もう飽きて水の濁れる浮いてこい
柳生千枝子
火星
199809
長子家を出てより暇な浮いてこい
折原あきの
船団
199811
弟は亨年五歳浮いて来い
高橋さえ子
朝
199910
浮いて来い沈みて子らは兎見に
朝妻力
俳句通信
200008
浮いて来い疾うに死んだるをとこにて
男波弘志
槐
200009
残生のもはやなりゆき浮いてこい
水野里枝
朝
200009
今生は残り一割浮いてこい
本山卓日子
京鹿子
200010
遠き日の借家の窓よ浮いてこい
林翔
沖
200010
几帳面の血は夫止り浮いて来い
奥田筆子
京鹿子
200011
浮いて来い色とりどりのうみうしも
寺田良治
船団
200102
長子次子稚くて逝けり浮いて来い
能村登四郎
沖
200108
喉仏重くてならぬ浮いて来い
森麟
銀化
200109
沈黙は金とも言へず浮いて来い
蔵持柚
銀化
200109
叩かれてひとくせありぬ浮いてこい
河口仁志
沖
200110
韃靼の鉾携へて浮いてこい
木曽岳風子
六花
200111
さもあれど恥を忍びて浮いて来い
利根川博
銀化
200111
泣くよりは笑ひながらに浮いてこい
後藤比奈夫
ホトトギス
200201
空つぽは重たきこころ浮いてこい
暮岸江
銀化
200208
てのひらは意味を手放す浮いてこい
亀田憲壱
銀化
200208
忘れたきこと思ひ出す浮いてこい
土井田晩聖
銀化
200209
錻力てふ素材いきいき浮いて来い
久染康子
沖
200209
間違へて呼びし子の名や浮いて来い
山口順子
馬醉木
200211
浮いてこいビタミンばつX不足かも
木戸渥子
京鹿子
200302
浮いて来いたかが俳句で四の五のと
利根川妙子
苑
200309
がんばらない流儀を通し浮いてこい
伊藤白潮
鴫
200309
浮いて来い錆びて第一反抗期
萩谷幸子
雨月
200309
川面より低き横丁浮いてこい
上谷昌憲
沖
200309
飛びつきりの笑顔を見せて浮いてこい
飯塚久美子
対岸
200310
浮いてこい表の門をあけしまま
木下野生
槐
200310
停泊の船の間ぞ浮いて来い
瀬川公馨
槐
200311
浮いてこい向ひの家もひとりつ子
佐々木悦子
帆船
200407
懸命に生きし半生浮いて来い
小澤菜美
苑
200409
浮いて来い夜半は蛹となる眠り
近藤喜子
槐
200409
泣き顔を見たくなければ浮いてこい
城間芙美子
対岸
200409
女波へとぶつかる男波浮いてこい
藤岡紫水
京鹿子
200409
街道の脇に売られて浮いて来い
岩木茂
風土
200410
浮いてこい天の底とは思はずに
豊田都峰
京鹿子
200410
豆腐屋のラッパ遠のき浮いて来い
環順子
遠嶺
200410
人間と生まれて笑ふ浮いてこい
水野恒彦
槐
200509
浮いてこい然るべくとは詮もなや
折橋綾子
鴫
200510
沈みたく眠りたくとも浮いて来い
長山あや
ホトトギス
200512
二世観あくまで信じ浮いてこい
伊藤白潮
鴫
200609
水底を一度見てから浮いて来い
高橋将夫
槐
200609
家計簿に書けぬ買物「浮いて来い」
中村洋子
風土
200610
ひとたびは父母を見て浮いて来い
青山丈
朝
200611
浮いてこいの昔の力手に覺ゆ
佐藤喜孝
あを
200612
浮いてこい浦島太郎にはさせぬ
井上菜摘子
京鹿子
200612
鈍感に生きて米寿よ浮いてこい
有田蟻太
苑
200709
朴訥にもの売る男浮いてこい
山崎祐子
万象
200709
せいいつぱい楽しい顔で浮いて来い
貝森光洋
六花
200710
人生に乗り替へ欲しや浮いて来い
千坂美津恵
苑
200711
水蹴つて鉄腕アトム浮いてこい
森下光江
狩
200801
十までの数のあやしき浮いてこい
坂本緑
幸せのかたち
200808
まだ役に立つ歯の疼き浮いてこい
上谷昌憲
沖
200809
浮いて来い母留守の子は何時までも
久布白文子
馬醉木
200810
誰の手も借りたくはなし浮いて来い
佐藤博美
狩
200810
この先は陽性に生き浮いて来い
岩月優美子
槐
200810
みづうみの底ひの遺跡浮いて来い
平野加代子
春燈
200908
浮いて来い竜宮城もういてこい
千田百里
沖
200909
銭湯に泳ぎしことも浮いてこい
根橋宏次
やぶれ傘
200909
忍ぶ恋隠しなさんな浮いて来い
延広禎一
槐
200911
浮いて来い無駄な力と思ひしが
佐藤博美
狩
200911
気掛りのひとつふたつや浮いて来い
矢口笑子
春燈
200912
軽石を代りとしたる浮いてこい
山田六甲
六花
201006
筋書きになきわが余生浮いて来い
千坂美津恵
苑
201008
デパートの水に売らるる浮いてこい
根橋宏次
やぶれ傘
201009
浮いてこいリストラされても浮いてこい
吉村摂護
空
201009
曾祖母とふ名を頂くや浮いてこい
宮野照子
馬醉木
201009
浮いてこいリストラされても浮いてこい
吉村摂護
空
201010
呉服屋の店棚にある浮いて来い
きくちきみえ
やぶれ傘
201011
昼風呂のお湯はぬる目に浮いてこい
天野美登里
やぶれ傘
201012
疲れし日の風呂はぬるめよ浮いてこい
刈米育子
苑
201103
荒磯へ鎮魂の酒浮いてこい
延広禎一
槐
201107
シナリオのなき人生や浮いてこい
寺村年明
春燈
201107
天窓の明かり湯槽に浮いてこい
根橋宏次
やぶれ傘
201109
時といふ万能薬や浮いて来い
川崎真樹子
春燈
201109
人の世に托卵のあり浮いて来い
秋葉雅治
沖
201109
脱原発と宣ふばかり浮いて来い
千田敬
沖
201109
縁日より家の湯船へ浮いて来い
安藤久美子
やぶれ傘
201110
横好きのものに執すよ浮いてこい
高橋道子
鴫
201110
今朝からの頭空つぽ浮いて来い
七田文子
沖
201110
定石をはづす一手や浮いて来い
鷹崎由未子
花野
201112
目のさきに母ゐる冩眞浮いてこい
佐藤喜孝
あを
201208
司る年金家計浮いてこい
高橋道子
鴫
201209
浮いてこい占ひ横丁にぎはへり
福島せいぎ
万象
201210
従心てふ出発点や浮いてこい
岡田史女
末黒野
201210
眷属に知らぬ子が居る浮いてこい
上谷昌憲
沖
201210
朱鷺・狼・日本獺浮いてこい
石崎和夫
沖
201211
浮いて来い医師に預くる子の命
田嶋洋子
七線譜
201306
甲矢乙矢ぜんぶ使うて浮いてこい
雨村敏子
槐
201310
水掛論のいつまで続く浮いてこい
岩永はるみ
春燈
201310
赦すとは愛する事よ浮いて来い
宮井知英
空
201409
遠目には金魚と見紛ふ浮いて来い
森幸
雨月
201410
浮いて来い今更ながら麻疹とは
吉村摂護
空
201411
胸底にいつも誰かが浮いてこい
久保東海司
槐
201508
何も彼も手につかぬ日や浮いて来い
綱徳女
春燈
201509
麻酔醒む力を入れて浮いて来い
山本明彦
沖
201509
浮いて来い意地張ることの有りにけり
阪倉孝子
槐
201509
浮いてこいたくさん浮かべ盥の子
きくちえみこ
港の鴉
201510
銀行のロビーの隅に浮いて来い
有賀昌子
やぶれ傘
201510
東京の片隅に住み浮いてこい
安藤久美子
やぶれ傘
201510
浮いてこい言はれなくとも浮いてやる
柳川晋
槐
201510
浮いて来い抱きて眠る青き星
近藤喜子
槐
201510
手短な電光ニュース浮いて来い
箕輪カオル
鴫
201511
あれそれで過ごしてしまふ浮いて来い
高野春子
京鹿子
201610
幸せはゆつくりと来い浮いて来い
本多俊子
槐
201708
師の亡くて遠き謦咳浮いてこい
古居芳恵
沖
201709
浮いて来い胸中いちど空(から)にして
近藤喜子
槐
201709
まつすぐに帰れぬ日なり浮いて来い
近藤牧男
春燈
201709
宰相の嘘つく世なり浮いて来い
福島せいぎ
万象
201710
腹筋は歌ふためなり浮いて来い
箕輪カオル
鴫
201710
賑やかな風呂場は昔浮いて来い
落合絹代
雨月
201810
浮いてこい句座に掛け声入り乱る
手島伸子
雨月
201811
過去よりも未来明るく浮いて来い
西村潭
沖
201811
浮いてこい浮かない人はほっとけない
阪野基道
船団
201811
ぐづる子にアンパンマンよ浮いてこい
岡本尚子
風土
201909
美しく老ゆる鏡よ浮いて来い
阪倉孝子
槐
201909
浮き来れば沈むるばかり浮いてこい
小田嶋野笛
末黒野
201910
ゆるゆると生きるのもよし浮いてこい
吉田悦子
空
201911
いりあひの金波銀波や浮いて来い
佐藤千恵
京鹿子
202001
長子次子稚くて逝けり浮いて来い
能村登四郎
沖
202005
美しく老ゆる鏡よ浮いてこい
阪倉孝子
槐
202008
サイケキテレツひよつこりと浮いて来い
辻響子
瓔
202009
もやもやの眼底画像浮いて来い
平野加代子
春燈
202108
底なしの沼の中でも浮いてこい
高橋将夫
槐
202109
舟宿の盥の中の浮いて来い
増成栗人
鴻
202110
水風呂に足をバタバタ浮いてこい
天野美登里
やぶれ傘
202111
水は湯にほつたらかしの浮いてこい
根橋宏次
やぶれ傘
202209
浮いてこい禁酒禁煙解禁日
太田良一
末黒野
202210
2023年8月19日
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