平成21年(2009)年で創業百十五周年を迎えました「料亭旅館坂本屋」は、明治27年(1894)長崎市で呉服店を営んでいた初代坂本寅一が当時の長崎に宿泊施設が少なかったことから、現在の金屋町に旅館を始めました。
初代より受け継いだ二代目の妻のサダ、料理に特徴を持たせようと考え長崎料理を出すことにしました。これが坂本屋の「卓袱料理(しっぽくりょうり)」の始まりです。卓袱料理が料亭のメニューとして出される様になったのが明治以降、それまでは卓袱料理そのものが家庭料理として一般的でした。
サダの卓袱料理は評判を呼びました。坂本屋が初めて旅館で卓袱料理を出したともいわれています。昭和29年に死去したサダが今日の坂本屋の基盤を創ったといっても過言ではありません。
三代目を任された妻のヒサ子は、姑であるサダから料理を教え込まれました。
卓袱料理にかかせないのが豚の角煮です。ヒサ子が作った角煮を家に持ち帰りたいというお客様が多かったことから、昭和50年に3年かけて真空パックにする技術を確立し、ヒサ子はこれを「東坡煮(とうばに)」と名づけ発売し、のちに商品登録を行いお土産の定番となりました。この東坡煮が苦難の時期の売上げを支えてくれるほどでした。
現在は、三代目ヒサ子の次男である四代目の卓也と妻悦子のふたりで宿を切り盛りしています。
四代目は食事だけでも楽しみたい地元客向けに料亭として卓袱料理の営業をはじめました。また東坡煮の煮汁を使った「角煮めし」を考案。今や東坡煮同様坂本屋の代表的人気商品となっています。
季節限定ではありますが、「鱧(はも)料理」を地元長崎で食することができる料亭でもあります。鱧料理は京都のイメージのようですが、その多くは長崎で水揚げされたものであったため、坂本屋は長崎で初めて鱧料理を扱うようになったといわれています。