卯波越えゆける旅路の晴となる
稲畑汀子
ホトトギス
199805
遙かより木屑寄り来し卯波かな
竹内悦子
槐
199807
念入りに足拭いてをる卯波かな
竹内悦子
槐
199808
卯波より虹の生まれて空近し
高木伸宜
船団
199811
松陰の潜みし小島卯波立つ
中西和子
船団
199811
ときじくの卯波なりける脛腓
岡井省二
槐
199905
鳥影の一閃したる卯波かな
大槻久美
円虹
199909
韓やまと二分けざまに卯波立つ
秋葉雅治
沖
199911
バンコク湾卯波の数を誰知るや
マブソン青眼
海程
199911
蹠は卯波の砂を踏みゐたり
岡井省三
槐
200005
浜茶屋は骨組みのまま卯波立つ
朝妻力
俳句通信
200006
能登卯波終と思ひし旅了へて
能村登四郎
沖
200007
突堤に手を振る別れ卯波散る
木内美保子
六花
200008
桶押して卯波に乗りし徒人海女
中村翠湖
馬醉木
200009
石を積み舷ときに卯波越ゆ
品川鈴子
船出
200104
佐渡沖の卯波の騒ぐ礁かな
阿波谷和子
俳句通信
200107
帆柱が卯波にせめぐ船だまり
古川利子
苑
200108
卯波航くホバークラフト弾みけり
宮津昭彦
濱
200108
能登卯波終と思ひし旅了へて
能村登四郎
羽化
200110
湾口に砂嘴のせりだし卯波寄す
渡辺昭
沖
200206
断崖に小さき祠卯波立つ
辰巳陽子
雲の峯
200207
灯台は若者ひとり卯波立つ
中川悦子
酸漿
200207
ヘリコプター発つ印度洋卯波際
品川鈴子
ぐろっけ
200207
江の島を沖へ動かす卯波かな
大沼眞
沖
200208
卯波月頭の中透いてをりにけり
金澤明子
槐
200208
積丹のカムイ伝説卯波立つ
芝宮須磨子
あを
200208
卯波立つみな中古車の駅埠頭
加藤たかね
風土
200209
卯波立つ岬の上の白き街
櫻井恭比古
帆船
200209
三間に満たぬ川口卯波寄す
朝妻力
雲の峯
200306
卯波立つ二見の浦に塩の神
山口たけし
雲の峯
200307
甌穴を見せて大佐渡卯波たつ
渡辺政子
雲の峯
200307
盥舟沖に卯波の見ゆる湾
阿波谷和子
雲の峯
200307
真砂女逝く生家に卯波遠からじ
高橋英子
ぐろっけ
200308
龍馬立つ視野の限りに卯波寄せ
久保知音
対岸
200309
クロイツエルソナタ卯波の立ちにけり
堀内康男
帆船
200401
戌の日の札受けてゐる卯波風
山田六甲
六花
200405
卯波立つまでは育たず和歌浦
山田六甲
六花
200405
卯波晴名工伊八は波刻む
能村研三
沖
200406
群千鳥卯波びかりに旋回す
能村研三
沖
200406
窓際に考へる人卯波立つ
今瀬剛一
対岸
200406
昼深し卯波の洗ふ地震の跡
川野喜代子
雲の峰
200406
墨痕の卯波となりし飛白かな
雨村敏子
槐
200407
領布振の伝へ切なし卯波立つ
伊藤月江
雲の峰
200407
卯波立ち灯台の白少し老ゆ
北川英子
沖
200407
卯波立つ真砂女の句碑は生家向き
杉本光祥
沖
200407
卯波立つ安寿の母の七五調
今瀬剛一
対岸
200407
まつしろな船足早き卯波かな
三橋泥太
遠嶺
200408
朝日差す卯波真白きカーフェリー
三橋泥太
遠嶺
200408
野島岬二百七十度の卯波
三橋泥太
遠嶺
200408
潮騒に目覚め卯波を見てをりぬ
三橋泥太
遠嶺
200408
卯波越え江戸へ醸せし下り酒
高松由利子
火星
200408
浦賀水道刑場跡や卯波立つ
平田紀美子
風土
200408
九十九里弧のゆるやかに卯波たつ
内山花葉
沖
200408
卯波さへゆりかごとせむ真珠貝
中尾公彦
沖
200408
初午の奉納書の卯波かな
竹内まさ子
帆船
200504
卯波冷して帆船の帰港かな
小澤克己
雪舟
200506
等伯の波濤の竜へ卯波立つ
松波とよ子
春燈
200507
夕暮の窓いつぱいの卯波かな
江見悦子
万象
200507
卯波とは海女桶揺らす波のこと
遠野萌
空
200507
母性にもありし父性や卯波来る
中嶋陽子
風土
200508
借景は江の島なりき卯波立つ
舘泰生
風土
200509
海へ向く師弟の句碑や卯波寄す
中沢三省
風土
200509
卯波立つ誓子詠みたる海の門に
光野昌平
築港
200509
旅の夜の語りつくせぬ卯波かな
赤司美智子
酸漿
200602
赤松につゞく黒松卯波寄す
滝沢伊代次
万象
200605
気多卯波切れぎれに見え句碑生るる
成宮紀代子
沖
200606
卯波とほし動物園に人混み合ふ
浜明史
風土
200607
卯波打つ絶壁岬流人島
坂上香菜
苑
200608
護衛艦卯波を越えて帰還せり
谷村修二
苑
200608
日輪の生るる卯波の立ちにけり
三沢蘭
遠嶺
200608
直筆にしのぶ人柄卯波風
小宮山勇
遠嶺
200608
卯波立つポケットサイズの時刻表
富沢敏子
鴫
200608
卯波立つ長八鏝絵竜うねり
中出敦子
鴫
200608
卯波濃しかなしい鮫を追ひつめて
柴田朱美
京鹿子
200608
遠見には海はも同じ卯波寄す
鈴木榮子
春燈
200706
卯波寄す灯台守の土佐がらす
鈴鹿仁
京鹿子
200707
紺碧の極まれば黒卯波立つ
黒辻美奈子
沖
200707
鎌倉の古刹はるかに卯波立つ
山川好美
春燈
200708
イルカショー果てて眩しき卯波かな
木村冨美子
遠嶺
200708
卯波立つ沖に漁船の影かすか
伊東政勝
遠嶺
200708
卯波寄す利休の色の安房郡
田村すゝむ
風土
200709
卯波立つ丸くなりてはつまらなし
中条さゆり
空
200709
卯波立つ舟屋商ふつみれ汁
大井邦子
ぐろっけ
200710
梵鐘の余韻卯波に消えゆけり
廣見知子
苑
200807
蛸壺に長き幹縄卯波立つ
山路紀子
風土
200808
ちちははの骨卯波する白銀河
小堀寛
京鹿子
200808
小千鳥の飛ぶ海峡の卯波かな
田中よしとも
酸漿
200808
卯波までひゞき仕舞の足拍子
川合まさお
ぐろっけ
200808
巖頭に寄する卯波の潮煙
川口襄
遠嶺
200809
裂織の卯波まとへる心地とも
伊丹さち子
馬醉木
200906
老境や引き潮どきも卯波立ち
北川英子
沖
200907
夜はさらに波音たかき卯波かな
都丸美陽子
春燈
200907
晴れやかな安房の卯波に迎へらる
河本由紀子
春燈
200907
駱駝坐し沖の卯波を見て動かず
泉田秋硯
苑
200908
艫綱を解くや卯波の高けれど
川口襄
遠嶺
200908
卯波立つひと日濃くなる島の色
鹿島釣人
炎環
200908
卯波寄せ仁右衛門島の岩険し
川島澄子
酸漿
200908
胸CT検査を明日に卯波立つ
鈴木石花
風土
200908
卯波立つ天平人の越えし海
山本浪子
風土
200908
一身の発条を鍛へむ卯波たつ
山崎靖子
鴫
200908
卯波荒れ倭寇の島の見え隠れ
片山博介
春燈
200908
卯波立つベイブリッジは沖へ伸び
佐藤博重
春燈
200909
舞ひ上がる卯波を蹴つて島渡船
大竹欣哉
笹
200909
國境ゆく五能線卯波寄す
國永靖子
ぐろっけ
200909
卯波寄す水平線をそこなはず
関根洋子
風土
200911
ライダーの一団卯波見てをりぬ
坂場章子
鴫
201002
卯波立つ火の跡しるき海蝕洞
松本三千夫
末黒野
201008
見下ろしてTOKYOBAYの卯波かな
関根洋子
風土
201008
指呼の間の塩屋岬や卯波晴
渡辺安酔
峰
201009
機窓より竜飛岬の卯波かな
金山藤之助
苑
201009
まづ卯波とらへ潜望鏡始動
和田照海
京鹿子
201010
漁夫渡る真珠筏に卯波立つ
鈴木愛子
ぐろっけ
201011
海女潜き卯波に遊ぶ桶二つ
大橋伊佐子
末黒野
201104
首塚を攻めあぐねゐる卯波かな
塩路隆子
璦
201106
一艘の過ぎてし卯波また卯波
定梶じょう
あを
201106
卯波立つ離島減らしの橋架かる
能村研三
沖
201107
卯波よりたちあがりたる智挙印
西村純太
槐
201108
わだかまりを卯波に乗せて遠ざくる
近藤紀子
槐
201108
遥か来ししまなみ海道卯波立つ
金山藤之助
苑
201109
夫たちの特攻の碑や卯波立つ
小野口正江
末黒野
201109
大いなるものに包まれ卯波立つ
山田佳子
槐
201109
百里来し人と卯波の浜歩く
大西八洲雄
万象
201110
千枚田裾に卯波の砕けたり
井村和子
風花
201206
浜に坐す破船めがけて大卯波
松嶋一洋
峰
201207
卯波立ち幽かに聴こゆ鎮魂歌
西村純太
槐
201208
足跡を残す和綴や卯波立つ
杉原ツタ子
槐
201208
卯波立つ根無雲より白く立つ
松本三千夫
末黒野
201208
御用邸の黒松林卯波立つ
松本三千夫
末黒野
201208
流木の見え隠れして卯波飛ぶ
堀田順子
馬醉木
201209
村ひとつ安房にまだあり卯波立つ
酒井秀郎
返り花
201211
句碑の立つ気比神宮や卯波立つ
岡野安雅
かさね
201307
卯波立つ構造線の神の島
稲山忠利
ぐろっけ
201310
岬山の発電パネル卯波寄す
田中貞雄
ろんど
201407
岩陰ゆ渡しの舳先卯波立つ
森清堯
末黒野
201409
膳臣の塩田卯波立つ
田中佐知子
風土
201411
果てしなく卯波押し寄す流離佛
田中佐知子
風土
201411
畳々と寄せ来る高志の卯波かな
井上石動
あを
201506
悼・遠藤真砂明さん
ますらをの卯波うねりを鎮めをり
能村研三
沖
201507
潮仏洗ふ荒々しき卯波
渡部節郎
沖
201507
悼・遠藤真砂明様
卯波たつ飛沫の高さ男逝く
渕上千津
沖
201507
卯波立つ島に集へり同窓会
安達正行
春燈
201508
頬杖は詩を待つかたち遠卯波
千田敬
沖
201508
遠くより勢ひづいて卯波かな
鈴木良戈
沖
201508
卯波寄すトーチカに似て新舞子
塩田杉郎
風土
201508
房総は真砂女の海よ卯波立つ
水井千鶴子
風土
201508
引きぎはに小石唄はす卯波かな
高橋道子
鴫
201509
寝返りの卯波寄せくる福の耳
児玉有希
京鹿子
201510
嘶けば卯波応ふる岬かな
小林朱夏
空
201605
卯波晴蛸壺干しの口揃へ
能村研三
沖
201607
天城嶺は今日も雨雲卯波寄す
葦原葭切
春燈
201607
橋桁に卯波のかけら北斎忌
萩庭一幹
馬醉木
201608
卯波立つ夕暮人を思ふ刻
江草礼
春燈
201608
船を置く水平線より卯波来る
小林朱夏
空
201608
卯波蹴る漁船や舵の重たげに
黒滝志麻子
末黒野
201608
崖下は卯波の寄する日本海
赤堀洋子
万象
201609
卯波立つ水陸バスに鯨の絵
間島あきら
風土
201610
岬めぐり海は卯波の反射光
鷺山珀眉
京鹿子
201707
砕けては卯波しづもる潮溜り
渡部節郎
沖
201707
義経の卯波呼びゐる男舞
山崎靖子
鴫
201708
阿弖流為の影は幻し卯波立つ
伊藤希眸
京鹿子
201710
崖壁の鉄階降りる卯波風
下山田美江
風土
201808
サーファーの次の卯波へ立て直す
高橋まき子
風土
201808
卯波立つわたつみの声寄せ来たる
阪倉孝子
槐
201808
卯波津波大波小波大海原
加藤みき
槐
201809
卯波立つ宮へいざなふ朱の鳥居
吉田悦子
空
201812
網元の土間は卯波へつづきけり
栗坪和子
沖
201901
風にのる卯波は機を織るごとし
栗坪和子
沖
201907
夕されば卯波高まる稚児ヶ淵
高木邦雄
末黒野
201909
一礁の浮力のつきし卯波寄す
和田照海
京鹿子
202006
卯波立つたびに記憶の甦る
浜崎喜美子
沖
202007
釣人の足元奪ふ卯波かな
前田美恵子
槐
202007
迫りくる卯波高波夫よ死ぬな
直江裕子
京鹿子
202008
松風の一の鳥居に卯波立つ
永淵惠子
空
202010
卯波立つ海峡背負ふ交番所
くどうひろこ
沖
202106
人流とふ賢しら言葉卯波立つ
塙誠一郎
沖
202107
遠き日を遠き卯波に見てをりぬ
中村重幸
沖
202108
卯波立つタンク七基の三池港
西村安子
京鹿子
202108
一艘の船足早し卯波立つ
黒滝志麻子
末黒野
202109
みどり児は母の胸許卯波寄す
林いづみ
風土
202109
世なほしの人欲しき世ぞ卯波立つ
間島あきら
風土
202109
よく笑ふ人のうしろで越す卯波
井尻妙子
京鹿子
202205
由比ヶ浜卯波の残す忘れ貝
高木邦雄
末黒野
202209
2023年5月6日
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