なにゆゑの眼の潤み帰雁空
小澤克己
遠嶺
199805
受け取りし書簡の青し帰雁空
小澤克己
遠嶺
199905
橋立の松遠去かる帰雁かな
田中佐知子
風土
199906
帰雁かなけふの一燈献ぜしは
丸山海道
全句集
199910
帰雁東風農夫ら土を篩ひをり
佐藤国夫
馬醉木
200001
橋立の松遠ざかる帰雁かな
田中佐知子
風土
200001
書き上げし稿の昂り帰雁空
小澤克己
遠嶺
200005
朝月を廻りてよりの帰雁かな
出原博明
円虹
200106
バス停にしぶきのかかる帰雁かな
小林輝子
風土
200106
空の果帰雁の翼包みけり
稲畑汀子
ホトトギス
200203
嶺越えし帰雁の空に星光る
海老澤映草
春耕
200204
白汀の彼方へ消ゆる帰雁かな
松村富子
苑
200206
帰雁あり何れの日にか我もまた
小澤克己
遠嶺
200305
高鳴ける帰雁のあとの空の碧
宮坂恒子
沖
200305
狭間より海へと展く帰雁空
小山徳夫
小春の山河
200401
ビルの窓帰雁の窓として暫し
彦坂範子
ぐろっけ
200405
若ければ知らねば帰雁さへも見ず
長沼三津夫
朝
200405
一陣の風や帰雁のつぎつぎと
宇田喜美栄
槐
200406
ジャングルジムのてつぺんに見る帰雁かな
藤井智恵子
百鳥
200406
トーシューズ帰雁の空を漂へり
梶浦玲良子
六花
200407
帰雁かな天下分目の馬防柵
間島あきら
風土
200407
兄逝く
胸中に帰雁のこゑの残りけり
石脇みはる
槐
200505
夕空に雲の波たつ帰雁かな
西村博子
馬醉木
200506
闇せまる湖騒がしき帰雁かな
落合裕子
万象
200507
大津絵の鬼も見送る帰雁かな
丁野弘
狩
200603
もう少し目を高く上げ帰雁追ふ
稲畑汀子
ホトトギス
200703
仰ぎみし帰雁の空の茜いろ
宇田喜美栄
槐
200705
食パンの耳きり落す帰雁かな
梶浦玲良子
六花
200708
一斉の飛翔帰雁の声となる
稲畑汀子
ホトトギス
200804
雲払ふ遠天の帰雁母思ふ
後藤大
春燈
200804
国宝の塔より高き帰雁かな
塩路隆子
璦
200805
岬道に限りありけり帰雁以後
岡本眸
朝
200805
シャープの芯取り替へてゐる帰雁かな
梶浦玲良子
六花
200807
山峡の長き葬列帰雁どき
中川すみ子
璦
200905
礼服の父に帰雁の空のあり
蘭定かず子
火星
200905
国分寺の水煙茫と帰雁かな
和田幸江
春燈
200906
一縷なほ羽摶つよ帰雁海の上
定梶じょう
あを
200906
帰雁追ふ児の指先の空を指す
小塩世津
笹
200907
荒濤に声を落せる帰雁かな
水谷靖
雨月
201001
闘病の窓に帰雁の列長し
宮原悦子
雨月
201105
湖の波殖やしてゐたる帰雁かな
海老根武夫
鴫
201106
文に聞く帰雁の声とおぼしくて
藤兼静子
鴫
201107
岬離れ帰雁の高さ定まりぬ
久保東海司
槐
201108
本日は直行直帰雁渡る
吉田希望
璦
201111
悠久の大和帰雁の空のこり
渡辺輝子
沖
201206
大菩薩越えて整ふ帰雁かな
森下岩男
風土
201207
乱れなき帰雁の列のあはれとも
神田恵琳
跫音
201303
はや帰雁吾に授かりし枷ありて
荒井千佐代
沖
201305
花札のやうに帰雁の坊主山
瀧春一
花石榴
201312
さびしさが帰雁の前にたちはだかる
堀内一郎
堀内一郎集
201412
鳳凰よいくたび帰雁送りしか
西川保子
春燈
201605
棹低く構へて風の帰雁かな
那須重子
馬醉木
201705
確か今帰雁の声と気のつきし
稲畑汀子
ホトトギス
202003
天空の朝より晴るる帰雁かな
丸山千穂子
末黒野
202204
2023年3月23日
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