葛湯吹き世に従順な齢なる
山田弘子
春節
199503
葛湯溶き混沌とある明日かな
山田弘子
春節
199503
夏風邪のうすむらさきの葛湯かな
岡本眸
朝
199810
強がりのほどけてゐたる葛湯かな
外川玲子
風土
199903
母の眼のいよいよ細し葛湯吹く
前田陶代子
朝
199904
食欲のなほ戻らざる葛湯かな
林昇
狩
199905
源見せまじくとろとろ葛湯煮て
杉山瑞恵
雨月
199906
葛湯好み俗気抜けきし気色かな
渡邊牢晴
雨月
199906
葛湯吹き妻とあれこれ旅のこと
田中清司
狩
199907
葛湯吹くその先にある海の荒れ
金國久子
青葉潮
199907
葛湯吹くふたりで吹いてなほさびし
千田百里
巴里発
199911
あたゝめし葛湯に夜を更かしけり
稲畑汀子
ホトトギス
199912
龕の裏の真白きに吹き葛湯かな
今木偉郎
槐
199912
すきとおる葛湯をさます吐息かな
廣嶋美惠子
船団
199912
声嗄れ媼に葛湯もてなさる
相沢有理子
風土
200002
六道の辻にて葛湯商はむ
中原道夫
銀化
200002
葛湯煮て森羅万象寂かなり
守屋吉郎
馬醉木
200002
溶いてなほ葛粒混じる葛湯かな
高橋将夫
槐
200003
身のうちの虫を鎮めむ葛湯練る
門馬貴美子
京鹿子
200004
昼灯葛湯みずから瞑想す
汎馨子
海程
200006
葛湯かき心吉野に通はせて
辻口静夫
ホトトギス
200008
二三日前が曖昧葛湯とく
岡本眸
朝
200101
さむさうな木があり葛湯吹いてをり
山尾玉藻
火星
200102
葛湯練る演歌に心融かしつつ
泉田秋硯
苑
200104
京菓子の葛湯を溶くに淡雪降る
村越化石
濱
200105
無柳かな葛湯して夜を薄めたる
峯尾文世
銀化
200105
葛湯吹く目の柔らかき人ありて
竹市悠紗
京鹿子
200112
師の遺著の仄かにぬくし葛湯とく
柴田雪路
沖
200201
葛湯吹き比枝の地獄に臆しをり
内山芳子
雨月
200202
才氣なといつかつまづく葛湯に玉
中原道夫
銀化
200202
匙重くなりて葛湯の出来上がる
山田弘子
円虹
200202
むづかれる胃に入る葛湯とろとろと
足立典子
雨月
200203
とけて透く葛湯の底に母がみゆ
森田蝌蚪
朝
200203
転生を少し信じて葛湯かな
田代史子
馬醉木
200204
腕白を寝かせて母の葛湯吹く
喜多初枝
雨月
200206
ひたすらに眠る合間の葛湯かな
赤座典子
あを
200303
笛を吹くやかんに呼ばれ葛湯溶く
渡辺薫子
円虹
200304
葛湯吹く明日は提出期限かな
安部知子
帆船
200304
葛湯飲む父の出世語りかな
代田青鳥
風土
200304
明日ありて葛湯に生姜したたらす
大野英美
風土
200304
水族館葛湯のごときものありぬ
佐藤喜孝
青寫眞
200304
葛湯して太陰暦の移りゆく
佐藤喜孝
青寫眞
200304
至らぬと思ひ知りたる葛湯吹く
あさなが捷
空
200306
梅雨寒や葛湯作りてしのぎをり
北村香朗
京鹿子
200311
反古ふえてゆくや葛湯を溶き乍ら
稲畑汀子
ホトトギス
200312
貧乏の話きりなし葛湯吹く
苑実耶
空
200312
宵の雨聞くや葛湯を吹きさまし
岡本明美
雲の峰
200401
熱の夜の吹きくぼまする葛湯かな
戸木下節子
雲の峰
200401
雨だれの乱るるリズム葛湯吹く
川端実
遠嶺
200402
うず潮のやうにかきまぜ葛湯かな
竹内悦子
槐
200402
いちにちの力の素の葛湯のむ
望月末夫
百鳥
200402
葛湯吹き母娘のこころぬくもりぬ
岡淑子
雨月
200403
葛湯吹き仏となりし父母懐古
藤田誉子
雨月
200403
葛湯吹き未だ癒えざる旅疲れ
堀田恵美子
雨月
200403
天地を分かつ神話や葛湯とく
清水晃子
遠嶺
200404
こともなく一日終り葛湯ふく
井手房野
築港
200404
一人吹く葛湯に遠嶺くもりけり
池尻足穂
雲の峰
200502
献眼の登録済ませ葛湯吹く
野口香葉
遠嶺
200503
葛湯吹く揃へし膝の頼りなく
高畠陽子
河鹿
200503
世はなべて楽市楽座葛湯吹く
伊藤希眸
京鹿子
200503
我にあと幾たびの冬葛湯溶く
岡本眸
朝
200503
お互ひに物忘れ言ひ葛湯吹く
武部光子
濱
200504
ひたすらに葛湯吹きをり明日ありと
林玲子
沖
200504
玻璃越しのきびしき朝気葛湯など
北村香朗
京鹿子
200506
地獄変葛湯の湯気のゆらぎかな
高橋将夫
星の渦
200507
広き背に男のもろさ葛湯吹く
山元志津香
八千草
200508
葛湯して大台の齢さし迫る
伊藤白潮
鴫
200512
納品の疲れ癒さる葛湯かな
藤田信義
春燈
200601
口あけて待つみどり児へ葛湯吹く
遠藤真砂明
沖
200601
葛湯吹く二人に言葉などいらぬ
中上照代
火星
200602
葛湯飲むキッチンに静かなる時
大海いつ子
百鳥
200604
諍ふも絆のうちや葛湯吹く
生方義紹
春燈
200605
てのひらに母の手づくり葛湯吹く
片山茂子
遠嶺
200605
葛湯吹き吾が身励ますごとくなり
峯桜子
遠嶺
200605
葛湯吹きよぎる記憶のひとかけら
糸井芳子
朝
200605
老どちの葛湯所望や餘花の雨
瀧春一
常念
200606
喜怒哀楽せはし七曜葛湯吹く
山元志津香
八千草
200607
旅疲れかと葛湯溶きくれしこと
稲畑汀子
ホトトギス
200612
久々に雨の日となる葛湯かな
鷹羽狩行
狩
200701
仲直りの頃合ひ見つつ葛湯吹く
石田玲子
苑
200703
口揃へ葛湯を吹くも縁かな
西山美枝子
酸漿
200703
手応へのありて葛湯の透きて来る
山部淑子
濱
200704
葛湯溶く柔らか過ぎず固からず
鈴木榮子
春燈
200704
葛湯から春の匂ひも感じつつ
吉弘恭子
あを
200704
心地よき旅の疲れや葛湯吹く
片野光子
ぐろっけ
200705
万能の母の葛湯に及ばざる
伊藤白潮
鴫
200801
考へるうちに葛湯の冷めてきし
高橋将夫
槐
200802
姑の忌の更けてひとりの葛湯ふく
牧悦子
濱
200803
葛湯解く熱湯に指焼ながら
山田六甲
六花
200803
母の齢越えて母恋ひ葛湯吹く
服部珠子
雨月
200804
いまあるを謝しおもむろに葛湯吹く
大谷茂
遠嶺
200806
お六櫛買はぬ後悔葛湯溶く
前川ユキ子
璦
200902
葛湯溶く手先凍えてをりにけり
山田六甲
六花
200902
病み居れば母が葛湯のむかしかな
河本由紀子
春燈
200903
熱の児の素直に啜る葛湯かな
竹内悦子
璦
200904
葛湯吹く泪なき目を潤して
藤兼静子
鴫
200904
葛湯して幸せといふはこんなこと
須藤トモ子
峰
200905
サッカーもゴルフも知らず葛湯吹く
上原恒子
雨月
201001
葛湯掻く匙音かすか夜更けかな
荒井和昭
鴫
201002
ストレスが胃に来る気配葛湯吹く
宮川秀穂
苑
201002
今さらに母の恩愛葛湯吹く
割田容子
春燈
201002
カオスより魂よみがへる葛湯かな
冨松寛子
槐
201002
華やぎに母遠くをり葛湯吹き
城台洋子
馬醉木
201003
酸素マスクの母葛湯のやうな眠り
成宮紀代子
沖
201003
葛湯とく先師遺愛の九谷焼
山田春生
万象
201003
神妙な顔してたかが葛湯吹く
川上久美
ろんど
201003
葛湯とくたちまち渦がゑがかるる
近藤きくえ
槐
201004
冷ますともなく掻きまぜて葛湯かな
鷹羽狩行
狩
201012
葛湯溶く短編集の一区切り
北尾章郎
璦
201101
み吉野の葛湯にむせる別れかな
笹村政子
六花
201103
押入れの古書読み疲れ葛湯かな
田中眞
璦
201104
老いにけらしな葛湯にも舌を焼き
三村純也
ホトトギス
201104
葛湯吹くすとんと暮るる渓を見て
中條睦子
万象
201110
ぼんやりと見ゆるこの先葛湯溶く
?コ田千鶴子
花の翼
201111
吉野よりもたらされたる葛湯とて
稲畑汀子
ホトトギス
201112
御火焚の榾はぜにけり葛湯吹く
浜口高子
火星
201202
また同じ思ひに戻り葛湯吹く
天谷翔子
火星
201202
葛湯吹いて明日の天気はかりをり
米澤光子
火星
201202
在りし日のはらから偲び葛湯吹く
小栗八重
沖
201203
身の内に二病三病葛湯掻く
浅井吉雄慈
夕端居
201203
二度ばかり吹いて葛湯を渡しけり
高橋将夫
槐
201204
葛湯吹き湯気の時空に遊びけり
服部早曲
空
201205
できたての海に譬ふる葛湯かな
吉田希望
璦
201302
なげやりな己諫めて葛湯吹く
川上久美
ろんど
201302
歪みたる軸をただして葛湯のむ
谷村幸子
槐
201302
葛湯吹き忘るるといふ母の癖
藤井彰二
馬醉木
201303
更けてより変はる風音葛湯吹く
師岡洋子
ぐろっけ
201303
金粉の入りし葛湯や河原町
今井春生
空
201303
熱の児に一匙づつの葛湯かな
宮平静子
雨月
201304
障害の兄と笑うて葛湯飲み兵庫松村晋
小菅美代子
ぐろっけ
201304
加湿器にアロマ加へて葛湯刻
中井登喜子
璦
201305
むかしむかしあるところにと葛湯とく
原ゆき
船団
201306
想ひ出を独り手繰りて葛湯吹く
川上久美
末黒野
201404
睡魔きて睡魔いとしく葛湯かな
石坂比呂子
末黒野
201404
亡き妻にせしごと葛湯吹き冷ます
小川玉泉
末黒野
201404
嫁姑口尖らせて葛湯吹く
原友子
空
201404
葛湯吹き各駅停車の八十寿かな
金田けいし
ろんど
201405
一日に一句のならず葛湯ふく
山崎稔子
末黒野
201405
葛湯溶く身体髪膚父母に受け
水原春郎
馬醉木
201501
再会の齢しみじみ葛湯吹く
城台洋子
馬醉木
201501
こころ挫けさうな夜もあり葛湯吹く
浜福惠
風土
201501
身勝手はかんにんしてね葛湯とく
森下康子
璦
201502
晩節の今を愛しみ葛湯吹く
白井友梨
馬醉木
201502
叱られし顔を上げずに葛湯吹く
天谷翔子
空
201502
火男の顔して葛湯冷ましけり
田村園子
鴫
201502
葛湯吹く胸の弱虫太らせつ
平野みち代
鴫
201503
葛湯吹く祖母在りし夜のぬくかりき
増田甚平
ろんど
201503
気塞ぎをとろり葛湯に融かしけり
岸上道也
京鹿子
201503
夜更かしの両手の中の葛湯かな
青木朋子
空
201504
叱られし顔を上げずに葛湯吹く
天谷翔子
空
201505
稿ひとつ終りし葛湯吹きにけり
鈴木静恵
花こぶし
201508
寝ねられず葛湯吹きをり風の音
石原節子
春燈
201602
葛湯吹く亡き人が胸占むる夜は
千手和子
馬醉木
201602
喪中状の嵩や葛湯を熱く溶き
西村梛子
馬醉木
201602
ややありて葛湯心に効いてきし
立村霜衣
ホトトギス
201603
叱られて俯くさまに葛湯吹く
成田美代
鴫
201603
ほつほつと万歩あるきし葛湯かな
田代民子
空
201604
葛湯吹き模糊と夢見る子の未来
升田ヤス子
玫瑰
201604
葛湯吹くいきなり昭和蘇る
笠井敦子
鴫
201604
葛湯吹く幸のそれぞれ介護園
三木千代
鴫
201604
またの世は情死もよけれ葛湯吹く
原友子
空
201605
怪我せしを早々葛湯溶きくれし
稲畑汀子
ホトトギス
201610
暁の病室に掻く葛湯かな
荒井ハルエ
春燈
201612
電卓をゼロに戻して葛湯吹く
内田美紗
船団
201612
おとといの感激きょうの葛湯かな
原ゆき
船団
201612
成りゆきのままよ葛湯を吹いてをり
あさなが捷
空
201701
都にて吉野いとしむ葛湯かな
夏生一暁
馬醉木
201702
葛湯吹く昭和忘るるやうに吹く
安居正浩
沖
201703
手土産は吉野葛湯と決めをりぬ
山本漾子
雨月
201703
裏山を揺する夜風や葛湯溶く
沼田巴字
京鹿子
201710
吹いてからのむべし葛湯さうすべし
定梶じょう
あを
201802
はらからと明日は離郷の葛湯かな
浜福惠
風土
201802
黙考の父の晩年葛湯吹く
森屋慶基
風土
201802
葛湯吹き祖母の民話を聞きしこと
荻野周子
雨月
201803
透明は幸呼ぶに似て葛湯溶く
千田百里
沖
201901
生涯の誤算も良しや葛湯溶く
平野多聞
槐
201902
葛湯冷め期限切れなる我が記憶
小長谷紘
末黒野
202003
朝刊は休みなりけり葛湯飲む
天野美登里
やぶれ傘
202003
冷ましては嬰に一匙葛湯かな
志方章子
六花
202004
飲み了へて眉間広ごる葛湯かな
荒井千佐代
空
202005
賑はひに入りきれない葛湯吹く
あさなが捷
空
202006
風の夜や母せしやうに葛湯ねる
大西乃子
空
202007
梅雨明くる「吉野葛湯」を吹いてをり
中村洋子
風土
202010
晩年の予期せぬ蟄居葛湯とく
卜部黎子
春燈
202103
舌先に葛湯のやけど今日も晴
倉澤節子
やぶれ傘
202103
真夜覚めて木匙のあはき葛湯かな
升田ヤス子
六花
202104
葛湯溶く妻や吉野のみやげとて
小林拓路
末黒野
202105
葛湯とく話上手と聞き上手
里村梨邨
沖
202204
思ひ出すことありてより葛湯とく
山本則男
空
202210
2022年12月20日
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