卯の花や郵便受けの音幽か
高橋涼月
遠嶺
199808
卯の花や注連濡れてゐる祠道
小島ヱイ子
春耕
199808
卯の花や眠りの浅き子を抱きて
荒井千佐代
沖
199810
母の背のちよこんと卯の花月夜かな
今木偉郎
槐
199907
卯の花の旅路の胸に揺れにけり
夏目満子
酸漿
199908
翁碑に卯の花月の靄流る
升本栄子
春耕
199908
卯の花や西方に降る俄雨
石脇みはる
槐
199909
卯の花や遙かに地蔵岳の剣
中里信司
酸漿
199909
夕月に卯の花白く浮びけり
西正子
酸漿
199909
起抜に卯の花を剪り瓶に挿す
青山丈
朝
199909
卯の花や弟子をやくざと詠む三鬼
山田六花
六花
200005
卯の花や神を尋めむに道違へ
大橋敦子
雨月
200007
卯の花や青き亀飼ふ洗面器
内藤八重
俳句通信
200007
卯の花やケーブル駅を滝の上
川崎妙子
風土
200008
くらがりに水飲む卯の花月夜かな
武井美代子
風土
200008
卯の花の夕づく魚を煮てゐたり
小山森生
槐
200008
卯の花やトンネルぬけ行き北陸路
茂木とみ
いろり
200008
卯の花の垣の保育所日照雨くる
三原清暁
春耕
200008
門川に卯の花びらと飯粒と
平松薫
六花
200008
卯の花のめざめてゐたる水の音
阿部正枝
遠嶺
200009
つまづきし敷居卯の花曇かな
今井松子
遠嶺
200009
卯の花の濡れて散るとき透きとおる
中原幸子
遠くの山
200010
卯の花に寢落ちしやうな暈の月
中原道夫
銀化
200010
女童と卯の花越しに目で遊ぶ
品川鈴子
船出
200104
卯の花と思ひたるよりそれらしく
稲畑汀子
ホトトギス
200105
寡作なる卯の花月となりしかな
鷹羽狩行
狩
200106
卯の花に囲まる杉の齢かな
飯塚ゑ子
火星
200107
卯の花の匂ふ月夜は母おもふ
佐藤よしい
風土
200107
卯の花や水百選の長寿村
代田青鳥
風土
200108
卯の花や項の細き夢二の絵
広瀬敏子
酸漿
200108
高尾みち卯の花づくし色匂ふ
大内恵
酸漿
200108
卯の花のいよいよ白しほととぎす
大内恵
酸漿
200108
卯の花やせせらぎを引く蕎麦処
谷野由紀子
俳句通信
200108
卯の花や縄張り多き貸農園
藤井圀彦
狩
200108
卯の花や茶店に吊られおけさ笠
川田さちえ
狩
200109
卯の花や寺に和服の女客
辰巳あした
雨月
200109
卯の花にみちのくの深すぎるなり
岡井省二
槐
200109
卯の花の枝垂るる家に姉逝きぬ
浮田胤子
ぐろっけ
200109
宿坊に急ぐ卯の花月夜かな
大久保白村
ホトトギス
200111
卯の花の瀬々風にゆれ貴船川
鈴鹿野風呂
京鹿子
200202
卯の花やまじめにわたる太鼓橋
延原ユキエ
船団
200202
卯の花の折れ伏し咲きし雪崩あと
伊藤とほる
ホトトギス
200204
卯の花を零す雨滴の重さかな
稲畑汀子
ホトトギス
200205
洋館に卯の花咲いて人の影
須賀敏子
あを
200206
卯の花の月夜かぶさる兎小屋
鷹羽狩行
狩
200207
卯の花や下校のバスを遊び待ち
伊藤トキノ
狩
200208
母がまだ戻らず卯の花月夜かな
長田等
狩
200208
卯の花や秘湯へ通ふ小舟あり
斎藤道子
馬醉木
200208
卯の花や「原爆の図」の美術館
林裕子
風土
200208
僧坊の卯の花に蜂あまた寄る
金丸鐵蕉
濱
200208
卯の花や効き眼ばかりを酷使して
渕上千津
沖
200208
卯の花や影濃き道となりゐたる
北嶋美都里
槐
200208
卯の花の底を流るる白蛇川
辻井桂子
雲の峰
200208
卯の花や身体まはして帯を解く
浜麻衣子
六花
200208
卯の花や祖母の名前は「つる」と言ふ
堀義志郎
火星
200209
卯の花を手折り翁の旅思ふ
曷川克
遠嶺
200209
卯の花や客間のほかは片付かず
高橋さえ子
朝
200211
卯の花や西より雨の移り来し
稲畑汀子
ホトトギス
200305
卯の花の垣根に沿ひてペダル漕ぐ
須賀敏子
あを
200307
卯の花や御田間近き槌の音
伊藤とら
雲の峯
200307
卯の花の咲きてその歌口遊む
西所正臣
雲の峯
200307
卯の花の浮く水を汲み矮鶏小屋に
西所正臣
雲の峯
200307
卯の花の無垢を身上峡の村
村越化石
濱
200309
卯の花の香り増したる薬師仏
高倉恵美子
空
200310
卯の花や借農園の予定表
高野良
帆船
200407
卯の花やガラシャの里へ坂がかり
山本康夫
苑
200407
卯の花や子は離るると知りながら
戸村まねこ
遠嶺
200408
卯の花や昼灯しゐる巫女溜
清水節子
馬醉木
200408
卯の花の雨に煙りし奥秩父
上石哲男
築港
200408
卯の花に流るる風や湯揉唄
谷合青洋
酸漿
200408
花折とふ峠卯の花ばかりなり
植竹美代子
雨月
200409
卯の花や照りては曇る里の道
藤井圀彦
狩
200409
卯の花や細見綾子の引つつめ髪
櫨木優子
狩
200409
卯の花の匂ひ知りたし山の里
村瀬八千代
遠嶺
200410
卯の花に腹赤の贄を傳承す
角直指
京鹿子
200410
卯の花や余計なものは要らぬなり
小澤克己
雪舟
200506
卯の花や娘とたがふ読後感
坂ようこ
沖
200508
満開の卯の花に雨降りはじめ
東郷すみ江
万象
200509
水平線尋ね卯の花峠越ゆ
松井洋子
ぐろっけ
200509
卯の花のまなこ閉ぢても残りをり
大内恵
酸漿
200509
恐竜展閉ぢて卯の花散り易し
河内桜人
京鹿子
200510
卯の花やマリア地蔵は子を抱く
小林優子
酸漿
200512
卯の花曇り定年へあと四年
能村研三
沖
200606
卯の花にいよいよ激つ流あり
阿部ひろし
酸漿
200607
卯の花や犬にもありし車椅子
奥田弦鬼
風土
200608
突つ掛けで出てみる卯の花月夜かな
奥田茶々
風土
200608
卯の花や野道に遊ぶ子等の無き
関戸国子
酸漿
200608
街の灯の遠き卯の花月夜かな
長沼恒子
馬醉木
200609
卯の花や濡れて緊まりし靴の紐
矢島久栄
狩
200609
卯の花の花びら細く散りにけり
伊藤早苗
鴫
200609
卯の花の咲く明暗も天城越
阿部ひろし
酸漿
200609
ループ橋渡り卯の花の天城越ゆ
中里信司
酸漿
200609
卯の花明り咳きは雨になり
湯浅夏以
遠嶺
200610
触るるたびこぼれ卯の花なりしかな
稲畑汀子
ホトトギス
200705
卯の花の咲く高野路の偲ばるる
稲畑汀子
ホトトギス
200705
卯の花や兎波馳す九十九里
横田初美
春燈
200707
卯の花や不可解多き現代詩
布川直幸
峰
200708
卯の花を通り来てやや重き肺
前川明子
鴫
200708
卯の花やきのふに古りし誕生日
小林和子
風土
200708
地を恋ふて卯の花雨をしたたらす
藤岡紫水
京鹿子
200708
卯の花の雨滴の光る飛騨路かな
市川十二代
ぐろっけ
200709
うの花の香や風雪の登城口
小島みつ代
朝
200709
卯の花や水琴窟のかすかなる
森津三郎
京鹿子
200711
卯の花は三河の寄進於大墓
能村研三
沖
200805
卯の花を田植花といふ山の国
滝沢伊代次
万象
200806
雲朶来て卯の花日和整へり
布川直幸
峰
200807
卯の花曇り蹴つまづく石畳
布川直幸
峰
200808
卯の花や村の境にわあわあさん
山路紀子
風土
200808
卯の花や金烏かたむく二上山
朝妻力
雲の峰
200808
卯の花や奥へ奥へと雲ヶ畑
三嶋隆英
馬醉木
200809
老いの来て卯の花垣に長話
岡野ひろ子
峰
200809
卯の花や三日月おぼろともならず
島谷征良
風土
200809
卯の花や能勢街道の崖づたひ
野澤あき
火星
200809
卯の花の咲きたる髪の湿りかな
丹羽啓子
馬醉木
200901
ほろほろと卯の花風の在りどころ
芝尚子
あを
200906
卯の花をこぼして沢へおりゆけり
武井美代子
万象
201005
卯の花の山路も通ひ馴れしもの
稲畑汀子
ホトトギス
201006
卯の花の雨だれに笠傾きぬ
山田六甲
六花
201006
卯の花に風吹き初めし夕ベかな
川原典子
酸漿
201007
種牛五頭生きのび卯の花月夜かな
渕上千津
沖
201008
卯の花や校歌練習高らかに
竹下昭子
ぐろっけ
201008
卯の花の籬に媼ひとり住む
稲次登美子
雨月
201008
卯の花や島に小振りの真砂女句碑
岡久枝
酸奬
201008
産土をつつむ卯の花月夜かな
荒原節子
沖
201009
卯の花と見定め得たり引返す
隅田恵子
雨月
201009
卯の花をこぼして沢へおりゆけり
武井美代子
万象
201005
舫ひ舟きしむ卯の花月夜かな
?コ田千鶴子
馬醉木
201107
仄白き卯の花匂ふ宵の口
松木清川
ぐろっけ
201108
形見分け卯の花垣を背にし
笠井敦子
鴫
201108
卯の花やレンガ通りの珈琲館
小泉欣也
ろんど
201108
卯の花を覚えて夫の帰りきし
西村節子
火星
201108
卯の花に沿うて由良川にも沿うて
黒川悦子
ホトトギス
201111
卯の花やゆつくり溶かす角砂糖
菊池和子
京鹿子
201111
筆休卯の花垣に人の恩
神蔵器
風土
201207
朝日の中卯の花盛かり小鳥鳴く
山本達人
かさね
201208
娘と歩く卯の花月の堤かな
代田青鳥
風土
201208
卯の花やさざ波光りつつ消えて
笹村政子
六花
201208
人形の目はぱつちりと卯の花に
細見綾子
万象
201209
卯の花の我が家に咲けば雨も良し
森田尚宏
鴫
201209
山帰りリュックに卯の花覗かせて
濱田ヒチヱ
ぐろっけ
201209
卯の花や転居を決めし老夫婦
時田義勝
やぶれ傘
201301
しようこりもなく卯の花の夜を遊ぶ
山尾玉藻
火星
201306
卯の花や濡れて重たき月出づる
米山のり子
馬醉木
201307
卯の花のしろがこぼれて咲きゐたり
西郷慶子
璦
201307
卯の花や這出て亀の泥塗れ
森理和
あを
201307
卯の花の果なく烟り大江山
河野美奇
ホトトギス
201311
卯の花の径のはてなる瀧不動
瀧春一
花石榴
201312
どこまでも卯の花迫る山路かな
稲畑汀子
ホトトギス
201406
諸鳥の鳴き卯の花の山路尽く
稲畑汀子
ホトトギス
201406
卯の花の山路ここより引返す
稲畑汀子
ホトトギス
201406
卯の花や湿度べとつく墨堤へ
中島玉五郎
峰
201406
卯の花の香に惑はされ辻違ふ
池田節
春燈
201408
妻が歌ひ出す卯の花の一枝活け
大畑善昭
沖
201408
卯の花や江戸の五不動六地蔵
小張昭一
春燈
201408
卯の花のさらりと散りて積もりたり
紅谷芙美江
万象
201409
卯の花や和泉河内の分かれ道
原田達夫
鴫
201409
卯の花を挿頭す少女のうなじかな
高橋志津代
末黒野
201409
卯の花や川音耳を放れざる
古川夏子
空
201410
卯の花や熊野は雲の湧きどころ
戸栗末廣
空
201410
卯の花の色に喪心引き寄せて
稲畑廣太郎
ホトトギス
201503
卯の花にいつか迷うてゐる山路
稲畑汀子
ホトトギス
201505
卯の花や庭から入る母の家
塩野谷慎吾
沖
201507
歩み寄り卯の花垣に母の影
秋川泉
あを
201507
卯の花やのこる命はまばたく間
神蔵器
風土
201508
卯の花や棚田の奥の不動堂
平田紀美子
風土
201508
卯の花や雨呼ぶ風となりにける
縣昌司
万象
201509
卯の花の白を視界に入院.す
稲畑廣太郎
ホトトギス
201605
卯の花の山路にかかりはじめけり
稲畑汀子
ホトトギス
201605
釣人のひとり卯の花明りかな
笹村政子
六花
201609
卯の花や農家の座敷開け放ち
安部和子
雨月
201611
卯の花に麻の実を入れて出されけり
赤松赤彦
六花
201701
須磨寺や卯の花寿司を中食に
山田六甲
六花
201807
卯の花月夜遥かにとほき亡夫の影
茂木なつ
春燈
201808
香をこめて卯の花こぼれつぐ日暮
安斎久英
末黒野
201808
卯の花の気高き白のほの香る
大橋晄
雨月
201809
若すぎる遺影卯の花純白に
山田夏子
雨月
201809
卯の花や軒に掛けある野良時計
山田夏子
雨月
201809
卯の花やおまけに貰ふ茹で玉子
新沢伸夫
萱
201907
卯の花や雨の止み間の小働き
能村研三
沖
201908
杉山のはたて卯の花明かりかな
小原芙美子
風土
201908
卯の花垣まぶたの奥の隠れんぼ
吉清和代
鴻
201908
卯の花や母の忌日の夕明り
久保久子
春燈
201909
さまざまの別れ卯の花月夜かな
山中志津子
京鹿子
201909
ここちよき水音卯の花月夜かな
井尻妙子
京鹿子
201909
みかへりの弥陀に卯の花曇りかな
荒井一代
鴻
202007
家籠りの沙汰に卯の花月夜かな
能村研三
沖
202007
卯の花や意中の人に加舎白雄
中村嵐楓子
春燈
202008
母の影ゆだね卯の花月夜かな
村田あを衣
京鹿子
202104
憂き事は言はぬ卯の花曇かな
滋野暁
末黒野
202104
卯の花や温泉街は今何処
大日向幸江
あを
202109
バスを待つ卯の花ながめ空ながめ
小巻若菜
やぶれ傘
202110
みずみずしき心ありけり卯の花は
山田六甲
六花
202205
卯の花のほろほろショートストーリー
山中志津子
京鹿子
202209
峠めざして令法卯の花手毬花
浜福惠
風土
202209
卯の花やトンネル多き峠道
森清堯
末黒野
202210
卯の花や子供を一人隠したる
江見巌
六花
202210
2023年5月27日
作成