虫時雨山住にして奈落めく
山田弘子
春節
199503
浴室の水音止めて虫時雨
川口襄
遠嶺
199812
読み了へし近松心中虫時雨
山田禮子
遠嶺
199812
虫時雨耳傾ける一つあり
松尾緑富
ホトトギス
199909
大正琴かすかに流れ虫時雨
松沢久子
いろり
199910
暮れそめてなほひとしきり虫時雨
清水かつ
酸漿
199911
睡るまで身をつつみをり虫時雨
朝倉和江
馬醉木
199912
絹糸のすんなり通る虫時雨
烏羽夕摩
京鹿子
200002
夫が逝きたれかれが逝き虫時雨
山岸治子
馬醉木
200011
文机に拠れば眠たき虫時雨
穐好樹莵男
馬醉木
200011
虫時雨遠く稽古の獅子囃子
中川節子
春耕
200011
小硯に一滴足して虫時雨
保坂加津夫
いろり
200011
闇ついて生きる証の虫時雨
神田恵子
狩
200012
暮残る雲のひとひら虫時雨
丹羽啓子
馬醉木
200012
虫時雨娘は遠国に着きしころ
芳賀雅子
遠嶺
200012
山の湯は夕暮早し虫時雨
秋山義彦
酸漿
200012
藤棚を降りくる闇の虫時雨
二瓶洋子
六花
200101
しばらくは湯船で聞きし虫時雨
横倉由紀
船団
200107
休耕田は咄家潜む虫時雨
山口伸
海程
200108
虫時雨眼をこらしてもねむたくて
松沢久子
いろり
200111
半身は濡れてをるなり虫時雨
土井田晩聖
銀化
200111
虫時雨寺に残れる城土塁
出岡実
春耕
200111
夜もすがら休止符のなき虫時雨
松田欽吾
雨月
200112
病む夫に届け今宵の虫時雨
武田幸栄
円虹
200112
雨風の冶まるや否や虫時雨
梅田秀子
酸漿
200112
虫時雨ひときは激し外湯かな
大石英子
春耕
200112
日高嶺の闇ふくらます蟲時雨
安原ときこ
遠嶺
200112
幼子の寝落ちたるより虫時雨
稲岡長
ホトトギス
200201
虫時雨抜けて家路でありしかな
稲畑汀子
ホトトギス
200209
こころにも満ち干のありて虫時雨
渡辺昭
沖
200210
逝く人に夜のとばりや虫時雨
大川陽子
雲の峰
200210
虫時雨闇の舞台をほしいまま
塩川雄三
築港
200211
霧雨の上がりし峡に虫時雨
深澤テル子
濱
200212
ひたすらに師の書読みけり虫時雨
清水晃子
遠嶺
200212
角砂糖一個を落とす虫時雨
大島翠木
槐
200212
たまゆらのいのちを一途虫時雨
渡辺萩風
ホトトギス
200302
二重奏三重奏の虫時雨
小島左京
ホトトギス
200302
虫時雨犬山城をのせてをり
山田弘子
ホトトギス
200302
根気よく生きねばならず虫時雨
塩川雄三
築港
200311
西伽藍東院伽藍虫時雨
塩川雄三
築港
200311
明け暮れの虫時雨聞く湯宿かな
鵜飼紫生
雨月
200311
バス降りて静けさのます虫時雨
安部里子
あを
200311
三尺の庭にもありて虫時雨
金子慶子
遠嶺
200312
虫時雨包む厨の水音かな
三上佳子
遠嶺
200312
薪能はじまるを待つ虫時雨
西山美枝子
酸漿
200312
団欒のふと静まれり虫時雨
山村修
酸漿
200312
野仏の耳傾ける虫時雨
塩川雄三
築港
200312
工場の灯りも消えて虫時雨
小野田敏子
築港
200312
虫時雨眠り薬に寝落ちたる
溝内健乃
雨月
200312
通過待つローカル線の虫時雨
石添火人
帆船
200312
虫時雨舌に消したる句の行方
佐藤よしい
風土
200401
灯を消してボリューム上がる虫時雨
宮川秀穂
苑
200401
くちもとに指あて宵の虫時雨
津田礼乃
遠嶺
200401
みどり児の寝入りし後の虫時雨
栢森定男
風よ
200407
虫時雨脈の乱れの気にかかり
森理和
あを
200410
拳二つやがてひらきぬ虫時雨
鈴木節子
沖
200411
ひとひとり居なくなる夜の虫時雨
金子輝
春燈
200411
薬師寺の籠りの闇の虫時雨
落合由季女
雨月
200411
恙の身寄する窓辺の虫時雨
喜多初枝
雨月
200411
茶を点ず女三人虫時雨
東亜未
あを
200411
待機せるバスを取り巻く虫時雨
岡本直子
雨月
200412
雨止んでたちまち門辺虫時雨
稲畑汀子
ホトトギス
200509
目覚めては又夢に入る虫時雨
片山タケ子
鴫
200511
ひとむらの草のふくらむ虫時雨
服部早苗
沖
200511
とつぷりと暮れし山より虫時雨
浅田浦蛙
対岸
200511
伴奏はいつも脇役虫時雨
塩川雄三
築港
200511
虫時雨頭痛なかなか癒えません
長崎桂子
あを
200511
鉦叩より始まりし虫時雨
谷本春代
狩
200512
昼暗き道詮の墓虫時雨
塩川雄三
築港
200512
個個の虫聞きわけ出来ず虫時雨
塩川雄三
築港
200512
虫時雨臥し所に聞ける浄土かな
古賀美喜恵
河鹿
200601
慰めのひとこと言へず虫時雨
大石たか
遠嶺
200601
虫時雨移るともなく更けにけり
藤岡紫水
京鹿子
200601
虫時雨闇を大きくしてをりぬ
松下道臣
まんまる
200607
夢断ちて断ちてこの世の虫時雨
小澤克己
塩竃
200608
石据ゑて石忘れたり虫時雨
伊丹さち子
馬醉木
200610
虫時雨踏みたるものの大き音
荒井和昭
鴫
200611
足病みし机上乱るる虫時雨
坪井洋子
朝
200611
虫時雨妻籠の宿の外厠
中山勢都子
苑
200612
虫時雨ききつつ綴る農日誌
岡本崇
沖
200612
虫時雨モーツアルトのカデンツア
秋岡朝子
槐
200612
夢に逢ふ人を待たせて虫時雨
山田暢子
風土
200612
目をつぶる心の糧の蟲時雨
長崎桂子
あを
200612
虫時雨五百阿羅漢影五百
安武晨子
空
200612
声和してゐるにはあらず虫時雨
出来由子
鴫
200701
気掛りな文夜通しの虫時雨
野口光江
遠嶺
200701
眠り猫見る回廊に虫時雨
木暮剛平
万象
200701
戸を閉めて少し遠のく虫時雨
今越みち子
万象
200701
虫時雨一泣きして笑ひましよ
新関一杜
京鹿子
200709
情を秘め景を詠めよと虫時雨
小澤克己
遠嶺
200709
伽羅蕗の味が尾を引く虫時雨
森理和
あを
200710
雨あとのことに賑やか虫時雨
上慶子
狩
200712
籠城の推敲句敲き虫時雨
内野俊子
春燈
200712
喪ごころを深めしままに虫時雨
緑川啓子
馬醉木
200712
結界のこゑを一つに虫時雨
高橋さえ子
朝
200712
四阿のあたりいよいよ虫時雨
寺島京子
狩
200802
路地の灯の水面に揺れて虫時雨
寺島京子
狩
200802
正面に街騒背ナに虫時雨
稲畑廣太郎
ホトトギス
200809
判じ読む虫塚の句碑虫時雨
柴崎甲武信
月日
200811
口遅き三才児なり虫時雨
竹内悦子
璦
200811
うす暗き楢の林の虫時雨
中島玉五郎
峰
200811
残年是遊俳自適虫時雨
守屋井蛙
酸漿
200811
虫時雨さらさらの血になりさうな
細川洋子
沖
200811
虫時雨夜の帳の濃かりけり
湯上稔子
春燈
200812
虫時雨止めり訃報に驚けば
泉田秋硯
苑
200812
虫時雨みんなやさしき人の中
新井如月
炎環
200812
水撒の音かと思ふ虫時雨
川原典子
酸漿
200812
虫時雨夫の手を借る湿布薬
平野みち代
鴫
200901
組み終へし全てのぺージ虫時雨
小澤克己
遠嶺
200911
老いてなほ繰言多し虫時雨
羽賀恭子
峰
200911
虫時雨忍び泣き合ふ無言館
岡野ひろ子
峰
200911
二人居の黙の深まる虫時雨
吉沢陽子
峰
200911
しばらくは湯船にて聞く虫時雨
海老名ムツヱ
酸漿
200911
灯を落しさても山家の虫時雨
伊東和子
璦
200912
顔の無き地蔵三体虫時雨
長谷川いづみ
炎環
200912
虫時雨漁家のこぼせる灯の暗く
松本三千夫
末黒野
200912
子の寝息聞きし日遠く虫時雨
近藤倫子
ぐろっけ
200912
晴れし夜の地上うるほす虫時雨
浅野恵美子
酸漿
200912
喪帰りの空仰ぎけり虫時雨
上原光代
酸漿
200912
近づいて来ては遠のき虫時雨
嶋田一歩
ホトトギス
201001
柴の戸を訪へば句碑あり虫時雨
小山徳夫
遠嶺
201001
虫時雨古刹に渡る丸木橋
松林順子
雨月
201001
渋滞の車窓開くれば虫時雨
塩出眞一
ぐろっけ
201001
心経を写し終へたり虫時雨
川口襄
遠嶺
201002
文科より法科への径虫時雨
國保八江
やぶれ傘
201002
学び舎は眠りにつきぬ虫時雨
齋藤朋子
やぶれ傘
201002
コツコツと我が靴音と虫時雨
佐竹千代
やぶれ傘
201002
虫時雨闇を深めてをりにけり
稲畑廣太郎
ホトトギス
201005
星見台までは届かぬ虫時雨
稲畑汀子
ホトトギス
201009
仏壇の父となりたり虫時雨
米山喜久子
峰
201011
いつからの鍵の二重よ虫時雨
甲州千草
沖
201011
海鳴りに勝り淡路の虫時雨
大橋晄
雨月
201011
虫時雨冷たき菜イを並べけり
佐渡谷秀一
春燈
201012
篠竹の生ふる中洲や虫時雨
大橋伊佐子
末黒野
201012
静かさの二人に戻る虫時雨
大川暉美
末黒野
201012
楽章の移るに間あり虫時雨
竹村清繁
末黒野
201012
塾の灯の煌々として虫時雨
藤田満枝
万象
201012
鈴の緒を振り過ぎ乱す虫時雨
中原吟子
雨月
201012
耳鳴を忘れてゐるや虫時雨
宮沢治子
春燈
201101
虫時雨渡り廊下の灯されて
佐藤千恵
京鹿子
201101
かなかなに覆ひ被さる虫時雨
竹田ひろ子
ろんど
201101
たまさかの一人の夕餉虫時雨
國保八江
やぶれ傘
201101
追伸を書き終へてより虫時雨
稲畑廣太郎
ホトトギス
201109
虫時雨夫に涙をぬぐはるる
?コ田千鶴子
花の翼
201111
宿坊の馳走の一つ虫時雨
阪本哲弘
璦
201112
無住寺の山の賑はひ虫時雨
羽賀恭子
峰
201112
風穴の闇の深さや虫時雨
大内和憲
万象
201201
老われに余日とてなき虫時雨
竹下陶子
ホトトギス
201204
虫時雨都心の伽として淡し
稲畑廣太郎
ホトトギス
201209
不夜城を遠くに置きて虫時雨
稲畑廣太郎
ホトトギス
201209
都心にも闇の戻りて虫時雨
稲畑廣太郎
ホトトギス
201209
虫時雨とは木星を近付けて
稲畑廣太郎
ホトトギス
201209
窓開けて眠りを誘ふ虫時雨
岡野安雅
かさね
201211
露天湯や星降る四方の虫時雨
大内由紀
末黒野
201211
寡黙なる二人をつなぐ虫時雨
長久保郁子
かさね
201211
虫時雨声無き声の夫偲び
横山昭子
雨月
201212
虫時雨ぼくも泣き虫お仲間に
千田敬
沖
201212
地震に覚めし午前三時や虫時雨
島野ひさ
万象
201212
喪心にい行く島径虫時雨
横山昭子
雨月
201212
須磨浦の鉄路はさみし虫時雨
高松由利子
火星
201212
人間味あふるる人や虫時雨
鈴木としお
春燈
201212
尼二人黙し聞きをり虫時雨
若江千萱
雨月
201212
碁盤拭く一人の夜や虫時雨
堀光子
春燈
201301
篝火に残る舞台や虫時雨
浅岡麻實
末黒野
201301
終バスを降りて家まで虫時雨
國保八江
やぶれ傘
201301
教会の墓前礼拝虫時雨
芝孝子
末黒野
201302
吹き抜けの梁ひびきあふ虫時雨
山田六甲
六花
201310
虫時雨湯舟に沈み雑事無く
東秋茄子
京鹿子
201312
書に倦みて明りを消しぬ虫時雨
鍋島武彦
末黒野
201312
集中の途切れをつなぐ虫時雨
甲州千草
沖
201312
武将の魂祀る木曽路や虫時雨
村上美智子
雨月
201312
遠回りして荒庭の虫時雨
佐藤喜仙
かさね
201312
虫時雨残る命を大切に
田村すゝむ
風土
201401
野外能はじまる前や虫時雨
稲垣佳子
末黒野
201401
白雲の夜空に著し虫時雨
岡野里子
末黒野
201401
一行を写し間違ひ虫時雨
占部美弥子
末黒野
201401
その中の一匹みだれ虫時雨
金田けいし
ろんど
201402
自販機の灯を遠巻きに虫時雨
林昭太郎
沖
201411
黙祷の黙を埋めて虫時雨
山本喜朗
雨月
201411
学舎の残る里山虫時雨
及川信二
末黒野
201412
終バスを降りて家まで虫時雨
國保八江
やぶれ傘
201412
独唱も輪唱もあり虫時雨
日下部亞こ
ろんど
201412
虫時雨の中の家路を急ぎけり
岡野ひろ子
峰
201412
虫時雨ぴたりと止みし無気味さよ
宮本加津代
万象
201501
虫時雨妹山背山寄りさうて
佐藤凉宇子
ろんど
201501
光太郎山廬包みて虫時雨
河野美奇
ホトトギス
201501
虫時雨また言訳をする男
吉田葎
空
201502
草ぐさの闇の膨らむ虫時雨
吉田克美
ろんど
201502
虫時雨檀蜜隠れているだろう
津田このみ
船団
201505
終電車降りて五キロの虫時雨
稲畑廣太郎
ホトトギス
201509
ホームより列車の長し虫時雨
橋本順子
槐
201512
満天の星満目の虫時雨
河野美奇
ホトトギス
201602
リサイクルをへて上野の虫時雨
貫井照子
やぶれ傘
201602
みちのくの旅も終りの虫時雨
稲畑汀子
ホトトギス
201609
虫時雨抜けてふたたび虫時雨
稲畑汀子
ホトトギス
201609
みちのくの旅も終りの虫時雨
稲畑汀子
ホトトギス
201609
虫時雨抜けてふたたび虫時雨
稲畑汀子
ホトトギス
201609
明日捨てる本山積みに虫時雨
池田光子
風土
201611
一息を入れて気付きし虫時雨
時澤藍
槐
201612
歌好きの句友の通夜や虫時雨
大村かし子
万象
201612
虫時雨茶筒の底の渋さかな
石森理和
あを
201610
もろともに突かうぞ夜々の虫時雨
下田奉枝
雨月
201702
叱られてひそむ納屋口虫時雨
沼田巴字
京鹿子
201709
氏素性問ふことのなき虫時雨
沼田巴字
京鹿子
201710
さざなみのやうシーツ敷く虫時雨
加藤峰子
鴫
201711
2021年9月17日
作成