黒繻子の雨月の帯の音なりき
栗栖恵通子
槐
199901
雨を乞ふ人もありたる雨月かな
稲畑廣太郎
ホトトギス
199909
今年父雨月の逢瀬なりにけり
稲畑廣太郎
ホトトギス
199909
ふたりして雨月の空を支へけり
宇都宮滴水
京鹿子
199911
机辺すこし片づけ待てば雨月かな
和田敏子
雨月
199912
人の足確と見えいて雨月なり
金子兜太
海程
200004
束の間のむらさき明りして雨月
柏井幸子
円虹
200008
雨月いま渋き声張る海女太夫
中村房子
馬醉木
200012
空一点ほんのり明かき雨月かな
西村咲子
六花
200012
雨月なる上芳我邸の闇に風
板倉勉
六花
200101
娘の恋に気づかぬ振りの雨月かな
板倉勉
六花
200101
東海の豪雨会津の雨月かな
二瓶洋子
六花
200101
全線の乱れに乱れ雨月かな
桑垣信子
いろり
200101
病人の眠り雨月と思ひけり
田中藤穂
あを
200111
雨月一夜童貞侍らす京マチ子
時枝武
船団
200111
巫の眼鏡のうるむ雨月かな
鈴木節子
沖
200112
雨月かなささやかな宴盛り上り
石渡芳枝
沖
200112
外燈のあまり明るき雨月かな
田中としを
雨月
200112
無人駅雨月の芒誰が活けし
田中としを
雨月
200112
真夜仰ぐ空やもとより雨月なる
藤原たかを
馬醉木
200112
雨月かなひとりの夕餉湯気立てて
田辺レイ
狩
200112
雨月なり蝙蝠傘の中の顔
小山森生
槐
200112
餅搗いて雨月の茶店賑はへり
久保田美代子
酸漿
200112
筆置けば雨月の窓の細格子
小澤克己
遠嶺
200112
ほの暗く佛の在す雨月かな
長沼紫紅
朝
200202
酒徒そろふ雨月承知の佃船
秋葉雅治
沖
200211
蟹の目は眼窩にしまふ雨月かな
中原道夫
銀化
200211
月餅を妻と分け合ふ雨月かな
大橋克巳
雲の峰
200211
菓子買うて戻る雨月の道光り
加古みちよ
冬菜畑
200301
ひと寝入りしたる雨月の霽れてをり
河野美奇
ホトトギス
200302
鍵重く握り雨月の外に出づる
宇都宮滴水
京鹿子
200310
竜頭船雨月の池を巡りけり
阿波谷和子
雲の峰
200311
篝火に揺るる雨月の池面かな
前阪洋子
雲の峰
200311
やまくらげコリコリと噛み雨月かな
鎌倉喜久恵
あを
200311
時雨月雲に滲むと言ふのみぞ
滝青佳
ホトトギス
200403
見えぬまま酒盛り続く雨月かな
大塚孝一
帆船
200407
旅宿に雨月の顔の揃ひたる
稲畑汀子
ホトトギス
200409
はるばるときて雨月なり貝の蓋
八田木枯
夜さり
200409
恋文の書き出し迷ふ雨月かな
菅原健一
沖
200411
酌み交はす雨月嘆きのかぐや姫
竹内悦子
苑
200501
灯台に灯の入る鳥羽の雨月かな
大山文子
火星
200501
窓の灯の一つともれる雨月かな
里中章子
空
200502
見舞子は雨月の傘を忘れけり
諸戸せつ子
春燈
200511
軒端より雨月を愛づる尉と姥
半谷弘子
遠嶺
200601
皆白き職場の茶碗雨月夜
瀧春一
瓦礫
200606
雲明るばかりの雨月祭りけり
阿部ひろし
酸漿
200611
到来の芋あり雨月祀りけり
阿部ひろし
酸漿
200611
雨月かな開けて蓋裏金蒔絵
北川英子
沖
200611
笙ひちりき堂に響きて雨月かな
水原春郎
馬醉木
200612
所在なき卓や雨月の月見蕎麦
水原春郎
馬醉木
200612
雨月なりけり三山も八海も
小澤克己
遠嶺
200612
窓近く餅供へたる雨月かな
本間勇
酸漿
200612
歌舞伎座の明りの外へ雨月かな
芝尚子
あを
200612
森更けぬいま無月とも雨月とも
有働亨
馬醉木
200701
雨月なれど友と逢ふべく合羽着る
笠原ひろむ
濱
200701
快眠の足のつぼ押す雨月かな
山仲英子
狩
200709
雨月とて逢はねばならぬ人のあり
岡野イネ子
春燈
200711
ネックレスを総点検し雨月なり
高橋道子
鴫
200801
傘立に傘が一本雨月かな
白数康弘
火星
200809
打ち揃ひ雨月の鱸膾かな
谷村幸子
槐
200812
逝かれしと雨月の傘をたたみけり
前田貴美子
万象
200812
アップルパイでコーヒー啜る雨月かな
丑久保勲
やぶれ傘
200901
くぐもれる声に鳥啼く雨月かな
藤井美晴
やぶれ傘
200901
大声で呼ぶもいとほし雨月の灯
宇都宮滴水
京鹿子
200903
暮れて着く雨月の山路迷はずに
稲畑汀子
ホトトギス
200909
長き旅終へて雨月の家路かな
稲畑汀子
ホトトギス
200909
名月も無月雨月も半世紀
島谷征良
風土
200911
喪籠りの雨月に長湯使ひけり
石崎浄
風土
201012
ソウルタワー雨月の街を灯しけり
高村和子
春燈
201101
シネマ出て誰かに押さる雨月かな
辻前冨美枝
沖
201211
住吉の祭事流れし雨月なり
大橋晄
雨月
201212
ともがらの遺墨親しむ雨月かな
米尾芳子
馬醉木
201301
突風の雨戸を叩く雨月かな
久世孝雄
やぶれ傘
201302
小夜時雨月命日の妣話題
植田雅代
ぐろっけ
201303
笑ひつつ老見つめあふ雨月かな
神戸京子
ろんど
201412
子の辞書を無断でつかふ雨月かな
原田達夫
鴫
201412
煙草火を煙草の受くる雨月かな
河崎尚子
火星
201412
軋ませて雨月の重き戸を繰りぬ
岡野里子
末黒野
201501
燈火親し古き雨月を読み耽り
大橋晄
雨月
201501
盃に灯りの揺るる雨月かな
佐渡谷秀一
対座
201505
串団子並べ雨月の射会かな
石崎和夫
沖
201510
古伊万里の壺に雨月の蛇の目傘
たかはしすなお
瓔
201512
天麩羅の具材輪切りにせる雨月
吉武美子
沖
201612
雨月夜ひとりひとりの隠しごと
元橋孝之
京鹿子
201612
透き通る雨月の傘にネオンの灯
大久保白村
ホトトギス
201802
頬杖をついて雨月の机かな
三村純也
ホトトギス
201802
最終便雨月の雲を突き抜けて
稲畑廣太郎
ホトトギス
201809
癒ゆる日をただ待つばかりなる雨月
稲畑汀子
ホトトギス
201809
雨月かな禁を犯すはこんな夜
有松洋子
槐
201812
高潮の第二国道雨月かな
延川笙子
六花
201812
句読点打ち違ひして雨月かな
菊池和子
京鹿子
201901
屋根叩く音に雨月と気づくまで
稲畑廣太郎
ホトトギス
201909
竹筒に筆の林立雨月かな
能村研三
沖
202010
濡れ縁のすこし濡れたる雨月かな
本多遊方
春燈
202112
通さるる雨月の宿に香を聞く
大橋松枝
沖
202210
濡れ縁のすこし濡れたる雨月かな
本多遊方
春燈
202212
2023年9月27日
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