「なでしこvison」は、日本女子サッカーの発展のため、ひいては「JFA2005年宣言」の実現を目標に掲げられたビジョンで、「世界のなでしこになる」というキーワードを、女子サッカーに関わる全ての人々が共有する。そして、それを遂行するために「サッカーを日本女性のメジャースポーツにする」、「なでしこジャパンを世界のトップクラスにする」、「世界基準の"個"を育成する」という3つの目標が掲げられた。
「昨年の9月、女子委員長に就任してまず考えたのが、すべての人が共有できる"女子サッカーのビジョン"があった方がいいのではないかということでした。漠然としたものや、各方面で個々に目標にしているものはあったものの、整理された具体的な目標というものがなかったんです」。こう語るのは上田栄治女子委員長だ。なでしこビジョンの案が出来てからは、様々な方面でアドバイスを受け、調整を繰り返し、約9ヶ月の月日を要して今回の発表に至った。
目標の一つめに掲げている「サッカーを日本女性のメジャースポーツにする」こと。具体的な数値では2015年までに女子のプレーヤーを300,000人に。これを達成するために設定された具体的施策は、"Players First!!"の視点に立った環境の整備とFIFA女子ワールドカップ招致の検討、そして女子サッカーの認知度を上げることだ。サッカー環境の整備に関しては、リーグ戦を含めた国内大会の抜本的改革の検討を始め、年代別にいうと、全国高等学校体育連盟への加盟、Jリーグとも連携した中学生年代の活動の場の確保、小学生年代への普及活動、フットサルやフェスティバルなどでレディース年代の愛好者のプレー機会を増加させることなどが今年度の重点施策に挙げられている。
2つめの「なでしこジャパンを世界のトップクラスにする」ための施策は、FIFA U-20、U-17女子ワールドカップに必ず出場し、世界大会で培った経験をなでしこジャパンにつなげていくことだ。その結果、なでしこジャパンがFIFA女子ワールドカップやオリンピックで常にベスト4に進出するチームであることができ、優勝を狙えるチームへと成長していくのである。
「世界基準の"個"の育成」については、主に各年代の日本代表選手につながるタレントの発掘・育成システムの整備、指導者のレベルアップがテーマとなる。今年に入って、なでしこチャレンジプロジェクトが導入され、2年前からはU-15ナショナルトレセンも活動を開始している。他にもスーパー少女プロジェクト、JFAアカデミー福島など各方面で育成面での努力が続けられ、実を結びつつある。また、これまでにケアしきれないでいたU-12年代に関しても、ナショナルトレセンU-12への女子選手の参加を促進するなど重要課題として取り組む予定だ。
この様になでしこビジョンは選手だけでなく、指導者、スタッフはもとより、まさに女子サッカーに関わるすべての人が共有するものとなっている。
「それでもやはり、これらはすべて"なでしこらしさ"の上に成り立つものだと思うんです」。上田委員長は続ける。「正直に言って、自分自身が代表監督として関わるまでサッカーは女性のやるものではないと思っていました。でも選手たちのひたむきな姿を見て考え方が変わりました。ひたむきで、芯が強くて、明るく、礼儀正しい――これこそが見る者に感動を与えるパワーの源で、"なでしこらしさ"なんです。なでしこらしさは、日本女性の良さに通じるものだと思います。私たちはそのなでしこらしさを大事にしたい、次の世代に継承させたい、育んでいきたい。なでしこビジョンで掲げる強化と共に、この思いを浸透させたいと考えています。」
女子サッカーの夢、それを共通の意識として具現化していく。"NADESHIKO"と言えば、日本女子サッカーを象徴するもの――世界の舞台でそう呼ばれる日を目指し、「なでしこらしく」、日本女子サッカーは発展を続けていく。
※(注記)「なでしこ vision」の詳細は、
こちら。