学校ルポ/延岡工業高(延岡市)

切り抜き記事で意見発表/生徒の興味関心を刺激

延岡市・延岡工業高(山内武幸校長、694人)は県NIE推進協議会の本年度独自認定校として、NIE活動に取り組んでいる。電気電子科の3年生37人が卒業後の進路を見据え、新聞を読んで情報への接し方や自分の意見を通して表現する力を養っている。

同校では、4月から7月まで教室内に本紙など新聞5紙を置き、担任の吉田潤教諭が日直の生徒5人に読ませてきた。生徒たちは自分たちで興味を持った記事を見つけ、同級生に読んでもらいたい記事があればスクラップしてきた。

今月開かれたオリエンテーションの時間では、生徒たち一人一人が作ったスクラップブックを5人程度のグループで回覧。仲間がどんな記事を集めたかメモを取り、感想を述べ合った。

生徒たちがスクラップした記事は、人工知能(AI)やドローン、電力などを扱ったものが多く、日頃の学習とのつながりを感じさせた。生徒たちはスクラップを見せながら切り抜いた理由を説明。「読んでみると面白いよ」と勧めたり、友人が切り抜いた記事を読んで「これ面白いな」とつぶやいたりしていた。

菊池蕾斗さん(18)は「いろいろな新聞記事があって読み切れなかったので、友達のスクラップを読むと勉強になった」と振り返っていた。

回覧後は、友達のスクラップを読んで感想を発表する時間。進行役の生徒が発言を呼びかけると、次々に手が挙がる。生徒たちは「粗大ごみをフリーマーケットアプリで販売するという記事を読んだ。二酸化炭素(CO2)を削減し環境に配慮する取り組みと知った」「友達がスクラップした空飛ぶ車の記事に興味を持った。15分しか飛べないようなのでもっと改善してほしいと思った」などとコメントしていた。

オリエンテーションの内容を考えた進行役の生徒の一人、山口誠人さん(17)は「みんなまじめに考えてくれて、スムーズに進行できた。普段は発言しない人も意見を述べていた。意見発表を通じて就職対策につながればいいと思う」と期待していた。

期末テストでも、新聞などに触れ疑問を調べる中で学んだことを書かせる質問があった。吉田教諭によると、「興味関心のないところから情報が入ってくるので知識が増えた。授業で学んだ内容に関するニュースもあり、学ぶ意味が実感できた」といった意見が寄せられたという。

ネットに出回る「切り取られた言葉、場面」がうのみにされがちな今の状況を懸念し、「新聞を読んで社会への理解を深めてほしい」と期待していた吉田教諭。生徒たちの変化に目を見張り、「指導していないのに新聞を読み比べる生徒もいた。勉強は個人の興味関心から始まる。新聞はそこを刺激してくれるのでありがたい」と話していた。