林道を熊に聞かせむ音たてて
堀義志郎
火星
199902
熊の胆冬のかたちをしてゐたる
大嶋康弘
銀化
199902
口開けて雪を喜ぶ園の熊
村瀬初実
春耕
199904
知恵ひとつふたつ増やして熊穴に
ふけとしこ
船団
199904
熊汁や町の行事の一つ済む
酒井多加子
俳句通信
199904
冬眠の熊の荒息つくことも
ふけとしこ
船団
199906
熊は穴に鯉は岩裏あらかしこ
丸山佳子
京鹿子
200002
熊肝や木枯を聴く星を聴く
彌榮浩樹
銀化
200002
杉皮はぐ親子の熊や雪よごす
山田耕子
京鹿子
200004
熊眠る山裾に寝てよく眠る
正木ゆう子
槐
200005
熊皮の弾痕炉辺の長話
阿部寒林
夢
200010
鯨肉・鹿肉・熊肉・鷹の肉も美し
男波弘志
槐
200101
曲屋の上座に大き熊の皮
和田和子
馬醉木
200002
遠雷や熊の内部は真っ暗な
児玉硝子
船団
200103
家郷なり源流熊の糞洗う
金子兜太
海程
200107
五箇山に啜る熊汁舌を焼く
塩路隆子
苑
200112
アイヌ村雷捨場に熊出没
小田元
六花
200112
星近し熊踊の輪のふくれたる
小田元
六花
200112
人居るぞと熊へ口笛そつと吹く
田所節子
沖
200201
塩舐めて大熊の山に入りゆけり
男波弘志
槐
200202
熊撃ちをやめし漢の遠まなざし
花島陽子
遠嶺
200203
熊撃ちの神々の嶺を踏み入らず
下平しづ子
雨月
200203
冬眠の熊のIQ聞かさるる
尾崎山治
京鹿子
200204
熊と目があふ恋人を募集中
木村みかん
鴫
200303
コンバイン熊の爪痕はつきりと
加藤白狼子
築港
200311
熊架を探して森に深入りす
山路紀子
風土
200312
里に向く熊の足跡ありにけり
山路紀子
風土
200312
栗拾ふ熊棚ありしところまで
根岸善行
風土
200401
鈴の音は子守歌なり熊穴へ
木村みかん
鴫
200402
熊の道母の五感にしたがひて
高田令子
鴫
200402
熊汁や梁にひとすぢ罅はしり
岬雪夫
狩
200403
熊の肉貰ひおろおろしてをりぬ
三浦香都子
対岸
200404
混沌の世へ突きあたる里の熊
山元志津香
八千草
200405
猿猪に次ぎて熊出で冬に入る
長田秋男
酸漿
200411
甘柿を漁りてゐたり親子熊
谷内瑞江
万象
200501
まづ飲めや熊汁湯気をたてそむる
朝妻力
雲の峰
200501
柿食うて疾くとく戻れ小熊達
芝尚子
あを
200501
熊狩のどやどやと来る峠茶屋
野上智恵子
万象
200502
熊逃げし森に満月冴えにけり
大串章
百鳥
200501
頑丈な猪垣熊に毀たるる
赤松丹山
雨月
200501
熊見しと耳打ちさるる通夜の席
立脇操
雲の峰
200502
熊飢えて村落の柿貧れる
北村香朗
京鹿子
200502
柿甘し熊出る里より送り来て
吉田多美
京鹿子
200502
熊穴に入りて安堵の村となる
稲畑廣太郎
ホトトギス
200504
人里に下りて行かねばならぬ熊
安原葉
ホトトギス
200505
熊穴に入りしか余震もうなきか
木村享史
ホトトギス
200505
山賊鍋熊に猪山鳥も
高村俊子
万象
200505
熊穴に入る生涯といふ長さ
玉川梨恵
鴫
200503
熊穴に入るカタログの引出物
田村園子
鴫
200502
狩の祖父熊の子抱いて戻りけり
森一枝
八千草
200506
木に登り柿を食べゐる山の熊
滝沢伊代次
万象
200510
熊穴に入り里山の景となる
稲畑廣太郎
ホトトギス
200512
峡宿の熊の毛皮を踏む出入
藤浦昭代
ホトトギス
200512
穴に入る熊の値踏みをしてをりし
稲畑汀子
ホトトギス
200512
弾痕に小指するりと熊の皮
中田みなみ
空
200601
炭焼夫熊のゐさうな穴を指す
滝沢伊代次
万象
200601
熊の胆の闇切り取りし如くなる
森田博
濱
200603
熊汁や一会の酒に酔ふかき
鈴木漱玉
馬醉木
200604
山眠る飢ゑたる熊も静もりし
的池遙
百鳥
200604
熊掻きし爪跡残る橅の幹
木暮剛平
万象
200612
熊狩に使ひし銃の黒びかり
浮田胤子
ぐろっけ
200612
大菩薩峠へ熊避けスプレー持ち
須賀敏子
あを
200612
身に入むや撃たれし熊の目に涙
中條今日子
万象
200701
熊の皮月の輪浄め干されたる
岡田貞峰
馬醉木
200702
熊汁を振舞ふ閉山祭のあと
鈴木朗月
万象
200702
捕はれてなほもがぶつとあばれ熊
長崎桂子
あを
200702
熊も猪も神楽太鼓を聴いてゐる
泉田秋硯
苑
200703
クレーン車樹上の熊に出動す
尼嵜太一郎
ぐろっけ
200703
橅萌ゆる熊の登りし爪の跡
山形悦子
万象句集
200703
板敷きて熊鍋かこむ杣の小屋
井村和子
万象
200704
山小屋の冷蔵庫熊開けにけり
滝浪さかゑ
万象
200704
熊撃ちと長湯してゐる野天かな
佐藤哲
万象
200705
民宿に熊の皮敷く談話室
荒木治代
ぐろっけ
200705
本県捕獲熊六十頭米不作
岡村一郎
面
200705
客の座の炉端に敷ける熊の皮
滝沢伊代次
万象
200712
たなかけて熊の喰みゐる水木の実
山形悦子
万象
200712
茸採り熊に脅えて戻りけり
高橋洋子
濱
200712
熊罠の辺りの歯朶のみどりかな
山尾玉藻
火星
200712
熊よけの鈴貸しますと山ホテル
金森信子
雨月
200801
蝦夷鹿と白骨の木と熊危険
吉岡一三
鴫
200801
水を見て熊肉食うて来しと言ふ
城孝子
火星
200802
山賊鍋熊肉入りの具沢山
宮口文泰
万象
200804
熊よけの鈴降りてくる斑雪
内山花葉
沖
200803
くっきりと熊の爪跡たもぎ茸
吉成美代子
あを
200809
熊になどやるまいやるまい柿を捥ぐ
水船みどり
璦
200901
どんぐりのあをあを熊の喰みこぼし
藤井みち子
沖
200901
熊よけの鈴腐葉土のふかふかと
中田禎子
白猪
200901
熊捌く手に血まみれの山刀
小松敏郎
火星
200904
熊疵のマタギに向かひ狸汁
園部蕗郷
春燈
200905
山桜賢治世界の熊母子
坂根宏子
璦
200907
抱く熊の手より離るる昼寝の子
田中浅子
璦
200910
五湖巡り葎の下の熊の穴
山内なつみ
万象
200911
熊もゐる戦場ケ原鈴鳴らし
鎌倉喜久恵
あを
201001
実を落とし熊の爪痕楢林
松本周二
笹
201001
熊肉や余呉湖の宿の垂雪
山田六甲
六花
201002
熊汁をすすりて出羽の国めぐる
大西八洲雄
万象
201005
冬眠に入るはず熊の撃たれたり
丸井巴水
京鹿子
201012
どこよりか熊の現れさう木の実降る
大石よし子
雨月
201101
ひもじさを知れる世代の熊談義
中村ふく子
璦
201102
竜ヶ岳に熊出たる報落葉踏み
坂根宏子
璦
201102
猟銃音熊の爪痕のこる幹
山本淑子
馬醉木
201102
熊よけの鈴の遠鳴り降る落葉
成田美代
鴫
201102
熊撃の名人隙ある背かな
前田美恵子
槐
201102
熊鈴は落葉の海に漂へり
阿部眞佐朗
沖
201102
熊警報解除となりて山眠る
宮入河童
苑
201103
熊避けの鈴を鳴らして十二月
須賀敏子
あを
201102
深山へと熊追ひ返す謀
安原葉
ホトトギス
201104
さりげなく月山にある「熊出ます」
宮内とし子
沖
201201
胸に抱く三日月白し熊眠る
片山博介
春燈
201203
木の枝の小熊はパニック上高地
菅原孟
かさね
201212
熊を撃つ女主人でありしなり
瀬川公馨
槐
201302
手負ひたる熊をかくまひ山荒るる
園部蕗郷
春燈
201305
いつの間に喜寿のよはひや熊煮汁
園部蕗郷
春燈
201305
先採りは熊らし朝のたもぎ茸
松川悠乃
ろんど
201310
木の上に子熊あらはる山の宿
内藤恵子
万象
201311
銀漢や熊と同居の山の中
北郷和顔
末黒野
201311
湿原に熊目撃の日付札
駒形祐右子
万象
201402
熊除けの鈴鳴る登山バスの中
鈴木照子
璦
201409
熊よけの鈴の追ひ越す登山道
樺山翠
雨月
201411
バスの中熊出没の話など
千葉惠美子
末黒野
201501
裏山に爪やはらかく熊眠る
宮坂恒子
沖
201502
檻暗く月の輪熊の影寒き
片岡久美子
璦
201502
白神山地熊に注意の遊歩道
土田亮
末黒野
201503
枯葎道の一つは熊の道
矢崎すみ子
沖
201503
冬眠をとうに忘れて園の熊
今井春生
空
201506
熊注意小さな鈴を持つガイド
須賀敏子
あを
201508
木道や蕗の広葉に熊の影
東正則
末黒野
201510
朝霧や熊の爪痕あらたなる
原田達夫
箱火鉢
201511
またぎ宿横座に敷かる熊の皮
佐々木新
春燈
201602
熊除けの鈴に行きあふけもの道
佐々木新
春燈
201602
告知板熊目撃の日時記す
林いづみ
風土
201602
震ヘつつ熊汁に舌焼きにける
大坪景章
椿垣
201612
街中に月輪熊の出没す
今井充子
槐
201702
熊の出る噂を抱き山眠る
及川照子
末黒野
201704
源流地緑の匂と熊注意
七郎衛門吉保
あを
201707
熊除けの鈴の近づく霧の中
金森教子
雨月
201801
宿題をたんと残して熊穴へ
中田禎子
槐
201802
蝦夷の血を嗣ぎて好もし熊煮汁
園部蕗郷
春燈
201803
熊よけの鈴鳴らし来る薬売り
窪みち子
空
201806
根の底に熊を眠らす大樹かな
宮嵜亀
船団
201809
立ち上がる熊胸座に落穂つけ
工藤ミネ子
風土
201905
熊付けし車窓の泥に秋夕焼
工藤ミネ子
風土
201905
芒原分け親熊のもどり来し
工藤ミネ子
風土
201905
太平湖道の閉ざされ熊穴に
工藤ミネ子
風土
201905
熊の子のとことこ過る葛折
赤座典子
あを
202001
くつきりと熊の爪痕宮柱
塙誠一郎
沖
202002
熊穴に熊除け鈴は抽出しに
美昌二郎
沖
202003
暖冬や眠らぬ熊の横切りし
岩下芳子
槐
202004
麦秋の今朝も件の熊情報
岡田桃子
槐
202008
目が合ふて緑へ返る迷ひ熊
岡田桃子
槐
202008
熊ひそむ鳥海山の山ぶだう
山田六甲
六花
202010
熊の出て猿の隠れて里の畑
七郎衛門吉保
あを
202101
熊の餌にどんぐり拾ふ少女かな
笹村政子
六花
202012
人里に熊徘徊の日の月齢
能村研三
沖
202101
茸山熊に注意の立看板
延川笙子
六花
202101
火を焚かな山へと熊の戻るころ
増成栗人
鴻
202101
熊鍋やとうとうと夜が降りてくる
森祐司
鴻
202103
熊を煮るワインどぼどぼつぎ入れて
青谷小枝
やぶれ傘
202103
熊除の鉦と桴とが泉かな
佐藤竹僊
あを
202110
風死して丸太のごとくねむる熊
有賀昌子
やぶれ傘
202111
山ぶだう熊の爪あと残る木に
廣瀬蝗男
やぶれ傘
202201
罠に熊這入らんとしてやめにけり
園部蕗郷
春燈
202203
熊撃の老いの誰もが酒皶鼻かほ
園部蕗郷
春燈
202203
未知の地の播磨の里を熊訪ひぬ
久保みどり
京鹿子
202203
親と子の剥製なれど熊は熊
亀田虎童子
あを
202203
生くることしんじつわびし熊を見る
安住敦
春燈
202206
足跡は熊かそれともスノーシュー
高橋まき子
風土
202206
夕映えの大河を泳ぐ迷ひ熊
押田裕見
空
202206
清水汲む立て看板に熊注意
綾戸五十枝
鴻
202211
熊撃の湯ぶねで語る背の傷
森岡正作
沖
202302
2023年12月4日
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