鰻屋の煤光りする自在鉤
藤原輝子
春耕
199809
のの字よりつの字となりし泥鰻
飯塚ゑ子
火星
199810
藤浪のあとの川音鰻頭食う
藤田守啓
船団
199811
鰻ざふすい洛の氵(さんずい)諾へる
中原道夫
銀化
199901
鰻重の二つ毛布の中にあり
荻野美佐子
船団
199903
不死鳥の春や池田湖の大鰻
城門次人
海程
199905
上海語で鰻を捌くをんなかな
田中英子
火星
199909
美しき音に鰻の裂かれけり
小田元
船団
199909
若くとも大黒柱鰻の日
中村恵美
円虹
199911
春愁をひらりと躱し鰻食ふ
能村登四郎
芒種
199911
鰻食ぶことなくなりて血は清し
高木伸一
六花
200007
木の国の斜めの空の鰻掻
田畑幸子
火星
200008
老楽や一献啜る鰻茶屋
松本高児
京鹿子
200008
ふりかへる昭和は長し鰻めし
松本高児
京鹿子
200008
鰻茶屋藍の暖簾に足が生え
松本高児
京鹿子
200008
隠国の鰻の腹のうすみどり
小菅佳子
槐
200010
鰻裂くおや指太き男の手
柳生千枝子
火星
200010
海溝の暗きを云へる鰻かな
小林喜一郎
槐
200011
よべ落ちし鰻泳がせみそぎ川
市場基巳
槐
200101
上洛の顏を寄せあふ鰻ざふすい
中原道夫
銀化
200101
十月や鰻抑へて古き溝
岡井省二
槐
200105
桶の中鰻が鰻押し上げぬ
正木光子
いろり
200108
鰻釣りの灯りに大き祭髪
山尾玉藻
火星
200109
鰻の針取るに深々頭を裂けり
辺美知子
濱
200109
黒髪の蜑の提げ来る鰻太し
三浦晴子
濱
200110
阿武隈川に鰻釣る父竿五本
渡辺美知子
濱
200110
下げ潮の鰻釣らんと父早発ち
渡辺美知子
濱
200110
年深き旅や三島に鰻食ぶ
能村登四郎
羽化
200110
鰻食べつつ嬰児泣く声をもっと聴く
五十嵐研三
海程
200112
鰻落ちひそひそとゐる三日月
澤本三乗
槐
200112
しらす鰻採る灯に雪のちらつけり
木下玉葉子
酸漿
200205
鰻食ふ夜風のなかの川の音
皆川盤水
春耕
200207
鰻屋のうの字の大き半夏生
西川織子
馬醉木
200209
月の夜を川へ消えゆく鰻捕り
北原東洋男
濱
200209
丑過ぎの小さき鰻焼き直す
竪ヤエ子
雲の峰
200210
落鰻真闇引きずる音のあり
各務耐子
銀化
200212
手渡しの重さうれしき鰻めし
鷹羽狩行
狩
200307
細指を逃がれし鰻うろうろと
平松かをる
六花
200308
盆過ぎの鰻の筌を揚げし音
山尾玉藻
火星
200309
手練の刃当てて鰻のしづかなり
藤原たかを
馬醉木
200310
鰻筒揚げくる老の里訛
松本幹雄
馬醉木
200310
鰻焼く匂ひのこもる宿場町
延川五十昭
六花
200310
湯屋出でて直行したる鰻かな
岩瀬発
帆船
200310
威勢よき声に釣られて鰻の日
和田森早苗
苑
200311
丑の日や健康一番鰻食ぶ
二村蘭秋
雨月
200311
下町の鰻焼く香でありしかな
稲畑廣太郎
ホトトギス
200406
湖の際に仕掛けし鰻筒
岩下芳子
槐
200406
鰻食ぶ時かたかごの花あふる
辻恵美子
栴檀
200406
鰻屋の二階に居候となり
須佐薫子
帆船
200408
鰻筒町のいづこも水はしる
中島瑞枝
百鳥
200408
家の裏に持ち舟繋ぎ鰻売る
宮城菊子
濱
200408
天然ものは縮まぬと漁師鰻裂く
梅原美子
濱
200408
鰻丼を食しをる闇のろくろ首
延広禎一
槐
200409
鰻など食してひと日無聊なり
高畠英
河鹿
200409
鰻裂くをとこ強面やさことば
飛鳥由紀
鴫
200409
一匹の蝮のかかる鰻の笯
吉川信子
万象
200410
川の字に澄める鰻を割かんとす
禰寝瓶史
京鹿子
200410
加茂川へそそぐ白川鰻づくし
木戸渥子
京鹿子
200410
行李柳遠つ淡海の大鰻
吉弘恭子
あを
200505
歌舞伎出て少し奢りし鰻食ぶ
直井たつろ
風土
200507
鰻屋の店先に干す串百本
金川眞里子
百鳥
200508
鰻屋の暖簾くぐればやや暗し
柴田佐知子
空
200509
一時間待ち鰻食ぶ関の宿
吉川澄子
築港
200510
今生を何のかんのと鰻丼
木山杏理
京鹿子
200511
川風に吹かれ四万十鰻食ぶ
武本節子
築港
200512
母の日の膳に鮑と鰻かな
石田砧女
濱
200607
鰻食べに明石大橋渡りけり
福地淳祐
春燈
200609
残りたる白焼鰻沖を雨
伊丹さち子
馬醉木
200610
伯母訪へば伊勢佐木町に鰻食ふ
竹生田勝次
風土
200610
丑の日や夫が鰻を買ひ戻る
八木岡博江
酸漿
200610
鰻池いくつ廃れて浮葉かな
和田祥子
馬醉木
200706
好き嫌ひ有無を言はさず鰻とる
稲畑汀子
ホトトギス
200706
結局は鰻に決めて多数決
稲畑汀子
ホトトギス
200706
一艘に漁師一人よ鰻捕り
山田六甲
六花
200706
鰻銜へ川鵜の浮かぶ水しぶき
田中幹也
万象
200709
大鰻どこの生れか問ひただす
安部里子
あを
200709
一と声にやから集へり鰻の日
渡辺方子
万象
200711
鰻屋のかんばん娘老いにけり
西本才子
万象
200711
大江戸の鰻まぶしとなりゐたる
中島陽華
槐
200712
初詣すぐ鰻屋へまはりけり
田中藤穂
あを
200803
鰻やて昼ごはんもう済んだがな
稲畑廣太郎
ホトトギス
200806
ぬるぬると鰻ぎよろつと鰻の目
稲畑廣太郎
ホトトギス
200806
桶の縁使ひ切つたる鰻かな
稲畑廣太郎
ホトトギス
200806
托鉢僧鰻屋の前足早に
懸林喜代次
春燈
200809
丹田の力にせよと鰻かな
布川直幸
峰
200810
桶の鰻ひねもす廻り縺るなし
井田実代子
雨月
200810
目打持つ男慌てず跳ね鰻
荒木常子
鴫
200810
土用二の丑鰻の生地誰か知る
鎌田篤
雨月
200811
鰻食ふ何処の産でもよかばつてん
田村善伴
万象
200812
風格の褪せたるのれん鰻食む
小澤菜美
璦
200909
声で打つ手串一本鰻焼く
藤岡紫水
京鹿子
200909
鰻食ふ人の世の機微愛しつつ
布川直幸
峰
200909
深き清き生簀は土間に鰻の日
服部早苗
空
200909
鰻余す八十八歳八か月
小林清之介
風土
200910
草の上針呑み込める鰻かな
三村八郎
炎環
200910
つつがなく土用の鰻囲みけり
小関栄子
笹
200910
鰻重とくれば尾張の新酒かな
益本三知子
馬醉木
200911
鰻梅干こもごも喰らひ恙なし
小林清之介
風土
200911
朝風や鰻掻き捕る鉄の爪
小山徳夫
遠嶺
200911
桶のなか鰻の声のひしめける
西山春文
狩
200912
落鰻こびることなき料理長
伊吹之博
京鹿子
201002
鰻屋の煙が客を寄せてをり
稲畑廣太郎
ホトトギス
201006
板前の眼強める鰻かな
ことり
六花
201006
くたびれて鰻の国の水を飲む
鳥居おさむ
ろんど
201006
とりあへず士用鰻を買うてきし
秋千晴
空
201007
手土産の鰻に子らの起こさるる
ことり
六花
201008
評判の鰻屋目当て峠越
竹内悦子
璦
201009
鰻喰ひ話を戻す半世紀
林紀夫
春燈
201009
わが病めば鰻の骨を買ひきし母
栗原完爾
春燈
201009
ばて気味の今日のメニューや鰻丼
三川美代子
璦
201010
鰻の笯淵の暗きへ沈めけり
藤谷紫映
馬醉木
201010
鰻笯の昭和は遠し堂島川
宮崎正
ホトトギス
201010
死の床の父へひと箸鰻めし
長山あや
ホトトギス
201010
くねるまもなく裂かれけり大鰻
大土かず子
狩
201010
もう十年生きると決めて鰻食ふ
大木清美子
峰
201010
鰻屋の二階夜風に遠囃子
小野千枝子
万象
201010
曽孫らにも肝吸添へて鰻の日
西出しず子
雨月
201010
土用鰻香りいただく老舗かな
荻野嘉代子
春燈
201011
味と値に折り合ひつけて鰻の日
平田恵美子
ぐろっけ
201011
宵越しの憂さは持たざり鰻の日
平野みち代
鴫
201110
信心のやうに鰻を称へけり
田中藤穂
あを
201110
大鰻逃し川打つ漢かな
武政礼子
雨月
201110
誕生日病院食に鰻めし
大西八洲雄
万象
201111
いつ来ても同じ掛軸鰻宿
岩岡中正
ホトトギス
201112
押し合ひへし合ひ月夜の鰻
野中亮介
馬醉木
201112
嚔して電気鰻のボルト上ぐ
禰@寝瓶史
京鹿子
201203
えい儘よ鰻の南蛮煮付かな
柳川晋
槐
201209
大阪やばたばた鰻焼く煙
北崎展江
くりから
201209
あぶく立つ鰻の池や雲の峰
加藤みき
槐
201209
時かけて鰻食ひをり芦野宿
北崎展江
くりから
201209
寅さんに会ふと出てゆく鰻の日
千田敬
沖
201209
骨の無い開き鰻や分譲地
大島翠木
槐
201209
鰻食ふ上座たまはる七七日
福島せいぎ
万象
201209
旧木場に偲ぶ青春鰻喰ふ
阿部寒林
あを
201211
エスカレーター匂ひの誘ふ鰻の日
布川孝子
京鹿子
201211
鰻捕り自慢の生簀に放ちけり
荻龍雲
峰
201211
鰻丼の飯は小町よ共白髪
延広禎一
槐
201211
鰻めし日々に高騰茂吉の忌
隅田恵子
雨月
201306
値上りの天上知らず鰻丼
秦和子
璦
201310
曾て師と土用鰻をこの店に
小林和子
風土
201310
土用鰻すんなり買つてゆく男
小野寺節子
風土
201310
朝の川手応へのある鰻篭
松村晋
ぐろっけ
201311
鰻屋のうの字跳ねゐる秋の風
藤田素子
火星
201311
鰻めし慶事俗事と忙しく
今橋眞理子
ホトトギス
201311
土用丑飯事程の鰻丼
足利?ロ子
ぐろっけ
201311
鰻笯仕掛けし兄を尊敬す
今井千鶴子
ホトトギス
201311
鰻の「う」うれしいうまいうかれ坊
延広禎一
槐
201311
鰻より生れたやうな「う」の字かな
中田みなみ
空
201311
鰻屋の店を横目に通り過ぐ
松木清川
ぐろっけ
201311
鰻の骨ぽりぽり喰ぶる梅見酒
瀧春一
花石榴
201312
出自よき鰻を少し敬老日
野上杳
空
201401
リハビリはこれでおしまひ鰻飯
稲畑汀子
ホトトギス
201406
家苞に鰻購ふ道の駅
増田一代
璦
201409
手にとつて迷ふてをりぬ鰻の日
斉藤裕子
あを
201410
濠に沿ひ鰻をさばくたつきかな
江見悦子
万象
201410
鰻照る檜香れる輪つぱ飯
卯木堯子
春燈
201410
老舗よりの煙香ばし鰻の日
難波篤直
璦
201411
下処理と言ふ大層な鰻食ふ
佐藤弘香
ろんど
201412
鰻屋を出て秋晴れの県庁前
丑久保勲
やぶれ傘
201501
大阪のおばちゃん鰻ひとうねり
中林明美
船団
201502
型録の鰻重大き鰻の日
後藤比奈夫
ホトトギス
201504
まぁだまだと神追つ払ひ鰻喰ふ
斉藤裕子
あを
201506
予約せし店より鰻焼くにほひ
安藤久美子
やぶれ傘
201510
宝くじ売場の向かひ鰻焼く
定梶じょう
あを
201511
偲ぶこと多き浜名湖鰻舟
稲畑廣太郎
ホトトギス
201606
酒禁じられたる漢鰻食ぶ
稲畑廣太郎
ホトトギス
201606
鰻食ふ東男と京女
田丸千種
ホトトギス
201609
跛なへに伊能の郷の鰻美味
渕上千津
沖
201609
ぬらぬらと土用鰻の肝つ玉
岩下芳子
槐
201609
スーパーのちちし半分鰻かな
須賀敏子
あを
201609
民宿の生簀に太る鰻かな
斉藤マキ子
末黒野
201610
二人の餉土用鰻と言ひ添へて
水田壽子
雨月
201610
店先の鰻の香へと列に入る
東秋茄子
京鹿子
201611
敗戦記読みつつ鰻食ふ列に
松原智津子
万象
201611
孫集ひ鰻丼取りて大パーテイ
神田惣介
京鹿子
201612
白人と並んで食べる鰻の日
東英幸
船団
201702
煤逃げや夫と息子と鰻屋へ
有賀昌子
やぶれ傘
201703
小半時待つも土用の鰻かな
山口登
末黒野
201704
はためいて土用鰻のうの字伸ぶ
鈴鹿呂仁
京鹿子
201707
老舗守り焼き一生と鰻焼く
山本喜朗
雨月
201708
歌舞伎跳ね鰻屋に遇ふ女形
大島寛治
雨月
201709
大鰻さばく手元のあやふけれ
秋川泉
あを
201709
裏庭に土用鰻のひつそりと
山田健太
風土
201710
大利根の下り鰻のはしきやし
上谷昌憲
沖
201711
送り盆子より届きし鰻飯
福島せいぎ
万象
201712
鰻食べて淀川までは約五分
坪内稔典
船団
201805
鰻の日創業嘉永の藍暖簾
石崎和夫
沖
201808
鰻食ふうりざねがほの首伸ばし
鈴鹿呂仁
京鹿子
201808
鰻焼く一日忙し渋団扇
岡田正義
雨月
201810
路地を出る匂ひ定かや鰻の日
橋本くに彦
ホトトギス
201811
大鰻に瞬時の目打ち刃の走る
小形博子
沖
201909
焼く人も鰻も焦熱地獄の日
中島秀夫
王水
201909
前触れもあらず子よりの焼鰻
小川玉泉
末黒野
201910
鰻丼歩くと床の軋む店
秋山信行
やぶれ傘
201910
奮発の鰻一人の誕生日
山田閏子
ホトトギス
201911
鰻丼をゆつくり食べてひと日終へ
湯本正友
やぶれ傘
201911
2022年7月28日
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