毛糸編むや時を編み込むごとくにて
澪
藤田宏
199803
今生のいまを編み足す毛糸かな
大場佳子
銀化
199903
どつちみち実らぬ恋か毛糸編む
ハルツォーク洋子
狩
199904
膝に猫ノラも老いたり毛糸編む
植野博
ぐろっけ
199904
倖せの類型の中毛糸編む
能村登四郎
「芒種」
199911
結び目を幾つも隠し毛糸編む
加藤奈那
ぐろっけ
200001
毛糸編む眼鏡二つを使ひわけ
加藤奈那
ぐろっけ
200001
はばからず声出し毛糸の編目よむ
加藤奈那
ぐろっけ
200001
毛糸編むまでの拘り色遊び
加藤奈那
ぐろっけ
200001
毛糸編みつつ憎らしきことを言ふ
能村研三
沖
200001
子育てのゆとりの時間毛糸編む
中村恵美
円虹
200002
声上げて絵本読む子や毛糸編む
中村恵美
円虹
200002
生るる嬰は何色が好き毛糸編む
中村恵美
円虹
200002
家族皆集ひし部屋に毛糸編む
中村恵美
円虹
200002
焼き上がるケーキを待ちて毛糸編む
中村恵美
円虹
200002
揺椅子に卒寿嫗の毛糸編
水原春郎
馬醉木
200002
泰然とダイヤの指で毛糸編む
安井和子
濱
200003
フロイトかユングか毛糸編続け
宮澤さくら
遠嶺
200004
パソコンで作りし模様毛糸編む
今井忍
ぐろっけ
200004
泣くほどのことでもなくて毛糸編む
松崎幹
狩
200101
死ぬるてふ業を残して毛糸編む
熊谷利子
俳句通信
200101
毛糸編み話のいつもかみ合はず
松崎幹
狩
200101
毛糸編みまどろみて見る母の夢
笹原紀世子
濱
200102
遊び切った寝息の横で毛糸編む
篠田純子
あを
200102
終点に来て終ふ白き毛糸編み
藤田宏
澪
200103
毛糸編む片鉤欠けし象牙針
牧悦子
濱
200103
毛糸編む訪ふ声に目がこぼれ
鎌倉喜久恵
あを
200103
ひと目ごと指をどらせて毛糸編む
荒木治代
ぐろっけ
200104
毛糸編む横顔難攻不落なり
伊藤鯰子
ぐろっけ
200110
毛糸編みをり幸せのかたちして
能村登四郎
羽化
200110
編棒がうたた寝毛糸玉ころげ
篠田純子
あを
200201
毛糸編む眠りゐる子の袖はかり
宇利和代
雲の峰
200201
毛糸編む他の事何も考へず
伊藤光子
ぐろっけ
200202
男色の毛糸編む娘(こ)や母の側
武田美雪
六花
200202
毛糸編む池に家鴨をあそばせて
岡村實
春耕
200202
毛糸編む子の口元のとがりゆく
小田玲子
百鳥
200202
日溜りに毛糸編む手の睡くなる
柴田雪路
沖
200202
風の夜は明るき色の毛糸編む
清わかば
雲の峰
200202
毛糸編む日のあふれゐる揺り椅子に
前川みどり
春耕
200203
ままごとのやり取りをかし毛糸編む
武田正子
ぐろっけ
200204
毛糸編む北国の旅夢見つつ
土岐明子
遠嶺
200204
毛糸編む姉妹の会話途切れなし
瀬口ゆみ子
ぐろっけ
200204
毛糸編む子へ言ひかけて止めたる語
小田司
馬醉木
200204
ただひとりの人の靴音毛糸編む
篠田純子
あを
200301
指先の覚えしままに毛糸編む
長尾節子
築港
200301
テレビ見て遊ぶ手先の毛糸編み
長尾節子
築港
200301
編みかけの毛糸の縺れそのままに
大杉千津子
築港
200302
岐路に立つ子を案じをり毛糸編む
大杉千津子
築港
200302
毛糸編む遠く波音くりかへし
水田清子
朝
200302
老ゆるとは従ふ事よ毛糸編む
山田清香
酸漿
200302
遺されてつのる慕情や毛糸編む
刈米育子
苑
200302
毛糸編む嫁ぐ日近き孫愛し
水田清子
朝
200302
毛糸編む姉の背中の母に似て
池原秀子
築港
200302
屈託なく毛糸を編んで診療待つ
笠原ひろむ
濱
200303
胎内のややにも唄ひ毛糸編む
川島真砂夫
沖
200303
毛糸編む模様水位のごと上がり
中村尭子
銀化
200303
救急車耳で追ひつつ毛糸編む
笹村政子
六花
200303
毛糸編むテデイベアのチヨツキかな
遊橋惠美子
風土
200303
毛糸編む恋の分量間違へず
木村みかん
鴫
200303
くるくると指の魔術や毛糸編む
野洲宮川秀穂
苑
200303
毛糸編む背に齢を覚らるる
林田江美
馬醉木
200303
淋しさをまぎらす毛糸編んでをり
阿部一彦
築港
200304
実感は徐々に容に毛糸編む
阿部正枝
絵具箱
200304
夫在りし夜のごとくに毛糸編む
萩原記代
朝
200305
老母(はは)が編む毛糸たわしに手の温み
小川寿照
ぐろっけ
200305
毛糸帽赤白黄糸母の編む
西塚成代
六花
200305
店灯し美容師毛糸編んでをり
藤森万里子
百鳥
200305
猫の留守玉転がして毛糸編む
小澤友江
築港
200305
ふつくらと膝に垂らして毛糸編む
今瀬剛一
対岸
200401
黒毛糸編むドトールに来ても編む
宮津昭彦
濱
200401
湖の底がふるさと毛糸編む
保科次ね子
百鳥
200402
毛糸編む転がり回る毛糸玉
佐本英介
築港
200402
我が店に客足遠く毛糸編む
向江醇子
ぐろっけ
200403
店番の椅子に編みかけ毛糸玉
市橋香
ぐろっけ
200403
鈍行の常連さんや毛糸編む
射場智也
六花
200403
毛糸編む思いの起伏あからさま
鳥川昌実
六花
200403
毛糸編む肩やさしかりモジリアニ
福嶋千代子
沖
200403
受験子にお百度参り毛糸編む
寺門武明
あを
200403
満たされぬ思ひ毛糸を編み上げて
足立幸信
狩
200404
ひと刻の孤独も可なり毛糸編む
岡田和子
馬醉木
200404
毛糸編む姉口八丁手八丁
野口年江
酸漿
200404
毛糸編む手を止める時仏の目
丸山敏幸
朝
200404
初恋の人想ひ出し毛糸編む
松井治美
遠嶺
200404
パソコンの夫の片傍に毛糸編む
高畠陽子
河鹿
200404
毛糸編む母の返事を待つてをり
玉川梨恵
鴫
200405
毛糸編む一目一目に日を入れて
大森サカエ
帆船
200406
指先は恋する女毛糸編む
土屋ゆたか
帆船
200411
合歓は実に毛糸編む母画き遺す
岡田幸弘
栴檀
200502
我が店に客足遠く毛糸編む
向江醇子
ぐろっけ
200503
毛糸編む八十路の母を思ひつつ
清わかば
雲の峰
200503
休みなく数を数へて毛糸編む
高橋秋子
狩
200503
不器用な母が教へる毛糸編み
島元文
遠嶺
200503
いさかひを悔いて無一言で毛糸編む
西氏宣子
遠嶺
200503
寅さんの腹巻き編まん毛糸玉
片山タケ子
鴫
200503
肩の凝り人には言はず毛糸編む
府中谷幸枝
馬醉木
200503
毛糸編み夫との会話縺れけり
土生逸麿
河鹿
200504
編棒は母の手作り毛糸編む
海野みち子
万象
200504
毛糸編む夜の更けるのも忘れをり
高木昌子
築港
200504
毛糸編む無口の妻に戻りけり
岩谷丁字
春燈
200505
かく癒えて寢惜む汝(なれ)や毛糸編む
瀧春一
菜園
200509
フロイトかユングか毛糸編み続け
宮澤さくら
「今生」
200510
まだ誰のものと明かさず毛糸編む
小川匠太郎
狩
200511
毛糸編み連続模様殖やしけり
福井隆子
対岸
200601
膝の上に彩り溜めて毛糸編む
福地初江
朝
200601
着る人を編みこんでゆく毛糸玉
片山タケ子
鴫
200602
はや母のまなざしとなり毛糸編む
大串若竹
百鳥
200602
眼鏡無いと云ひすぐ見つけ毛糸編む
嶋田摩耶子
ホトトギス
200602
毛糸編むときをり鍋を返しては
窪田粧子
馬醉木
200602
育てゆく物ある幸や毛糸編む
嶋田摩耶子
ホトトギス
200602
毛糸編む教はる端から忘れては
平居澪子
六花
200603
蹌踉来て妻はのんびり毛糸編む
豊田作二
遠嶺
200604
その人にときどき見られ毛糸編む
柴田佐知子
空
200605
ジョンレノン小さくかけて毛糸編む
坂本緑
沖
200611
毛糸編む妻ルノワールの絵の中に
大橋晄
雨月
200702
毛糸編む長き夜短く感じつつ
須賀敏子
あを
200702
児の帽の毛糸編む妻はろかなり
大橋晄
雨月
200702
献立を決め兼ねてをり毛糸編む
藤井久仁子
ぐろっけ
200703
毛糸編む母の十指は色の中
掛井広通
沖
200703
毛糸編む眼鏡いくつも掛け替へて
松原智津子
万象
200703
毛糸編む羽生えさうな日溜りに
新井佐知子
遠嶺
200703
指先の眼となりて毛糸編む
東亜未
あを
200703
百歳の媼の編めり毛糸帽
島村久枝
濱
200703
いくたびもかむりては編む毛糸帽
山内なつみ
万象
200703
ふくよかな菜の花色の毛糸編む
滝川あい子
雨月
200703
毛糸編む母の仔細の硝子戸に
岡崎るり子
面
200704
何時迄(いつまで)も座つて居たし毛糸編
池崎るり子
六花
200704
殺めたかも知れぬたれかれ毛糸編む
渋川京子
面
200706
細(こま)編長編母の指先毛糸編む
鈴木榮子
春燈
200712
ひとり居の自由と孤独毛糸編む
岡野ひろ子
峰
200802
毛糸編む妻の右手の痩せゐたり
藤原冬人
火星
200802
たがためと問ふにこたへず毛糸編む
ことり
六花
200802
母まねて幼き指が毛糸編む
杉本光??
沖
200802
マニュキアの指を躍らせ毛糸編む
中村悦子
峰
200802
毛糸編む吾も何やら女らし
横井明子
苑
200804
手術待ちをり毛糸帽編んでをり
飛鳥由紀
鴫
200804
歌姫のピアフ時には毛糸編む
赤座典子
あをかき
200804
生まれくる子へ編む毛糸ブラームス
田中藤穂
あをかき
200804
寝言いふ猫傍らに毛糸編む
靜寿美子
ぐろっけ
200805
指先に心預けて毛糸編む
宮倉浅子
遠嶺
200805
思ひごと一時忘れ毛糸編む
須賀敏子
あをかき
200901
師走句会毛糸編機の音絶えず
瀧春一
深林
200901
泣くこととちがふかなしみ毛糸編む
辻美奈子
沖
200902
忘れたきことのありけり毛糸編む
冨松寛子
槐
200902
回想のだうだう巡り毛糸編む
秋葉貞子
やぶれ傘
200902
母の手の小さき惑星毛糸編む
掛井広通
沖
200902
白毛糸二つで編めりベビー服
坂本知子
酸漿
200902
着てくるる人ありて編む毛糸かな
坂本幸子
酸漿
200903
かたはらに嬰の笑顔や毛糸編む
筏愛子
苑
200903
毛糸編む媼の会話はづみけり
波田真澄
遠嶺
200903
毛糸編むうしろの猫に語りかけ
泉田秋硯
苑
200903
癌の妻と十有余年毛糸編む
根岸善行
風土
200903
過去未来思ひめぐらし毛糸編む
大泉美千代
雨月
200904
毛糸玉転びゆく見て一人編む
大泉美千代
雨月
200904
今生の今のやすらぎ毛糸編む
本田久美
遠嶺
200904
生き延びて自分のための毛糸編む
田原陽子
鴫
200905
毛糸編む指のささくれ宥めつつ
ことり
六花
200911
毛糸編む時を形にしてゐたり
辻直美
沖
200912
生き様に器用不器用毛糸編む
上原恒子
雨月
201001
毛糸編むカフェのお客昼下り
森理和
あを
201001
朝逝けるぢいちやんに編む毛糸帽
山口素基
万象
201002
過ぎし日の恨みふつふつ毛糸編む
高橋泰子
槐
201002
毛糸編む夫の遺品の眼鏡かけ
能勢栄子
璦
201002
毛糸編む手を止めて目を合わす
貝森光洋
六花
201002
磨かれし玻璃の陽頬に毛糸編む
塩見育代
璦
201002
毛糸編む縦の木に雨降りつづき
杉浦典子
火星
201003
編みかけの逆さ帽子に載る毛糸
小河平男
苑
201003
誰がために編んで解いて毛糸玉
瀬口ゆみ子
ぐろっけ
201004
願かけて祈りをこめて毛糸編む
大北昌子
狩
201004
受験生は大変と母毛糸編む
赤座典子
あをかき
201101
指先に眼のある如く毛糸編む
阿久澤利男
やぶれ傘
201101
ふとわれを置き去りにして毛糸編
辻美奈子
沖
201102
手先から衰へ見たり毛糸編
篠原普美子
酸漿
201102
我儘も少し加へて毛糸編む
高田令子
鴫
201102
毛糸編み女の知恵の浅からず
永塚尚代
ぐろっけ
201102
糸玉の転がりしまま毛糸編む
藤生昇三
六花
201102
鎖編おぼえたる子に赤毛糸
田中藤穂
あを
201103
毛糸編む妹を器用と母は言ひ
安本恵子
璦
201103
古希迎ふ母に倣ひて毛糸編む
和泉道草
末黒野
201104
初恋の思ひ出淡し毛糸編む
今井淨子
苑
201104
耳休め目休め指が毛糸編む
今井千鶴子
ホトトギス
201105
人の幸聞いては毛糸編みはじむ
?コ田千鶴子
花の翼
201111
毛糸の編目ふやしつつ妻産月へ
伊藤白潮
鴫
201111
毛糸編み閑かな時を手繰り寄す
沼田桂子
春燈
201201
毛糸編む只今水平思考中
山内洋光
鴫
201202
毛糸編む幾度も丈を確かめて
小林朱夏
空
201202
毛糸編むショパン・リストと編みすすみ
井原美鳥
沖
201202
毛糸編いま米原を通過中
林昭太郎
沖
201202
巻き戻し出来ぬ地球よ毛糸編む
掛井広通
沖
201203
空想をつなぐモチーフ毛糸編む
金田けいし
ろんど
201204
背合はせに住む狐狸の声毛糸編む
仲井タミ江
京鹿子
201204
毛糸編む大黒ねずみの干支飾り
園田清子
万象選集
201205
毛糸編む母の定位置古座椅子
宮田香
故郷
201207
オペを待つ女ひたすら毛糸編む
宮田香
故郷
201207
毛糸編むわれに本読む夫のあり
北崎展江
くりから
201209
なまなかに人を許さず毛糸編む
高田風信子
京鹿子
201301
あと一と目あと一段と毛糸編む
菅野蒔子
末黒野
201301
色褪せし記憶をたぐり毛糸編む
藤井寿江子
馬醉木
201302
模様編みの本にくぎづけ毛糸編む
芝孝子
末黒野
201302
毛糸編み寝仕度の刻忘れけり
菅野蒔子
末黒野
201302
左手のリハビリ開始毛糸編む
石川かおり
璦
201302
育つ子にほどきては編む毛糸玉
平野伸子
馬醉木
201303
毛糸編頷くばかり從はず
佐々木秀子
鴫
201304
2022年11月15日
作成