大蚯蚓けふは斜面の畠仕事
中原道夫
銀化
199810
蟻あまたのた打つ蚯蚓押さへつつ
小林清之介
風土
199908
子雀が呑みこむまでの大蚯蚓
田中英子
火星
199909
大蚯蚓もんどり打って輪となれり
三村禮子
酸漿
199911
糸蚯蚓身体使って語るかな
山内崇弘
海程
199911
昼しずか太さ蚯蚓を驚かせ
池田澄子
船団
200009
炎暑なんぞものかは裸蚯蚓這ふ
市場基巳
槐
200010
人去にて穴より出づる山蚯蚓
竹内悦子
槐
200012
3千匹の蚯蚓お休み夜の土手
蔵前幸子
船団
200102
終戦日道に蚯蚓の乾きをり
武井美代子
風土
200111
降臨の地は大いなる山蚯蚓
岩岡中正
円虹
200202
鍬以前よりの蚯蚓でありにけり
暮岸江
銀化
200207
スコップに乗りし蚯蚓のサンバかな
荻島雪子
百鳥
200208
スコップのひるむ蚯蚓の赤裸
徳永真弓
百鳥
200208
土塊を解す鍬先蚯蚓跳ね
竹内喜代子
雨月
200208
土を篩へば縞蚯蚓躍り出づ
桑田眞佐子
火星
200209
虫扁の殊に蚯蚓のあはれなり
深澤鱶
火星
200209
ゆく方へまづ縮みたる縞蚯蚓
嵯峨根鈴子
火星
200209
山蚯蚓ぶ厚き唇をしてゐたる
黒田咲子
槐
200209
山蚯蚓あてのあるかに這ひ出せり
市掛基己
槐
200210
一筋の光の蚯蚓出でにけり
嵯峨根鈴子
火星
200210
見入る人隠れる人や大蚯蚓
川合正男
ぐろっけ
200212
灯台を降りきて蚯蚓見てをりぬ
大串章
百鳥
200304
太陽や自死の蚯蚓の砂まみれ
伊藤白潮
鴫
200308
蚯蚓まで雨に厭うて路地の上
藤居長治
築港
200309
頑なに蚯蚓肥らせ有機農
杉本重雄
苑
200311
九十九谷蚯蚓は坂を転がれり
渡邉春生
百鳥
200311
引っ込みのつかず蚯蚓の干涸びて
吉村幸子
雨月
200311
一鍬を入れて蚯蚓を驚かす
二瓶洋子
六花
200312
石に落ち蚯蚓はしばし氣絶せり
佐藤喜孝
あを
200406
白昼やメビウスの輪に大蚯蚓
中田禎子
槐
200409
干からびし蚯蚓掃きたりこともなく
平野きぬ子
八千草
200501
嵐去りおどり出でたる巨蚯蚓
西島みね子
八千草
200501
喪支度や乾いてゐたる大蚯蚓
城孝子
火星
200509
これやこの蟻に食はるる大蚯蚓
村田さだ子
酸漿
200509
這ひ出して犬驚かす大蚯蚓
稲岡長
ホトトギス
200510
大蚯蚓喉からからしてきたる
近藤公子
槐
200510
水浴びて蚯蚓ももいろなりしかな
石脇みはる
槐
200511
蚯蚓手にかくして母をおどろかす
橋本幸子
百鳥
200511
蚯蚓の死蟻に生かさる輪廻かな
落合由季女
雨月
200511
漫ろ雨あがる蚯蚓のいくところ
吉弘恭子
あを
200610
昨日来て今日来てやごにやる蚯蚓
市場基巳
槐
200611
大蚯蚓衿巻をして出でにけり
竹内悦子
槐
200702
伸びきつて縮んで伸びて這ふ蚯蚓
滝沢伊代次
万象
200705
のたうてる姿に燥き蚯蚓死す
林翔
沖
200707
啣へられ嘴の蚯蚓のよく伸びる
相良牧人
鴫
200708
体中土をまぶして蚯蚓這ふ
秋千晴
空
200708
情欲に悶えるごとし大蚯蚓
上原重一
峰
200709
Sの字を描きし蚯蚓のかばねあり
小林清之介
風土
200709
みどり児を抱いて蚯蚓を跨ぎけり
高尾豊子
火星
200710
蚯蚓出づ腸(病む暗き日の木陰
布川直幸
峰
200807
古釘のやうな蚯蚓の死なりけり
佐藤山人
鴫
200809
角刈りにされ行く植木蚯蚓出づ
有馬克代
鴫
200809
青すぎる夜と蚯蚓は思いおり
貝森光洋
六花
200907
片側に土盛り上げて蚯蚓出る
秋千晴
空
200907
大蚯蚓悠々横切る芝生かな
山口キミコ
璦
200908
太蚯蚓曲りきれずに立ち上がり
大木茂
万象
200909
渇く地を迷ひ蚯蚓はどこへ行く
佐方敏明
ぐろっけ
200910
朝は漲る蚯蚓の紅を跨ぎ勤む
伊藤白潮
鴫
201002
草引けば弾き出されし蚯蚓かな
赤瀬川恵実
万象
201009
畝を立つ詫びを蚯蚓に入れながら
石田きよし
鴫
201009
蚯蚓出て這へば這ふほど砂衣
秋千晴
空
201009
地にくねる蚯蚓を鶏の奪ひあふ
柴田志津子
空
201011
蚯蚓ゐる土をよしとし畝つくる
谷村幸子
槐
201105
幼子の尿(に蚯蚓伸び縮み
藤田かもめ
ぐろっけ
201108
音たてて蚯蚓の夢を裏返す
松本恒子
ぐろっけ
201108
身をよぢる蚯蚓哀れや石畳
宮崎左智子
璦
201109
蚯蚓這ふ芝生は鳥のレストラン
楯野正雄
苑
201109
蚯蚓掘る釣るる小鮒の数思ひ
鎌田篤
雨月
201109
目も鼻もなくて蚯蚓の真暗がり
今井千鶴子
ホトトギス
201110
南天の花屑まみれ大蚯蚓
坂口夫佐子
火星
201110
蚯蚓這う車道に迷い泥溜り
水野弘
ぐろっけ
201201
水の辺のももいろ蚯蚓あさぐもり
山尾玉藻
火星
201207
沈黙を通せし虜囚夜の蚯蚓
物江康平
春燈
201208
言ふことを言はずに蚯蚓乾きをり
浅野吉弘
沖
201210
屈伸の蚯蚓に野辺の草枯れて
柴田朱美
京鹿子
201312
東京都目黒区碑文谷の蚯蚓
稲畑廣太郎
ホトトギス
201403
蚯蚓這ふ土の一部になり切つて
稲畑廣太郎
ホトトギス
201406
蚯蚓這ふ二府四県を股に掛け
稲畑廣太郎
ホトトギス
201406
畑といふ地球の要蚯蚓這ふ
稲畑廣太郎
ホトトギス
201406
何急ぐ蚯蚓の腹の伸び縮み
川崎真樹子
春燈
201407
草を抜け出す蚯蚓にも仔細あり
大畑善昭
沖
201408
乾びたる蚯蚓を数へつつ駅へ
大崎紀夫
やぶれ傘
201408
乾びたる蚯蚓に潮の匂ひかな
きくちきみえ
やぶれ傘
201408
ガザ斯くや路上に蚯蚓数多死す
村高卯
鴫
201412
ひと振りに濡れ身の蚯蚓踊り出づ
落合絹代
風土
201507
文字通り丘を引きずる蚯蚓かな
八木健
八木健俳句集
201509
熊野みち蚯蚓の屍灼けてをり
竹内悦子
槐
201509
道ばたの蚯蚓は埃だらけなり
大崎紀夫
虻の昼
201510
真直ぐに干からびてゐる蚯蚓かな
小山陽子
やぶれ傘
201510
飛び石に蚯蚓からびてゐたりける
中田禎子
槐
201510
くねくねと鍬先抜くる蚯蚓かな
山崎稔子
末黒野
201510
乾びたる蚯蚓跨げば歯科医院
きくちきみえ
やぶれ傘
201511
いつたんは縮みてすすむ蚯蚓かな
戸栗末廣
空
201610
のたうちし形に蚯蚓の乾びをり
笹村政子
六花
201610
耕すや影来て蚯蚓くはへ去る
後藤マツエ
槐
201709
舗道行く蚯蚓にコロンブスの遺志
三木亭
槐
201709
2023年6月15日
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