前に何も写っていない様に見える暗い場所は歩道です。通行する人が明かり
を必要とする道路の上では無くて、道路沿いにある 住宅の壁
がもっとも良く照明されているのが分かります。
少なくとも50%近くの光が本来必要な場所では無く、横方向(住宅の壁)や、
上方に向けられて無駄になっているのです。
更にこの写真の中で一番明るく輝いて見えるのは、ランプそのものです。ラン
プが直接見えることは、歩行者にとって眩しく視認性を悪くする場合がありま
す。
こんな所でも適切な照明の検討・設計が求められる事が分かります。
写真−3
住宅の窓から入り込む光
左の写真では、街路灯が住宅の窓の中を照らし寝室や居間の中にも入り込んで
いる可能性があります。遮光カーテンやブラインドを下ろさなければ、眠れな
い場合もあるのではないでしょうか。
この様な光は 漏れ光
と呼ばれます。出来るだけ少なくすることが大切です。
眩しさになり車の運転に危険な光
写真−4
上の写真は同じ市営自転車置き場の夜景です。設置された水銀灯ランプの光が
直接車の運転席から見えます。すぐ近くにある道路灯よりも低い位置にあり、
より運転者の視線に近く、眩しさを作り出しています。歩行者にも影響してい
ます。
タクシーやバスを運転する人に聞いてみると、道路の近くにある照明が
眩しくて、 「疲れているとき」 や 「雨の日」
には邪魔になることがあると聞きました。
眩しさを作り出し、邪魔になっている光−こんな事があって良い
のでしょうか?色々な事を十分検討した上で照明を設置する必要があることが
分かって来ます。
気付いて下さい。エネルギーの無駄や眩しさ、ギラギラがあります。
私たちの周りをもう一度眺めてみると、
同じ様な照明が同じ様にた
くさん 使われています。気付いて下さい。そしてどうすれば良い
か考えて見ましょう。私たちの大切な税金がこの様な形で浪費されたり、車の
運転や歩行者に危険になっている現実をどの様にしたら解決できるでしょう。
図−1
マクドナルド天文台提供
解決策は難しくはありません
適切な照明 の一例見てみましょう。左の図を見てください。水平以上
に光は漏れず、光が必要な所だけを照明しています。
エネルギーを上手に
使い、使用するランプも小さくすることが出来る 大変良質な照明器具です。
眩しい角度で出る光も上手く抑えられています。
この様な照明器具をアメリカでは 「フルカットオフ」 と呼んでいます。
例えば、ロスアンジェルス市では、フルカットオフ型の照明を全ての道路灯に
使用しています。そしてそのような動きは活発に諸外国で始まっています。
私たちに求められているのは、この様な適切な照明器具を選択し、より小さな
効率の良い光源(ランプ)を使う事です。また照明メーカと施工する方達に対
し、適切な器具を提供いただけるよう求めていくことだと思います。
省エネルギーに貢献し、眩しさやギラギラの少ない照明器具は、メーカと市町
村そして私たち市民が協力すれば可能な技術です。そして結果的にエネルギー
の無駄をなくし、大切な地球環境を守ることにつながります。
気付いて下さい。照明に使うエネルギーは
50%以上削減することが出来ます。温室効果ガス削減6%の目標は既に約束され
た我が国の目標です。誰もが具体的な施策を実施し、地球環境を守る時が来て
います。
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ません。
わか天は、
国際ダークスカイ協会日本支部(IDA Japan Section)
の幹事です。
Last update: 1998 February 19